第1159話 強襲に対する動き
赤の群集の安全圏まではかなりの距離があったけど、複数回のスチームエクスプロージョンを推進力にして赤の群集の安全圏の近くまで辿り着いた! ここから強襲開始だ!
「マジでここまで攻めてきたぞ!?」
「ちょ!?」
「あれってどういう状況!?」
「クジラの上に木が2本!?」
「どんな速度で突っ込んできてんだ!?」
ここからどういう風な攻防戦になるかは分からないけど、盛大に暴れてやろうじゃないか! 弥生さんとシュウさんが俺らを無視してるかどうかはわからなかったけど、実態としては無視せずに突っ込んできてたしね!
もうアルが地面に突っ込む寸前まできているし、俺らは俺らで動いていきますか! ここには色んな種類の木や、ゾウ、ウマ、ライオン、クマ……って、妙に大型種族が目立つな。いや、そこはいい!
「ヨッシさん、予定通りに!」
「了解! 『ポイズンクリエイト』!」
まずは手始めの攻撃から! アルが衝突する前に、麻痺毒と神経毒のこれを食らっとけ!
<行動値1と魔力値3消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』を発動します> 行動値 119/120(上限値使用:1): 魔力値 299/302
<『複合魔法:ポイズンミスト』が発動しました>
アルが赤の群集の安全圏の中に突っ込む直前に、アルを中心にした場所から毒の霧をばら撒いていく。赤の群集が同じ事をしてくる可能性は考えてたけど、意外とそうでもなかったっぽいね。
「おら、吹っ飛んでいけ! 『連旋・重突撃』!」
「「「「「「ぎゃー!?」」」」」」
そうして地面に衝突しかけるような状態から、アルが銀光と白光を放ちつつ、その場にいた人達へ盛大に突っ込んでいく! くっ!? ライルさんが固定してくれてるとはいえ、今の勢いでの突撃は衝撃が凄まじい!?
あ、でも流石に勢いは落ちてき始めたな。完全に止まるまではもう少しかかりそうだけど、その間に何人仕留められるか……って、なんかおかしくね? 小型の種族が全然見えないし、無防備に攻撃され過ぎてる気がする。
「っ!? ケイさん、これは何か変!」
「……レナさんもそう思うか?」
「うん、これは人数が少な過ぎる! それに反撃が一切ないのも変!」
「やっぱりそうだよなー! そういう方向性で対応してきたか!?」
カウンターを狙うんじゃなくて、そもそも突撃そのものを受けないような立ち回りにしてきたっぽいな。……しかも、俺らが突撃してくる場所に大型種族だけを集めてたっぽい。
あー、でもまぁいいか。弥生さんとシュウさんの意識をこっちに引きつけられればいいんだし、競争クエストではデスペナは発生しないからなー。ここまで辿り着けた事自体が、最も重要な事実! 出来るだけ長く生き残る方が良いけど、俺らはあっさり全滅しても問題はない!
「レナさん、ハーレさん、背後からの攻撃がないか確認を頼む!」
「はーい!」
「……今の状況から、挟撃はマズいもんね」
「はっ! 後ろを見てる余裕なんざ与えるか!」
ちっ、安全圏のギリギリの部分から緑色のタチウオの人が緑色を帯びた銀光を放ちながら風の刃を飛ばしてきた!? 狙いは……アルのクジラか!? 一切の反撃がない訳じゃない……?
「……ふん、その程度でどうにか出来るとでも思ったか」
「なっ!? 相性の悪い岩で防御だと!?」
「おっと、危ないですね」
「十六夜さん、ライルさん、ナイス!」
十六夜さんが主に風音さんと紅焔さんが乗っていた部分の岩を全て盾にして、その攻撃を防いでくれた。その事で空洞化した部分は、ライルさんが即座に埋め合わせてくれてたね。
今のは応用複合スキルの『断風』だったっぽいけど、属性的な相性が悪くても三重の岩での防御なら防ぎ切れるんだな。……そう簡単に使える手段じゃないけど。
そうしている間に、アルの突撃の勢いは収まって止まっていく。結構な数の赤の群集のプレイヤーを倒したような気はするけど……それは大型種族ばっかりか。
こうなると安全圏に引きこもっただけなら良いんだけど、少し先に進ませてから戻ってきて俺らを挟撃という可能性は否定出来ないな。その中に弥生さんとシュウさんが混ざってくる可能性は……ちょっと怪しい気がしてきたぞ。
「『強風の操作』! やれやれ、ケイさんが絡むととんでもない事をしてくれるとは思ってたが……随分と無茶な事をしてくれるじゃねぇか」
「……ガストさんか。まぁそっちの思惑通りに動かされるのも嫌だしな」
強風の操作でポイズンミストが散らされて解除になったし、ここでガストさんの登場か。赤のサファリ同盟に所属しているからといって、全員が全員、対人戦に参加しない訳じゃないもんな。
ここでガストさんが出てくるのは不思議じゃないけど……1人で登場というのがどうも不気味だ。強襲する事自体はライさんから伝わってるだろうけど、どうも対応が想定と違い過ぎる。
「その意見には同感だが、それは俺らにとっても同じでな! 一気に焼き尽くせ!」
「「「「おう! 『ファイアクリエイト』!」」」」
ちょ!? 岩壁の上から、エクスプロードを2連発で撃ち込んでくる気か! いや、でもそれは属性の選択を誤ったな! この攻撃なら、どうにか対処は可能だ!
「紅焔さん、風音さん!」
「おらよ! そんでもって、『アブソーブ・ファイア』!」
「……『アブソーブ・ファイア』」
「何!?」
「「「「は?」」」」
紅焔さんが溜めてたフレイムランスで片方のエクスプロードは発動自体を潰して、残りは風音さんと紅焔さんの2人で吸収し切ったね。……今ので得た過剰魔力値、何かに使えないか?
可能なら昇華魔法に使いたいとこだけど、バランス型の紅焔さんはともかく、魔法型の風音さんは魔力値を空っぽにする訳にもいかないよな。さて、ここからどうするか。
「随分と手薄ですが、それだけで対応出来るほどの余裕があるのでしょうか?」
「……はっ、そんな余裕がある訳ねぇだろ。ちっ、1人はいるかもとは思ってたが、龍が2人とも火のアブソーブ持ちとはな……」
ライルさんの問いに対してガストさんは口ではそんな事を言ってはいるけど、今の状況に焦っいる様子はない。この状況で敵の言葉を間に受ける気もないけどな。
そうなると俺らを返り討ちにする手段を既に用意している? 考えられるとしたら、俺らの着地場所を推測して、戦力を分散させている可能性だけど……。
「……レナさん、ハーレさん、後ろの様子は?」
「……ちょっとマズいかも? はっきりとは確認出来ないけど、複数人は確実に動いてるね」
「多分だけど、遮音の効果がかかってるのです」
「……なるほどね」
動いてはいるけど、今すぐに襲いかかってくる状況ではない……か。となれば、さっきのタチウオの人の攻撃と、今のガストさんの狙いは時間稼ぎの可能性が高いな。
少人数でいるのは、戦闘で時間稼ぎをするんじゃなくて、こういう会話で時間を稼ぐ為? もしそうならそれに付き合ってやる必要はないし、仕込みを成功させる訳にもいかない!
「風音さん、紅焔さん、俺らの背後に過剰魔力値で強化したファイアクラスター発動! 挟撃はさせん!」
「……うん! ……『ファイアクラスター』」
「無差別攻撃もありってな! 『ファイアクラスター』!」
「ちっ! 『高速飛翔』『魔法砲撃』『並列制御』『ウィンドクラスター』『ウィンドクラスター』!」
ほほう、ここでガストさんが撃ち上げられたファイアクラスターを1人で相殺に回るのか。しかも、ガストさんは風魔法Lv10になってるんだな。……相殺に動くって事は、やっぱり挟撃が狙い?
あ、ガストさんと紅焔さんと風音さんが上空で戦い始めたね。その下から魔法が飛んできてる様子も見えるから、やっぱり伏兵はいたっぽい。……でも、上空では2対1だから、ガストさんは攻撃よりも回避を優先してる?
なんだかこの展開……凄い違和感がある。なんだ、この妙な違和感。弥生さんとシュウさんが駆けつけてくるまでの時間稼ぎでもしてるのか? それなら俺らの狙い通りではあるんだけど……。
そもそもなんで俺らの方には攻撃してくる相手がいない……? ここを塞げば、左右は岩壁に挟まれてる地形だから身動きは取れないはず。……もう必要なだけの戦力は、峡谷エリアに送り込んだ後なのか?
「ぐはっ!」
「ごふっ!」
「な、なんだ、このヤドカリ!?」
「暴発か!?」
「……ふん、この程度か。……ライル、言っていた通りに動くぞ!」
「えぇ、了解しました! もう固定は必要ないですし、安全圏側はお任せを。『根下ろし』!」
「十六夜さん、ライルさん、任せた!」
いつの間に十六夜さんが岩壁の上からエクスプロードを狙っていた4人を叩き落としてきているし、ライルさんも俺らの固定をしていた岩の操作を解除して、植わっている状況に変わった。
「げっ!? やっぱりいるじゃん!?」
「安全圏を強襲とか、ふざけんな!」
「……知ったことか!」
「ぐはっ!」
「がはっ!」
散発的に安全圏から出てくるプレイヤーは十六夜さんがあっさり仕留めてるし、あそこには下手に人を増やすのは得策じゃないな。あの様子ならライルさんと十六夜さんに任せていいはず。
でも、安全圏から出てこれないようにするのは狙いの1つだけど……やっぱり手薄過ぎないか? さっきは上から2連発の昇華魔法を狙ってきていた割に、強力な戦力だと分かる人がガストさんだけというのも違和感がある。
戦力になる人は出払っていて、今はここにいないだけ? その可能性は否定出来ないけど、ログインしてきたプレイヤーが続々と集まってこないのは状況的に変じゃないか?
「……ケイ、獲物察知を使っておけ。この状況、なんだか嫌な予感がするぞ」
「アルもそう思うか……」
これは何か罠を用意して……いや、それならもう発動していてもおかしくないような? あ、急な話だったから、赤の群集も迎撃準備が整ってない可能性もあるのか。
ともかく、獲物察知を使って周囲の確認をしてみよう。何かを狙っているなら、何かしらの反応が分かるはず。
<行動値を5消費して『獲物察知Lv5』を発動します> 行動値 119/120(上限値使用:1)
反応は……へぇ? 一切反応が無いときたか。こりゃやっぱり何かを企んでそうだけど、この状況からなら俺ならどうする……? 獲物察知を封じた上で、迎撃する手段か。
いや、待て!? これって本当に俺らの迎撃が目的か……? 待て待て待て! ちょっと嫌な方向の内容を思いついたんだけど!? これは聞かれたくないし、これでいくか。
<行動値上限を2使用して『移動操作制御Ⅰ』を発動します> 行動値 119/120 → 118/118(上限値使用:3)
基本的にメイン操作にしてる側から声が出てくるから、今はコケの方に切り替えて、コケを水で覆って遮音。これなら俺からの指示は、響いて聞こえる事もない。
えーと、ちゃんと確認してなかったけど、レナさんは遮音になってるのか。正直、あちこちから戦闘音が響いてきてて大声を出さない限りは大丈夫そうだけどなー。
「サヤ、ハーレさん、レナさん、安全圏から出てすぐの左右の状況を確認してくれ。もし考えてる事が正解なら、この状況自体が罠だ」
「ケイ、どういう事かな……?」
「すぐ横から岩壁の上に戦力を動かしてるかどうかの確認がしたい。下手したら俺らを完全に無視して、先に進んでる可能性がある」
「っ!? 分かったかな! レナさん! 『自己強化』!」
「あ、そういう事! ハーレ、わたしとサヤさんで確認してくるから、フォローをお願いね! 『自己強化』!」
「了解なのさー! 『魔力集中』!」
「……出てくる雑魚の相手は任せておけ!」
「お願いねー!」
「任せたかな!」
もしこの考えが当たってるなら、俺らの強襲の情報を得てからすぐにその作戦を立てて動いている可能性が高い。この確認の動きに対して、何か動きがある可能性もある。サヤとレナさんの2人で確認に行ってもらいつつ、安全圏から出てくる人の始末は十六夜さんに任せればいい。
考えてる内容としては他の可能性はあるし、そっちの確認もしておこう。こっちはこっちでリスクはあるけど、確認せずに放置って訳にもいかないもんな。
「ハーレさん、サヤとレナさんをサポートしながら周囲の確認は出来るか?」
「流石に同時には無理なのさー!?」
「それならわたし達の方は気にしなくていいよ!」
「ハーレはそっちに専念してかな!」
「おし、それならサポートは俺らでやるぞ、カステラ! 『自己強化』!」
「了解だよ、辛子! 『自己強化』!」
「そういう事なら了解なのです! ケイさん、どういうのを確認すればいいのー!?」
「アルに上空に移動してもらうから、岩壁の上やその向こう側に何かいないか、場合によってはそこからの攻撃を確認してくれ! ヨッシさんは俺と一緒に、攻撃がきた場合の防御で!」
「……ケイさん、上空に行けば狙われる可能性があるって事?」
「そうなる! アル、無茶な内容になるけど、大丈夫か!?」
「この妙な不気味さは無視出来ねぇしな。元々、今回の作戦はリスク込みだし、問題ねぇよ」
この状況での妙な手薄さの可能性は、そもそも別ルートから戦力を動かしている可能性がある事。岩壁は岩の操作で偽装出来るのは、俺は昨日実際に自分でやってみて知っている。
見た事がある場所なら人によっては簡単に見破れるものって話だけど、他の群集の安全圏の間近なんて詳しく見れてる筈がない。だから、岩壁に偽装を施して上で、岩壁の向こう側へと戦力を動かすって事をしていれば……俺らは無意味にここに釘付けにされる事になる!
「攻撃より防御に切り替えるぞ。『自己強化』!」
「その方が良いだろうな。ヨッシさんはアルの左側を頼んだ。俺は右側で」
「了解!」
「ケイさん、サヤとレナさんの確認が済んでからだと駄目なのー?」
「……気付かれた事が分かると、その時点で一気に攻撃を仕掛けてくる可能性もあるぞ?」
「はっ!? そういえばそうなのです!」
「それなら、サヤとレナさんが確認したのと同時に動き出すか」
「……それでいくか」
一応アルとハーレさんもいつの間にやら遮音になるようにしてくれてるから、その辺は筒抜けにはなってないはず。アルは思考操作で、ハーレさんはクラゲをマスクにしてるんだろうね。
「……妙な感じは……こっちもしてる」
「回避ってよりは、俺らの動きを誘導しようとしてねぇか!?」
風音さんと紅焔さんからしても、違和感がある状況なのか。……こりゃ、やっぱり何かありそうだな。ともかく、サヤ達が安全圏の間近の岩壁に辿り着くのを待とう。そうすれば、何かしらの事が分かるはず!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます