第1274話 ネコ夫婦のリベンジ


 あー、もう! これからの動き方を決めて、いざ動き出そうって時に弥生さんとシュウさんの、赤の群集のネコ夫婦に強襲されるとは思わなかった!

 2人とも、小石の上に乗って上空まで来ている感じか。下での戦闘で消耗しまくってくれてる方がありがたいけど……弥生さんは爪撃Lv10持ちだから、そこはあんまり期待は出来ないな。

 シュウさんはアブソーブ・アースを持ってたはずだし、移動手段を潰す手段としては土属性封じは効果的か。……ここから、どうする?


 閃光はブラックホールであっさりと潰されたし、こうなると既に動き出して距離が出来たアルまでなんとか追いついて引き離すのが得策か。真っ向から戦うよりはその方がマシなだけだけど、それでも難易度が高いよな!? 


<『移動操作制御Ⅰ』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 106/111 → 106/117(上限値使用:6)


 ともかく今は、広く展開し過ぎているこれを解除! 飛行鎧を再展開したいけど……今の状況だと、すぐに弥生さんかシュウさんに強制解除されるか?


「アル、先に行ってくれ!」


 とりあえず今はそのまま自然落下に任せよう! リベンジだと言うなら、1番の標的は俺のはず! 俺が離れた方が、全員で弥生さんとシュウさんを相手に戦わなくても済む!


「あははははははは! ……逃がさないよ、ケイさん?」

「行っておいで、弥生。『並列制御』『アースクリエイト』『アースクリエイト』『並列制御』『砂の操作』『砂の操作』!」

「ちょ!? そういう手段!?」

「あははははははははははははははは!」


 いやいや、弥生さんが高笑いをしながら、俺の周囲を覆うように展開された砂を足場にしながら、爪から銀光を放ちつつ移動してるのが怖いんだけど!? これ、周りの砂を弥生さんの動きに合わせて密度を変えて足場にしてるのか!?

 俺が落下していくのに合わせて砂全体も移動させているし、俺を逃がさない為と、弥生さんの足場を兼ねた……いや、下手に触れたら俺の捕獲も狙ってるのかも。ちっ、厄介な!?

 

「ケイ、大丈夫かな!?」

「完全にケイのみを一点狙いか! この状況はどうする!?」


 アルが微妙に判断に悩んでるっぽいけど、今は俺自身は何かを言う余裕はない! シュウさんは砂の操作を展開しているなら、今なら飛行鎧を使ってもいけるか!? いや、強制解除を狙われるだけだし、通常発動だと……流石にコストがキツいか。なら、これだ!


<行動値を5消費して『増殖Lv5』を発動します>  行動値 101/117(上限値使用:6)

<行動値を1消費して『グリースLv1』を発動します>  行動値 100/117(上限値使用:6)

<熟練度が規定値に到達したため、スキル『グリースLv1』が『グリースLv2』になりました>


 大急ぎでロブスターの全身へとコケを増殖して、全てを滑らせられるようにしていく! スキルLvが上がったのは、とりあえず今は無視で!


「……へぇ? 大人しく捕まってくれる気はないようだね?」

「そりゃなー! 砂で固められて、なぶり殺しはごめんだ!」

「まぁ僕はあくまでサポートに徹するだけだよ。だから、余計な手出しは無用だね」

「わっ!? 砂で逸されたのさー!?」


 って、今のはハーレさんが思考操作で狙撃でも仕掛けたのか!? ちっ、まだアル達は離れてない……というか、離れる気も無さそうだな!?

 いやまぁ、俺がどんどん落ちてるから、そういう意味では離れているけども。


「ケイ、何とかこっちまで戻ってこい! それで離れるぞ!」

「ちょ!? 無茶な事を簡単に言ってくれるな!?」

「あはははははははははははは! 逃す訳がないよねー!」

「ですよねー!?」


 完全に俺狙いで来てるのに、みんなが離れてくれないのは予想外なんだけど!? ちっ、それでいてあまり攻撃を仕掛けてこないのは……シュウさんが全面的に対応に回るのが見えてるからか。

 今のシュウさんが俺を逃がさない以上の動きを見せていない状況を維持する方がマシなのかも。積極的に何かを仕掛けてくるとしたら、俺が脱出してから逃げ切る為に動くタイミングでか!


「弥生、アルマースさん達は僕が抑えておくから、ケイさんを仕留めきってくれるかい?」

「あはははははは! もちろん、そのつもり!」


 銀光がまだ最大まで強化された状態じゃないのに仕掛けてきて、銀光も強まってるって事は……これは『重爪刃・連舞』か? あれなら連撃とチャージが同時になるから……って、考えてる場合じゃない! もう目の前まで銀光を放つ爪が迫ってるじゃん!?

 タイミングをミスるなよ! 少しでもズレれば、そこから一気に仕留められかねない状況だしな……よし、今!


