第1219話 迎撃作戦、開始
青の群集の俺らへの本格的な攻撃が、間もなく始まりそうになっている。それが分かっていて、大人しく見ている訳じゃないし、迎撃手段は既に考案済み!
今の段階で送られてきている青の群集の戦力が大した事がないのが、罠じゃないかと不安にもなってきたけど……もうなるようにしかならないっての! もしそうだったら、臨機応変に動きを切り替えるまで!
2班の人達は盾にしてくれていいとサッポロさんが言い切ってくれた。あんまり味方を盾と言うのには抵抗はあるけど……ここは、俺らの作戦に任せると託してくれたんだ。その心意気、無下には出来るかよ!
「2班、全員突撃! 増援が来る前に、今いる連中は一掃する!」
「了解だ! 俺らは敵の数を減らしていくぞ!」
「仕留められてもいいから、灰の群集を出来るだけ消耗させていけ! ここが正念場だぞ!」
サッポロさんの号令と、青の群集のこの場での指揮をしているトカゲの人の号令の合わせて、一時は少し収まっていた喧騒が一気に広がっていく。
トカゲの人の言い回しが、どうも自分達は捨て駒だというのを主張してるようなのが気になるけど……まぁ、ともかく作戦開始!
「ヨッシさん、同じポイズンミストでいくぞ」
「了解! 『ポイズンクリエイト』!」
別にこれは本格的に毒で動きを封じるのが目的ではない。でもまぁ、麻痺毒と神経毒が効いて、2班の人が仕留めやすくなるならそっちの効果も期待したいけどね!
<行動値1と魔力値3消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』を発動します> 行動値 119/120(上限値使用:1): 魔力値 299/302
<『複合魔法:ポイズンミスト』が発動しました>
観察して作戦を考えてる間にレモンを食いまくって魔力値は全快させておいた。敵の数の方が多かったはずなのに、そんな余裕があったのが不気味だけど……なんだろう、この言い知れない不安は。
今の状況、何かを読み違えている? いや、でも過剰な警戒をし過ぎるとそれはそれで手を打つ事が出来なくなる。全属性のアブソーブ持ちなんて想定したら、それこそ魔法なんて使えなくなるし……えぇい、こうして不安にさせる事自体が作戦は気もしてくるんだよ!
「また毒霧か。同じ事を繰り返したところで、そんなもんは対処すりゃいいだけだ! 盛大に吹き飛ばせ!」
「「『ウィンドクリエイト』『強風の操作』!」」
やっぱりポイズンミストへの対処は、風で吹き飛ばすのみか。ここでストームでも使われた方が厄介だったけど、味方まで一緒に吹き飛ばすのは避けようとしたってとこだろうな。でも、そこは判断ミスだぜ!
「さて、やってくるか! 『跳躍』『黒の刻印:剥奪』『アブソーブ・ウィンド』!」
「げっ!? 解除された!?」
「風のアブソーブ持ち!?」
「狼狽えるな! 消されたのは片方だけ――」
「もう一つ! 『遠隔同調』『投擲』『黒の刻印:剥奪』!」
「ちょっと待て!? なんで黒の刻印の再刻印の時間を無視して使える!?」
「そんなもん、教える訳がねぇだろうが! 『アースクリエイト』『土の操作』!」
「くっ! ど、毒が……」
おぉ! 今の今までまともに捉えられなかった指揮をしてるトカゲの人の拘束に成功した上に、神経毒が入ったっぽい。富岳さん、ナイス!
「アル!」
「おうよ! 『並列制御』『シーウォータークリエイト』『シーウォータークリエイト』『並列制御』『海水の操作』『海水の操作』!」
よし、少しポイズンミストは吹き飛ばされているけど、それでもまだかなり残っていて海水の視認性は悪い状況だ。そもそも今日は夜の日だから、元々遠くからじゃ分かりにくいだろうしな!
青の群集の本隊はかなり迫ってきてるし、その中から銀光が強まっていく様子がいくつも見える。そりゃ、まぁ俺だってそうするよ!
