第1275話 逃げの一択
弥生さんとシュウさんに思いっきり狙われてるけど、今はみんなとの合流を目指すべき! みんなが離れてくれていれば、ダメ元で1人で戦ったんだけど、結果としては離れるという判断をしてくれなかったからなー!
1度勝ったといっても明確に手札は増えてるし、リベンジを意識してるネコ夫婦だと6人でかかっても勝てるか分からないから逃げに徹する! その為にも合流しないといけないけど、それすら厳しいわ!
「サヤ、ヨッシさん、全力で電気をぶち込め! 『並列制御』『シーウォータークリエイト』『シーウォータークリエイト』『並列制御』『海水の操作』『海水の操作』!」
「了解! 『エレクトロインパクト』『強化統率』! ハチ3号、『遠距離攻撃』! 『エレクトロインパクト』!」
「一気にいくかな! 『共生指示:登録2』!」
おし! 上からのアル達の攻撃で、シュウさんを咥えた弥生さんが回避に動いているね。統率個体も含めたヨッシさんの電気の衝撃魔法と、サヤの竜でのエレクトロボムの連発は、流石に回避に動くしかないっぽいな。
まぁそれでもあっさりと躱されてはいるけど、アルが海水の水球を動かす方向と、そこに撃ち込む電気魔法の方向が違うから、回避方向にかなり制限がかかってる感じ!
「これは当てる気はないみたいだね。時間を稼げれば、それでいいってところかい?」
「無理に突っ切ってもいいけど、サヤさんはともかくヨッシさんの電気魔法は危ないよね? 下手に相殺すると、麻痺になりかねないし……」
「異常特化の育成で、麻痺を受けるのは冗談になってないからね。ただ、このままやられっぱなしでもいられないから……」
なんかヨッシさんの攻撃を警戒してるっぽい会話が聞こえてきてるけど、そこをじっくり聞いてる場合じゃないわ! なんとか隙が出来ている今が、アルと合流のチャンス!
ほんの少しだけ耐久値が残っていたアクアプロテクションは解除だ。もうまともに防御に使える状態じゃないしなー。
「風音さん、俺がアルのとこまで押し流す! それで合流出来たら即座に準備で!」
「……うん!」
「今のうちに、徹底的に妨害しておくのです! 『狙撃』『狙撃』『狙撃』!」
「っ!? シュウさん、この弾、嫌なやつ!」
「どうやら花粉弾みたいだね。『ウィンドウォール』!」
なるほど、動物系の相手にはかなり有効で嫌な弾のあれか! まぁ今こそ思いっきり使い所だよな。ともかくハーレさんが追撃で更に隙を作ってくれている間に合流する!
<行動値1と魔力値3消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』を発動します> 行動値 50/113(上限値使用:9): 魔力値 177/306
シュウさんがウィンドクラスターを使っていたから、アブソーブ・ウィンドも使えるのは確定。今展開してるのはアブソーブ・アースだけど、あれって同時に展開は出来るのか? あー、気にはなるけど、今考えてる場合でもないな。
<行動値を19消費して『水流の操作Lv4』を発動します> 行動値 31/113(上限値使用:9)
ともかく今は、追いつかれない内にアルのクジラの背まで戻るのみ! シュウさんが近くまで来たら、風音さんが落ちないように固定してくれている岩の操作が吸収されてしまうから引き離さないと!
「風音さん、思いっきりいくぞ!」
「……うん!」
「突き放ふほはー!」
なんか水流の中に入った時にハーレさんの言葉がおかしくなったけど、適応してなきゃ水の中ではまともに喋れなくなるんだからそうなって当たり前か。そこは気にしなくていい部分だから、すぐに使い切ってもいいつもりで最大加速!
てか、もうここまで逃げるだけで、行動値に全然余裕がないんだけど!? これから逃げる為にみんなを固定するので、俺は限界じゃね!?
「おし、来たな! 『並列制御』『根の操作』『根の操作』!」
おっと、アルの根が伸びてきたから水流は急いで解除! そうしたら風音さんごと俺らをアルが引き寄せて、なんとか合流は完了だ!
おし、アルのクジラの背まで全員で戻ってこれた。風音さんは岩の操作を解除してくれたから、大急ぎでアルの木の根とクジラの隙間へとみんなで移動!
