第1279話 集まる強者達
クラゲのライブラリは、本当に立ち去っていったけど……目撃情報で聞いてた通り、思いっきりマイペースだな!? まぁ邪魔せず立ち去るなら、それでいい。……さっきみたいに行動が急変する事もありそうだけど、あれは興味を引かせたらの話な気もするし――
「……ふん、ようやく合流が出来たかと思えば……この状況か。一体、何があった?」
「グレン!? 合流出来て何よりです!」
げっ!? ここで、あの赤い体色のキツネのグレンって人が、消し切れなかった瘴気の渦から出てきた!? 他にも瘴気の渦を通って転移してきている無所属がいるし……状況は厄介な事になってきた。いや、まぁ元々結構厄介な状況だけどさ!
とりあえず視界があまり良くないし、アブソーブ・アクアの発動は解除しとくか。戦闘の邪魔になっても困る。
<『アブソーブ・アクア』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 20/103 → 20/113(上限値使用:9)
少し戦闘が止まった事で、多少は行動値は回復したけど……流石にこれ以上は無理か? さっきのイブキか、イブキじゃないのか、結局どっちか分からないままの龍を仕留めた際に結構消耗してしまったのが痛い……。
うーん、さっきの龍は思った以上にあっさり倒せていたし、もしかすると味方だった可能性もあるのかも? ……その場合、あの黒の統率種として情報を伝えに来た人の可能性もあるし、そうだとしたらなんかすまん!
「……ともかく、この囲まれている状況を突破しないとどうにもならんか」
「えぇ、そうですね。別に合流自体はここでも問題はないのですが、流石に邪魔が多過ぎる状況です……。想定以上に戦力が集まるのが早過ぎますし、傭兵の撹乱作戦が失敗したのが痛いですね」
「……ふん、対策を取られた以上、苦し紛れのあれでは限界だろうよ。……それに、文句を言われる筋合いはないが、群集から見た俺らは邪魔でしかない。……この瘴気の渦が、あれの移動に使えたら良かったんだがな」
「共闘は潰しておきたかったんですけどね。……やはりあれには問題がありましたか?」
「……あぁ、あれだけは自力で連れてこなければダメらしい」
インクアイリーも、あっちはあっちで回復をしてるっぽいんだよなー。というか、聞こえてくる会話の内容が、どうも他に別働隊がいるっぽい。これ、何と合流するのを目的としている?
それにしても瘴気の渦では連れてこられない何かって何……って、あれか!? 群集支援種の乗っ取りに使う、未成体の残滓! 瘴気の渦で転移させてこようとすれば、進化して無意味になるのかも。
「邪魔だと分かっているなら、大人しく消えていただけますか? インクアイリー!」
「その湖の中に、何を隠していやがるのか見せてもらおうじゃねぇか!」
「っ!? 『並列制御』『アイスウォール』『根の操作』!」
ここでジェイさんと斬雨さんが出てくるんかい! てか、氷花さんが根の操作でタチウオを掴んで、アイスウォールの表面を滑らせるように防御するって……相当無茶な防御の仕方をするな。
「……ふん、青の群集のジェイと斬雨か。こんな所へ来て、カズキはいいのか?」
「いいのかも、何も、カズキを乗っ取った異形ごと仕留めて、ランダムリスポーンさせたのはあなたでしょうが! 『並列制御』『共生指示:登録1』『共生指示:登録2』!」
ちょ!? 今度はジェイさんが火を2つ生成したから、これはエクスプロードか!? この位置、俺らは巻き込まれないけど、他の共闘をしてる人達を巻き込むんじゃ?
いや、生成位置がグレン狙いの割には少し高い? それに、火属性を持っているっぽいグレンへ、なぜ火での昇華魔法!?
「……丁度いい! ……『高速飛翔』『アブソーブ・ファイア』」
「風音さん!?」
止める間もなく、風音さんが爆発的に広がる炎の元へと飛んでいった!? 確かに過剰魔力値を得るチャンスだけど、それは2人での発動相当の威力がある発動だから、風音さんだけじゃ吸収はし切れない!
というか、ジェイさんも何考えてる!? 青の群集に、ここでの共闘の話が通じてないとも思えないんだけど……?
「……何の真似だ? ……この状況で、狙いを外したなんて事は――」
「ある訳ないでしょう。漁夫の利を取られて、激情で動くなんて愚策はやりませんよ。まぁ多少の無駄は覚悟していましたが、どうやらそれも無さそうで助かりますけどね」
「なるほど、そういう事ですか。……また増援、ですね」
発動したエクスプロードは……その威力を発揮する事なく、2人の龍へと吸収されていっている。ははっ、なるほど、そういう流れか。まぁ確かにカズキの発見報告って、飛翔連隊のライルさんからだったもんな!