「刹那さん、攻撃開始! 刹那さん以外は目を塞げ! 閃光、いくぞ!」
「なっ!? 全員、光を見るな!」
「委細承知! 【疾く空を駆けよ、数多なる風刃】!」
「合図は了解だ。3班、突撃準備を開始!」
刹那さんのはもういつもの事だから、スルーで! ベスタには合図が届いたし、今回はガチで閃光を使う! ポイズンミストはここで破棄だ!
<行動値を3消費して『閃光Lv3』を発動します> 行動値 116/120(上限値使用:1)
「ぎゃー!?」
「なんで下から!?」
「み、水だと!?」
よし、3班の出発の爆発音に合わせて、閃光の眩しさで周囲を塗り潰していけたな。地面にアルが広げた海水にも反射して、下からも眩しさはバッチリ! 水でも良かったんだけど、状況次第でヨッシさんの電気で麻痺狙いも考えてるからね。……必要なさそうだけど。
タイミングを間違えれば3班に悪影響を与える事になったけど、出発したばかりの今だったら問題なかったはず。……うん、爆発音と共にこっちに向かってちゃんと吹っ飛んできてる。
「ここで爆発音だと!? もう吹っ飛ばしてくる予定は……って、今のは灰の群集の仕業か!?」
いやいや、この状態で教える訳もないって。というか、このトカゲの人は色々と情報をポロッと言い過ぎてない? どうにも青の群集らしくないというか、他に指揮をする適任者がいそうな気もするんだけど……。
あー、集中しろ、集中を! ここでの指揮は俺に任されてるんだ。判断をミスする事よりも、迷ってまともに判断を下せない事の方がよっぽどまずい! 少なくとも自分の判断を、実行前に疑うな!
現状は青の群集の本隊に向けて、刹那さんが風の刃を飛ばしているけど……閃光が効いたのか、思った以上に当たっている。3班の吹き飛ばし移動に警戒したのもあるみたいで、結構統率が乱れているな。
それでも大声が聞こえて、態勢を立て直そうとしてる様子も見える。……ちっ、吹っ飛んで移動をしてきてる訳じゃないだけ、立て直し自体も可能か。まぁ刹那さんの攻撃で倒し切るのを目的にはしてないし、少なからず混乱が生じているならそれで十分。
「ケイ殿、そろそろ斬り終わるのであるよ! 思ったより、統率が乱れないであるな……」
「まぁ流石に多少の攻撃は想定してるだろうし、もう少しで到着してくるしな。でも、3班への奇襲を防ぐだけの撹乱は出来た……って、あれ?」
なんかその統率が急激に乱れ始めたんだけど、一体何が起きた? 大きくはないけど爆発音が不規則に鳴り響いてるし、これは……もしかして!?
「ケイ、こっちからの撹乱を入れておいたぞ」
「……ベスタ、それはどういう内容?」
「俺らの出発に合わせて、ソロで大暴れするのが大得意な奴が向かったからな」
「ソロで大暴れって……行ったのは十六夜さんか!」
「あぁ、そういう事だ。ついでにもう1発大きなのがあるから、上手く使え」
「もう1発!? 上手く使えって、どういう――」
あ、内容を聞かなくても分かった。ははっ、確かに大きなもう1発だな、これ! ベスタは俺相手じゃない指示を出しまくってたから、ほぼスルーしてた状況だったけど……へぇ、これを仕込んでたんだな!
「おぉ!? ジンベエ殿、シアン殿達がとんでもない事をしてるのであるよ!」
「へぇ、あちこちに散らばって繋げた海水の操作での津波ってか! ケイさん、こりゃすぐにここも呑まれるぜ?」
「だろうなー! アル、作戦変更で海水がこっちまで流れてこないように分断! この場にいる海水の操作を使える人はみんなそれで頼む!」
「感電防止って事だな! 了解だ!」
「2班、聞いたな! その辺の連中の相手は海エリア以外のメンバーで引き受ける! 今は即座に動け!」
「「「「おう! 『シーウォータークリエイト』『海水の操作』!」」」」
「ジンベエ殿、拙者達もやるのであるよ! 『シーウォータークリエイト』『海水の操作』!」
「当然だ! 『シーウォータークリエイト』『海水の操作』!」
ははっ! 咄嗟の判断の割に、みんなの動きが早いし息もピッタリじゃん! なんだかんだで海エリアの人達同士で連携も取れるんだな。これで俺ら全員を守る、海水の防壁が出来上がりだ!
これで青の群集側から、電気を流される心配はなくなった。そしてもう青の群集の本隊が、海エリアのみんなの連携の津波に呑まれる寸前。……狙うなら、今!
「風雷コンビ、やれ!」
「「了解だ! 『エレクトロクリエイト』!」」
海水は雷属性の効果範囲を大幅に広げてくれる。だからこそ、風雷コンビの昇華魔法であるサンダーボルトが上手く機能する。とはいえ、これは吸収される可能性があるからな!
「他にも電気魔法持ちの人は、盛大にぶっ放せ! 吸収されようが、吸収し切れないだけ撃ち込めばいい!」
「サヤ、やるよ! 『エレクトロクリエイト』!」
「あ、そういえば私もいけたかな!? いくよ、ヨッシ! 『略:エレクトロクリエイト』!」
「誰か、昇華持ちは合わせてくれ! 『エレクトロクリエイト』!」
「よし、きた! 『エレクトロクリエイト』!」
サヤは自分の竜が電気魔法の昇華になってたのを忘れてたんかい! いや、まざ普段の主戦力ではないスキルだから、こんな咄嗟の状況だとパッと浮かばなくても仕方ないのかもね。
ともかくバッチリとサヤとヨッシさんでも、サンダーボルトが発動中だな。最初こそ吸われている気配もあったけど、もう今は完全に許容量オーバーだろう。昇華魔法を使える人数と同じ人数以上のアブソーブ持ちがいなければ対処はし切れない。反撃で流し返そうとしても、それは既に封じ済み。
「こっちもいくぜ! 『エレクトロクリエイト』!」
「モコモコ、やっちゃえ!」
「もちろん! 『エレクトロクリエイト』!」
「な、なんだよ、これ! なんでこんな規模で、津波と雷が!?」
「ほ、本隊が……呑まれて……」
目の前にいた連中が唖然としてるけど、これは俺もビックリしてるからなー。いやはや、ベスタも凄い事を思いつくもんだ! さて、そうしてる間に3班も突っ込んできて到着か。
「「『ウィンドクリエイト』『強風の操作』!」」
「待たせたな、ケイ。3班、近接部隊、呆けている連中を始末するぞ! 『魔力集中』『爪刃双閃舞』!」
「「「「「おう! 『魔力集中』!」」」」」
「遠距離部隊、近接部隊の援護をしていくよ!」
「「「「「おー!」」」」」
「索敵部隊、周辺警戒! 今ので全員は倒せていないはずだ! 油断するな!」
「「「「「おう!」」」」」
おぉ!? 3班はPT毎に近接、遠距離、索敵で役割分担をしてるのか!? 減速には強風の操作を使ってたし、なんか1班や2班とは違う感じで構成されてるっぽい。
種族的にエリアの偏りもないし……あ、地味に連盟を組んでる3つの共同体じゃん、この3班!? そりゃこの連携にも納得だよ! あー、集合した時にバラバラで見てたから気付かなかったのかも。
「さーて、そろそろ……って、およ!? 上から凄いのが来てる……ドサクサに紛れて闇の操作で隠してきてるっぽいね? ……なんで気付けなかったんだろ?」
「わー!? 大きな何かが落ちてきてるのさー!?」
「ちょっと闇の操作は解除してくるよ! ケイさん、その間に対処を考えといてー! 『黒の刻印:剥奪』!」
「夜を利用して、とんでもないのを隠してきたな!? これの対処か……」
今のこのタイミングで真上から大岩……いや、岩を大量に組み合わせた構造物を飛ばしてくる芸当!? しかも今、レナさんがようやく気付いて闇の操作を破って初めて分かった偽装付きで……アルのクジラよりも大きくないか、これ!? どう考えても1人で生成や操作が出来る量を明確に超えているし、これは青の群集の強襲の切り札か!
流れる電気を遮断しつつ、意識が薄れている真上から仕掛けてくるか。絶対にそうだとは限らないけど、やりそうな相手は思いつく! だったら、それを前提に対処を考えて……よし、これで!
「富岳さん、風音さん、2人でストームを発動! 俺らを巻き込んでもいいから、上のあれをぶっ壊せ!」
「了解だ! やるぞ、風音さん! 『ウィンドクリエイト』!」
「……うん! ……『共生指示:登録2』」
複数人で発動していようが、2人で発動した弱点属性の風の昇華魔法に耐えられるとも思えない。でも、その程度の事を想定していないはずがないよな。
だから、これは壊される事が前提の攻撃のはず。それが狙いなら、本命はこれを壊された後! さーて、今度こそ完全に倒させてもらおうか!
「ベスタ、指揮は交代で! 対処は俺が行く!」
「全員聞こえたな! 指揮は俺が引き継ぐ! ケイ、行ってこい!」
「ほいよっと!」
今の作戦は、大部分がベスタの方が把握していそうな状況になっている。それに、俺は指揮に集中していたから行動値も魔力値も余裕は十分! 何より、この相手は俺自身でやらないと気が済まないからな!
<行動値上限を6使用して『移動操作制御Ⅰ』を発動します> 行動値 120/120 → 114/114(上限値使用:7)
<行動値上限を3使用と魔力値6消費して『魔力集中Lv3』を発動します> 行動値 114/114 → 111/111(上限値使用:10): 魔力値 296/302 :効果時間 14分
即座に飛行鎧を展開して、ストームの流れには逆らわずに破壊されていく大量の岩の塊へと飛んでいく。ははっ、やっぱりいたか! いない訳がないよなぁ、ジェイさんと斬雨さんのコンビが!
あー、しかも斬雨さんの色がまた変わっている。緑って事は、纏風済みって事か。向こうは向こうで待ち構えてたんだな。……それにしても、内部が空洞になってるのか、これ。誘い込まれたか……?
「誤魔化し切れるとは思ってはいませんでしたけど、そのまま突っ込んできますか! ですが、それも承知の上の事! 斬雨!」
「今度こそ仕留めさせてもらうぜ、ケイさん! 『連風閃』!」
「はいそうですかって、やられる訳にいくかっての!」
「いえ、落とさせていただきますよ! 『アースクラスター』!」
何度も迫ってくるタチウオの風で作られた凶刃と、上から叩きつけられるような小石の落下。それにストームで壊れていく、複数人で発動しているっぽい岩の操作。この岩を操作してる人達は岩の内部じゃなくて上部か! ……何か違和感があるな?
まぁ斬雨さんの攻撃としては想定の範囲内! 動きを最小限にして躱しながら……流石に完全には防ぎ切れないか。でも、それも想定しているからこその魔力集中だ!
<行動値を10消費して『連強衝打Lv1』を発動します> 行動値 101/111(上限値使用:10)
飛行鎧に当たりそうなものだけハサミで殴り飛ばしながら、距離を詰めていく。まぁ向こうが落ちてきてる上に、操作してる大量の岩が破壊されてるんだから、そうなって当然だけどな!
「魔法がメインな割に、今回は無茶をしますね! 『魔法砲撃』『アースクラスター』!」
「今回の初手の攻防で、斬雨さんを殴り飛ばしたジェイさんには言われたくないけどな!」
思った以上に落下が遅いこの大量の岩の塊、異常にデカ過ぎるし……もう破壊出来ててもおかしくないはずなのに、壊し切れてない? 魔法産の岩にしては壊れた後の破片の残り方も変だし、これは天然産の岩で形成されている? 何かがおかしいぞ、これ!
まぁ外にいるメンバーなら誰かがおかしい事に気付くし、そっちはみんなに任せよう。その間に、俺はこの2人の相手をするだけだ! ジャングルで横取りされた分くらいはやり返さないとなぁ!
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