第1308話 巨大レンコン、討伐戦 その9
5割を切ってからのハスの葉の切断を終え、続けて4割、3割、2割とHPを削っていく事には成功。地味に3割で剥奪をするカエルが増えたり、2割でハスの花が咲いていたりもしたけども、その辺は海エリア勢が難なく処理してくれたので特に大きな影響もなく乗り切った。予め花粉の情報があって助かった部分だよなー。
それ以外は、少し攻撃頻度が上がった程度で基本な動きは同じだったから対処は楽だった。いやはや、付与魔法を使われる前兆が魔力視で見えてるなら、周知した上での回避はそんなに難しくはないね。
ここから大きな変化があるとしたら、もう残すところは1割の部分。まだ出てきていない特性『統率』の要素は、ここで出てくる可能性が高いか。
今は再生したばかりの新たなハスの葉の切断の為に、切断班が移動中。おそらく、これが切断班のエリアボス戦としての最後の役割だね。そこからが、競争クエストとしての最後の勝負になる。
「……さてと、嫌なタイミングに嫌な要素が残ったなー。最後に残ったか、特性『統率』!」
「ここまで使ってこなかった事を考えると……終盤に強化統率で守りを固めるという動きの可能性が高いでしょうね。この耐久性の7割の性能は、十分なほど厄介なものですか」
「だよなー」
ただでさえ、かなりの時間をかけて削ってきた巨大レンコンだ。まぁ序盤は削る手段の模索に時間がかかったのはあるけど、かなりの耐久性があるのは間違いない。
この巨大レンコンの7割の性能を持つ統率個体が出るのが早過ぎるとシンドいだけだから、最後の最後で登場という形になるのかも。……識別内容で特性に『統率』を持ってるのを忘れたりすれば、地味に大変な事になりそうだよな。忘れてなくてよかった!
「ラックさん、桜花さん、通達を頼む。1割を切ったタイミングで統率個体が出ても、完全に無視して本体を潰すのに集中してくれって伝えといてほしい。ハスの葉も次に再生しても、切断はいらないぞ」
「おう、了解だ! 流石に口頭では、他の群集へのヒントは与えかねないしな」
「うん、分かった。必要なHPは次の再生で削れるし、もうハスの葉は放置でいいんだね。今のうちに伝えとく!」
ここまで巨大レンコンを弱らせてきた中で、他の群集は大きな動きは見せていない状況だしね。まぁボス戦に集中させる為に、こっちではほぼ発言していなかったという可能性もあるんだよなー。
ミズキの正常化は少し前に済んでいるけど、それに対する動きが全然ないのも少し気になる。ミズキ自体も、正常化してからも演出的な問題なのか全然喋んないしなー。どこか上の空というか、プレイヤーだけでは完全に正常化出来てないのかも?
おし、他の群集の事は全面的に任せるようにはしてるけど、最後の大勝負になるんだから、少しは情報を仕入れとこう!
「ベスタ、他の場所の動きってどうなってる? これから最終局面になるだろうから、一応軽い確認くらいはしときたい」
「そこが気になるのは分かるし、軽く説明はしておくか。強襲しやすそうな位置にいる敵は、俺らの方で排除はしていっているから心配はするな。それに、赤の群集と青の群集が所々で潰しあっている状況でもある」
「傾向としては、多分、青の群集の本命部隊は上だねー! 赤の群集の本命は森の中っぽい? ケイさん達は、上下からの挟撃に気を付けて!」
「それらを含めて俺らの方で可能な限り抑えはするがな。まぁ状況的に、大規模な軍勢にはなっていないはずだ」
「あー、そういう状況か。カズキの方は?」
「その辺は今はどうなってるの、ダイク? 少し前には、まだ戦闘中って話だったよね?」
「今も赤の群集と青の群集で、戦闘中って話だな! 赤の群集は倒す気はないっぽくて、青の群集が攻め切れない状況みたいだぜ」
「……あれ? 倒される人が多いって話じゃなかった?」
「あー、ザックさんが如何に相手を引き付けつつ、死ぬのを前提に情報を確認するかのコツを話しててな! 未成体以下の人達がそれを実践しつつ、撃破されながらも情報は集まるようにはなってるぜ!」
「あ、なるほど! そこでザックさん!」
「ザックさんらしいやり方だな!?」
死ぬのを前提にした調査部隊が出来てるんかい! しかも、そこでアイルさんの発案の未成体以下の人達が活躍中とはビックリしたわ!
でもまぁ、死んで情報を色々持ち帰ってくるザックさんならではのコツがあるなら、それはそれで有用なのかも?
「はい! それって具体的にどんなコツですか!?」
「……えっと、それを聞いている場合なのかな?」
「気にはなるけど、流石に後にしない?」
「……あぅ……それもそうでした」
ハーレさんが気になる気持ちも分かるけど、もう大詰めも大詰めなんだ。俺もザックさんがどういうコツを持っているのかは気になるけど、それは冗談抜きで後回し!
こうやって話している間にも次の切断班のチャージの準備が終わっていってるし、もうこれ以上は時間的な猶予がないな。変にここで動きを止め過ぎない方がいいだろ。……あえて焦らして、他の群集の動きを乱すって手もあるけど、下手に主導権は渡したくないから止めておこうっと。
「それじゃ、ベスタ、レナさん、巨大レンコンのトドメまで一気に終わらせるぞ」
「あぁ、既に見渡せる位置には移動したからいつでも構わん。オリガミ、風雷コンビ、この時点から完全に俺の指揮下に入れ。状況に応じて、標的を指定する」
「えぇ、了解しました」
「「了解した!」」
こういう話をしていると、嫌でも緊張感が増してくるね。巨大レンコンの相手だって神経は使ってたけど、本命の戦闘はこれからだ。……俺らの役割はミズキを死守して、占拠させる事。それだけは絶対に見失うなよ!
「ケイさん、みんなへ通達は完了したよー! あと、切断班が切断してからは少し気を緩めたフリをして、巨大レンコンの討伐後に浄化の要所の防衛に回れるように動くって!」
「おっ、位置的にそれは助かる! 油断したように思わせて、他の群集の油断を誘うつもりだな」
「うん、そうみたい!」
なんだか指揮から外れてそれ以上の動きをしてくれる事もチラホラあるけど、試行錯誤に慣れてるようでありがたい! ハスの葉を切り落とした後は手持ち無沙汰になるのは避けられないだろうし、そのタイミングを上手く活用する気だな!
「それじゃケイさん、始めちゃって!」
「ほいよっと!」
ベスタやレナさんは連結PTの表示でどこにいるかは分かる。だけど、別働隊としてトドメを狙ってくるのを妨害をする人達がどこにいるかは正直分かってないけども、そこは気にしなくていい! 俺らは、俺らのやる事をやるまでだ!
「切断班、切断開始! 電気魔法班も続いて攻撃に移ってくれ!」
これがこの巨大レンコンの討伐戦としては最後の指示になる……はず。頼むから、ハスの葉は再生せずに統率個体の登場だけで、HPは残っているなんてのは勘弁してくれよ! もしそうなったら、そこからトドメまでの流れが大きく変わるからな……。
そう考えている間に、もう切断版が最後の切断を始めていってるね。まずはハスの葉の回避誘導をして、そこからチャージを終えた人達が攻撃開始だな。
「皆、切っていくのであるよ! 【全てを断ち切れ! 白銀ノ太刀・一文字】!」
「さっきと名前が変わってねぇか!?」
「その時の気分で変わってたりするから、そこは気にすんな!」
「あ、そういうもんなんだ?」
「拙者の事はいいから、皆もさっさと切るのであるよ!?」
なんか微妙に緊張感がないやり取りが聞こえたりもしてるけど、続々と最後のハスの葉の切断が進んでいるから別にいいや。支障が出るなら流石に止めるけど、そうでないなら下手に口出す方が水を差しかねないしね。
さて、そうしてる間に切断が残っているのはあと1ヶ所。そこが終われば、これまでのパターンから考えれば再生をしてくるはず。それでHPが1割を切るから、後は大技で仕留めていけばいい。
問題はそこで他の群集がトドメを狙ってくる可能性がかなり高い事だけど……まぁそこは状況に応じて判断で! それ相応の準備自体はしてるしね!
「ケイ、最後のハスの葉が落ちたぞ」
「見えてるから、分かってる! これでどうなる……?」
まだHPは1割を切っていないから、再生はするとは思うんだけど……おし、再生し始めた! ごっそりと残りHPが減って……げっ!? 今回は最初からハスの花とセットで再生!? いや、そこは問題ない――
「わっ!? 少しだけ小さな巨大レンコンが4体、地面から出てきたのです!?」
「やっぱり出てきたかな!?」
「予想通りの登場だね!」
ハスの花まで一緒に再生とは思わなかったけど、幸いどこも海水の中に出てきたみたいだから花粉は広がらない状況だな。それに、ここからは新たに出てきた強化統率の個体は無視と決めている!
巨大レンコンの残りHPはもう3%ほど。トドメを狙ってくるなら――
「あはははははは! トドメ、貰いきたよ!」
「させる訳がないだろうが!」
「『ウィンドディヒュース』! ふぅ……想定していたけども、ベスタさんとレナさんが出てくると、中々骨が折れそうだね」
「思いっきり飛び出てき過ぎじゃない? 弥生!」
「あはははははは! コソコソと倒して回ってたのは、やっぱりレナだったんだねー!」
「分かりやすい登場をありがとうよ! まとめてぶった斬る!」
「斬雨! どの方もそう簡単な相手ではありませんので、警戒を怠らずに!」
「分かってらぁ!」
あー、やっぱり弥生さんとシュウさんがどこからともなく飛び出てきて、それを抑えにベスタとレナさんも出てきて、真上からそれを強襲するジェイさんと斬雨さんのコンビが登場か。大々的に目立つ人達が出てきたけど……もうどういう偽装をしていて、どこから出てきても不思議じゃないな、この面子!?
まぁ派手に出てきた割には人数が少ないから、本命ではなさそう? そうなると、どこに本命を仕掛けてくるか……って、爆発音!? しかも単純なものじゃなくて、実際にどこかが崩れているような――
「爆発音は無視しろ! 灰の暴走種ごと、ミズキを閉じ込めてしまえ!」
「「「「「おう! 『シーウォータークリエイト』『海流の操作』!」」」」」
「っ!? 迅雷さん、疾風さん、私達は少し距離を取って遊撃に入ります!」
「「了解だ!」」
「ちっ! まぁいい、あっちはあっちで任せるまでだ!」
オリガミさんが即座に俺らから離れる判断をした……って、この海流で俺らを包み込もうとする動きは、逃がさない為だけじゃなく、風雷コンビの電気魔法を吸収してた人達がいるからか! 俺らよりも更に上空から出てきた青の群集の海エリア集団の中に、電気を纏ったアルマジロっぽいのがいるもんな!
「ソウさん達、海流の操作で相手のを相殺! 誰にも……特にミズキにだけは絶対に海水を触れさせるな!」
「あー、そういう事かよ! お前ら、防衛戦の始まりだ! 『シーウォータークリエイト』『海流の操作』!」
「「「「「おう! 『シーウォータークリエイト』『海流の操作』!」」」」」
俺らを海流で囲んで風雷コンビを封じようとしたんだろうけど……あー、マズいな。海流の操作で相殺をしてもらってはいるけど、その影響で下への視界が相当悪くなってる。ちっ、指揮が俺だから、それ自体も封じてきたか。
なんとか隙間から見える範囲で下の様子を……って、げっ!? 巨大レンコンが海エリア勢の海水の操作ごと大きな土壁で覆われようしてるじゃん!? カエルに剥奪されるタイミングに合わせて、操作を調整するのを妨害するのが狙いか!
「それをやらせる訳にはいかないね。『アブソーブ・アース』!」
「……そこで邪魔をしてきますか、シュウさん!」
「青の群集にはトドメは必要ないんじゃないかい?」
「散々、カズキを連れてくるのを邪魔しておいて! 『略:ファイアインパクト』!」
「あはははははは! 青の群集こそ、邪魔しないでくれない?」
「くっ! 冷静さが残ってる弥生さんとか、厄介さが増してんじゃねぇか!?」
「およ? これは勝手に潰し合ってくれてるね?」
「……どっちが勝っても面倒でしかないし、ここで両方潰すまでだ! この位置、どさくさに紛れて異形のサツキも仕留める気でいるぞ」
「それもそだねー!」
ベスタ達の戦闘は、巨大レンコンと異形のサツキがいる間くらいか。スリムさんが展開している土の操作はシュウさんが消し去っているけど、赤の群集頼りには出来ない状況だよな。
オリガミさん、即座に離れる判断は適切で早くて助かった! ベスタが直接動いたのは、そうじゃないと対処し切れないという判断からだろうしね。
「オリガミ、ケイの指揮で動け! 蒼弦、トドメの妨害班の指揮は全面的に任せるぞ! ケイ、レンコンの討伐はさっさと済ませてしまえ!」
「おうよ! 野郎ども、地下トンネルを爆破して出てきた赤の群集の連中を止めに行くぞ!」
「えぇ、承知しました」
「ほいよっと!」
俺らからは見えていないだけで、あちこちからこれまでよりも激しい戦闘音が響いているし、赤の群集も青の群集も大掛かりに仕掛けてきてるっぽいな!
でも、エリアボスの巨大レンコンを始末してしまえば、後は占拠を行えば済むだけの話! 赤の群集がまだミズキへの攻撃を仕掛けてきているのが確認出来てないのが不安ではあるけど、そこは誰かが上手く食い止めてくれてると信じよう!
「オリガミさん、そっちからきた状況はどんな感じ!?」
「……完全に乱戦化していますね。海水へ次々と電気魔法が撃ち込まれていますが、これは事前の通達の件で海水とレンコンは切り離しているので、しっかりと防げているようです。ですが、この状況は長くは保ちませんね」
「やっぱりそこは狙ってくるか……。その攻撃をしてるのは、赤の群集? それとも青の群集?」
「両方です。電気魔法で攻撃する役目と、それを周囲から守る役目で割り振っているようですね」
「……どっちも考える事は同じだった訳か」
まぁ俺らのエリアボス戦の状況を見ていれば、その手段は考えるところだろうな。多分攻撃が届かない事も想定した上で、海水の操作を削っている状況だね。……さて、どうするか。
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