第1241話 みんなと合流
母さんから思わぬ話題が出た事で微妙な疲れを感じはしたけど、ログインは完了! 食器洗いを代わってもらった分だけ早くなったかというと、正直微妙だけど……20時にはログイン出来たんだし、問題はないか。
まぁそれはいいとして……なんだか周囲に妙に人が多い気もするけど、なんでだろ? 何か面白い組み合わせでの模擬戦でもやってるのか? 可能性としてはありそうだけど……今は桜花さんはログインしてないっぽい? んー、晩飯を食べに行ってる可能性はありそうだ。
とりあえずハーレさんはもうログインしてるだろうし、他のみんなとも合流して……って、あれ? すぐ側に思いっきり見覚えがあるリスの姿があるね?
「わっ!? ケイさんがすぐに来たのさー!?」
「驚き過ぎだろ、ハーレさん。てか、まだみんなと合流してなかったのか?」
「お知らせが更新されてたから、その辺を少しいったんに聞いてたのです! それで今、共同体のチャットでその話をしてたとこなのさー!」
「あー、なるほど」
そりゃあのお知らせ内容は気になるよなー。まぁまだ先の話にはなるけど、次の共闘イベントの開催が確定なんだしさ。
「そういう状況なら俺もチャットの方を見とくかー」
「それが良いと思うのです!」
という事で、地味に光っている共同体のチャット項目を開いてっと。さて、現状はどういう状態になってるんだろうね?
ハーレ : ケイさんも来たよー! すぐ隣にいます!
アルマース : おっ、良いタイミングじゃねぇか。
サヤ : それなら、後の事も考えて桜花さんの所で合流で良さそうかな?
ヨッシ : そだね。作戦らしい作戦は無いとは言ってたけど、それでも基本方針は伝えるって話だったしさ。
ケイ : あー、桜花さんの所で合流になってるのか。
確かに俺もハーレさんもいるから、合流場所としては都合はいいか? でも、妙に人が多いみたいだし……って、ちょい待った。後の事を考えての、ここでの合流?
ケイ : 桜花さんの所で合流はいいんだけど、後の事を考えてってどういう意味?
アルマース : ケイにはまずそこからの説明が必要か。今回は模擬戦の中継を使って基本方針の通達をするって話になってるぞ。
サヤ : 下手にどこかのエリアに集まるよりも、その方がやりやすいみたいかな?
ヨッシ : 20時半くらいから通達を始めて、その後から分散して安全圏へ移動って感じみたいだよ。
ケイ : あー、そういう流れでいくのか!
ベスタは作戦らしい作戦は用意しないって言ってたし、メンバーの割り振りが無いならそういう手段もありなんだなー! 見れる対象を灰の群集に制限すれば、他の群集に知られる心配もないか。
なるほど、そういう通達が既に行われているからこそ、桜花さんの周りに人が集まってるんだな。桜花さんだけでなく不動種でその中継に関わる人の場所には集まってそうだね。
ハーレ : 私とケイさんは、そのまま待っていればいいですか!?
アルマース : おう、それで構わんぞ。俺らの方がそっちに行く方が都合はいいからな。
ケイ : それは了解っと。ちなみにアル達はどこにいるんだ?
サヤ : ミズキの森林でモンスターズ・サバイバルの人達のとこだよ。元々は桜花さんの所にいたんだけど、桜花さんが晩ご飯を食べにログアウトしたのと、アルがログインしたのに合わせて移動したかな。
ヨッシ : 移動する前に夕方の件に進展があったって聞いて、その確認をしててね? ハーレ、あの後に色々と動きがあったなら、教えてくれてもよくない?
ハーレ : はっ!? メッセージで送ろうと思ってたのを忘れてたのです!?
そういや夕方にベスタが来たのは、サヤとハーレさんがログアウトした後だった!? あー、てっきりハーレさんが『インクアイリー』については伝えてくれてると思ったんだけど……その時間は無かったっぽいな。
ケイ : えーと、とりあえず状況は分かったけど……桜花さんは今はいないぞ?
ヨッシ : 20時くらいには戻ってくるって言ってたから、そろそろ戻ってくると思うよ?
ケイ : あー、なるほど。既に戻ってくる時間は聞いてたのか。
アルマース : まぁそれまでにケイからも色々聞きたいとこだがな? ログインしてみりゃ『インクアイリー』なんて集団が黒幕だって判明してるし、それを探り当てたのが俺ら『グリーズ・リベルテ』って話になってて、割と困惑したからな?
サヤ : 探り当てた時にいた2人がいないから、状況が分からなくて混乱したかな!
