第1216話 他の戦場の情勢は


 とりあえず2班の出発と同時に発生した襲撃は片付け、2班との合流に成功。半数くらいのメンバーは俺も含めて行動値や魔力値は大幅には消耗はしてないけど、どうしても集中力は普段以上に削られまくっている。

 休憩中だとしても気を緩めきったらダメだけど、それでも2班がメインの警戒を交代してくれるのなら多少は違うはず。という事で、1班はアルを中心にして浄化の要所の真上を占拠しつつ、情報整理を兼ねたほんの少しの休憩!


「1班、とりあえず軽くだけど休憩! ただし、全員一気にじゃなくて、それぞれのPTで半分の3人ずつ交代しながらで! ……風雷コンビはもう好きにしてくれ」

「わはははは! まだまだ余裕だ! なぁ、疾風の!」

「まだまだ暴れ足りないくらいだぜ! なぁ、迅雷の!」

「……暴れ慣れてるからねー、あの2人。喧嘩で2時間連続でも平気で戦い続けるくらいだし? まぁわたしも連続で戦えない訳じゃないけど……」

「あー、そうなのか。もう、なんか色々と風雷コンビの扱い辛さは実感したよ……」


 レナさんがウンザリしながら言ってるけど、2時間連続で戦い続けるのもすごい集中力ではあるけどなー。……今回のは何もないのに気を張り続けたから微妙に疲れ方は違うはずだけど、風雷コンビには影響なしか。

 まぁ勝手に休み始めるなら困るけど、本人達に問題ないなら動いてても問題はないしね。むしろ、戦力的にはありがたいくらいだし。


「あ、森守りさん達はどうする?」

「俺らは疲れてる訳じゃねぇから、行動値と魔力値の回復だけさせてくれ。その後は、1PTでの遊撃として自由に指示を出してくれて構わん!」

「ほいよっと。それじゃそうさせてもらうよ」


 よし、これでとりあえずの指示出しは終了。森守りさん達は人数的には6人で1PTにしてきてるみたいだし、遊撃戦力なら回復し次第、周辺を巡回して警戒に当たってもらおうかな? まぁ、その辺はすぐにとはいかないし、食べ物を食べて回復中だからそれが終わってからだな。

 さてと、それじゃ俺らがどういう順番で休憩するかを決めて……先に他のみんなの様子を見とくか。指揮を任されてるんだし、その辺の確認は大事だし。


「休憩はまずはディール殿と富岳殿が取るのであるよ。戦闘をした後でもあるし、ジンベエ殿はそれでいいであるか?」

「おう、それでいいぜ。戦闘直後の2人より先に休む気はねぇしな」

「だってよ、富岳! おし、休むぜ!」

「ここはお言葉に甘えさせてもらうが……ディール、油断はし過ぎるなよ?」

「それくらいは承知してるってんだ!」


「俺らの方も決めていくぞ。戦力バランスを考えて……先に休むのは、黒曜、モコモコ、それとレナさんだな。特にレナさんは戦闘直後だから、行動値の回復を優先してくれ」

「それじゃ先に休ませてもらうよー」

「流石に神経を張り詰め過ぎたー! 休憩ー!」

「まぁここまで想定とは違う攻め方をされるとね……」

「でも、まだ全然油断は出来ないからね! しっかりと警戒はしておくよ、シオカラ!」

「うん、アリスも警戒よろしくね!」

「それはもちろん!」


 ふむ、ざっと見た感じでは割と順当というか、当たり前な感じでの休憩の割り振りにはなってるね。さっきまで戦闘をしてた人を最優先にするのは当然の流れか。


「俺らのとこも決めていくぞ。休憩はハーレさんと風音さんを優先して――」

「あと、ケイもだな。てか、ケイは交代関係なく警戒には回らずに下がってろ」

「ちょ、アル!? いくらなんでも俺だけそれは――」

「いいや、ここは従ってもらうぞ。ケイは周辺警戒よりも、情報収集に専念しろ」

「あ、そういう理由?」


 何を言い出したのかと思ったら、俺が情報収集に専念出来るようにか。でも、そこで変に俺だけ警戒から外れるのは……どうなんだ? 確かに情報収集は大事だし、俺も少しは戦ったから先にその辺をやろうとは思ってたけど……。


「警戒しながらだと、やっぱりやりにくいよね?」

「そこら辺は私達に任せて、ケイはケイの役目をお願いかな!」

「状況が想定とは違う過ぎるんだ。ベスタが来ればまた状況も変わるだろうが、今はそっちに専念しとけ。この先の展開で何があるか、情報がなけりゃ予測も出来んからな」

「あー、確かにそりゃそうだ。おし、それじゃみんなに任せるけど、何かあったらすぐに伝えてくれよ!」

「それは当然なのです!」

「……うん!」


 情報収集をして、青の群集の動きを確認するのは必須だもんな。誰かに集めてきてもらってもいいけど、最終的に判断をするのはリーダーを引き受けている俺の役目か。

 出来るだけ警戒を緩める人員は少ない方がいいから、俺が1人でやるのが今は最適解になってくるよなー。……これはこれで重要な事だから、気を引き締めてやりますか!


 そうなると……まずはカトレアの情報に関して正確なところを把握しておかないと。何気に重要な情報だし、ここから見える位置ならかなり近いし、その辺をベスタに伝えて、カトレアの防衛班に移動してもらわないと!


「風雷コンビ、カトレアが出現した位置がどの辺か教えてくれ!」

「すまん、あれは嘘だ! なぁ、疾風の!」

「敵を騙すにはまず味方からってな! なぁ、迅雷の!」

「ちょ!? え? あの情報、嘘かよ!?」

「ふっふっふ、実はそうなのです! 何もないのに、いきなり言い出したのはびっくりしたのさー!」

「ハーレさんもかよ! ……マジでダミー情報だったのか」


 ダミー情報だというハッタリで混乱させようと目論んだのに、俺が騙されてんじゃん! まさかの風雷コンビが、そんな戦略的なダミー情報を流してくるとは! しかも、あの流れですぐにハーレさんまでそれに乗っかってたとは思わなかったわ!


「ケイ……カトレアなら、開始地点のすぐ近くで発見されて、浄化の守りを注ぎ込む為に動き始めているところだ。そっちは、一段楽ついたと考えていいか? カトレアの名前も出ていたが……」

「……とりあえず、俺は情報収集に専念出来る状況にはなったそ、ベスタ。それと青の群集にはカトレアのランダムリスポーン位置のダミー情報が伝わったのは確定。どこまで信じるかは分からないけど……」

「少なくともあちこちにダミー部隊も送り込んでいるから、全くの無意味という事もないだろう。そのダミー情報の信憑性を高める為に、その場所に人員を送り込むのもありだな」

「あー、それは確かにありか! えーと、ダミー情報の位置的には俺らのいる場所から見える範囲での北側だな」

「なるほど、その辺りか。なら、カトレア捜索で散らばっている近くの者達をそっちへ回す」

「それは了解っと。でも、防衛戦力をこっちに回して大丈夫か?」


 ランダムリスポーンになったカトレアを探す為に散らばっていた戦力とはいえ、ダミー情報の精度を上げる為の囮として使うのは……どうなんだ? えぇい、今の全体に戦況が分かってないから判断しきれん!


「あぁ、そこは問題ない。むしろ、積極的に青の群集のカトレア襲撃の戦力を分散させたいからな。今回の青の群集の動きは、カトレアをどこか1ヶ所に足止めをしようって動きの可能性が高い状況だ」

「……それって、カトレアを押さえる事で、取り返す為の戦力を集中させる狙い?」

「おそらくな。カトレアさえ押さえられてしまえば、浄化の要所をいくら押さえようとも意味はない」

「あー、それを聞いて俺らの方への狙いが分かってきた。……戦力を最小限にしつつ、俺らを可能な限り疲弊させる事か」

「その上で痺れを切らして、カトレアを取り戻しに動いた所を狙うつもりだろうな。もしくは疲弊して隙が出来たところを潰すくらいか」

「だったら、下手に俺らは動かないようにしつつ、適度な休憩を入れながらこのまま待機? ベスタもまだ来ない方がいいよな?」

「あぁ、3班は緊急時の増援戦力として動かす。ケイの判断で必要だと思った時に呼べ」

「ほいよっと」


 とりあえず青の群集が浄化の要所を押さえた俺らを積極的に襲ってこなかった理由は分かった。確かにここに連れてくるべきカトレアを押さえられてしまえば……そして、それを取り戻せなければ、いくら浄化の要所を押さえていても無意味だ。だからこそ、俺らを全力で攻めてくる事がなかった。

 他の人達で取り返す事が出来なければ、俺らだってそっちに回る必要が出てくる。そうなるまでひたすら緊張状態を続けさせて、無駄に疲弊させられるとこだった訳か。


 しかもそういう状況が実現しかけたからこそ、暴発を利用してカトレアをランダムリスポーンさせるという状況が発生した訳か。そんな状況になってたって事は、ろくに『浄化の守り』でのカトレアの防衛体制は用意出来ていない状況でもある。あー、実は結構危なかった?


 カトレアをランダムリスポーンさせた人、ナイス判断! そうしてなかったら、かなり俺らにとって不利な状況になってたはず。

 1度でも『浄化の守り』がない状態でカトレアを押さえられたら、それこそ取り返されそうになったとしても仕留めてランダムリスポーンさせれば、カトレア捜索からの状態にリセットが出来るしさ。あー、相手に回すと嫌な作戦!

 全くリスクがない訳でもないけど、そのリスクを下げる為にも俺らの疲弊を狙ったのかもね。カトレアが俺らのいる浄化の要所へランダムリスポーンしてくるのが青の群集にとっての最大のリスクだけど……疲弊して判断力が鈍った状態で急に現れたらキッツいしなー。絶対にそのタイミングで襲い掛かってくるだろ、青の群集。


「それで、青の群集のカレンの方はどうなってる? 『浄化の守り』の強化具合は?」

「二手に分かれて、カレンの移動の妨害と、『浄化の守り』の強化を防いでいる状態だな。カトレアを押さえるのに戦力を多めに回しているようだから、そっちはやや優勢というところか。あくまで、出遅れた割には……という事にはなるがな」

「初手で襲われたのがキツいのか……」

「まぁ、端的に言えばそうなる」


 根本的に今回の競争クエストの勝利条件はお互いに同じ。総力戦にして、開始時間も決めたんだから尚更に。それでも、どこを重点的に狙うかでこうも差が出てくるか!

 群集支援種の足止めは、確か作戦会議をしてた時にも出てた内容だった。それを最重要項目として実行してきたのが、今回の青の群集って感じだね。


「だが、現時点では大きくどちらに優勢という状況でもないからな。ケイ達1班の疲弊狙いも、2班が行った事でかなり難易度は上がったはずだ」

「まぁそりゃそうだ。カトレアを逃がせたのも、かなり大きいよな?」

「あぁ、そうなる。だからこそ、ここからは青の群集の動き方も変わってくるはずだ。警戒しろよ、ケイ」

「……カトレア狙いが失敗したなら、今度は本気で浄化の要所を押さえているのを排除しに来るよなー。その辺も了解っと」


 だからこそ、ベスタのいる3班は緊急時の戦力か。それにダミー情報の精度を上げる為の人員も、初めに予定していた挟撃の為の人員に出来そうだ。


「それと、カトレアへ偽装したダミー部隊もそっちの方へ重点的に送る。その辺りの動きによって、近くで戦闘が多くなる可能性は考えておいてくれ」

「ほいよっと」


 とりあえずはダミーとして撹乱させるのが目的だろうけど、その後の挟撃の為の戦力も兼ねてそうだな。この辺の人員の配置は、総指揮としてのベスタに任せておけばいい。……今回は突出した戦力じゃなくて、総合力での作戦勝負って感じになってきてるか。


「カトレア自体はどうするんだ? あんまり防衛戦力を散らすのもマズいだろ?」

「それはそうなんだが、今は青の群集がカトレアを見失ってる状態だからな。捕捉されるまでの間に、可能な限り『浄化の守り』の強化を行うつもりだ」

「あー、守り切って時間を稼ぐんじゃなくて、見つけにくくする事で時間を稼ぐ手段でやる感じ?」

「あぁ、そうなる。……上手くいくかは青の群集の動き次第になってくるがな」

「早い段階で見つけられたら厳しいけど……時間を稼げれば、その分だけ有利になるかー。風雷コンビのダミー情報がどれだけ役に立ってくれるか……」

「……そこが地味に読めなくてな。俺としても、アイツらがダミー情報を流した事に驚いているんだが……」

「あー、やっぱりそれは思うよな!」

「まぁ、流石にな」


 俺らを監視してた連中も、風雷コンビは暴走しやすいものと認識してたしなー。あの状況で風雷コンビが言った事は、そのまま受け取ってる可能性もある。ハーレさんがそこに乗っかったのをどう判断してくるかにもよるけど……結局、出たとこ勝負だな。

 今ここでいくら考えても、どれほどの効果があるかは分からない。それが分かるのは……全てが終わってからだ。まぁ終わっても『風雷コンビのダミー情報に騙されましたか?』なんて聞けないから、分からない可能性の方が高いけどさ。


「ともかく、俺らの方は2班と連携しつつ現状維持。やばいと判断した時に、俺の判断で3班に戦力要請で問題なし?」

「あぁ、ケイ達はそれで頼む。……爆音には色んな意味で気を付けろ」

「ハッタリで無用な警戒を狙ってきてるっぽいし……一気に距離を詰める方法はそれだけじゃないもんな」

「そこを失念していないなら、問題なさそうだな。俺はあちこちに指示を出しながらになるが、このままフレンドコールは繋いでおく。何か大きな動きがあれば伝えるが、それ以外はそっちは全面的に任せるからな」

「ほいよっと! こっちもこれから後は3班の要請か、他の緊急の用件以外では避けとく!」


 ただし、お互いに重要な部分だけは聞き逃さないように気を付けておかないとな。あー、そうなると合図があった方がいいかも?


「ベスタ、増援要請の合図は決めておくか? 青の群集に悟られないようにさ?」

「確かにそれもそうだな。戦闘中でも意図を悟られずに、分かりやすい合図か……。ハッタリも兼ねて、閃光でどうだ?」

「……発声ありで、実際に使わないようにしろってかー。まぁハッタリにはなるから、それでいくか」

「なら、それで決定だ。勝つぞ、ケイ」

「当然!」


 結構な無茶振りではあるけども、騙すのならそれくらいはやってしまった方がいいか。あ、別にハッタリでなく実際に発動してしまってもいいのかも?

 あー、でも味方にも影響があるから、そこら辺はちゃんと伝えておかないとね。まぁともかく、全力で勝つ為に頑張るぞ!

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