<行動値を4消費して『スリップLv4』を発動します>  行動値 96/117(上限値使用:6)


 おし! 何とかギリギリ、銀光を放つ弥生さんの凶刃を滑らせて回避は成功! でも、こんなのは何度も続けられる回避手段じゃないし――


「あはははははは! どれだけ、避けられるかなー!」

「ちょ!? 待っ!?」


 銀光は収まるどころか強まってるし、連撃なんだからそりゃ続きますよねー!? てか、落下している状況のままでやるんかい! 落ち続けてる状況を、まずなんとかしないと駄目か。


<行動値上限を3使用と魔力値6消費して『魔力集中Lv3』を発動します>  行動値 96/117 → 96/113(上限値使用:9): 魔力値 300/306 :効果時間 14分


 かといって、ただ単に突っ込んで逃げられるような、そんな甘い相手じゃない! だからこそ、今までにやった事がない手段で脱出する! 耐久性を上げたい気持ちはあるけど、今はこっちで!

 確か登録はあれになってたはずだから、いけるはず! 思考操作で発動を急げ!


<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>

<行動値10と魔力値36消費して『半自動制御Lv1:登録枠3』は並列発動の待機になります>  行動値 86/113(上限値使用:9): 魔力値 210/306 再使用時間 72秒

<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>

<行動値を20消費して『双打連破Lv1』は並列発動の待機になります>  行動値 66/113(上限値使用:9)

<指定を完了しました。並列発動を開始します>


 よし、発動はアースボムが3回分! それで破ろうとは思ってないから、自分に向けて放って、そこをロブスターのハサミで叩きつける! それで爆発させて、その勢いを双打連破の反動と一緒に利用する!


「っ!?」


 ちょっと吹っ飛ぶ方向までは制御し切れずに砂の囲いの下の方へ吹っ飛ばされたけど、弥生さんの攻撃は何とか回避! ……出来ればシュウさんの操作している砂の操作に当たりに行きたかったんだけど、そう上手くはいかないか。

 少し驚いた様子で振り返ってきたけど、即座に体勢を立て直して、次の1撃を当てる為に動き出すのは流石は弥生さん!


「……へぇ? 爆発魔法と打撃での反動を同時に利用するのかい?」

「あははははははは! でも、その程度で逃げ切れるとは――」

「思ってないっての!」


 ははっ! 1発限りだともう手詰まりだけど、半自動制御に3つの爆発魔法を登録しておいたままで良かったよ! まさか、こんな形で使い道があるとはね! って事で、もう1回同じ手段で自分自身を吹っ飛ばし!


「っ!? それは半自動制御かい!?」


 よし、今度も吹っ飛ぶ方向は制御出来てないけど、シュウさんの操作する砂の囲いの上へと吹っ飛べた。触れられる位置まで移動出来たし、狙いはここだ!

 自分の魔法相手に叩きつけてるから連撃での強化にはなってないけど、相手が砂で、今の俺の状態なら多分これで十分!


「逃しはしないよ!」

「シュウさん! それ、コケで滑って抜けられるんじゃ!?」

「もう遅い!」


 という事で、3撃目を叩きつければ……俺を逃がさないように固めていた砂の中に割り込むようにロブスターのハサミが入っていく。わっはっは! グリースで滑りやすくした分だけ、砂で捕らえるのは難しくなってるよなー! その上、一応は吹っ飛ばし効果もあるから操作も盛大に乱れるっぽいね!

 でも、まだ脱出し切れてないから、後ろから押し出すようにアースボムを自分へと叩きつける! グリースで滑って、スルッと砂の操作を掻い潜るのに成功!


「くっ! 『ファイアボール』!」

「ちょ!?」


 抜けられたのが分かった瞬間に、迷わず砂の操作を破棄して火魔法で焼きにきたんだけど!? これ、残ってる双打連破で相殺して……いや、可燃性のグリースの効果が出てる状態のコケが絶対に触れるよな!?


「……やらせない! 『アブソーブ・ファイア』」

「風音さん!?」


 なんか小型化した風音さんの龍が上から突っ込んできて、割り込んで火魔法を吸収してくれた? あ、その背にはハーレさんも乗ってる?


「『略:触手伸張』! わわっ!? 滑るのさー!?」

「……問題ない! ……小型化解除。……『アースクリエイト』『岩の操作』」

「おぉ! 風音さん、ナイスなのです!」


 おー、風音さんが元の大きさに戻ってから、俺に巻き付いているハーレさんのクラゲごと岩で固めて上にいるアルに向けて飛び上がっていく。


 今の勢いでの割り込みは……サヤが風音さんとハーレさんをまとめて投げ下ろしてきたか? 理由はなんであれ、とにかく助かった!

 でも、まだ逃げ切れた訳じゃないから油断は出来ない状況だな! てか、結構落ちたみたいで、アルが地味に遠い!


「シュウさん!」

「分かっているよ。ここで逃す訳にはいかないからね! 『アブソーブ・アース』『ウィンドインパクト』!」


 ちょっ!? 大型化した弥生さんがシュウさんのネコの首部分を咥えて、風の衝撃魔法で強引に距離を詰めてきた!? しかもアブソーブ・アースを展開してるから、風音さんの岩の操作を吸収して無効化する気か!


「あはははははははははは! 逃がさないって、言ってるよね!」

「……やらせないとも……言っている!」

「おわっ!?」

「みんな、ここは逃げ切ってかな! 『共生指示:登録3』!」


 距離を詰めてくる弥生さんとシュウさんに対して、岩の操作で強引に速度を上げてるっぽい風音さんと、上から牽制としてウィンドボールを連発しているサヤという状況。風音さんの移動の方が早いし、これならなんとか――


「弥生、今のスキルは諦めてくれるかい?」

「それが必要なら、もちろん!」

「なら、移動は自分で専念しておくれ。僕は徹底的に、逃がさない事に専念するからね。冷静に確実に仕留めるよ」

「……前回は、落ち着きを無くして負けちゃったしねー。リベンジするなら、冷静にだよね」


 ちょ!? なんだか少し前のハイテンションな様子から一転して、弥生さんの雰囲気がガラッと変わったんだけど!? この雰囲気、嫌な予感しかしない!


「ちっ、ヤバそうだな、こりゃ! ケイ、戻ってきたら即座にあれで逃げるのでいいな!?」

「ほいよ!」


 あれって事は、風音さんのスチームエクスプロージョンを推進力にした逃げの一手! 今の弥生さんとシュウさん、真っ向から倒せる気が全然しないもんな!


「ケイさん、真っ正面なのです!」

「げっ!? 真上から叩き落とす気か!?」

「……問題……ない!」


 おぉ! 風音さんが上から放たれたウィンドインパクトを、華麗に躱して――


「回避する方向は、まぁある程度は決まってくるよね!」

「……しまっ――」


 風音さんの回避方向に合わせて、弥生さんが一気に距離を詰めてきた!? てか、飛行種族の風音さん相手に、上空へと進んでいく中でこの攻撃精度かよ! いや、これは残った俺の双打連破で相殺してしまえば――


「『拡散投擲』!」

「『ウィンドディヒュース』!」


 ちょ!? シュウさん、風の拡散魔法を使って拡散投擲を相殺した!? てか、俺らもその余波を食らってるし!?

 あ、今ので双打連破の最後の2撃分を使った事になったのかよ! ……思ったほど威力はなかったから、ある程度は相殺になったか?


「えぇ!? そんなのありですか!?」

「……あまり出しておきたい手段でもなかったのだけど、出し惜しみとか言ってられない状態だね。『並列制御』『アースクラスター』『ウィンドクラスター』!」

「ちょ!? シュウさん、そんなの隠し持ってたのかよ!?」


 待て、待て、待て! ただでさえ1つ持っていれば凶悪なLv10のスキルを、2つも持ってるのは反則過ぎるだろ、シュウさん!? って、そんな事を考えてる場合か!

 この状況で、2属性のクラスター系の魔法が上から迫ってくるとか厄介にも程があるんだけど!? 思った以上に落下してて、アルの元までもう少し距離があるけど、これをどう凌ぐ!? アル達の方にはクラスター系の魔法が届いてないだけマシなのか?


 いや、そもそも選べる選択肢はそう多くないか! だったら、シンプルにこれで防ぐのみ!


<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>

<行動値5と魔力値15消費して『水魔法Lv5:アクアウォール』は並列発動の待機になります> 行動値 61/113(上限値使用:9): 魔力値 195/306

<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>

<行動値10と魔力値15消費して『水魔法Lv5:アクアウォール』は並列発動の待機になります> 行動値 51/113(上限値使用:9): 魔力値 180/306

<指定を完了しました。並列発動を開始します>


<『複合魔法:アクアプロテクション』が発動しました>


 魔法砲撃にして、上空へ撃ち放って複合魔法として発動! これでなんとか防ぎたいけど……凄まじい勢いで耐久値が減っていくんだけど!? でも無差別攻撃で全部が当たる訳じゃないから、何とか凌げる範囲か!


「……やはり、狙いが付けられない無差別攻撃は使いにくいね。弥生、どうしようか?」

「んー、出し惜しみしても仕方ないし、一気に距離を詰めて殲滅でどう?」

「そうしようか。まぁお互いに油断はしないようにね?」

「それはもちろん! リベンジなんだしね」


 いやいや、この高笑いしてない弥生さんが異常に怖いんだけど! このネコ夫婦、1度でも倒した事があるとこんなに凶悪化してくるの!? 終盤戦に突入でクリアまで進めていこうって段階で、これは勘弁してくれません!?

 えぇい、どうにかしてアル達と合流をしないと、逃げるにしても、倒すにしても状況的に厳し過ぎる! あと少しってとこなのに、そのあと少しが遠いわ!

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