第1272話 クエスト攻略に向けて


 とりあえず報告すべき事は報告出来たけど……果たしてそのまま信じていいものか、その判断をしかねている状況。この情報を伝えてきた人が全面的に信じられるならいいけど、インクアイリーの罠に嵌められるのだけは避けないと!


 ベスタ   : その辺の事情は分かった。ケイ達が逃げた理由は……それらを赤の群集や青の群集に知られないようにする為だな?

 ケイ    : そういう事になるなー。共闘には移行してたんだけど、お互いに邪魔にならないように分散するって形にしてたから……青の群集のジェイさんに隠している事があると勘繰られた時点で逃げる事にした!

 アルマース : 一応は共闘での割り当て分は済ませたから、状況的には問題はないはずだ。……難癖をつけられなければだが。

 レナ    : 割り当て分を済ませたなら、共闘としては問題ないねー。共闘とはいえ、全面的に味方になってる訳じゃないから大丈夫!

 ケイ    : そうだといいんだけどなー。


 青の群集の方は、まぁジェイさんが踏み込みまくってきた事実があるから全然気にしてないし、いざとなればそこを反論の材料にするけどさー。……どっちかというと、気になるのは赤の群集の方なんだよな。

 共闘が終わってないのに放棄して逃げたなんて事は……ウィルさんなら流石に言わないと思うけどさ。うーん、赤の群集がどういう判断を下してくるかが少し怖い?


 アルマース : 最低限、伝えておくべき内容はこれくらいだな。あぁ、そうだ。なんだか妙なクラゲの人……確か名前は『ライブラリ』だったか。その人は俺らが仕留めたぞ。それに安全圏を襲ってきていたメンバーの1人だった『コトネ』が青の群集に仕留められた人だな。


 あー、そういやその件もあったか。正直、あまり報告しても意味なさそうな相手ではあるけど……この話題をしてる間に、名乗り出てくれる人が出るのに期待しよう! 灰のサファリ同盟の方で心当たりを見つけてくれるのでも助かるけど、そこはどうだろう?

 てか、あのクラゲの人ってそういう名前だったのか。何気にアルはしっかりと名前を確認してたんだな。


 ケイ    : クラゲの人はなんか戦闘とかはどうでも良さそうで、電気の昇華魔法が霧にどの程度影響が出るかってのを試してた。……そうなるように誘導された感じがあるから、要注意かも。

 柊     : その『ライブラリ』ってクラゲの人は他にも目撃情報は上がってるね!

 神奈月   : 他のインクアイリーのメンバーとは全然連携せずに、マイペースに動いて死んでいくタイプって話だっけ?

 レナ    : ライブラリさん、自分がしたい事だけをする人だからねー。うん、相変わらずのマイペースっぷり!

 招き猫   : インクアイリーの色々な人の名前が上がってるけど、マイペースっぷりが群を抜いてるって話!

 アルマース : 既に目撃されていたというか……レナさんが知っていた人か。

 レナ    : 流石にインクアイリーの全員は知らないけど、何人かはねー? さっきケイさんが言ってたコトネさんは、自分では発案はしないけど、他のメンバーの発案を実際に可能かどうかを試す人だよ。どうも色々と実戦でやってみて、それが楽しくなっちゃってるっぽいけど。

 ケイ    : 確かにそんな印象だったかも? あ、レナさん、それなら『彼岸花』って人は知らない? 非戦闘員っぽいんだけど……。

 レナ    : ごめん、その人は知らないんだよ。誰でも知ってる訳じゃないからねー。

 ケイ    : あー、そりゃそうか。


 知ってればありがたかったけど、まぁ流石に顔が広いレナさんとはいえ誰でも把握してる訳じゃないか。でも、少なからず知ってる人がいるのはありがたいとこでもある。


 ラック   : ケイさん、アルマースさん! さっきの黒の統率種になってるかもしれないって傭兵に心当たりがある人が出てきたよ!

 ケイ    : おっ、マジか!

 ベスタ   : 灰のサファリ同盟の方に繋がっている人がいたか。

 ラック   : えっと、正確には灰のサファリ同盟のメンバーではないんだけどね? どこにも所属してない人達が、野良PTで意気投合した無所属の龍の人とフレンド登録をしてて、その縁で今回は傭兵として参加してるんだって。でも意気込んでた割に全然ログインしてないから不思議に思ってたんだってさ。

 レナ    : それは結構可能性が高そうかも? 意気投合して参戦しに来てたのなら、貴重な情報を得て目立つケイさん達を見つけて提供しに動くのはおかしくない動きだね。

○時雨    : 確かになー。縁があっての参戦なら、下手にインクアイリーへの協力はしないだろうし……。

 ベスタ   : 確実とは言えんが、今回はその情報を真実として判断して動く方が良さそうか。問題は……ツル系の種族が、今回の群集支援種を支配する種族として設定されているかどうかだが……。

 ツキノワ  : プレイヤーが支配する場合にそういう制限はあるのか? この場合、何も制限はないと考えた方がいい気がするし、猶予はあまり無いと考えておいた方がいいだろ? 

