第1301話 巨大レンコン、討伐戦 その2


 海エリア勢の連携で、大量の海水を生成して、巨大レンコンを包み込むだけの量は用意出来た。思った以上の大人数での発動になったから、少し過剰気味な気もするけど、まぁ多くて困る事もないから問題なし!

 おー、ちゃんと海水に包まれ出したら、巨大レンコンのHPが目に見えて減り出した。でも、すぐにHPが回復しているから、水分吸収を必死で使ってるっぽいな。


「おし、効いてる!」

「わっはっは! どんどん海水を浴びせろ!」

「巨大レンコンの海水漬けだー!」

「くぅ! 海流の操作で、泥を洗い流してしまいたい!」

「海流の操作で足並みを揃えるのは難しいから、それは無理だってば!」

「……この大きさのレンコン、大味なのかな?」

「いやいや、黒の暴走種なんだからそもそも食べられんだろ!」

「レンコン、薄切りにして塩味で焼くのでも十分美味しいよね」


 エリアボス戦の最中の会話ではないような気がするけど、まぁその辺はハーレさんも似たような部分があるからスルーしとこう! 別に士気が落ちてる訳じゃないし、下手なツッコミを入れて藪蛇にはならないようにした方がいい。


 とにかくまずは最初の攻撃は成功! 異形のサツキの攻撃でのダメージも少なからず明確に影響が出始めたし、この感じで巨大レンコンを攻撃していこう。でも、この辺は通達しとかないとね。


「一応、今ので確認出来た剥奪は連続で6回まで! 再使用の周期は分からないから、その辺は要注意! もし新たに剥奪されたら、そのフォローは近くにいる人でやってくれ!」

「ケイさん、了解! みんな、カエルに海水の操作を消されたら、近くの人で追加生成が出来る人で補っていくよ!」

「了解であるよ、シアン殿!」

「シアン、再発動はどうする?」

「行動値がある間は上からどんどん追加でー! 出来るだけ生成量には余裕を持たせた状態でやるよ! ケンロー、これでいい?」

「あぁ、そういう形でやるなら了解だ」

「わー!? シアンがまともな内容を言ってるよ!?」

「セリア、その言い方は酷くない!?」


 なんだかこれぞ海エリアって感じの雰囲気だけど、まぁ変に緊張しまくるよりもこの方がいい。……ふぅ、そういう雰囲気のおかげで、また少し緊張しかけてたけど、無駄な力が抜けた気がする。


「ケイ、4足歩行の何かの分身体も出なくなってねぇか?」

「そういや姿が見えないな。……回復だけで精一杯な状況になった?」

「……そうだと……いいけど……油断は大敵」

「そりゃそうだ。サヤ、ハーレさん、分身体の出現に警戒しといてくれ」

「了解です!」

「任せてかな!」


 あの防御に使っていた4足歩行の何かの分身体自体はそんなに脅威ではないけど、別パターンの分身体が出てくる事も考えられるしね。まぁ単純に、水分吸収以外には何も出来ない状況の可能性も十分ある。

 それに、今はひたすら巨大レンコンは回復に専念している状況だけど、この状況もどこかのタイミングで終わるのは確実。その時に大人しく海水で弱らせ続けられればそれでいいけど、そうでなかった場合は戦闘方法を変える必要があるからね。


「このまま海水で包み続けてくれ! 何か変化が出るまで、現状維持!」

「ケイさん、了解! さーて、みんな、言われた通りにやっていくよー!」

「「「「「「「「「「おう!」」」」」」」」」」


 さて、シアンさんの号令に応えるように気合の入った声が重なっているし、しばらくはこのまま経過観察だな。今のうちに、他の事を確認しとこ。


「桜花さん、毒持ちと電気持ちの方はまだかかりそう?」

「いや、もう編成は完了して湖の畔へ向かっている状態だぜ。異形のサツキが破壊した経路を通って、そっちに進んでいるぞ」

「おっ、そういう状況か!」


 よし、いつどのタイミングでどういう変化が起きるかが分からないけど、この感じならすぐにでも大丈夫そうだな。


「おー! その人達が来てるのが見えたのさー!」

「思ったより、来るのが早かっ――」

「桜花、そいつらは少し下がらせろ。青の群集に動きありだ。蒼弦、対処に当たれ」

「了解だ! 行くぜ、オオカミ組!」

「あー、通達は了解だ!」

「わわっ!? 戦闘が始まったのさー!?」

「ちょ、そこで妨害を仕掛けてきたか!?」


 ベスタの方で動きは把握してたみたいだけど、青の群集がここで妨害をしてくるとは! ちっ、このタイミングで妨害を始めてきたって事は、カズキの状況が思った以上に悪いのか?


「報告、報告!」

「ダイク、今度は何事?」

「カズキがそっちに向かって大爆走中! 安全圏に送り返されてた人達が偵察に出てたけど、そっちからの目撃情報!」

「およ!? そっちの続報は大事だね! 具体的にどの辺?」

「今はまだ遠くて、中央付近で西寄り! でも、凄い勢いだからそこまで時間はかからないって見込み!」

「ダイクさん、情報サンキュー!」


 オリガミさんからの情報では、黒の統率種の誰かがカズキを乗っ取ったって話だったけど……そこから明確な動きが判明か。あー、これはどういう狙いで動いている? まだ、黒の統率種が占拠を狙っている可能性はあるのか? よし、聞ける人がいるんだし、この辺は確認を取っておこう。


「ベスタさんが今は手が離せないから、ケイさん、代わりに行動指示をお願い!」

「ほいよっと! オリガミさん、カズキの動きはどういう風に読む?」

「……どこの黒の暴走種が乗っ取ったかが分からないので、なんとも言えないですね。ですが、少なくとも赤の群集の傭兵の方ではなさそうですか」

「まぁ赤の群集が近付けるメリットもないもんな。それがフェイクって可能性もあるけど……インクアイリー絡みでの動きの可能性は?」

「……黒の統率種での占拠をやりたいという方々は結構いましたし、悪名を持っている方々も取り込まれている状況なので、まだ狙ってくる可能性はあるかと。ただ、統率された動きは取れないと思いますよ。赤の群集のフェイクの可能性も確かに捨てきれませんし、今はまだ目を離さず情報収集に徹した方がいいかと」

「……まぁそんなとこか。ダイクさん、引き続き動向のチェックを頼む! 場合によっては青の群集が黒の統率種を倒してカズキを取り返すだろうから、その動きにも注意しといてくれ! あと、もし途中で止まる様子があればそれも要注意で!」

「あ、そりゃそうか! その辺も了解だ!」


 よし、とりあえずはこれでいい。青の群集がエリアボスの討伐の妨害に動き出したのは、カズキを取り戻すまでの時間が欲しいからの可能性は高い。

 赤の群集が赤の群集の仕業だと思わせない為のフェイクの可能性も残っているし、まだまだ油断は出来ないぞ!


「ケイさん、ベスタさん! 赤の群集の一部が青の群集への攻撃に動き出してるぜ! 今の時点でエリアボスの討伐を妨害されるのは、赤の群集としては都合が悪いみたいだ!」

「なら、上手く赤の群集を盾にしつつ立ち回れ、蒼弦! 下手に赤の群集を敵に回す必要はない」

「了解だ、リーダー! つっても、エリアボスへの妨害を止めるだけで、俺らの方を手伝ってくれそうではないけどな!」

「今は共闘でもなんでもないからなー。まぁ赤の群集が邪魔してくる様子がないだけでも十分!」

「そりゃそうだ! 意地でもそっちには通さねぇから、エリアボスは頼んだぜ!」

「ほいよっと!」


 青の群集からの妨害はしっかりと止められている状況みたいだし、俺らは巨大レンコンの方に集中! HPが減って、その回復に周囲の水分吸収しての繰り返しだけど、まだそれは続いてるっぽいね。

 剥奪は再びされる様子は無さそう? 一定時間がどの程度の周期か分からないし……って、そう考えたら、さっきの1連の攻撃より前の回数も含まれてる可能性もある?


「もしかして、剥奪は結構周期が長い代わりに連続で10回までか? 最初に試した時から、回数が上限に達してなかった可能性もあるよな?」

「あ、それは確かにありそうかな! さっきは上限まで試せてないし……」

「……あはは、そういえばそうかも?」

「すみません、それは私の件で中断させてしまったからですね……」

「およ!? ケイさん、そこはなんかごめん!」

「あー、大丈夫、大丈夫。どっちにしても、次までの間隔は確認しながらやっていくしかないからさ」


 別にレナさんやオリガミさんの事を責めたくて言った訳じゃないし、可能性として整理する為に言ったんだしね。今の条件を否定する要素はなく、むしろその可能性が高いくらいか。


「ケイ、その場合はどうすんだ?」

「どうもこうも、再び剥奪された後も今みたいに覆ってもらうだけで、方針は特に変化無し。巨大レンコンの動きが変わらない限り、この攻め方を変える理由もないだろ」

「ま、そりゃそうだ」

「……海水は……効いている……もんね」


 海水責めが効果を発揮してないのなら変える必要はあるけども、着実にHPは削れているんだからなー。しかも暴れる様子もなく、ただひたすらにHPの回復に専念しているんだから、止める理由はどこにもない。


「それにしても……大人しくやられ過ぎてるのは気になるなー。みんな、急に動きが変わる可能性もありそうだから、その辺は要注意で!」

「ケイさん、了解! みんな、聞いての通りだよ!」

「聞こえてるっての、シアン! ……まぁ、確かにろくに反撃もなく、ただ回復だけってのも不気味ではあるか」

「ケンローの意見に賛成ー! 絶対、この後に何かあるよね!」

「ケイ殿! どのような可能性が考えられるであるか!?」

「あー、はっきりとは断定は出来ないけど、特性に『統率』があるから『強化統率』で統率個体を作ってくる可能性はある! ただ、巨大レンコンそのものの攻撃方法がいまいち不明だから、どういう行動パターンかはなんとも言えない! 先に何か攻撃してくるパターンの方があって、今のはHPが減ってからの可能性はある!」

「そういえばそういう話もあったのであるな!?」

「まずはHPをまともに減らすとこからだね! みんな、頑張ってくよー!」

「ま、そこはセリアの言う通りだな! このままどんどん削るぜ、野郎ども!」

「「「「「「おう!」」」」」」

「ケンロー、野郎以外もいるんですけどー?」

「そこで揚げ足取りをしなくてもいいだろうが!?」

「セリア殿、ケンロー殿、脱線は良くないであるよ!」


 相変わらずの海エリアですなー。まぁとりあえずすぐ思いつく範囲での可能性は伝えたけど、実際に変化が出てくるまではなんとも言えないんだよね。


「ケイさん、地上の乾燥部隊から報告! ほぼ、湖の水は使い切ったみたい! 異形のミズキの周辺の湖の底らへんでも、泥濘は無くなったよ!」

「報告サンキュー、ラックさん! 全体に通達! 水分吸収に使える水はほぼ枯渇! ここで変化が出る可能性があるから、要警戒で!」


 今回のは特に返事もなく、緊迫感が広がっている状況か。まぁ明確に変化が起こる可能性があるタイミングだし、気を引き締める状態にもなるよな。


「はっ!? ケイさん、レンコン製のカエルが大量発生なのです!」

「どんどん剥奪されているかな!?」

「サヤ、ハーレさん、数をしっかり数えておいてくれ! 海エリア勢、海水を絶やすな!」

「消された海水の近くの人、一気に追加生成をしていって!」

「「「「「「「「「「おう!」」」」」」」」」」


 シアンさんの号令で、即座に海水の追加生成が行われて、剥奪されて空白になった場所は埋まっていっている。……何か変化があるとは思ったけど、剥奪の回数リセットだったのか? いや、そうでもないっぽいな。


「ハスの葉が生え出してくるんかい!」

「しかも、あちこちからみたいだな」

「……これは……どういう……動き?」

「ハスの葉が増えた分だけ、逆にダメージ量が増えてない?」


 巨大レンコンが地中に広げている根から、レンコンの一部を出して、そこからハスの葉が空中に浮くように展開していってるっぽい。 その結果、海水の操作の中にハスの葉が触れてHPの減りが加速してるんだけど……これは自滅? 全部が全部海水の中じゃなくて、海水から出ているのもあるけど。

 まぁ俺らが取ってる攻略方法がこれだから状況的にそういう偶然が重なっただけで、別に問題はないのか。むしろ、あれはレンコンの本体へと繋がっているはずだし、本体みたいにダメージが入る状況はありかもな。


「富岳さん、ちょっと無茶を頼んでいい?」

「あのハスの葉に、黒の刻印が刻めるかの確認か?」

「正解! 少なからずハスの葉からのダメージが本体に入ってるっぽいし、本体以外にも攻撃出来るかを確認したいからさ」

「そりゃいいが……その前に、防御だな! 『アースウォール』!」

「わわっ!? ハスの葉を飛ばしてくるのです!?」

「その方が良さそうだね! 『アイスウォール』!」


 大半は海水の操作の中から放たれているから、威力は途中で削がれて外に出てくる頃には大したダメージではない。でも、海水の外にある葉を飛ばしてくるのは無視出来ない状況だな。

 草花魔法ってよく知らないんだけど、これは樹木魔法Lv1と同じ『リーフカッター』か? いや、Lv4の『リーフスライサー』の可能性もあるのか。あー、いや、草花魔法のLv4って『ルートウィップ』だっけ? いかん、この辺の知識が微妙に足りてない! でも、その辺はとりあえず後!


「海エリア勢、海水の操作の時間の削れ方は大丈夫か!?」

「俺は大丈夫! みんなは!?」

「葉っぱが出てきた部分の操作は、葉っぱで攻撃されると削れ方が早め! でも、威力は低めだし、1枚だけだから支障はない範囲!」

「こっちも似たようなもんだ! すぐに再発動を強いられる程の威力じゃねぇ!」

「だそうです!」

「了解! それじゃ、生えてきたハスの葉も全部海水で包み込むようにしてくれ! その分だけ、ダメージが多く入ってるっぽいしな!」

「うん、分かった! 空中に出てる葉の近くの人、追加生成で!」

「「「「「おう!」」」」」


 よし、これでちょっとした変化への対応は完了。……勢いよくHPが減り出したけど、それでもまだ1割も削れてはいないか。回復は鈍化したけど、明確な変化が出たし、まだまだあっさりとは倒されてくれそうにないな。

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