第1300話 巨大レンコン、討伐戦 その1
オリガミさんがインクアイリーの一員だったり、そもそも今回の一件で出てきているインクアイリーはほんの一部に過ぎなかったり、色々と衝撃な事実は判明したけど、それは今は心の中に留めておこう。
オリガミさんの言葉の全てをそのまま鵜呑みにする訳にもいかないだろうけど、一部の行動を全ての人に当てはめて欲しくないという動機は分かる。その辺って、羅刹や北斗さんが無所属に対してされるのを嫌がってた事でもあるしね。
「オリガミさん、これだけは確認。オリガミさんを狙ってくる連中はどれくらいいて、その行動予測はどんな感じ?」
「人数はそう多くないはずですし、群集との敵対を望んではいないはずなので青の群集での足並みを乱すような動き方はしないと思います。なので、私を狙ったものであっても、あくまであの動きは青の群集としての狙いから外れてはいないかと……」
「なるほどね。オリガミさん狙いではあっても、青の群集としての動きではある訳か。それなら、そっちはベスタに任せる案件って事でいい?」
「あぁ、構わん。オリガミ、お前は風雷コンビと合わせて3人で遊撃として動くか? 相手が相手だから、風雷コンビへの指揮系統を確立しておきたいんだが」
ベスタ、サラッととんでもない事を言うね!? 風雷コンビを指揮しろって、相当な無茶振りじゃね!? いや、でも龍3人の遊撃部隊で、指揮ありだと上手く噛み合えば相当な戦力ではあるのか。
問題は風雷コンビが言う事を聞くかどうかだけど、まぁ完全に無視する訳でもないし、方向性を定めさえすれば問題はないのかも。……最悪、オリガミさんが裏切ろうともこれなら損失は少ないという判断もあるかもね。
「……相当な無茶振りをしてきますね。まぁその件自体は引き受けますが、PTはどのように構成しましょうか? この連結PTに入ったままでは枠が足りずに厳しいかと思いますが……」
「そ、それなら、俺が抜けます! ……オリガミさん、任せるからな!」
「……マルイさん。えぇ、お任せ下さい!」
「役割としては、まぁそれが無難か。富岳、ダイクを蒼弦のPTの方へ移すから、風雷コンビを再びPTに入れてくれ」
「了解だ、ベスタさん! 風雷コンビ、戻ってこい!」
「おぉ、話は終わったか! では、戻るか! なぁ、疾風の!」
「準備が終わった頃合いに、話も無事に済んだみたいだな! なぁ、迅雷の!」
なるほど、これで蒼弦さんのPTにいたマルイさんが抜けて、そっちにダイクさんが移って、2人分の空きを作って風雷コンビが再び連結PTの中に戻ってきた状態か。自分のPTまでしか脱退と加入のアナウンスは出ないけど、まぁ連携PTメンバーの一覧を見ればすぐに分かるよな。
「風雷コンビ、お前らはそこのオリガミの指揮下に入れ」
「「了解した!」」
「……随分とあっさり了承するのですね。ベスタさん、基本方針はどのように?」
「エリアボスのトドメを狙ってくる奴の撃破、もしくは阻止だな。俺らは下からそれを狙うが、お前らは別働隊だ」
「なるほど、それは了解しました。やり方は私の自由にしても?」
「あぁ、そこは任せる。ただし、どこにも悟られるなよ」
「……それは正直、無理なのでは? 赤の群集も青の群集も、妨害されるのを見越した上で、それを突破する方法を狙ってくるのは承知でしょうし……」
「分かっているのならそれでいい。ともかく任せたぞ」
「……今のはテストですか。まぁ今まで接点らしい接点もないので、その辺は仕方ないですね」
「「よろしく頼むぞ、オリガミさん!」」
「えぇ、こちらこそよろしくお願いしますね、迅雷さん、疾風さん」
ベスタ、地味にオリガミさんの分析能力を試してた!? 無理なものは無理とちゃんと言えるか、その辺を確認してたよな! まぁぶっちゃけ、今のでそう答えられない人には任せられない気はするけどさ。
とりあえずオリガミさんは風雷コンビを従えて、ベスタ達の戦力として考えればいいっぽいね。……でも、これはしばらくは――
「これはケイさんの指揮下にいて、エリアボス戦をしていると偽装しておいた方が良さそうですね。それは構いませんか、ケイさん?」
「問題はないけど、あくまで優先はトドメの妨害で頼むぞ!」
「えぇ、それは承知しています」
俺から言おうと思った事を先に言われたけど、まぁここは頼りにさせてもらおうか! レナさんが言うには指揮能力は高いみたいだし、エリアボスの終盤ではどんな乱戦になるか分からないしね!
さて、それじゃ戦力の集まり具合を確認して、問題がなさそうなら巨大レンコンの本格的な討伐を始めていこうか!
「海エリア勢は……あー、見たらすぐに分かるか」
「ケイさん、海エリア勢の追加要員は辿り着いてるぜ!」
「やっほー、ケイさん! 俺ら、海エリアがまずは主戦力なんだよね!」
「海水で浸からせるんだってね!」
「皆の者、全力でやるのであるよ!」
「「「「「「おう!」」」」」」
シアンさんとセリアさんのクジラを筆頭に、刹那さんや他の海エリア勢の人達が凄い集まってる! ……空を埋め尽くさんばかりに、大小様々な魚や海の種族が揃ってるな。ここまで集まってきてるとは、流石にびっくり。
下の方を警戒しながら話をしていたから、上空の方がこうまで凄い事になってるのには気付かなかったな。来られる位置の人は、大量にこっちに回ってきたか? 意外と陸エリアの人は、今回は一緒じゃないんだな。
「空が海になってるのです!?」
「あはは、確かにパッと見た感じではそう思う光景だね」
「これは壮観かな!」
「こうも集まると、逆に他の群集の海エリア勢がどこで何をしているのかが気になってくるな……」
「あー、それは確かに?」
「……なるように……なるだけ」
「まぁ、それもそうか」
「だなー」
アルが気になるのは分かるし、俺も気になるけど、そこら辺はベスタ達の担当の部分。事前に動きを読み切って、エリアボス戦をしながらそれへの対応は不可能だろうから、俺らはその辺は考慮しない!
おそらく陸エリアの人が海エリアの人達と一緒にいる様子がないのは、その辺が理由な気がする。俺とは別にベスタも指示は出してるだろうしね。俺の指示に合わせて、ベスタが戦力調整してくれてる気もするなー。
さて、ある程度の攻撃戦力は整ったけど……下を見てみれば、かなり切り倒した木での足場が出来上がってるね。まだ泥濘は残ってるけど、水はほぼ無くなってる状況か。
上から見ただけで大体は分かるけど、実際にどの程度のものかは作業をしてる人達に聞こう。もしそれで問題ないようなら、討伐を開始だな!
「ラックさん、蒼弦さん、湖の準備の方はどうだ? 討伐を初めても大丈夫そうか?」
「足場の用意と水抜きは、大体完了だ!」
「それなりに水分吸収も進めたけど、完全には乾き切るのは時間的にもうちょっとかかりそう! でも、異形のサツキがレンコンのHPを削ってその回復をする分だけ確実に水分が抜けていってるから、攻撃を始めたらもっとガンガン減っていくと思うよ! だから、最初は多少の回復前提でよければ、もう戦闘は始められるはず!」
「あー、そういう感じか。大体の状況は把握っと。下準備、ありがとな!」
「どういたしまして!」
「これくらい、どうって事ねぇよ!」
よし、まだ泥濘はあるけど十分に戦闘は始められる状況だな。本格的に巨大レンコンの討伐を始めたら、青の群集がどう出てくるかが問題だけど……。
「蒼弦、オオカミ組はモンスターズ・サバイバルと合流して、青の群集の警戒に回れ。ダイクの方で他にも対処に回る戦力を集めてもらっているから、妨害はさせるなよ?」
「了解だ、ベスタさん! ダイクさん、今回はそういう役回りか」
「なんか安全圏に送り返された後で、レナさんに押し付けられてな!? まぁ他の人達にサポートしてもらいながら何とかやってるから、青の群集からの防衛は頼むぜ、蒼弦さん!」
「おう、オオカミ組に任せておけ!」
なるほど、ダイクさんがこの連結PTにいるのはレナさんが強引に引っ張り回してそのままって訳でもなかったんだな。仕留められて安全圏にいても、やれる事はまだまだあるか!
それに分かりやすくベスタの方の動きも伝えてくれたね。オオカミ組はもう俺らの方に呼べる戦力ではなくなったから、そこは要注意で! その辺をしっかりと伝える為の指示だな、今の!
「ケイさん、ご要望の毒持ちと電気魔法持ちの戦力の方も揃いつつあるぜ。もうちょっと編成に時間が必要だろうけど、役目は戦闘開始すぐじゃねぇよな?」
「万が一の状況に備えての予備戦力だから、開始してすぐに必要な訳じゃないからな。でも、出来るだけ早めに準備を終えるように通達はよろしく、桜花さん!」
「おう、そう伝えとくぜ!」
よし、とりあえずこれで必要な戦力は……あ、そういや刻印系スキルの割り振りはまだ出来てなかった。うーん、そもそも近寄れるようにしておかないと意味がないから、そこは戦況を見ながらか。いや、一応先に候補は伝えておこう!
「桜花さん、その戦力集めが終わったら、刻印系スキルの方の人集めも頼む! まだ巨大レンコンに近付けるようになるか分からないけど、そうなった時に黒の刻印の『脆弱』と『低下』をどっちでもいけるように!」
「それはどういうパターンになるとしても必要だと思ったから、並行してやってるぜ。一応『消去』の方も用意してるが、いいよな?」
「あ、助かる! 使ってくる白の刻印次第では『消去』が必要だろうし、問題なし!」
「おし、それじゃそのまま進めとくぜ!」
「頼んだ!」
いやー、桜花さんの方で刻印系スキルの人員も用意してくれていたのは助かる! ……まぁオリガミさんの件で、俺らがちょっと脱線し過ぎてたのもあるからな。
さて、次はエリアボス戦中のミズキの守りだけど……ここは元々、この場にいた人達で回すか。俺らのPTと、ソウさん達の海エリア勢と、その背に乗ってる陸エリア勢で結構な人数がいるし――
「ケイさん、俺らは巨大レンコンへの攻撃の参加は控えておこうって話になってるが、問題ねぇよな? これだけの人数がいるんだし、ミズキの防衛も疎かには出来ないだろ?」
「あー、そうしようとしてたとこ。よし、ミズキの第一防衛線はソウさん達に任せる! よろしくな!」
「おう、任せとけ!」
「富岳さん、オリガミさん、風雷コンビもミズキの防衛に加わってくれ。ただ、オリガミさん達の方はベスタからの指示を優先で!」
「「それは了解だ!」」
「ひとまずはミズキの防衛ですね。了解しました」
「エリアボスだけに集中って訳にもいかねぇしな。必要な時は、好きに指示を出してくれ」
「もちろん、そのつもり!」
富岳さんが相当強いのは分かってるしね。とはいえ、元々俺らとここに来た海エリアの人達の背の上に乗ってた人達って、途中で結構な人達が足止めに降りちゃってるから、初めよりは人数が少ないんだよな。
まぁ他の群集の動きに対してはベスタの方で対処に動くんだから、俺らとしては撃破よりも防衛に専念すればいい。
「もしミズキ狙いの攻勢が激しくなり過ぎたら、一旦逃げるからそのつもりで! ジンベエさん、その場合のミズキの固定は――」
「そのまま継続してやるから心配すんな! 浄化をやってる周りの連中もまとめて、運んでやる!」
「それで頼んだ! フーリエさん達は、何があってもミズキを正常な状態に戻すまではその事だけに集中しててくれ! 」
「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」
よし、これでミズキの防衛体制もいいだろ。実際にどう動くかは臨機応変にするしかないから、決めておくのはこの程度でいい。
ミズキを狙ってくるタイミングは、まぁエリアボスのトドメと同時くらいか? いや、ある程度弱らせた時点でミズキの排除とエリアボスを横取りしてくる可能性もあるから、どのタイミングであっても油断は無しだな。
「おし、それじゃ巨大レンコンの討伐を始めるぞ! 海エリア勢、海水の操作は剥奪される可能性が高いけど、それを押し切って進める! 巨大レンコンの周りを、海水で満たしてくれ! 出来れば、今の段階では異形のサツキは避けるつもりで!」
「了解! みんな、いくよー! 『シーウォータークリエイト』『海水の操作』!」
「シアンに続くよ、みんな! 『シーウォータークリエイト』『海水の操作』!」
「消し切れない飽和攻撃、開始なのであるよ! 【大地に根付く者に、大いなる海の抱擁を】!」
「刹那さんは相変わらずのオリジナルの詠唱か。次々いくぞ! 『シーウォータークリエイト』『海水の操作』! うおっ!? カエルに消された!」
「消されるのは気にせず、次々やるぜ! 『シーウォータークリエイト』『海水の操作』!」
「とか言いながら、消されてるよな! 『シーウォータークリエイト』『海水の操作』!」
「あえて、ここは消費させていくのもアリだろ! 『シーウォータークリエイト』『海水の操作』!」
「よし、それ乗った! 『シーウォータークリエイト』『海水の操作』!」
「カエルの出現が止まったぞ! 一気に畳みかけろ! 『シーウォータークリエイト』『海水の操作』!」
「「「「「「『シーウォータークリエイト』『海水の操作』!」」」」」」
続々と海水が生成されて、それらの海水が積み重なるようにしながら巨大レンコンを包み込んでいく。剥奪をしに出てきたレンコン製のカエルに、わざとぶつけていく人も何人かいたくらいだな。
流石に大人数でやると、凄い海水の操作の量だなー。でも、海エリア勢の連携精度は悪くなくて、お互いに邪魔にならないようにはなっている感じか。ただ、少し巨大レンコンを包むには時間がかかるっぽい。
「サヤ、ハーレさん、今のは何発、黒の刻印で剥奪されたかは分かる?」
「えっと、多分6発までかな?」
「6体のカエルは確認したから、多分それで合ってると思います!」
「なるほど、6発か。さっき試した時から少し間が空いたし、連続で剥奪出来るのは6回までと考えて良さそうだな」
「……6回も……剥奪は……ズルい」
「まぁ大人数で倒すのが前提のボスだからなー。この数の暴力を見れば、ある程度は仕方ないだろ」
「……それは……確かに?」
消された数を圧倒的に上回る攻撃にはなってるしね。問題は再びそれが使えるようになる頻度がどの程度かだけど……まぁそれは様子を見ながらだな。
「……あはは、今の中でよくそれだけ確認出来たね、2人とも」
「どれが消された操作なのか……そもそも、どれが誰の操作のか分からんしな」
「まぁそれでも上手くいってるし、問題なし!」
足並みを揃える為に操作自体は遅いけども、それでも巨大レンコンを包み込む大量の海水は用意出来た。さて、ここからHPをどんどん削っていきますか!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます