第1156話 安全圏の強襲作戦
弥生さんとシュウさんの動きを俺らの方へと誘導する為に、赤の群集の安全圏へと強襲をかけるのに決定。その協力者を求めている最中に擬態していたライさんをハーレさんが見つけて、まぁ一方的にボコって送り返していった。
まぁ狙い自体は聞かれたけど、警戒された方が都合がいいからそこは問題なし。存分に警戒してくれ!
ともかく今の時点で、水の昇華枠でダイクさん、みんなの固定役で十六夜さんが協力してくれる事になった。それでもまだ人数が足りてないから、ここからどうなるかだな。
「ん? なんで、安全圏の前でこんなに止まってんの? あ、ケイさん達、まだここにいたのか!? 先行してたんじゃ!?」
「おっ、紅焔さんか! ちょっと作戦を思いついたから、その人員を確保してるとこ……」
岩の上に乗ってるライルさんと、その横を飛んでる紅焔さんの姿が見えてきた。幹にはカステラさんと辛子さんもいるね。対人戦はしないソラさんがいないのはいつもの事だから、そこは気にしなくて問題なし。
ん? この作戦って、紅焔さん達が戦力になるんじゃね? 紅焔さんは火の昇華を持ってるし、ライルさんとカステラさんは土の昇華を持ってたはず。操作精度も高いだろうから、固定役でいけるような……?
あれ、これってもしかして相当都合が良い状況なんじゃ? いや、その前にちょっと確認しておいた方がいい内容もあるな。それ次第で、動き方が変わってくる。
「ん? ケイさん、どうしたよ?」
「あー、紅焔さん達って、今回の役割は?」
「それなら弥生さんとシュウさんの抑えに回ってくれって話だけど……まだケイさん達が行ってないとは思ってなかったぞ! でも、人員確保ってどういう事だ?」
「よし、必要な人数を一気に確保!」
「いや、だから具体的な説明ー!?」
「えーと、わたしの方から簡単に説明するねー! ケイさん達は赤の群集の安全圏に、スチームエクスプロージョンを何発か使って殴り込みに行く予定をしててね?」
「……は? え、弥生さんとシュウさんを抑えに行くんじゃなかったのか?」
あ、根本的に弥生さん達が避けてくる可能性の方から説明しないといけないのか。うーん、必要な説明ではあるんだけど、時間が惜しい! でも、流石に今回の移動は高速だから、多少は話せても求対的な説明をしてる余裕は無いだろうし……。
「そこは私がちょっと説明してくるね! ケイはしっかりと計画を練ってかな!」
「あ、助かる! 説明は任せたぞ、サヤ!」
「任せてかな!」
「サヤさん、どういう事でしょうか?」
「僕らも重要みたいだけど、内容がよく分からないよ?」
「地味に俺らが、ケイさんの想定のメンバーとして都合が良さそうな感じっぽいけど、どういう内容だ?」
「まずは私達の弥生さん達の動きについての推測の説明からするかな! そこを説明しないと、話が噛み合わないと思うし……」
よし、サヤが紅焔さん達に説明をし始めたから、内容さえ伝われば協力は得られるはず。
「……その辺りは俺も聞いてこようか」
「俺もさっぱりだから、聞いてくるわ!」
「ほいよっと!」
そういえば十六夜さんとダイクさんにも説明が必要なんだった。まぁサヤが説明してくれているのを聞きに行ってくれたから、そこは問題なし。
「とりあえずこれで、水の昇華が1人、火の昇華が1人、固定が出来る岩の操作持ちが3人は確保出来そうだな!」
「ん? 確か辛子さんも水の昇華持ちじゃなかったか?」
「え、そうだっけ?」
「ジャングルの1戦の時に、紅焔さんと辛子さんでスチームエクスプロージョンを使ってたはずなのさー!」
「あ、そういやそうか!」
確か、最後の大詰めの時にそんな事があったような気がする! そうなると、水の昇華持ちは2人になりそうだな。それに紅焔さん達はみんなバランス型だから、昇華魔法を移動に回しても、余力はあるはず。
あー、でも安全圏の方まで突撃した後も暴れるのを考えるなら、魔力値に余力が残るようにした方がいいか。うーん、中々判断が難しいところ……。
「ははっ! そうか、対応に動く俺らを無視する可能性か! そこは見落としてたな!」
「……確かにそうですね。安全圏を強襲する事で、無視出来なくする訳ですか。考えましたね」
「でも、それって僕らは全滅しない?」
「いや、この場合は全滅したとしても問題ねぇぞ、カステラ。この手段なら、そう間を開けずに強襲する事も可能だから、気を緩められなくなる。あのネコ夫婦が動くかどうかに関わらず、警戒し続けなきゃいけねぇ」
「あ、そっか。でも、辛子、これって同じ事を狙われる可能性は?」
「……無いとは言えないな。ケイさん、同じ事を狙われる事への対応策はあるのか?」
「……え? あ、そういやそうか!」
同じ事を狙われる可能性って、よく考えたらそうだよなー!? やばっ!? そっちの方を全然考えてなかった!?
「そんなもの、拙者達が一刀両断にするまでである!」
「いざとなれば、俺が盾になるよ!」
「その後は返り討ちにするまでだ」
「刹那さん、シアンさん、ジンベエさん!? それに海エリアの人達も来てるのか!」
おー! 続々と増援がやってきてる感じだな! 海エリアではもう対戦が無いから、こっちに来てるんだ。本当に赤の群集と灰の群集での、全力勝負って形になってきたね。
「そうか、カウンター狙いで潰せば……って、それは俺らも狙われる話じゃん!?」
「……ふん、その程度は俺が受け止めてやろう」
十六夜さんがあっさりと断言してくれるけど、実際に出来そうな気がするのが頼もしい!
「ケイさん、突っ込む時はヨッシさんの抗毒魔法を使った方が良いかも? わたしなら、突っ込んでくるのが分かってたらポイズンミストで毒をばら撒いておくからさ」
「あー、そういう方向もあり得るのか……。レナさん、この場合なら突撃と同時に逆に俺らが毒をばら撒くのもあり?」
「あ、それもありかもねー!」
色んな方法が考えられるし、何か別の手段も同時に……ってあれ? ちょっと待って、色々考えてたら別の問題が思い浮かんできた。飛翔連隊のメンバーは役割的に全員一緒に来てもらう事になるけど、全員アルの上に乗れるのか? 小型化すればいけるだろうけど、行動値を残しておきたいのにわざわざ半減させると意味ないような……。
いや、その問題を突破出来る可能性がある人が1人だけいた! 思いつきでやる手段じゃない気がするけど、今はラッキーだ! でも、これは本人に確認してみないと……。
「十六夜さん、ちょっと確認! アルのクジラだけだとメンバーが揃っても乗せきれない可能性がある気がするんだけど、並列制御の岩の操作でどうにか出来ないか!?」
「……小型化は使わずに運ぶのか。……大きいのは龍が2人、木が1人。……まだ増える可能性と、アルマースへの負担も考慮すると……ふむ、土台となる岩までなら作れるだろうが、全員の固定までは保証出来んな」
「それで十分! ライルさん、カステラさん! 十六夜さんが作った土台に岩の操作で固定は可能!?」
「3人がかりで、この人数を固定する気ですか!? いえ、必要とあらばやりましょう」
「僕らがやってみるのはいいけど、ケイさんはやらないの?」
「あ、そうか。俺がやってもいいのか」
なんか地味に自分を除外してたけど、同じ役割分担になるライルさんとカステラさんに頼むのなら、俺が自分でやってもいい話だよな。うーん、サラッと紅焔さんと辛子さんを昇華魔法の方に割り当てて考えてたけど、移動に行動値も魔力値も使い過ぎるのは……元々が無茶なのに余計に厳しくなる……。
「あー、移動用の人員は突撃後の人員とは完全に切り離して考えないと駄目か? 行動値も魔力値も、最初から消耗させたら意味がないよな……。でも、そうなると十六夜さんには頼れないし、他にも人員がまだ足りないし……」
くっ、流石にこの作戦は無茶があり過ぎたか!? この規模の作戦をするなら、予め話を通しておいて、小動物系の種族での移動用の人員を先に確保しておくべきだった!
