第1302話 巨大レンコン、討伐戦 その3
巨大レンコンの回復の元になっていた湖の水は尽きて、HPの回復は鈍化した。でも、その代わりに空中へ浮くハスの葉が大量にあちこちから生えてきた状況になっている。
「アル、ちょっと確認。草花魔法って、Lv6までどんな内容?」
「……知らねぇのはいいけど、確認するならもう少し先にしとこうぜ?」
「正直、そこはすまんかった!」
属性に草花があっても、どれもが草花魔法を使ってくる訳じゃないから、地味に失念してたんだよ! まぁ落ち度といえば落ち度だから、反省部分だけども!
「まぁ基本的には樹木魔法と順番が違うだけだがな。Lv1が『リーフカッター』、Lv2が『ルートウィップ』、Lv3が『コイルルート』、Lv4が『スタブルート』、Lv5が『ルートスキューア』、Lv6が『リーフスライサー』だったはずだ」
「樹木魔法の固有『ルートウォール』、草花魔法の固有『ルートウィップ』の違いがあるのが大きな差異ですね。草花魔法の方が少し攻撃寄りになっているのと、割り当てられているLvの違いにより基礎ダメージが違う事にも要注意かと」
「……なるほど」
オリガミさんが補足の解説を入れてくれたけど、名前としては知っているものばかりだね。草花だとどうしても木よりは根が少なく、弱くもなるから、防御には不向きになるんだな。それに合わせた調整はされているって事か。
まぁこの巨大レンコンを見てると、そういう調整が必要なのか疑問になってくるけど! いや、このレンコンが特殊なだけだろ。
「ちなみにLv7以降は?」
「悪いが、草花魔法の方は知らん。前に確認した時には、その情報は無かったもんでな」
「……一応は知っていますけども、ここでの開示は流石に勘弁して下さい」
うーん、アルが知らないのは仕方ないし、オリガミさんは知っていても開示は出来ないのも仕方ないか。まとめを今のうちに確認すれば、最新情報である可能性は――
「ケイさん、それなら俺が持ってるから知ってるぜ! 草花魔法Lv7なら『ルートホールド』だ! 根で締め付けつつ、自由に動かせるって魔法になるぜ! 用途としては、拘束しつつ、敵を叩きつけたりって感じだ!」
「……そういう……感じの……魔法なんだ!」
「おっ、ダイクさんが知ってたか! ……大根というか、マンドレイクでそれって使えるのか?」
「正直、根菜系だととんでもなく使い勝手は悪い! その巨大レンコンが使うかどうかは分からないけど、なんか参考にしてくれ!」
「情報、サンキュー!」
微妙に使い勝手が悪そうな草花魔法だけど、性質としては根の操作で巻きついて叩きつけるような魔法だと考えればいいか。……樹木魔法と草花魔法って、魔法の区分ではあるけど、魔法って感じはしないよなー。
「……さっきの……攻撃は……威力的に……リーフカッター? ……あっ……また……葉っぱが……飛んできてる」
「おそらく葉っぱの枚数も全体で考えれば多めだったし、そうだろうな。リーフスライサーなら、もう少し枚数は減るはずだ」
「ようやく出てきた反撃が草花魔法Lv1かー。ボスにしてはショボいような……いや、耐久に寄り過ぎてるなら攻撃までは苛烈にはしないか?」
「まぁその辺もありそうだが、まだまだこれからって事だろうよ」
「……そりゃそうだ」
そもそも、さっきまでは草花魔法で葉っぱを飛ばす用意すらしていなかった状況って事だもんな。ここから攻略が続々と進んでいけば、もっと高Lvの草花魔法を使ってくる可能性もあるんだ。草花魔法を使ってくるのが判明しただけでも十分な成果だよな!
「ケイさん、現状ではあちこちに展開したハスの葉で攻撃してくる程度だが……さっき言ってたのを試すか?」
「あー、富岳さん、それはちょっと待ってくれ。もう少しで9割までは減りそうだし、やるならそこを過ぎてからで!」
「……まぁ1割ずつ、行動の変化パターンは確認した方がいいか」
「そういう事!」
出来れば5%刻みで確認はしたいけど、HPバーの表示に数値は出てないからそこまで細かくは分からないからなー。1割ごとに薄らとだけど区切りの表示はあるし、参考にするのはそこで!
ともかくHPが9割まで減ってしまうまでに、他の情報の確認! 特殊なボスだから、スキルの通常仕様はぶっちゃけ当てにならないしな!
「サヤ、ハーレさん、剥奪をしてきた回数はどうだった?」
「私が確認した限りでは剥奪を使ってくるカエルは12体だったかな」
「同じくなのさー! ただ、同時に存在してたのは6体までなのです! 6体消えたら、すぐに6体現れたのさー! その後は出てないよ!」
「あー、そういう制限ありか! ハーレさん、ナイス!」
「えっへん!」
同時に剥奪出来る上限は6回までで、最大数は12回。何がキッカケかは分からないけど、その回数がリセットされるタイミングは確実に存在するか。
問題は時間経過でリセットか、討伐の進行状況での行動パターンの変更に伴うリセットか……両方という可能性もあるよな。いや、でも時間経過でのリセットはそこまで極端に早くはないはず。少なくとも、この人数でも押し切れないほどの早さではない! あくまでも推測だけど、それを元に動くまで!
「剥奪してくるカエルの登場は同時に6体までで、最大12回分! HPを削っていく過程で再使用になると仮定して動くから、弱点属性の操作系スキルを使ってる人はそのつもりで! まずは9割を切った段階で要警戒!」
「了解! 海水の操作を同時に6つまで消してきて、最大12回分だよ! みんな、要注意で!」
「ねぇ、ケイさんの声は聞こえてるのに、シアンがこういう風に言い直す意味ってあるの?」
「セリア、その辺は全く無意味って訳でもないぞ?」
「え、ケンロー、そうなの?」
「伝わったという事をケイ殿へと返すと同時に、声が届いていない者達や聞きそびれた者達への再度の通達であるな! 大事な事だから、繰り返すのであるよ!」
「あぁ! なるほど、そういう事なんだ! やるね、シアン!」
「あっ、そんな意味があったんだ!?」
「……今誉めたの、取り消しでー!」
シアンさん達がなんか色々言ってるけど、まぁ伝わったのが分かるのは助かるからなー。とりあえず全体への指示出しはこれでいい。明確な指示というよりは、共通認識で動く為のものだけどね。
「HP1割は、そろそろ削れそうですね。これで何か変化があるかどうか、重要なところですか」
「ぶっちゃけ、ここで極端な変化はないと思うけどなー。流石に1割刻みで、毎回変わるってのは勘弁!」
「まぁそれは言えますね。変わるとすれば、7割、5割、3割、1割辺りの部分でしょうか」
「多分なー」
実際になってみないと分からないし、既に行動パターンの変化自体は起こっているからなー。でも、俺の見立てとしてはオリガミさんの意見と同じようなもの。
「……9割を……切ったけど……変化はない?」
「みたいだな。富岳さん、黒の刻印を刻めるかの確認を頼めるか?」
「黒の刻印の種類は『低下』でいいか? 今セットし直してるから、魔法で攻撃がメインならこれでいいよな」
「……え? あ、そういや富岳さんってどっちのカンガルーにも『剥奪』をセットしてたか!? 今、セットを切り替えてるとこ!?」
「刻印は状況に応じて切り替えるもんだし、そこは気にしなくていいぜ? 今は、刻印石もしっかりと手に入るようになってきてるしな」
「……あー、それじゃ『低下』が入るかの確認を任せた!」
「おう、任せとけ! 『跳躍』!」
頼む前にその辺をしっかりと確認しておくべきだったし、セットのし直しが必要ならサヤに頼んでもよかった部分なんだけど……既にやってたなら、取り消す方が失礼だ。だから、ここは富岳さんに任せよう!
「あっ! 富岳さんへ、レンコンの本体が叩きつけられてるのさー!?」
「……ルートウィップでの……攻撃? ……それとも……物理攻撃?」
「パッと見じゃ分からないな、これ! 海エリア勢、今は海水を離すかキャンセルで!」
「了解! みんな、足並みを揃える為に一度解除で!」
「「「「「「おう!」」」」」」
「もう土の中に逃げ込まなくなった感じ?」
「どうもそうっぽいであるな!」
ふー、まさかレンコン本体が攻撃に動くとは思わなかったから、海エリア勢への指示出しが後手に回ってしまったなー。とりあえずシアンさんの判断で一旦、海水は全て無くなったか。
まぁ今のレンコンの挙動で操作時間の減り方もバラバラになってるだろうから、仕切り直すには丁度良いタイミングかも。
それにしても生成した石を足場にして近付いていく富岳さんに対して、明確に本体が攻撃をし始めてくるとは想定外! ただ、根の操作での攻撃なのか、草花魔法の『ルートウィップ』なのか、それ以外の物理攻撃なのか、さっぱり分からん!
ともかく、近接攻撃をしてくる相手への行動パターンが変化したのが分かったのは大きい。……まさか、本体が直接攻撃を仕掛けてくるとは思わなかったけど!
「ケイさん、これの確認には俺は適任じゃねぇか? 『黒の刻印:剥奪』! ほう? 根の操作ではないみたいだな」
「あー、確かに。勢いは変わらないって事は、ルートウィップっぽいな! 富岳さん、ナイス!」
「魔力集中を使っている気配もないので、単純に草花魔法と判断して良さそうですね」
ふむふむ、確かに魔力集中や自己強化を使ってる気配はないもんな。物理型の木には固有の強化があったはずだけど、それを使っている気配の特に無し。……この感じだと分身体を使わない場合は、魔法がメインの攻撃手段なのかも。
「……物理攻撃の威力はそう高くなさそうだが、その分だけ魔法で補ってる感じか? まぁいい、とりあえずこれも受けとけ! 『黒の刻印:低下』!」
巨大な鞭のように振り回される攻撃を躱した後、レンコン本体に富岳さんが黒の刻印を刻みつけていく。ふむふむ、折れた杖と割れた盾のマークが表示されたから、しっかりと『低下』の効果は出てるっぽいね。
よし、これで魔法攻撃へと抵抗は大幅に低下した状況になった! 今こそ、絶好の攻撃チャンス! 海エリアの人達へ……いや、ここは1発だけだし、こうするか。
海水への適応進化の発生は警戒してるんだし、適度なところで区切って別の攻撃を叩き込むのもありだろ。
「ヨッシさん、盛大に凶悪な毒魔法を叩きつけてやれ!」
「了解! 溶解毒を2重でいくね! 『白の刻印:増幅』『トキシシティ・ブースト』『ポイズンインパクト』!」
「おぉ!? 今ので2%くらいは削れたのさー!」
「……凄い……威力!」
「でも、流石に硬いかな?」
「2人の連携で2%も削れれば十分だろ」
「だなー。普通の雑魚とは違って、特殊なエリアボスな訳だし! ナイス、ヨッシさん!」
「どういたしましてだね」
時間をかけて大人数で囲んだ海水で1割削ったのは、耐久性を考えれば十分なほどの成果だな。溶解毒での継続ダメージも入っているし、ダメージはまだまだ増えていく状況だしさ。
「富岳さん、とりあえず戻ってきてくれ! 海エリア勢、富岳さんが離れたら海水で覆うのを再開で!」
「おうよ! 『跳躍』!」
「みんな、再発動していくよ! 『シーウォータークリエイト』『海水の操作』!」
「「「「「「「「「「『シーウォータークリエイト』『海水の操作』!」」」」」」」」」」
大勢の海エリア勢の人達が、富岳さんが戦場から引き上げてきたのを確認してからシアンさんの号令に合わせて海水を再び生成して、巨大レンコンを包み込んでいく。もうちょっとで8割まで削れるけど、海水で包むだけじゃ結構削るのは厳しいかもね。
んー、そろそろダメージの与え方を別の手段に切り替えた方がいいのか? 海水への適応進化は発生するかどうかは分からないけど、それでもどうにかいけるだろ、この状況!
「戻ったぜ。……まったく、ハスの葉の上に乗って刻印を刻む気が、本体に刻む事になるとはな」
「お疲れ、富岳さん。とりあえず接近した時の行動パターンの変化が分かったのは大きいぞ!」
「えぇ、そこは確かに大きな部分ですね。ヨッシさんの白の刻印で強化した毒魔法と、黒の刻印の低下での連携攻撃は非常に有効な手段かと」
「だなー。桜花さん、黒の刻印をここから盛大に使っていくけど、そっちの準備はどうなってる?」
「オオカミ組が抑えてくれたおかげで、雷属性と毒持ち、それと黒の刻印班は既に全員いつでもいける状況だぜ!」
「よし! それじゃHPが8割を切って行動パターン変化を見てから、そっちの戦力も動かしていくから、そう通達をよろしく! 黒の刻印は『低下』をメインでいく!」
「おう、了解だ!」
黒の刻印を刻む時には海エリア勢には海水を引き上げてもらって、そこに毒魔法を叩き込むのを主体でいこう。場合によっては、海水魔法を叩きつけてもらうのでもありか!
「あ、そういや海水魔法の上位に当たる『応用魔法スキル』ってどういうやつになるんだ?」
「……それ! ……是非……知りたい! ……まとめには……まだ情報が……無かった!」
「ケイ、今はまだ地味に情報がないぞ。『対応した属性』の所持の部分が満たせそうになくて、他に何か別の条件があるんじゃないかって話だが……」
「あー、どういう魔法なのか判明してないのか……」
どの『応用魔法スキル』も、進化ポイントでの取得は無理っぽいもんな。根本的な取得条件が不明なのは、色々とキッツいか。……Lv8の海水魔法からなら取得は狙えそうな気はするけど、そのハードルは決して低くはないもんな。
「……あの、風音さん? 私を見つめても、情報は出てきませんよ? その情報は、私も本当に知りませんし……」
「……残念」
なんかオリガミさんから情報を教えてもらえないかと、風音さんが期待してたっぽい!? うーん、インクアイリーであっても必ずなんでも知ってる訳じゃないんだな。
まぁいいや。未知のスキルに頼らずとも、今ある手札でどんどん攻めて、巨大レンコンを仕留めていこう! あと少しで8割ってとこだけど、そこで変化があるかどうかだな。
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