 ベスタ   : ……確かに安易に条件を厳しく見積もって手遅れになるよりは、その方がいいか。どっちにしろ、ミズキを探し出すのが最優先になるな。ただ、異形へと進化する未成体の残滓は可能な限り倒しておくのも……いや、どこかで進化させないとエリアボスが出現しないのか。ちっ、厄介な……。

 レナ    : うーん、未成体の残滓は下手に倒すより、捕獲してどこかに固めとくのがいいのかも? 状況的に不利な状況に陥ってるのは確実みたいだしさ。

 ラック   : それは灰のサファリ同盟の方でやってみるよー! まぁそういう動きを察知したら、インクアイリーが狙ってるくるかもだけど?

 柊     : それを待ち構えて倒すのもありだよね!

 招き猫   : ありだね! あえてあっさり奪われて、追跡していくのもありかも!

 シアン   : それ、いいかも! その運搬役で、海エリアからメンバーを出すよー!

 シン    : おっと、インクアイリーに対しての作戦の話が進んでいるみたいだな。


 群集支援種を乗っ取れる可能性が出てきても、既に現状では捕まって行方不明な状況だもんな。インクアイリーはその可能性を群集には知られたくないみたいだったけど、灰の群集には伝え終えた。

 それを起点にして、インクアイリーを誘き寄せて迎撃する作戦や、逆にあえて仕留められて引き返すのを追跡していく作戦かー。どっちもありな気がするけど、まぁ現状の俺らではそういう作戦には加われそうにないな。


「ケイ、俺らはこれからどう動く?」

「そうだなー。とりあえず必要な報告は終わったし、青の群集は俺らを狙ってくるだろうから、あえて姿を見せて引きつけるのもあり?」

「……結局、いつもの囮か?」

「ま、そうなるなー」


 いつもの事ではあるけども、既に追ってきている状況はこれから利用するのは決して悪くはないはず。


「そういや、増援はどうなった?」

「ここからは見えないけど、もう来てるみたいかな?」

「下から、僅かに戦闘音が聞こえてくるのです!」

「……誰かが……下で……戦ってる?」

「見えてないだけで、こっちに増援に来てくれた人達が時間を稼いでくれてるのかも?」

「あー、確かにそうっぽいな」

「だったら、そこに混ざって撃破を狙うのがいいんじゃねぇか?」

「だなー。おし、とりあえず方針としては、オオカミ組や富岳さん達と合流して青の群集の撃破で!」

「「「「おー!」」」」

「……うん!」


 俺らが報告を終えるまでの時間稼ぎはしてもらったんだ。状況的に競争クエスト情報板を見る余裕は無いだろうし、俺らが攻勢に移る事で役目は済んだと伝えればいい。

 行動値も魔力値も全快にはなってるし、逃げに徹していた俺らが攻撃に転じるのも相当な奇襲になるはず。ここから地面の様子が見えないのが厳しいけど、アルのクジラで突撃していくのが――


「っ!? ケイ、少し待て、新情報が上がってきたぞ」

「え、どんな情報?」

「青の群集の群集支援種のカズキが見つかったそうだ」

「ちょ、このタイミングで!? すぐ確認する!」


 強襲を考えていたけど、その情報が出てきたなら先にそれは確認しておかないと! 群集支援種のカズキ、一体どういう状況で見つかった!? 場合によっては、さっきまでの情報が活きる可能性もあるぞ!


 ライル   : 緊急報告です! 青の群集の群集支援種のカズキを発見! 枯れたツタに覆われた状況で、既に葉のない枯れたような木の異形の姿への進化を確認しました! 

 招き猫   : 枯れた木に、枯れたツルなんだ!? 荒野エリアの回転草って、これと同系統?

 シン    : あー、いやそれは違うと思うぞ。回転草は枯れた草の部分を飛ばしてくるだけで、本体は別にいるタイプのボスだ。本体は別に枯れてない。

 ベスタ   : よく見つけたな、飛翔連隊。ライル、現在地の提示を頼む。

 ライル   : 【現在地】はこちらになります。即座に追跡を行ないますが、何があるか分かりませんので増援をお願いします!

 レナ    : マップの南西の方だね。ベスタさん、これならわたし達は比較的近いから、すぐに向かう?