ライさんが警戒情報として流してるだろうし、いっその事、作戦自体は破棄して無駄に警戒心だけ煽って目撃情報を頼りに弥生さん達を探しに行く? いや、それだと避けられた場合にどうしようもなくなる。だー! 下準備が必要な内容なのに、咄嗟の思いつきで実行出来る内容じゃなかった!?
「……ふん、俺の心配なぞいらんぞ。……俺の戦闘スタイルは知ってるはずだろう?」
「あ、そうか! 十六夜さんは暴発で強引に回復させていくスタイルだもんな!」
「……そういう事だ。……俺に関してだけは、行動値の心配はいらん。……だが、強襲後の戦闘が始まれば、絶対に近付くな。……邪魔にしかならんからな」
「……ほいよっと。それは了解」
十六夜さんに限っては、全く杞憂に過ぎない内容だったよ。元々、暴発で無差別ダメージや不発を前提とした、周りの味方への考慮というものが一切存在しない戦闘スタイルだ。……こう考えてみると、弥生さんに近い部分があるよね。
「ケイさん、十六夜さんの戦闘スタイルは俺らも知ってるから問題はないけど……実際問題、俺らの方はどうすんだ? 可能なら、弥生さんとシュウさんを抑えるメンバーは可能な限り消耗は抑えた状況で辿り着きたいぜ?」
「……そりゃ紅焔さんの言う通りだよな。その辺の対策は大急ぎで考えるから、少し時間をくれ」
この場で、都合よく小型種族の人ばっかを集められるか? でも、名乗り出てきてくれる気配はないし、流石に無理っぽい。……考えろ! 何か手段はあるはず!
「即座に答えは出ないか。おし、俺らの方でも対策を考えるぞ!」
「……これが即興での事でなければ、事前に準備も出来たんですけどね」
「ライル、それは今言ってもどうしようもねぇぞ?」
「今僕らが出来る範囲で、対策を考えないとね……。グリーズ・リベルテと僕ら飛翔連隊を出来るだけ温存して一気に進む方法かー」
飛翔連隊のみんなも方法を模索してくれてるし、手段をなんとか見つけないと! 呼びかけてた人達も、俺らが考え込み始めた事で戸惑いを見せてるし、中にはもう先に進み始めてる人達も出てきた。
まだ不完全だと分かったからとか、そもそも条件に該当しないからとか、俺らの移動の為だけに動くのは嫌とか、色んな理由はありそうだから……すぐに手段を提示出来なければ、こういう動きになっても文句は言えない。
「刹那さん、海エリアの方で爆発的な推進力を得る方法ってないですか!?」
「海の中であれば海流の操作が使えるのであるが、今の条件では微妙だと判断するのである!」
「陸地で使う推進力としては……まぁ海流の操作は微妙だしな。他の海エリアの連中も次々と来るだろうが、陸では全力は出せないと考えておいてくれ」
「あぅ……それは了解なのです」
刹那さんとジンベエさんの言う事はもっともだよな。俺ら陸の戦力が海では不慣れで全力を発揮出来ないように、海エリアの人が陸で全力は発揮出来ないのは当然の事。
「その代わりと言ったらなんだけど、安全圏の防衛は任せてくれていいよ!」
「シアン殿の言う通りであるな! 先も言ったように、襲ってくる事があれば相応に対応するまでである!」
「ならば、我らもそこに力を貸そうではないか! なぁ、疾風の!」
「俺らの電気は役立つ筈だぜ! なぁ、迅雷の!」
そうか、海水との相性はいいから、ここは風雷コンビと海エリアの方に任せるの手だよな。クジラでの強襲が無かったとしても、安全圏に戦力を封じ込めるという作戦自体は有効だろうし、防衛戦力は確かに欲しい。
「……中々動き出せないと報告があって来てみれば、随分と難儀な事になってるな、ケイ? ここの防衛の指揮は、俺の担当だぞ?」
「ベスタ!? あー、それはその……すまん!」
そう言われるとそうなんだけど、流れ的についそっちの方まで考えてしまっていた。俺らの今回の役割は、弥生さんとシュウさんを抑える事がだもんな。……余計な部分にまで首を突っ込んだ状況になってるか。
「いや、謝る必要はない。レナから聞いた限りでは狙い自体は悪くねぇし、そこについては既に手は打った。灰のサファリ同盟の方で、スチームエクスプロージョンを使った移動用の人員を今選定中だ。発動が終われば即時離脱という形で、今集めている」
「……マジで? ベスタ、助かった!」
うっわ、マジか! 流石はベスタだよ! というか、いつの間にレナさんはそんな報告をしてたの!? いや、本気で助かるけども!