「ケイ、風音さん、準備を急いでかな!」
「……うん! ……『小型化』」
「ほいよ!」
なんとか振り切った……とも思えないな。まだ弥生さんもシュウさんも余裕が見えてたし、俺が脱出した時点で合流になるのは想定していたような感じがする。
お互いにかなり無茶な挙動はしてたとは思うけど、あれで抑え切れる弥生さんやシュウさんとは思えないんだよな。……尚更、早く逃げた方がいいか。
<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 30/113(上限値使用:9): 魔力値 174/306
<行動値を19消費して『岩の操作Lv4』を発動します> 行動値 11/113(上限値使用:9)
逃げるためにも、今は急げー! 小型化して位置に着いている風音さんを含めて、みんなを岩で固めていく。
あー、グリースの効果が微妙にまだ続いてて、滑りやすくなってるから自分でも固定はしにくいのかよ! まぁ完全に固められなくても――
「逃げ切れると……逃してしまうと、思ったのかい? 『並列制御』『ファイアクリエイト』『ウィンドクリエイト』!」
「げっ!?」
この組み合わせは、ファイアストームか! ちっ、俺らが揃ったところを狙ってまとめて焼き払うのが狙い……いや、そんな単純なはずがない!
「……そんなのは……こうするだけ! 『アブソーブ――」
「風音さん、吸収するな! そのまま予定通りで!」
「っ!? ……『並列制御』『ファイアクリエイト』『共生指示:登録1』」
よし、盛大な爆音を上げて、アルごと吹っ飛んでいく! でも、ファイアストームでコケに火が着いて燃え上がってるんだけど!? てか、アルの木まで燃えてるー!?
「逃げ出したはいいけど、色々と危険な状態だよ!?」
「アル、水をお願いかな!」
「分かっている! 『アクアクリエイト』『水の操作』!」
ヤバい、ヤバい、ヤバい! どんどん群体数が減っているのに、自分じゃどうにも出来ない状況だ!? 固定を外せばみんなが落ちかねないし、かといって火を消さないとこのまま死ぬ!
あ、アルの生成した水が俺を包み込んで、なんとか火が消えた? コケの群体数の残りが凄いヤバい水準だけど、死なずに済んだ!
「た、助かった……」
「……今のは流石に死ぬのを覚悟したぞ、おい!」
あと少し遅かったら、もうコケが全滅するとこだった。アル自身も危ない状況だったけど、どうにかこれで逃げられはした――
「わー!? 全然逃げられてないのさー!?」
「凄い勢いで、空中を走って追いかけてくるかな!?」
「……簡単には逃げ切らせてはくれないみたいだね」
「ちょ、マジで!?」
待て、待て、待て! あの状況から、まだ追いつく手段を持ってたのか!? シュウさんがあのタイミングで昇華魔法を使ったのは、風音さんの動きを誘導する為だと思ったからこそ、無茶をしての強行突破のつもりだったんだけど!?
「ちっ、多少は離せているみたいだが……どんどん距離が縮まっているのか。ケイ、どういう手段か分かるか?」
「分からん! てか、固定した向き的に後ろが見えない!」
焼け残ってるコケは少ないし、残ってるのは岩に囲まれてる部分にしかないから、コケの視点に変えて後ろを見るって事が今は出来ないんだけど!?
「シュウさんは弥生さんの背中の上で何かを食べてるから、これは弥生さんの移動手段かも?」
「……違う。……多分……これは……風魔法を……断続的に使った……移動操作制御? ……足場になる……小石も……出たり……消えたり……してる」
「え? でも、シュウさんはずっと石に乗ってたし……って、あれはもしかして弥生さんが発動してた移動操作制御に乗ってただけか!?」
「あー、その可能性はあり得るな。今使っているのが、シュウさんの本来の移動操作制御か」
「それは厄介過ぎるのさー!?」
このスチームエクスプロージョンでの急加速の逃亡を追いかけてこれる移動操作制御の使い方ってとんでもないな!? 俺の飛行鎧みたいに出しっぱなしじゃなくて、何度も発動と解除を繰り返して発動してる感じか!
でも、それには精密な発動が必須になるだろうし、ダメージ判定さえ出してしまえば潰せるはず。……上手くいくかは、正直分からん!
「アル、ヨッシさん、背後にポイズンミストで! 相殺って形でダメージ判定を無理矢理に出させて、使えなくする! 毒はなんでもいい!」
「……それで振り切れればいいが、とりあえずやってみるか。『アクアクリエイト』!」
「でも、この状況はダメ元でもやるしかないよね! とりあえず麻痺毒で『ポイズンクリエイト』!」
あんまり視界が悪くなる状況は作りたくないんだけど……って、そういやポイズンミストって『暗視』でどうにか中は見れたっけ。弥生さんだと暗闇は逆に利用されそうだから怖いんだけど……。
あー、今思ったけど、ここの霧に対しては『暗視』って有効? ……有効なら有効だと話自体は広まってたはずだろうし、多分意味はないな。ぶっちゃけ、今はそこを気にしてる場合じゃないし!
「一応、直撃はしたかも?」
「上手くいったか!?」
「わー!? 全然ダメっぽいのさー!? すぐに戻ってきたのです!」
「……ケイ、今のは失敗フラグだぞ?」
「……ですよねー。ただ単に、毒霧の中から抜けるのに一旦切っただけか……」
何度も発動と解除を繰り返して使う方法だからこそ、こういう潰し方への対応はどうとでもなるか。でも、毒霧を抜けるまでは何かしらの対応をしないと回避は出来ないのも確定か。……見えてないから、推測だけど!
「……後ろばっかり気にしてる状況でもねぇな。落下に入ったが、ケイ、どうする?」
「どうするも何も、なんとか振り切るしかないけど……」
冗談抜きでこの状況はどうすりゃいい!? もう俺の行動値はほぼ残ってないし、風音さんも昇華魔法の発動で魔力値は空っぽ。他のみんなもそれなりに消耗はしてるだろうし、振り切った上で回復をしないと後が続かない状況。
だー! その上、もう森が目前に迫ってきているし、考える時間が残ってない! 今は、少しでも考える時間を作るのが先決か!
「アル、水流の操作で森の上を流れていってくれ! 流れに乗るのが安定したらヨッシさんと俺で、ポイズンミストを連発してなんとか引き剥がす! もう水流の操作を使えるだけの行動値はないから、そういう役割分担で!」
「……今はそれくらいしか出来ねぇか。『高速遊泳』『アクアクリエイト』『水流の操作』!」
ここまでの勢いを殺さないように、アルが生成した水流へと着水! 勢いよく流され始めたけど……よし、なんとか吹っ飛んでいる状況からは安定したな。
これなら岩での固定を解除しても、しっかりと掴まっていれば落ちる事はなさそうだ。
って事で、解除して俺も追いかけてきている弥生さんとシュウさんの方へ向いて……うげっ、実際に見てみたら凄まじいな!? 生成した小石を、風の衝撃魔法で加速させて、その上を弥生さんが飛び移って移動してる感じなのか。その状態で、シュウさんは魔力値の回復もしてるっぽい。
「ハーレさんとサヤは、遠距離から牽制で! 狙いは、弥生の足場になってる小石!」
「任せてかな! 『共生指示:登録1』!」
「はーい! 『狙撃』『狙撃』『狙撃』!」
ヨッシさんの状態異常を警戒してたのは聞こえてたし、多分そのまま毒は浴びていないはず。そう思わせるハッタリは……多分、弥生さんとシュウさんはやってこない!
「ヨッシさん、俺らもやるぞ! 毒は麻痺毒で!」
「了解! 『ポイズンクリエイト』!」
弥生さんは作戦でどうこうやるより、真っ向から潰しにくるだろうし、シュウさんはその意志を尊重して動くはず! というか、作戦を組み立てるのは無理だよな、普段のハイテンション弥生さんだと!
<行動値1と魔力値3消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』を発動します> 行動値 10/113(上限値使用:9): 魔力値 171/306
<『複合魔法:ポイズンミスト』が発動しました>
よし、後ろから追いかけてくるシュウさんと弥生さんを毒霧で包み込んで……あ、緑色が魔力視で見えたから、風で覆って毒を防いでいるのか。
なるほど、これならシュウさんの行動値と魔力値は削れてはいるし、移動も中断はさせられているから、決して無駄ではないんだな。
弥生さん単独では流石に追いかけきれないみたいだし……って、そういやなんで飛翔疾走を使ってないんだ? ちょっと待て、なんか凄い嫌な予感が――
「あはははははははは! こっちを使う事になるとは、思ってなかったねー!」
「すまないね、弥生。それだと速度が出過ぎて方向転換がしにくくて、攻撃に転じにくいって話だったのに……」
「逃げられちゃ意味がないからね! 逃がさないって言ったよ、ケイさん!」
「ちょ、そんなのあり!?」
待て、待て、待て! 嫌な予感がすると思ってたら、毒霧を突破して思いっきり声が聞こえるとこまで距離を詰められたんだけど!? さっきまでと違って小石を足場にせず空中を駆けているから、飛翔疾走を使ってるのは間違いない。
どんどん距離が縮まってるし、アルも相当な速度で移動してるのに……ちっ、弥生さんはもしかして『飛翔疾走』もLv10にしてるのか!?
シュウさんがLv10のスキルを2つ持ってたんだし、弥生さんも持っていても不思議じゃない! あー、もう! 実力派のサファリ系プレイヤーは本当にとんでもないな!?
「ケイ、どうするのかな!?」
「いやいや、冗談抜きでどうしろと!? いくらなんでも、無茶過ぎるわ!」
「あははははははは! まずは逃げるのを止めないとねぇー!」
また高笑いが戻ってきてるけど、白光と銀光を放つ爪の状態で言われると洒落になってねぇ!? 打開策を考えないと、冗談抜きでこのまま仕留められかねないぞ!?
このネコ夫婦に1度でも勝てたの、奇跡じゃねぇ!? 1PTで連携しても逃げ切れないって無茶苦茶過ぎる! 何か、何かないか!? 近くにこの状況を打開出来るだけのものが何か……!
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