第1198話 警戒すべき推測内容


 基本方針は決まって、まずは希望する役割に応じて集合する場所を変えるという事に決定。具体的な作戦は……まぁ状況次第で臨機応変にだろうね。


「さて、ケイ達は……全員は揃ってないが、今更この手の事を嫌がるとも思えないが……一応聞いておくぞ。一番危険な役回りだが、浄化の要所を押さえに行くのはどうだ? 風音も含めてだ」


 今は晩飯を食べる為にサヤとヨッシさんは不在の状況だけど、それを分かった上で、今いるメンバーに参戦意思があるかの確認か。まぁここにいる誰かが嫌と言えば、その時点で俺らの中では強要しないから辞退はするだろうしね。


「……望むところ!」

「まぁ風音さんはそう言う気がしてた。俺はその役目、賛成で!」


 どうせアルのクジラが巨大だし、大々的に空を飛ぶんだから目立つのは避けられない。それに……この手の無茶振りな作戦、今更と言えば今更だしなー!


「私も賛成なのさー! ふっふっふ、厄介そうな相手は撃ち落とすのです!」

「俺も賛成だ。元々目立つのは避けられないし、警戒されてるから尚更だな。ただし、俺を全力で守ってもらおうか」

「……そういや、再戦の方はリスポーンの仕様はどうなってんの?」

「リスポーンに関しては、再戦エリアでは通常と同じ仕様だ。アルマースを守るのは、ケイ達にとっては重要な部分ではあるな」

「なるほどなー」


 ふむふむ、再戦エリアの方では死んでも追い出される事はないか。そうなるとアルを守り抜く事は、風音さん以外には重要な意味を持つね。……最悪、アルに当てないようにだけ気を付ければ暴発運用を考えるのもありか?

 えーと、俺のリスポーン位置の回数は……うん、前に更新してから消費してないままだな。でも、サヤが格上のフィールドボス相手に1回死んで……あ、あれは竜がランダムリスポーンになって共生進化に戻してきたんだから、特に消費はしてないのか。


「……なんで……重要?」

「あー、俺らはアルの木にリスポーン位置を設定してるんだよ。アルさえ生き残ってたら、即座に復活出来る!」

「……そうなの?」

「PTとして1ヶ所に依存する事にはなるが、移動種の木がいる場合はそこが強みだからな。……アルマースは割と特殊例だが」

「他にも空飛ぶクジラはいるって話じゃなかったか?」

「空飛ぶクジラと移動種の木の支配種の組み合わせはそうそういねぇよ。どうやったって目立ち過ぎるし、癖が強い組み合わせだからな」

「……まぁそれは否定出来ないな」

「確かにそうだよなー」


 今更も今更だけど、ちょいちょい空を飛んでる色んな種族を見かけるけど、空飛ぶクジラで木を背負っているには他には……あー、そういやアルそっくりな構成の人を見た事があるような?

 あの人って確か青の群集じゃなかったっけ? ベスタ、何かその辺の情報を持ってないかな? 何気にこの目撃した覚えって無視出来ない気がする。


「ともかく、ケイ達は参戦意思はあるのでいいな?」

「それはいいんだけど……いつだったか、アルと同じ構成の青の群集のプレイヤーを見た気がするぞ」

「……ほう? 確かに他の群集でも空飛ぶクジラは存在しているみたいだが、アルマースと同じ構成か。それはいつの話だ?」

「……アル、いつだっけ?」

「俺は知らんぞ、そんな話」


 え、アルは知らない!? えーと、本当にいつだっけ? なんかそういうのを見た覚えはあるけど……具体的な時期までは思い出せない!

 アルは知らないって言ってるし、俺のただの気のせいか? いや、でも確かに見た覚えはあるんだよな。うーん、いつだっけな? 結構前だった気がするし、無理に思い出す意味もないのか……? いや、無視していいとも思えない!


「はっ!? それ、心当たりがあるのです! 具体的に何日かは覚えてないけど、アルさんが海へと転移中に強制ログアウトになった時なのさー!」

「……俺が強制ログアウトになった時? そんな事なんて……あぁ、思い出した! あれか、地震があって強制ログアウトになって際に転移での位置情報が狂って復旧してもらった時か! それならまだ未成体の頃の話だな」

「あー! そうだ、それだ! 海にLv上げに行って、アルを探してたらよく似た人がいたって感じ!」

「……なるほど、アルマースと見間違えた事があった訳か。時間が出来たら……いや、ここは海エリアの方に心当たりを確認してもらった方が早いな。状況次第では、アルマースと同種のプレイヤーは危険だから、その情報は助かるぞ」

「……まぁ脅威になるかは分からないけどなー」


 あくまで、アルと同じ構成のプレイヤーを見かけた事があるだけって事。テスト前の話になるはずだから、構成自体が大きく変わってる可能性もある。

 でも、今回のアルの特攻移動を起点とした作戦を青の群集も使ってくる可能性を考えるなら……無視出来る要素じゃない。少なくとも、3rdの育成時間があったんだから、類似の種族を育ててる可能性はある。……情報が出てくるかは分からないけど!


「さて、俺は色々と声をかけて回る予定だが……後でサヤとヨッシに聞いて、駄目なら駄目と連絡を入れてくれ」

「ほいよっと! あ、問題なしの場合は俺らはどこに集まればいいんだ?」

「それなら、ここの安全圏にするつもりだ。他よりも人数は少なくなるのは確実だから、21時頃に集まっておいてくれれば構わん」

「1時間前には集合か。その辺は了解だ」

「誰が来るか楽しみです!」

「正直、知ってる人が多い気もするけどなー。あ、でも風音さんからしたらそうでもない?」

「……知ってる人……少ない」

「まぁそうなるよなー」


 俺らには馴染んだ風音さんだけど、少し前まで無所属でソロだったんだ。元々灰の群集の所属ではなかったんだし、知り合いと呼べる知り合いはほぼいないはず。


「……レナは……来るの?」

「あぁ、声はかけるつもりでいる。ただ、一緒に動く事になるかは……まだ何とも言えんな。俺らの方に戦力を回し過ぎる訳にもいかん」

「……そっか」

「その辺の戦力の割り振りが難しいとこかー」


 俺らが一番負担の大きな場所へ割り振られたのは、どうやっても目立つからって理由はあるだろう。まぁそれ以上に俺がジェイさんに盛大に警戒されてるから、どうやっても危なくなる位置に行かせた方がいいって判断なのかもね。


「……よく考えたら、俺がカトレアの防衛に行きたいって言うと危険なのか」

「どこが安全という訳でもないが、ケイ達は防衛には向いていないのは確かだな。……俺も人の事は言えんが」

「確かにそれはそうなのです!?」


 俺もだけど、ベスタも盛大に警戒されている1人だもんなー。足止めしたい相手なんだから、防衛に行ったらそこに戦力を集中して……いや、集中させてもいいのか。あー、でも他の人への負荷が大きそうだから、やっぱり駄目だな。

 というか、他の群集から見て要警戒になってる人って誰なんだろう? レナさん辺りは確実に警戒されてるはず。オオカミ組や飛翔連隊やモンスターズ・サバイバルとかの共同体も警戒対象か? うーん、他の群集からの評価ってどうなってるかが分からないな!


「あ、ベスタさん! 無所属の傭兵の人達はどうなりますか!?」

「あぁ、それか。一応、再戦エリアへの参加も可能だから、そこは自由にしてもらうつもりだ。……どうやって伝えたものか悩むとこだが、まぁレナに頼むのが無難だろうよ」

「おぉ、そうなんだ! レナさん、あちこちの人と知り合いだもんね!」

「まぁな。さて、灰のサファリ同盟と話をしないといけないし、他にも色々よやる事があるから、長々とここにいる訳にもいかん。そろそろ行かせてもらうぞ」

「ほいよっと! それじゃまた後で!」

「あぁ、また後で」


 そうしてベスタは素早く駆け出していった。すぐに誰かと話し始めていたから、灰のサファリ同盟の誰かにフレンドコールをしたんだろうな。

 俺らに聞く必要がある内容だったし、直接これから色んな人に声をかけていくのを前提にしてたから、情報共有板では集合場所は伝えなかったのかもね。あそこで伝えていたら、多分だけど――


「はい! ちょっと質問です!」

「ん? どうした、ハーレさん?」

「ベスタさんが情報共有板で、私達の集合場所と集合時間を伝えなかったのはなんでですか!?」

「……予定自体は……もう決めてた?」


 あー、その件か。ベスタはその辺は細かく語らないだろうし、これはただの俺の推測でしかない。……下手すれば、反感も買いかねない内容ではあるけど、多分こうなんだろうな。


「あくまで俺の推測って前置きはしとくけど……信頼してる人に限定する為だと思うぞ。そうでない人が雪崩れ込んでくるのを防ぐのが目的のはず」

「え、そうなの!?」

「多分だけどなー。自称で実力に自信ありって人が大量に来ても困るだろ。まぁそれを防ぐとしてもリスクはあるのが厄介だけど……」

「俺もケイの意見に同意だな。一種の選別だから、対応を少しでも間違えればベスタの信用を損ねかねん……」

「あぅ!? 確かにそれはそうなのです!?」

「……選ばれなければ……不満を持つ? ……それが……不信に……繋がる?」

「そう、そこが最大のリスク!」


 ベスタに選ばれなければ、今回の役割を担う事は出来ないというのは事実。それを不満に思う人は……絶対に出てくる。いないと思う方が、傲慢になりかねない。

 まぁそれに不満を持つなら、自分でベスタがやってる事を全てやって、決定権を自分で持てって話なんだけどなー。ベスタに灰の群集のリーダーしての責任を負わせてる状況なんだしさ。文句があるなら、自分でやってみろっての!


「というか、その辺で不満を持ってる奴らが例の無所属の集団だったりするんじゃねぇか? それが全群集分、集まってるとかよ?」

「あー、それはありそう……」


 灰の群集だけ例外視するなとベスタは言っていたし、こうやって整理して考えてみると……否定要素が欠片も思いつかない。あ、いや、でもこの部分だけは気になるな。


「アル、そういう人達をまとめ上げるってのは可能だと思う? 単純に言えば、今のまとめ役が気に入らないって集団だよな?」

「……誰かの指示に、大人しく従いたがる連中でもないか。根本的に何かを読み違えてるのか?」

「うーん、分からん!」


 考えられる可能性としては、そんな状況でも尚、自分達のリーダーとして認めるような人が存在してる? もしそうだとすると、ベスタよりもそっちの人の方がいいと選んだ場合だから、ある意味これが一番危険な可能性かも。


「その辺は今は考えないのです! 聞いている限りだと今日の夜には何か進展がありそうだし、その後で考えるのさー!」

「……今は……青の群集に……集中!」

「それもそうだなー」

「推測に推測を重ねても仕方ねぇか。実際にはまだそういう連中が集団化してるって確定な訳でもないんだしな」


 今の段階では、そういう可能性がありそうという推測の域は出ない話。群集に対して不満を持ってる人がいるのはほぼ確実だろうけどさ。

 まぁそういう人はそれこそ夏のアップデートで新規サーバーが出来るんだから、そっちに行けばよさそうなもんだけど。あくまで可能性の話だし、事実確認については実際に動きが出ないと分からないもんな。


「さてと、それじゃこれからどう……って、あと10分で19時じゃん!?」

「わっ!? いつの間にか、結構時間が経ってたのさー!?」


 体感的にはそんなに時間は経ってなかった気がするけど、情報共有板を見ていた時間が思った以上に長かったか。でもまぁ、残り時間30分とかになっても中途半端といえば中途半端だったかも?


「サヤとヨッシさんには俺の方で説明と参戦意思を確認しとくから、ケイとハーレさんは飯を食ってこい。風音さんも合わせて食ってくるんだったよな?」

「……うん」

「それじゃそうさせてもらうかー。あ、合流場所はどうする?」

「21時よりは絶対に早く戻ってくるのさー!」

「そういやそうなるんだな。……早めに安全圏に行って、ここのボス戦でもやるか?」

「おー! 確かにそれはありなのです!」


 ふむ、確かに微妙な空き時間が出来る状況にはなるもんな。その時間を利用して、移動妨害のボスの撃破を終わらせるのもありか。

 俺らが倒したのは峡谷エリアの安全圏のゾンビなトカゲだけだから、ジャングルの安全圏のゾンビな大蛇はまだ未討伐。その先のエリアがどういう場所なのかを見に行くくらいの時間はありそう。


 というか、ヨッシさんの『強化統率』を実戦の中で見ておきたいな。……ゾンビなトカゲが毒への耐性を持っていたけど、ゾンビな大蛇も持っているかも確認しておきたいしね。

 ゾンビな敵が共通して持つ耐性なのか、それとも個体毎に違っている耐性なのか……霧の森での総力戦は明日だけど、知っておいて損はないはず。まぁこの辺の情報は最悪、まとめを見ればありそうだけど。


「よし、それじゃ晩飯を食べ終えたらジャングルの安全圏に集合って事で! というか、もう今のうちに移動しとく?」

「俺はサヤとヨッシさんがログインしてくるまでは、ここで待機しておくぞ。まぁケイ達は今のうちに移動しとけ。俺はサヤとヨッシさんがログインしたら、説明しながら移動しとくからよ」

「あー、それもそうだな。ハーレさん、風音さん、それでいいか?」

「問題なしなのさー!」

「……うん!」


 ログイン時に出来るだけ時間のロスを少なくする為だから、特に反対意見はなし。さーて、それじゃサクッと移動していきますか!


「それじゃアル、後は任せた!」

「おうよ!」

「……2人とも……乗って。……一気に……飛んでいく! ……『自己強化』」

「はーい!」

「お、風音さん、サンキュー!」


 飛行鎧を展開したままだったから普通に自分で飛んでいくつもりだったんだけど、風音さんさんが乗せていってくれるならありがたい。

 という事で、風音さんの黒い龍の背の上に乗っていく。更にその俺の上にハーレさんが乗ったけど……まぁいいか。


「……それじゃ……いくよ。……『高速飛翔』」

「いやっほー!」

「やっぱり、純粋な飛行種族ってのもいいもんだよなー!」


 風を切りながら、南にある安全圏へと向かって飛んでいく! 位置的には北にいるマサキの方が少し近いし、あそこから安全圏へと転移が出来るけど……まぁ今はこれでもいいか。極端に問題があるような距離の差でもないしね。


 うーん、3rdで何を作るかは悩みっぱなしだけど、西洋系のドラゴンもありだよなー。もしくは何か鳥類で飛べるやつを……って、そういやアルの3rdがフクロウって言ってたっけ。

 その辺は……競争クエストが全部終わってから考えるかー! なんだかんだで、競争クエストの最中は普段通りとはいかないもんな。何のクエストもイベントもない期間やスクショのコンテストで対人戦がない期間もそれなりにあったけど、ああいう慌ただしくない期間っていうのも重要なもんだね。まぁ今は全力で戦うだけど!

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