「そっか、灰のサファリ同盟なら火も水も土も使うから、昇華魔法を使える人は結構多いもんね。戦闘には自信がないって人は多いけど、逆にそれが移動の役割だけでも動きやすくなるのかも?」
「私よりも遥かに操作系スキルの扱いが上手い人は多いかな!」
「何もこの場にいる人だけにこだわる必要は無かったって事か」
「そういう事になるのです!」
「あー、そりゃそうだよな……」
いかん、やっぱり妙に焦ってるぞ、今の俺! 少し前にサヤに楽しむ事を忘れるなって言われたんだし、それを胸に刻め! なんでここで灰のサファリ同盟に手伝いを頼む事を失念してた!? 連携の事を考えたら、あそこが最適じゃん!
少し落ち着く為にも深呼吸しよう。……焦ってたら、勝てるものも勝てなくなる。味方が大勢いるんだ。俺だけでプレッシャーを抱え込む必要なんてどこにもないよな!
「どうやら落ち着いたようだな、ケイ」
「おう!」
「ならいい。人員選定が終わったらラックが連れてくる手筈になっているから、それが到着し次第、『グリーズ・リベルテ』、『飛翔連隊』、風音、十六夜は、赤の群集の安全圏の強襲に動け。ダイク、レナからは移動要員だと聞いているが、間違いないか?」
「あ、移動要員の方でいいんだ? 弥生さん相手には戦いたくないから、それで問題なし!」
「それならラック達が来たら、合流する形で動け」
「了解っと! いやー、弥生さんと戦わずに済みそうでよかった!」
手際よく、ベスタが仕切っていってくれてるね。やっぱり総指揮は俺よりも遥かにベスタの方が向いてるし、頼りになるもんだ!
「ジンベエ、海エリアからの増援で陸エリアで真っ当に戦える奴はどの程度いる?」
「……正確な数は分からねぇが、自前で可能なのは半分もいないはずだ。纏属進化を使えばもっと増えるだろうが、それはあまり戦力としては期待すんな」
「なるほどな。なら、海エリアで陸地での戦闘に自信がある者は、陸地のプレイヤーと連結PTを組んで、クエストの攻略の動いてもらってくれ。自信がない奴は、安全圏の防衛を任せる。ここでの指揮は……風雷コンビには任せられんな。誰か適任は……シン、お前に任せる!」
「え、俺!? いいぜ、やってやろうじゃねぇか!」
あ、サボテンのシンさんもこの場にいたのか! 結構な人数がいたから、いるのに気付かなかったよ。でも、シンさんなら荒野エリアのリーダー的存在だし、この場の指揮には適任だよな!
「俺はオオカミ組やモンスターズサバイバルを筆頭にして、クエストを進めに行く。変にその邪魔が入らないように、弥生とシュウの相手は任せたぞ」
「おうよ!」
「万が一、強襲したとしても無視されるようなら報告を上げろ。その時は別の手を考える」
「……その可能性は考えたくはないけど、了解っと!」
そうしてベスタは峡谷エリアを駆け抜けていき、防衛要員にならなかったり、俺らの作戦に関わらない人達も先へと進んでいった。とりあえず俺らは、ラックさんが連れてくる移動要員が来るまで待機だな。
さーて、この強襲作戦で弥生さんとシュウさんが釣れればいいんだけど……こればっかりはやってみないと分からないからなー。まぁ無視出来ないほどに暴れまくってやるまでだ!
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