第1307話 巨大レンコン、討伐戦 その8


 刹那さんのオリジナル詠唱での斬撃を筆頭に、続々と巨大レンコンのハスの葉は茎で断ち切れている。これで全部切り終えた後にどういう変化が出るかが重要なんだけど、思いっきり盛大にHPを消費しつつ再生させてくれよ!

 もう湖の底だった部分は乾き切ってるし、水分吸収での回復も出来ないはず。この高耐久な巨大レンコンを倒すには、自分で消費してくれるのが早いんだけど……おし、全部断ち切れたな。


「……全部……切れた?」

「これで再生するかどうかが問題なんだけど――」

「おぉ!? 全く別の所から新しい茎が生えてきたのさー!?」

「葉も生えてきてるかな!」

「あ、位置は違うんだね。HPは5割寸前まで削れたから、8%くらいの消費みたい?」

「そうきたか……」


 うーん、1割も削れなかったのは行動パターンの変化が絡むからって可能性はありそうだけど、まさかの再生位置が別の場所。元々の茎は、切り離して不要なものって感じで放棄されるのか。


「……生えてきた位置が変わった?」

「でも、かなりHPは削れたっぽいな」

「数は……増えてはいないか?」

「多分、大丈夫なはず?」

「ケイ殿、ここからどうするであるか!?」


 あー、刹那さんが次にどう動いたものかを聞いてきてるな。予想外に生える位置が変わったし、思ったよりも少なめのHPの消費だけど、それでもここまでの攻撃よりも明確にHPは削れた。

 多少の誤算はあっても、それで攻撃を止める理由はどこにもないし、続行だな。俺の指示待ちになっちゃってるから、それ用に指示を出しとかないと!


「ハスの葉の切断に回ってる人達、場所が被らないように調整しつつ、新たに生えたハスの葉で次の切断準備! 誰がどこにいくかの調整は……出来る人はいるか!?」

「ケイさん、それなら刻印班が連絡役を担っているからそっちで調整するぜ。ラックさんは現地にいるし、位置の指定はいけるよな?」

「任せてよ、桜花さん! ケイさん、位置の調整は灰のサファリ同盟の方でやるね!」

「よし、了解! 位置調整は灰のサファリ同盟の方でしてくれるから、それに従って新たに生えてきたハスの葉に向かってくれ!」

「了解であるよ! 皆、移動である!」

「「「おう!」」」


 よし、誰がどこのハスの葉を切り落とすかの割り当てはラックさん達、灰のサファリ同盟に任せればいい。そうしている間にも出来る事はある!


「ケイさん! 地味に黒の刻印が切れてるのです!」

「……へ? あ、マジだ!? え、なんで!?」

「これは……新たに出てきたハスの葉が別にカウントされたのではないでしょうか? 既に包んでいた海水では判定は出ないはずですが、新しいハスの葉は別ですし……」

「あー、その可能性はありそうだな……」


 ちっ、オリガミさんの読み通りなら、海水で覆い続けている状況だと黒の刻印の低下が上手く機能しにくいのか。ここは誤算だけど……まぁ元々が何度も刻める状況でもないから別にいいや。


「黒の刻印の低下はハスの葉が再生した時に消えたし、下手に使ってもほぼ無駄になるからそこは使用はなしに変更! 葉を切断する方に集中で! 海エリア勢、ハスの葉は海水から出していってくれ!」

「あっ!? そのまま海水で包んだままだった! みんな、切断班がやりやすいようにハスの葉は海水から出して!」

「あ、そういえばそうだね!? そういう部分、シアンに言われるとは思わなかった!?」

「ケイさんからの伝達事項だけどな!」

「ケンロー、わざわざそこを強調しなくてもよくない!?」

「はーい、とりあえず該当部分の人はサクッと海水を除けちゃってねー!」


 よし、とりあえず先に言っておくべき対処はこれでいい。セリアさんがシアンさんをからかってるっぽいのは、まぁいつもの事!

 ハスの葉の切断班の誘導は灰のサファリ同盟に任せるから、その間に可能な限りダメージは稼いでおこう。ちょっと想定外の移動が発生したけど、その時間も無駄にはしない!


「電気魔法班、今の間に海水へ電気を流してダメージを稼いでくれ! あと、5割を切ったところでまた剥奪があるだろうから、そのタイミングで海水が途絶えた部分があれば毒魔法も叩き込んでくれ!」

「電気魔法班、全員に伝達を回せ! 俺らも攻撃を開始だ! 『白の刻印:増幅』『エレクトロインパクト』!」

「電気魔法での攻撃開始! 種類は特に指定はないから、威力の高いのをどんどん放っていけー! 補助も忘れるな! 『白の刻印:増幅』『エレクトロエンチャント』!」

「間違っても守勢付与にするなよ! 『白の刻印:増幅』『エレクトロエンチャント』!」

「攻勢付与を貰ったら、どんどんぶっ放せー! 『白の刻印:増幅』『エレクトロインパクト』!」

「黒の刻印がなくとも、弱点で攻めるのみ! 『白の刻印:増幅』『エレクトロインパクト』!」


 付与魔法での攻勢付与と白の刻印の増幅で威力を上げてから盛大に叩き込みまくってるなー。目に見えてHPが減っているのが見えてるし、これは5割を切るのもあっという間だろうね。

 ここに黒の刻印での低下が加えられないのは残念ではあるけど、広範囲から一気に攻撃を叩き込む効率を考えれば仕方ないか。電気魔法としか指示してなかったけど、これはこれでいい状況!