「うぉ!? って、風音さんか!?」
「……紅焔さん? ……エクスプロードを……吸収……してる?」
「まぁな! というか、今のは俺へ過剰魔力値を与える為の昇華魔法だしな! まぁ過剰過ぎて、多少のダメージを受ける覚悟だったけど……その分は風音さんが吸収していてくれや!」
「……うん!」
来ているのは、紅焔さんだけでなく飛翔連隊の面々だけでなく、それと行動を共にしていたプレイヤーの人達。それなら北斗さんも来てる……あれ? 翼竜の姿は見えないな? んー、まぁいいや。
これだと、カズキの方に向かっていたベスタやレナさん達もこっちに向かってきているのかも? しかも、この状況から考えると……青の群集とは共闘状態になった状態で来ているな。
とりあえずエクスプロードは吸収されて跡形も無くなったし、ここは下手に手出しはせずに様子を見守ろう。青の群集が、明らかに巻き添えにならないような動きを見せてるしね。
それに追従するように、赤の群集も灰の群集も下がっていっている。……突っ込んできたジェイさんと斬雨さん、それにシュウさんと弥生さんを除いては。
「あはははははは! 派手に出てくるね、ジェイさん!」
「……いえいえ、弥生さんほどではありませんよ。ここは、共闘として逃がさないように……いえ、邪魔されないように足止めをお願いしても?」
「ま、逃げはしねぇだろうがな!」
「明らかに何かを隠しているし、やってくるなら攻撃そのものの妨害だね。弥生、引き受けるのでいいかい?」
「それはもちろん! あはははははは!」
「それではお任せしますよ!」
「次から次へと!? いえ、でも増援があるのはこちらも同じ事! グレン、空の龍2人の対処をお願いします!」
「……ふん、無茶を言ってくれるな、氷花。……だが、状況的にやるしかあるまい」
なんだか俺らは見てるだけになってるけど……下手に手が出せないんだよな。ライルさんの方を見上げてみれば、なんか根で×印を作ってるし、動くなって指示っぽい。
多分、まだ仕込みが他にもあるんだろうけど……それを聞ける状況でもないか。競争クエスト情報板を見れれば内容は分かるだろうけど、目を離すというのも良くない状況なんだよな。……風音さん、よくあの場で飛び込んでいったもんだよね。
「紅焔さん、手筈通りに!」
「了解だ、ジェイさん! ついでだから風音さん、同じ手順でやってくれ! 過剰魔力値を使って、ファイアインパクトであの氷をぶち破る! あー、2人いるんだし、お互いに攻勢付与をかけるのもありか! その上でぶっ放す! 『ファイアエンチャント』!」
「……分かった! ……『ファイアエンチャント』」
そうか、自分の魔法を強化するには並列制御で付与魔法をかける必要があるけど、今は同じ魔法を使える2人がいるんだから、お互いに掛け合えば行動値の節約になる。
てか、並列制御で魔法を同時に使った時って過剰魔力値の扱いはどうなるんだっけ? あー、ともかく今の状況なら威力は据え置きのままどころか、過剰魔力値によって大幅に強化されたやつになったよな!
「これは!? 皆さん、防御に徹して下さい! 『並列制御』『アイスウォール』『アイスウォール』!」
「「「「おう! 『アースウォール』!」」」」
「土魔法で防げるとでも? 『アブソーブ・アース』!」
「させると思うかい? 『アブソーブ・アース』!」
「くっ! 属性を変えて、急いで下さい!」
「……ちっ、これは間に合わん!」
他のインクアイリーの人達が土の防壁魔法を展開しているけど、まぁあっさりとシュウさんとジェイさんの展開するアブソーブ・アースに吸われて無力化されている。
インクアイリーのメンバーだからといって、今の状況で最善の行動が取れるとは限らないんだな。いや、単純に土属性のアブソーブ持ちが2人もいるとが知らなかっただけか?
あ、そうやってインクアイリーが防御に徹している間に、巻き込まれそうな位置にいた赤の群集や青の群集の人達は完全に撤退済みだな。これなら湖を覆う氷を、完全に溶かす事が出来るかも!
元々、湖で何かをしている可能性はあったんだし、この防御への動きは明確に気になる部分。ジェイさん達とどういう話をして、ここまで一緒に来る事になったかは分からないけど……これが奇襲の本命か!