ケイ : ……それはなんかすまん。
ハーレ : 伝え忘れ、ごめんなさい!
本当ならハーレさんが連絡出来るタイミングもあったはずだけど……あれか。俺の部屋で、アルバイトのあれこれの話をしてたのですっかり忘れきってたな?
うーん、まぁゲームの事ばかりを考えてリアルの都合を蔑ろにする訳にもいかないし、この辺は難しいとこだよな。別にハーレさんとしては悪ふざけで言ってような感じでもなかったし……。まぁ意図がイマイチ掴み切れない部分はあったけどさ。
アルマース : まぁ今回はタイミングの問題もあるんだろうが……切実に大型アップデートで予定されている『共同体伝言板』が欲しくなるな。
ケイ : それは確かに……。あれって、ゲーム内からでも伝言は出来るのか?
ハーレ : 切実に欲しい機能なのです!
アルマース : 詳細仕様が分からんが、その辺は実装されてからの話だな。
ケイ : それもそうだなー。それで……どの辺まで状況を把握してるんだ?
俺らから直接伝えられてはいなかったけど、広めた情報から内容自体は把握してるっぽいしね。でも、それがどの程度なのかが微妙なところ!
サヤ : 『インクアイリー』っていう、かつての赤のサファリ同盟みたいに表に出てきていなかった共同体が黒幕の中心だとは聞いたかな。ケイの推測がほぼ当たってたみたいだね?
ヨッシ : 共闘を崩す為に、赤の群集の傭兵を寝返らせようとしてるって話も聞いたよ。
アルマース : もし赤の群集が共闘を維持出来なくなったら、灰の群集と青の群集だけで共闘しようって話が流れていたが……これは仕込みか? それとも自然発生のものか?
ハーレ : 大体、必要な情報は伝わってそうなのです!
ケイ : だなー。アル、その件は仕込みになるぞ。
仕込みの可能性は考えていても、そうだと断定出来ない程度の話の広がり方にはなってるっぽいね。まぁその件は群集からの指示ではなく噂という形で流そうとしてたんだから、上手くいってると考えても良さそうだ。
アルマース : やっぱりか。……傭兵に群集からの誘導だと思われて、相手にされない可能性もあるんじゃねぇか?
ケイ : あるにはあるけど、ぶっちゃけそれは防ぎようがないぞ。てか、それで抑えたいのは青の群集の傭兵だし、そもそも青の群集の方にはその話は通していない!
アルマース : おいおい、無茶な事をやってんな!? あー、でも青の群集で指揮をしてる人達の思惑が本当に入っていないのなら、ただの難癖になるのか……。
ケイ : そういう事!
青の群集の指示じゃないから、青の群集への反発として動くのは的外れになるんだよなー。まぁ傭兵の人達が共闘をしようとする流れから外れた状況で戦いにくいようにはしてるけどね。
その上で、群集としての共闘に乗るか、『インクアイリー』の策に乗るか、そこら辺がどうでるかが問題になってくる部分だよなー。もうこればっかりは、実際に動き出してからじゃないと判別しようがないけどさ。
ヨッシ : それにしても……随分と競争クエストの裏で情報戦をやり合ってるんだね?
サヤ : ログインしたら、色々と状況が変わっててびっくりしたかな!
ケイ : まぁ正体が分かった以上は放置も出来ないしなー。あ、ベスタからは作戦らしい作戦は用意してないって聞いてるけど、その辺の情報はどうなってる?
アルマース : それに関しては、肉食獣さんから聞いたぞ。まぁ妥当な判断だと思うが、まだ大々的には広まってないな。一部の共同体に事前に伝えられているだけという感じだ。
サヤ : それを中継で伝えるって流れになってるみたいかな?
ヨッシ : どんな作戦になるのか、気にしてる人は結構いたね。
ハーレ : そうなってるんだ!?
ケイ : なるほど、まだ作戦がないのは大々的には広めてない段階かー。
うーん、ちょっと作戦を気にしてる人がいるのは気になるけど、そういう人達には群集としての作戦無しになっても大丈夫か?
でも、まともに作戦を用意出来る状況じゃないっていうベスタの言う事も分かるもんなー。事前に一部の共同体には伝えてるって事は、そういう共同体が方向性を示す感じで動かすつもりなのかも?
ああ、だからこその中継での告知か! 不動種の人なら色んな場所に散らばっているし、顔馴染みの人が集まってる可能性も高い。中継で群集の方針を伝えてから、その場でPTを組んでいくのも出来るはず。
ハーレ : それはそうとして、チャットで話し込んでていいのー!?
アルマース : 書き込みながらだが、そっちに移動中だから問題ないぞ。流石に少し移動が遅くなってるが……。
サヤ : もう少しで到着かな!
ヨッシ : 桜花さんの桜の木が見えてきたとこだね。
ハーレ : おー! アルさんの姿を確認なのです!
なるほど、移動しながらの書き込みだったのか。あー、確かに木を背負った空飛ぶクジラがエンの方から飛んできてる様子が見えるし、あれがアルだな。
ケイ : あ、そうだ。レナさんって見てない?
サヤ : レナさん? ううん、見てないかな。アルとヨッシはどう?
アルマース : 俺も見てないな。さっきフレンドリストを見た時はログインはしてなかった気がするが……。
ヨッシ : 私も見てないけど……レナさんがどうかしたの?
ケイ : えーと、おそらく『インクアイリー』に関して1番詳しい可能性があってなー。そうか、レナさんはログインしてないのか……。
うーん、本当にレナさんが灰の群集を離れて敵に回ってるなんて事は無いよな!? 黒の統率種になったらログイン表示はされなくなるなんて話もあった気がするし、それが原因でログインが確認出来ないのだとすると……恐ろしい!?
アルマース : ふむ、レナさんの顔の広さなら知ってても不思議じゃないが……1番詳しいってのは言い過ぎじゃねぇか?
ケイ : あー、説明が足りてなかった。例の悪意だらけのスライム……あれを断定する際に、レナさんが『インクアイリー』の助けを借りてたらしくてさ? 流石にこの情報は出回ってないよな?
サヤ : え、そうなのかな!?
ヨッシ : 知ってるどころか、レナさんは直接の接点を持ってたの!?
ハーレ : ケイさん、それは地味に初耳なのさー!?
ケイ : あれ? ベスタに説明したけど……って、その時はハーレさんは紅焔さんと模擬戦に行ってたんだっけか!?
ハーレ : そのタイミングだったの!?
あー、てっきりハーレさんには伝わってるものとばかり思ってたけど、そうでもなかったっぽい。……そういや、ハーレさんと紅焔さんの模擬戦ってどっちが勝ったのか知らないままな気がする?
アルマース : その情報がある状態でレナさんの不在は……嫌な予感がするんだが?
ケイ : 俺もそう思ってるから、見たかどうかを確認してるんだって! レナさんがこの状況で敵に回るのは、本気で笑えないから!
サヤ : ……確か、黒の統率種になってたらログイン表示は確認出来ないよね?
ハーレ : レナさん、敵になっちゃったの!?
ヨッシ : ログインが確認出来ないと、その可能性は高くなりそうだよね……。レナさん、どこの共同体に所属してないし……。
くっ、レナさんなら普通に競争クエストには参戦してくるだろうから、この時間にはログインしていると思ってたんだけど……一気に嫌な可能性が広まってきた!?
レナさん的には『インクアイリー』に借りがある状況の可能性もあるし、『インクアイリー』からしても戦力的にも人脈的にも味方に引き入れたいはず。……レナさんとは色んな意味で戦いたくないから、この可能性は冗談抜きで勘弁してくれよ!?
「ケイさん、ケイさん! ダイクさんならログインしてるのさー!」
「ダイクさんはいるのか!? よし、それならダイクさん経由で――」
「およ? ダイクがどうかしたの?」
……ん? 思いっきり聞き覚えがある声がしてきたんだけど……あれ? 声が聞こえた方を見てみれば……うん、普通に見覚えのある赤いリスがいた。
「「レナさん!?」」
「およ!? ハーレ、ケイさん、どうしたの!?」
カーソルの色は灰色のままだし、いつもの様子と特に変わらない……? ただの考え過ぎだったのか?
「普通にレナさんがいるじゃねぇか……」
「……ホッとしたかな」
「あはは、かなり焦っちゃったね……」
「およ!? アルマースさんもサヤさんもヨッシさんもどうしたの? ログイン早々、どういう状況!?」
ははっ、この反応だとただ単純にレナさんはさっきまで普通にログインしてなかっただけっぽいなー。あー、なんか一気に安心出来たよ。
「ケイさん、状況の説明をお願いしてもいい? 流石に状況が飲み込めないんだけど!?」
「そりゃもちろん! それに、レナさんに聞いておきたい情報もあるしな」
「およ? わたしに聞きたい情報?」
さーて、まずはレナさんに事情説明からしていきますか。流石に俺らの様子を見て混乱させちゃったみたいだし、もしかするとまだレナさんは『インクアイリー』が黒幕だって事を知らないのかも?
――――――
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