 さて、この攻撃の間に次のハスの葉の切断準備が出来ればいいんだけど……あぁ、足場を作ってくれていた人達が話し合って散らばっていったか。


「切断班、割り振ったハスの葉まで誘導する! それぞれのPTに所に行った灰のサファリ同盟の人に従って移動してくれ!」

「了解であるよ!」

「おし、こういう時に案内に灰のサファリ同盟の人は助かるぜ!」

「任せるよ、灰のサファリ同盟!」

「任せて! あ、可能なら移動中にチャージをお願い!」

「おうよ! 最低2人は組み込んだから、切断役は交代していくぞ! 『白の刻印:剛力』『断刀』!」

「思いっきり切断といこうじゃないかい! 『白の刻印:剛力』『重硬爪撃』!」


 比較的近くで聞こえてくる範囲でしか状況は分からないけど、巨大レンコンを囲むように人員は配置されてるからなー。灰のサファリ同盟の人達で、位置を変えて新たに生えたハスの葉へ人員が被らないように上手く調整してくれよー!


 そうしている間に、もう5割を切りそうだな。流石に切断班の移動は考慮に入れてなかったけど、その間の電気魔法での削れ方がいい感じ! 移動がある分だけ、お互いの攻撃の邪魔にならず噛み合ってる様子だしさ。

 さて、俺は俺でやるべき事を続けていこう! さっきの6割を切ったタイミングでの変化はなかったけど、次の5割では何かあるかもしれないしね。まだ見ていない、特性『統率』に関わる変化もどこかであるはず!


「そろそろ5割を切るぞ! 行動パターンの変化に要注意!」


 みんなに向けて呼びかけつつ、俺自身も警戒! さて、ここで新たな行動パターンが出てくる可能性は高いけど、どうだ? HPが半分を切ったけど……って、そうきたか!?

 レンコン製のカエルは出てこないで、青い魔法の反応が同時に3つ!? それも本体に近い部分にいるプレイヤーに直接、重ねるような形か!


「おわっ!? 水魔法!?」

「特にダメージはないけど……あ、水球が4つ漂い出した?」

「あ、水属性が追加になってる!? これ、付与魔法をかけられた!?」

「わっ!? 追加でどんどん使ってきてるぞ!?」

「ちょ、水魔法をここで連発してくる!?」


 直接見えている範囲では……どうも巨大レンコンが水の付与魔法を使ってきてるっぽい。敵へ付与魔法を使えば、その属性に応じた操作系スキルの同時操作数の回数分のスキルでの攻撃を受けるまでは強制的に属性を付与出来るんだよな。見た目は纏属進化に近くなって、回数分だけの水球が漂っている状況。既に持ってる属性と重なれば、これが紋様に変わるんだっけか。

 パッと見た感じでは水球が漂ってるパターンのみだし、見える範囲で雷属性持ちの人達が水属性を付与されている? 攻撃的ではないけど、嫌なダメージの下げ方をしてくれるな! それも結構な人数に、連発して属性を付与してるのか。


 あ、一旦、付与魔法の連発は止まって、またレンコン製のカエルが剥奪しに出てきたか。まぁそこはもう繰り返しの部分だから、対処は手慣れた感じで海エリア勢がやってくれているから任せよう。

 とりあえず状況を軽く整理して、次の指示を出す為に動かないとね!


「効果がかかった人、一応報告を上げてくれ!」

「これ、付与魔法! 4回分だから、水の操作はLv7以上だよ!」

「受けたのは雷属性持ちっぽい!」

「雷属性持ち以外で受けたやつ、いるか!?」

「あ、発動前に割り込んでみたら、雷属性でなくても受けたよ!」


 他にも色々と声が上がっているのは聞こえたけど、有効な手段がしっかりと聞こえた。状況自体は推測通り、水の付与魔法が雷属性持ちの人の多くに付与されたっぽい。

 ただ、全員かどうかは不明だけど……って、そういやこの場合の付与魔法の効果って、スキルでの攻撃を受けなきゃ解除出来ないよな!? いや、違う。確か受ける以外でも、スキルを使うのでも消費は出来たはず。でも、4回分を消費するのは地味に手間か……。


「ケイ、アブソーブ・アクアの出番じゃねぇか? 敵からの付与魔法なら、吸収出来るだろ」

「あ、そういやそれが……って、俺が吸収して回るより、低威力を連発して普通に消費した方が早くね?」

「……それはそうかもな」

「ですよねー!」


 この戦闘の真っ只中、指揮の俺が前線に突っ込んでいってどうする!? ミズキの防衛は疎かには出来ないし、広範囲を見渡せる位置から離れる訳にはいかんわ!

 手段としては有効だろうけど、立場的にそれは出来る状況じゃない! その辺を考慮して対応するなら、これしかないな。


「今ので付与魔法をかけられた人、悪いけどその状態はスキル4回分で使い切ってくれ! 行動値と魔力値の節約で、低威力の攻撃で構わないから! 次の付与魔法をかけられそうになったら、近くの電気魔法を使わない人が代わりに受けるつもりで!」

「了解!」

「ま、付与分は使い切った方が早いか」

「斬撃班が攻撃中に、さっさと使い切るぞ! 属性の相性でダメージが下がろうとも、全然効かなくなる訳じゃねぇしな! 『エレクトロボール』!」

「そりゃそうだ! さっさと使い切っちまえ! 『エレクトロボール』!」

「魔力視で、しっかり次は回避しなきゃね! 『エレクトロボール』!」

「ここで白の刻印は流石に使ってられねぇな。『エレクトロボール』!」

「今なら、威力が変わらないこっちもありだよね! 『ポイズンインパクト』!」

「おっ、切断までならハスの葉をそれで狙うのもありか! 『ポイズンインパクト』!」

「次に回避出来なかったら、海エリア勢が立て直す前に本体に毒を叩き込むぞ! ハスの葉は、そんなにダメージが入ってねぇしな!」


 よし、水の付与魔法をかけられた人達の周りに漂ってた水球の数がどんどん減っていく。とはいえ、流石にダメージの量は減ってるよなー。これは一時的なものだろうから、使い切りさえしてしまえば問題ないだろうけど……。

 一部の人は毒魔法で消費してるけど、まぁそれはそれであり。毒魔法はハスの葉が回避してるけど、避け切れてないもんなー。とはいえ、本体にはそれほどダメージは無し。毒に触れた分だけ葉の形が無くなってるから、叩き込みまくれば切断と同じような効果にはなりそうか。


 そうやってる間にハスの葉の切断班の移動も済みそうだから、ここからまた一気に削れるはず! 毒魔法では、ハスの葉狙いよりも本体狙いの方が良さそうなのはよく分かった。


「ケイさん、切断班は準備完了だよ!」

「ラックさん、了解っと!」


 連結PTからの会話で、直接準備完了の伝達あり! 全員にこうやって声が届けられたらいいんだろうけど……いや、それはそれで人数が多過ぎて混乱しそうだから無理か。ともかく、今は次の攻撃に移る!


「ハスの葉の切断班、次の攻撃を開始! 切断が終わったら次の再生まで待って、再度同じ手順で移動してくれ! その移動中に電気魔法で削って、移動が終わったら再び切断でいくぞ!」

「おっしゃ、やってくぜ! ハスの葉の回避誘導を頼んだ!」

「付与魔法を受けて毒魔法が使える人は、今は代わりに回避誘導役をやってくれ! その方が無駄は少ないだろ!」

「なるほど、少し役割を変えるか! よしきた!」

「任せとけ! 溶解毒なら、これでもいけるか? 『ポイズンボール』!」

「おっ、避けてるじゃん! ならそれでいくか! 『ポイズンボール』!」

「付与魔法の回数を減らすのには、毒魔法持ちの人なら溶解毒のポイズンボールで! ハスの葉がしっかりと避けてくるから、それでいけるよ!」

「そこだね! ……ふぅ、中々タイミングを狙うのが難しいもんだよ」

「こっちも切断終わりっと!」


 状況に合わせて対応を変えて動いてくれるのは助かるなー。流石に電気魔法だけで毒魔法も一緒に持っていない人は普通に消費し切るしかなさそうだけど、そうでない人はしっかりと毒魔法を上手く活用して切断班と連携して動いてるね。


「あっという間に、ハスの葉が切り落とされていくのです!」

「みんな、手際がいいかな!」

「一気に削るとは言ってたけど、本当に一気に削れ出したね」

「……あっという間に……1割……削れた」

「次の再生で、4割を切るってとこか。ケイ、ここからが正念場だぞ。まだ特性『統率』の行動パターンが出てないしな」

「それは分かってるけど……どのタイミングで出てくるかが問題なんだよな」


 正直、このHPを半分切ったタイミングで出てくるかと思ったんだけど……次に変化が起きるタイミングになりそうな予感。多分、4割では変化がない気がするから、3割か、2割か、1割か、それらのどこかでまた大きな変化があるはず。

 逆にいえば、あと1回か2回程度の変化で終わるんじゃないか? それにしても……この巨大レンコンの行動値ってどうなってるんだろうね!? これだけの人数を相手にする必要があるから、プレイヤーよりも遥かに多く設定されてそうだよな!


 

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