「ははっ! いくぜ、風音さん! 『白の刻印:増幅』『ファイアインパクト』!」
「……うん! 『白の刻印:増幅』『ファイアインパクト』!」
紅焔さんと風音さんは2人共が魔法砲撃を発動していたようで、龍の口から強烈な炎が凍った湖の表面へと叩きつけられていく。おぉ、あっという間に溶けていくな!
氷の下には……え、水が無くて空洞!? 今、溶けた水が流れ込んではいるけど、まさか空洞だったとは思わなかったんだけど!?
ん? あぁ、隣に誰かが来たと思ったら、ベスタとレナさんとダイクさんか。来そうな気はしてたけど、やっぱり来たな!
「レナ、獲物察知封じを破ってきてくれ」
「うん、任されたよ! ダイク、行くからねー!」
「ちょ!? まだ俺は酷使されんの!?」
「ごちゃごちゃ言わない! あんまり文句を言うなら、弥生の方へ蹴り飛ばすよ?」
「それは勘弁して!? って、あの湖の中って空洞!?」
「およ? 流石に空洞はちょっと予想外かも?」
あー、またダイクさんがレナさんに雑に引っ張られて、湖の方へと進んでいった。なるほど、ベスタ……というか、レナさんが獲物察知封じを破りに行く算段をしてたのか。そうなると……。
「ベスタ、乱戦で滅茶苦茶な状況になるのを防ぐのが目的だった?」
「まぁそれもあるが、他の群集の中に紛れている敵からの奇襲を防ぐのが1番の狙いだ。明確に湖を探るのを狙っている今の状況で、向こうは下手に下げられんだろう? 下がれるとしたら……」
「あー、それこそ湖の中に行くしかないもんなー。って事は、既にこの状況は全群集に通達済み?」
「まぁな。ヨッシはこの状況の報告に顔を出していたから、状況は把握しているはずだが……」
「あはは、流石に状況的に声を出しにくくてね?」
「という事だ。まぁ消耗もしていただろうから、いい休憩にはなっただろう?」
「まぁ、それはなー」
なんとなく予想はしてたけど、ヨッシさんは今の状況の報告をしてたんだな。多分、誰かが何かを言えば止める為に何か言ってきたんだろうけど、そうでなかったなら今回の対応でいいのかもね。
インクアイリーに何かを企んでいると気付かれない方がいいし、実際、ライルさんが上から根で×印を作っていたのにも気付いてなかったみたいだしな。
「……このタイミングでレナさんまで来ますか!? 『並列制御』『アイスクリエイト』『アイスクリエイト』『並列制御』『氷の操作』『氷の操作』!」
「そりゃこれだけ色々とやってたら、来ない訳がないでしょ? ねぇ、氷花さん? わたしにはお誘いはなかったけどさー。あ、弥生、シュウさん! ケイさん達を追いかけてたって?」
「あ、レナも来たんだ? まぁ仕留め切れないまま、ここに連れて来られちゃった感じ?」
「2人共、流石に油断をし過ぎじゃないかい?」
「……ふん、余裕そうに言う事か! 『分体生成』『連爪刃・閃舞』!」
「およ? グレン……知らない名前の人だね? インクアイリーの新参の人?」
「レナ、どっちが先にこのキツネの分体を倒すか勝負でもしない?」
「あ、ごめん。ちょっとやる事があるから、それはまた今度で!」
「そうなんだ。まぁ、それじゃ仕方ないかなー?」
「……ちっ! どっちも舐めた動きをしやがって!」
「ちょ!? レナさんも弥生さんも、普通に雑談しながらスキルをぶっ放し過ぎ!? 『アクアウォール』!」
なんか、この光景はインクアイリーの方が敵ながら可哀想になってきた。あっさりと躱しまくるどころか、会話をしながら軽々と反撃を叩き込むネコとリスって恐ろしいな!?
「それじゃちょっと行ってくるねー! よっと!」
「ぎゃー!? やっぱり俺も行くのか!?」
あ、そうしてる間に、レナさんとレナさんに引っ張られたダイクさんが溶けた氷の中に飛び込んでいった。この位置からだと、湖の部分が空洞になってるのが分かる程度で全体像はさっぱり見えないんだけど……中は具体的にどうなってるんだ?
「ケイ、獲物察知を使え。もう確認が出来るようになったし、それで内部の状況が分かるはずだ。……思った以上に、厄介な事になりそうだがな」
「マジで……? とりあえず、使ってみる」
ベスタがそういう反応をするって、レナさんからどういう報告を受けたんだ? まぁとにかく、今は状況を確認していこう!
インクアイリーが群集支援種を連れ去っている可能性は高いけど、それがこれで分かるはず!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます