第1295話 行動の誘導
湖の底の泥の中に引っ込んだエリアボスの巨大レンコンと、それに襲いかかろうとしつつも泥濘に足……というか、根を取られて進めなくなっている異形のサツキ。とりあえず再び巨大レンコンを引っ張り出さないと、先に進みそうにない状況だし、そこからなんとかしていこう。
まず足場の確保……とは言っても、スキルで臨時的な足場を生成するのは割と危険だな。闇雲にツタを振り回しまくってるし、あくまでスキルでどうにかするのは一時凌ぎにしておきますか。
その上で考えて……よし、細かい割り振りは各自に任せるけど、大雑把な割り振りはこれでいこう。今の連結PTで伝えられる範囲の人達へと作戦の通達を開始!
「シンさん、荒野エリアの人達はもう到着してるんだったよな? ちょっと任せたい事がある!」
「おっ、俺らの出番か! いいぜ、何をやればいい?」
「岩の操作で、異形のサツキが巨大レンコンへ近付く為の経路を作ってもらえないか? 荒野はその辺を持ってる人は多いよな?」
「おう、そうだぜ! よし、俺らが異形のサツキの進む道を作ればいい訳か!」
「そうなる! ただ、振り回してるツタに当たらないように要注意で! あと、根が埋まってるのを持ち上げて脱出させるのもよろしく!」
「おう、任せとけ! おし、それじゃ防御と足場作りの2つに分けてやっていくか」
「ケイさん、そういう事なら灰のサファリ同盟からも人は出せるよ? もう灰のサファリ同盟の本部所属の人達がそっちにそろそろ到着するしね」
「あー、ラックさん達、灰のサファリ同盟には別の事を頼みたいんだよ。だから、ここは荒野エリアの人達に任せる」
「あ、そうなんだ?」
あくまでも、これはスキルを使っての応急処置。別に底無し沼ではなさそうだから、これからの戦況を安定させる為の手を打っていこう。その為にも、こっちの役割は灰のサファリ同盟が慣れてるはず。
「それで、何をすればいいの?」
「ラックさん達、灰のサファリ同盟は周囲の木々を斬り倒しまくって、沈まないように放り投げていってくれない?」
「あ、そういうのは灰のサファリ同盟の方が得意分野! えーと、それで範囲は?」
「とりあえずは異形のサツキの周辺だな! 可能なら、湖畔からレンコンの目の前まで続くように頼む! 荒野エリアの人達のはスキルでの応急処置で、こっちが本命の足場作りだな。あ、出来自体は大雑把でいいぞ」
「まぁ木を切り倒して、放り込むまでで十分だもんね。うん、その方向で調整して、戦場は整えていくよ!」
「細かい調整はラックさんに任せる! 蒼弦さん、オオカミ組は灰のサファリ同盟のサポートと護衛に回ってくれ! 連携し慣れてるだろうし、もうそろそろそっちも到着だよな?」
「まぁな。よし、その役目は引き受けた!」
「蒼弦さん、よろしくね!」
「おう、こちらこそよろしくだ!」
モンスターズ・サバイバルの方もこの手の事には慣れているんだろうけど、直接の連絡が出来る状態ではないからね。オオカミ組と灰のサファリ同盟に、戦闘の為の足場作りをやってもらおう。
異形のサツキの為というのが微妙に複雑な心境にはなるけども、普通にボス戦をしていく上でも重要になってくるはず。近接攻撃はもちろん、魔法も操作系スキルも距離は近い方が狙いやすいからね。
それにしても……湖の水が抜かれているせいで、余計な手間がかかってない!? 多分これって、元々いたはずのレンコンがいたなら、異形のサツキがそのレンコンから伸びているハスの葉を足場にして引き上げてるって状況だよな!?
「ケイ、その後の討伐はどうする? 沈まない為の足場を用意するなら、異形のサツキに完全に引っ張り出させるのか?」
「あー、その辺は様子を見ながらだな。状況次第では、アルに上から引っ張り上げてもらうかも?」
「……俺はクレーンかよ。まぁ必要なら、やるしかないか」
「まぁ巨大レンコンと異形のサツキの引っ張り合いがどうなるか次第だけどなー」
拮抗するならそのまま引っ張らせておいて、俺らは総攻撃でも問題ないしね。巨大レンコンを完全に引っ張り出してくれるのなら、それはそれであり。
逆に厄介なのは、異形のサツキが引っ張り負けた場合か。……まぁその辺は冗談抜きでどうなるかが分からないから、状況を見ながら判断するしかないな。
「あ、ハーレさん。次に巨大レンコンが出てきたら、何か投げてみてくれ。物理攻撃がどの程度効くのかも見ておきたいしさ」
「はーい!」
「アルとヨッシさんも、攻撃準備をしといてくれ。海水と毒も試しておきたいからな」
「おう、了解だ」
「了解! とりあえず片っ端から試すんだね?」
「まぁなー」
何が有効打になり得るかで、使う刻印の種類が変わってくるもんな。ボスが刻印を使ってくる可能性も十分あるし、黒の刻印、白の刻印、それぞれ何を使ってくるかを把握しておかないとね。
おっと、そうしている間に森の中からシンさん達が現れてきたな。シンさんのサボテンに、相変わらず土属性持ちが多いのか茶色い種族が多い事で。
デカいカメやデカいトカゲ、サソリにハリネズミ、アルマジロと色々いるもんだけど、荒野エリアを気に入ってる人達だから基本は種族はあまり変わらないか。まぁ前見た時よりも明確にゴツくなってる気がするけど!
「おっしゃ、異形のサツキの掘り出しと臨時の足場の作りを始めるぞ! 近接主体の奴は、さっき言った通り防御に回れ! 俺の含めて、サボテンは盾役だ!」
「「「「「おう!」」」」」
「さーて、サボテン対ツタだね!」
「シン! しっかり棘に刺して、ツタを止めとけよ!」
「いっそ、グルグル巻きになって、そのまま捕まえといて!」
「余計な事を言ってないで、さっさといけや! エリアボスを押し付けれてる状況なの、分かってるだろ!? 他の群集の動向にも気を配れよ!」
「それは大丈夫じゃない? 『アースクリエイト』『岩の操作』!」
「赤の群集も、青の群集も、ここで邪魔するメリットもないだろ。『アースクリエイト』『岩の操作』!」
「俺らより、ミズキを確保してるコケの人達が危ないような? 『アースクリエイト』『岩の操作』!」
「そうそう! 俺らは心配しなくて大丈夫! 『アースクリエイト』『岩の操作』!」
「ちゃっかりと足場をちゃんと組みながら言ってんじゃねぇよ!? ケイさん達が危ないのは承知の上だから、あっちに変に手を出すようなら、エリアボスの攻略を止める事を考えるべきだって話だ!」
「あ、そういう意味なんだ? 『アースクリエイト』『岩の操作』!」
「説明は最後までちゃんとしろよ、シン! 『アースクリエイト』『岩の操作』!」
「その辺はさっき説明しなかったか!? おっと! 『自己強化』『棘防御』! ……流石に、クエスト絡みの敵だとダメージが痛いな!?」
「今だ! シンに巻きつけろー!」
「「「「「おー!」」」」」
「ちょ、待てや、お前ら!?」
あー、何やら荒野エリア独特な様子で足場がどんどん用意されていってるね。それと並行して、ツタの一撃を耐えたシンさんのサボテンに、そのツタを巻きつけるようにツタをハサミで掴んだサソリ数人がぐるっとシンさんの周りを回っている。
それ、シンさんが死なない? うーん、サボテンの棘を伸ばして防御はしてるし、何も考えなしにはやらないか。あの悪ノリ感、悪意があってのものじゃないのは知ってるしなー。戦線離脱になるようなら、むしろ守りに動くはず。……一応聞いとくか。
「シンさん、その状況は大丈夫か?」
「こういう戦法自体は初めてやる訳じゃないから、そこは心配すんな! 異形のサツキの攻撃がこっちに集中してきたら流石にマズいだろうけど、そうなった時は棘を抜いて、小さくなって走って逃げるからよ!」
「あー、そういうパターンか。それなら了解!」
巻き付かれた状態で締め付けられたらどうする気なのかと思ってたけど、逃亡手段まで考えた上での行動みたいだね。荒野だとヘビ辺りが巻きつき攻撃を仕掛けてくる事はありそうだし、そういう敵への対処方法かな? 別に荒野エリアだからって荒野にしか行かない訳でもないから、そうでもない?
まぁ今はどこでそういう手段を使っているかは気にしなくてもいいや。ラックさん達の灰のサファリ同盟と蒼弦さん達もオオカミ組は、まだ作業要員の割り振り中だけど、そう考えたら荒野エリアの動き出しが早いな!
「ケイさん、さっきシンさんが言ってた事だが……計画には組み込むか?」
「えーと、それはエリアボスの討伐を止めるって事か、富岳さん?」
「あぁ、それだ。手出しをさせない為には有効な手段だとは思うが……」
「そうだろうけど、わざわざ言わなくてもいいだろ。さっきの荒野エリアの人達のやり取りで聞こえてるだろうしさ。というか、シンさんに大声で今のを言わせる為に他の人達がわざとやってた気もする……」
「あー、それはあるかもな」
荒野エリアの人達がシンさんを弄る様子ってのは初めて荒野に行った時から知ってる事だけど、競争クエストの真っ只中で無意味にそういう事をする人達とも思えないんだよね。シンさんにツタを巻き付かせた状況から逃げる手段を持っているのが分かったなら、尚更に。
「あ、そろそろヤベェ!?」
「早く! これ、死ぬー!?」
「もうそんなに保たないからー!」
「お前ら、急げ! 間に合わなかったら、脱出を優先するからな!」
というか、シンさん以外に3人のサボテンの人もツタを巻き付かせた状態になってるー!? 異形のサツキが攻撃に使っていたツタは、合計で4本なのか。一見したらもっと多そうには見えたけど、同時に攻撃に使えるのはこんなもんなんだな。
というか、この手段で地味に異形のサツキの攻撃を封じ切ってません? ツタからの攻撃に要注意とは言ったけど、ツタそのものを封じてしまうとは思わなかった。あ、そうしてる間にしっかりと周囲の地面は岩で覆われた状態になってるね。
「おっし、臨時の足場は完成! シン達が死ぬ前に、異形のサツキを引っ張り上げるぞ! 『アースクリエイト』『岩の操作』!」
「「おうよ! 『アースクリエイト』『岩の操作』!」」
「よし! 俺らは逃げるぞ! 『小型化』!」
「「「『小型化』!」」」
「シン達が脱出したぞ! 攻撃に備えろ! あと、引っ張り出した部分を塞げ!」
「おうよ! 『アースクリエイト』『岩の操作』!」
よし、シンさんを含めたサボテン4人は巻き付かせたツタからの脱出には成功した! それにしっかりと異形のサツキが湖の底の泥濘から抜け出せなくなっていた状況も解消! これで変に攻撃されなければいいんだけど……。
「おし! シンさん達には見向きもせずに巨大レンコンの方に向かったか!」
「ははっ、成功だ! ケイさん、どうよ!」
「荒野エリアの人達、ナイス! 岩の操作は操作時間が切れたら無理にその場で維持しなくてもいいから、巨大レンコンを引っ張り出せる位置まで異形のサツキを進ませるようにしてくれ!」
「「「「「「「おう!」」」」」」」
ある程度進ませてしまえば、そこからは普通に巨大レンコンに普通にツタが届くようになるはず。……一番最初に巨大レンコンを引っ張り出したのを何回もやってくれればいいんだけど、この様子じゃそう思い通りにはしてくれなさそうだしね。
というか、初めに引っ張り出した時に泥濘に足というか根を取られてた感じなのかもね。どう見ても、踏ん張れるような足場じゃないもんなー。今は踏ん張れるようにはなったはずだけど、どうなる?
「おぉ! またツタを巨大レンコンがいる方向に伸ばし出したのさー!」
「おし、異形のサツキの行動誘導は成功! そのまま、巨大レンコンを引っ張り出してくれよ!」
湖の底に引っ込まれたままだと、倒すにも倒せないからな! でもまぁ、ここまで異形のサツキの行動の誘導が必要だとは思わなかったわ!
というか、こういう行動の誘導が必要だからこそ、オリガミさんが支配したままではいられなかったのかも? 普通に意思疎通が出来てたら、もっとこの辺は楽だろうしさ。……いや、逆に巨大レンコンの引っ張り出す必要はある事が分からないからか? うーん、その辺は謎だな……。
「ちょ!? これ、踏ん張ってる根がかなり操作時間を削ってきてるんだけど!」
「そっちも!? こっちもだよ!?」
「相当力を入れてんぞ、この異形のツタ!?」
「マジか、お前ら!? ケイさん、負荷が大きいっぽいんだが!?」
「悪いけど、そこはなんとか耐えてくれ! せめて、巨大レンコンさえもう一度引っ張り出すまで!」
「そうなるよなー!? お前ら、もう少しだ! 今ので耐え切れなさそうなら、近くの奴が解除になった後に滑り込ませて代わりをやっていけ! 巨大レンコンだけは意地でも引っ張り出させるぞ!」
「あ、こっち切れそう! 誰か、代わりをお願い!」
「隣か! よし、そこは俺が引き受ける!」
「こっちも頼む!」
「よしきた!」
おー、どんどん解除になっていく岩の操作と、即座にフォローに入っていく人達って状態だね。というか、隣で誰が操作している岩なのか、正確に把握してるんだなー。うん、荒野エリアの一体感は凄まじいね。
「あ、巨大レンコンがまた出てきたかな!」
「引っ張り出すのは成功みたいだね」
「だなー! 荒野エリアの人達、一旦下がってくれ! ひとまずはここまでで十分だ!」
「お前ら、今のうちに行動値を回復させとくぞ! 何回、今のが必要になるか分からんからな!」
俺の指示に続くようにシンさんの呼びかけがあって、それを聞いた荒野エリアの人達は異形のサツキから離れていく。あんまり何度も必要な状況にしたい訳じゃないけど、どういうきっかけで巨大レンコンがまた引っ込むかは分からないからな。
というか、この感じだと引っ張り出すまでで精一杯って感じだな。湖の外まで連れ出させるのは……正直、無理そう。
「ケイさん、灰のサファリ同盟とオオカミ組は準備完了だよ!」
「いつでも伐採を始められるぜ!」
「おし、それじゃラックさん、蒼弦さん、木の伐採を始めてくれ!」
「了解! 伐採班、活動開始!」
「やるぜ、野郎ども!」
「「「「「おう!」」」」」
正直、サツキの足場としてはどれほど踏ん張れるかが怪しい気もしてきたけど、まぁ味方の足場としても活用するから問題なし! ……これ、本当に元々はレンコンのハスの葉を足場にするって想定でよかったのか? うーん、分からん!
あー、今は存在してないものでの過程で話してても仕方ない。てか、攻略に必要な要素なら、瘴気強化種とは言わないけど、残滓辺りで復活させといてもらえませんかねー!? ここのハス……というか、レンコンを仕留めたタイミングっていつだよ!
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