 ベスタ   : あぁ、そうしよう。今の座標の近場にいる人は、カズキを追いかけるのに回れ!

 

 なるほど、カズキを見つけたのは飛翔連隊か。確か今回は北斗さんも一緒にいたはずだし、連結PTを組んで動いてるって話だっけ。

 えーと、ライルさんが表示してくれた座標は……マップの南西部の方か。マップの端までは距離があるけど、中央よりは端の方が近いくらいだな。

 今の俺らの位置がほぼ中央くらいだから……流石にちょっと距離がある。そっちに出向くのは位置的に無理そうだし、ベスタ達を筆頭に近場の人達に任せた方がいいのかも。


 ディール  : ツル系の種族は、具体的に何になる? 色々と種類はいるだろう?

 ライル   : すみません、まだ識別が出来ていませんで……! あ、今、詳細情報が出ました! ヤマイモで、成熟体になっているのは確定です!

 ケイ    : ヤマイモか!?

 招き猫   : 支配した状況で、どうやって戦ってくるかがちょっと分からないね!?


 それにしても既にカズキは枯れたツル系の種族に乗っ取られて、異形の成熟体へと済みか。それに種族としてはヤマイモになるんだな。

 オフライン版だとイモ部分は植わっていてツル部分での攻撃がメインだったけど……この乗っ取ってる状況だとどうなるんだ? 確か、イモ部分で打撃攻撃もやろうと思えば出来たし、その辺も要注意? その辺の識別情報は!?


 ライル   : っ!? 霧が急に!? すみません、戦闘状態に入りますので、報告は中途半端ですがここまでで!

◯羅刹    : ちっ、どこかが仕掛けてきたか! ここからの動きはどうする?

 ベスタ   : 俺らは大急ぎで現地に向かう! インクアイリーや他の群集との衝突がある可能性は高いし、状況次第ではそれらを排除しながら追跡してボス戦に移行する可能性もある。こっちに集まる人達は、そのつもりで動け!

 レナ    : 距離がある人達は、引き続きミズキの捜索をお願い! 正常な群集支援種がいないとボスを倒しても占拠出来ないからね!

 柊     : ここからが正念場だね!

 蒼弦    : おっし、グリーズ・リベルテを追ってた青の群集は追い払って……って、思いっきり動きが出てるじゃねぇか!

 ケイ    : あ、蒼弦さんが来てたのか。時間稼ぎ、助かった!

 蒼弦    : どういたしまして……と言いたいが、ジェイさんや斬雨さんがいなかったのと、引き上げていった人が多かったのも気になって、それを伝えに来たんだが……青の群集は、カズキの方に向かったか?

 富岳    : 可能性としてはあり得るな。位置的には離れてはいるが、ボス戦に備える為なら引いてもおかしくはない。

 アルマース : 青の群集は、俺らを追いかけている場合でもなくなった訳か。

 刹那    : どうやらそのようであるな!


 ふむふむ、どういう情報を握ってるかも分からないし、聞き出せるかも分からない俺らを追いかけるよりは、見つけたカズキの元へ急ぐ方が優先順位は高いもんな。ボス戦に突入する可能性も考えれば、既に戦力を動かし始めてもおかしくはないか。


 シアン   : 色々と動きが出てきたけど、さっきの作戦はそのまま実行?

 ラック   : どっちにしてもあちこち探し回る必要はあるから、並行してやっていくよー! 湖が色々と怪しい感じだし、何か見つけたら生き残る事よりも情報を伝える事を優先で!

 ザック   : おっ、色々と動いてんじゃん! ははっ! 情報を得て死ぬのなら、任せてもらおうか!

 シン    : ザックさんがそれを言うと、まぁ説得力が凄いな。

 ローズ   : 各PTでの判断で、散って動いていきますわよ!

 ツキノワ  : 当然だ! 赤の群集にも、青の群集にも、インクアイリーにも、無所属の乱入勢にも負けてたまるか!

 蒼弦    : それは当然の話だな! 勝ちを取りに行くぞ!

 富岳    : 当たり前……だが、ちっ、ここで邪魔が入るか。蒼弦、始末していくぞ。

 蒼弦    : げっ!? 赤の群集の害虫軍団か!?

 アイル   : あー、噂には聞いていたけど、こんなのもいるんだね。


 なんだか俺らの下に、例の害虫軍団が出現中かよ! 多分、その中にはクモもいるだろうし、サヤが苦手な事を考えたら離れた方がいいのかも。

 とりあえず俺らへの追跡は無くなったみたいだし、これからの動きはみんなと相談してからで! サヤが戦力にならない状況で加わっても、下手すれば邪魔になりかねないしさ。

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