第1153話 戦いの準備を終えて
サヤは爪刃乱舞をLv10に上げた。そして、何度も取得しようとして何かと中断になっていたハーレさんの大型化が遂に取得になって、今は狙撃をLv10へと上げている真っ最中。
いやー、ハーレさんが遂に大型化を取得かー。なんだか微妙に感慨深い気がするね。まぁそこまで大々的に使いまくる事があるとも思えないけども。というか、ガッツリ使うならとっくの昔に取ってるよなー。
「ふっふっふ、狙撃がLv10になったのです! これ、サヤの爪刃乱舞と同じで『行動値還元Ⅰ』が取得になったのさー!」
「え、そうなのかな!?」
「……もしかして物理攻撃だったら共通なのかも?」
「あー、その可能性はありそうだな。ハーレさん、狙撃Lv10での行動値の回復量ってどんなもん?」
「えっと、ちゃんとダメージを与えた場合で回復量は5なのです!」
「使用行動値の半分が回復するのはかなり大きいな」
「そうなのです! これは使えそうなのさー!」
まだサンプル数が少なくて断定は出来なさそうだけど、ざっくり考えるなら連撃の場合は1撃ずつで行動値1が回復して、単発の場合は使用行動値の半分が回復ってとこか。
Lv10に至ったスキルの威力に応じて回復量は変動するみたいだし、威力の低い下位のスキルだと消費よりも回復量が上回って、高威力の上位のスキルならちゃんと当てさえすれば半分は返ってくるのは影響が大きい。単純に威力自体も上がってるだろうしさ。
消耗が激しい代わりに高威力の応用スキルか、上手く当てればかなり消耗を抑えられる通常スキルか、状況によって使い分けだな。人によって、大きく使い方も変わってきそうな部分だね。
「こういう仕様なら、いかに相手の攻撃を外させるかが重要になってくるなー」
「今回は弥生さんの行動値を尽きさせるのが、重要になりそうかな?」
「そこを重点的に狙っていくのです! その為に狙撃にしたのさー!」
「さっきそう言ってたもんね。かなり重要な役割になりそう」
「……頑張って?」
「頑張るのさー!」
ハーレさんの気合いは十分か。というか、なんだか倒す、倒さないの話じゃなくて、その前に行動値をいかに無くさせるかが重要になってきた気がする。成熟体になってから色々と強化要素が増えてきたし、HPを削り切る為の動きにも変化が出てきてるのかもね。
うーん、元々がとんでもなく強い弥生さんとシュウさんから、まともに攻撃を当てる隙を作り続けなきゃいけないんだよなー。冗談抜きで完全に封殺を狙わないとヤバいし、弥生さん相手にはハーレさんの狙撃が切り札になるかもしれない。
「あ、そういやちょっと確認。その行動値の回復って、Lv10で発動した時限定? それともどのLvでも効果自体は出る?」
「……それはどうなのかな?」
「分からないので、まとめで確認してきます!」
「ほいよっと」
分からないって事は、説明欄には書いてない部分なんだな。まぁ明確にダメージを与えなきゃいけないのなら、どう考えても最大のLv10で発動するのがお得なんだろうけど……どの辺がどうなるか。ここの仕様次第で、かなり意味が変わってくるからなー。
てか、まとめで確認が必要なら自分で見ても良かったんだけど……まぁハーレさんが慌てて調べてくれてるし、ここは任せようっと。
「……ケイさん……Lv10以外で使えると……何か意味があるの?」
「あるにはある。というか、低Lvでも効果が出るとちょっとヤバい……」
「……どういう事?」
「簡単に言うなら、残り行動値を10以下にするまででいいのか、0まで削らなきゃいけないかの違いだなー。それで威力に大きな差が出てくるし」
「……あ、低Lvでも使えたら……外さない限り……行動値が尽きる事がない?」
「そう、そういう事! 通常攻撃でさえ危なそうなのに、延々とスキルを使われ続けるのは厄介過ぎる……」
流石に爪撃Lv10で行動値12の回復って話だから、Lv1での発動では増加には転じないとは思うけど……Lv5での発動で1増える事は考えられる。行動値10以下まで削るのすら簡単じゃないだろうに、それが5以下が必須になると……考えたくないな。
「……回避して回復に動かれたら……意味もない?」
「それもそうなんだよな……。あー、本気でどう対処しよう?」
弥生さんがあのハイテンションで戦ってる状態だからって、回避行動を取らない訳じゃないんだ。弥生さんだけなら強引にでも戦いそうな気がするけど、シュウさんがいるのなら……それは期待出来ないな。
多分、シュウさんが弥生さんを一時的にでも止めるか、結果的にそうなるように妨害してくる可能性が高い。あー、地味にあの2人が揃って本気で戦う状況を見た事ないからなぁ……。
「あ、あったのさー! ケイさん、『行動値還元Ⅰ』の効果はLv10での発動の時だけ効果が出るそうです!」
「お、マジか! その情報は助かるけど……どっちかと言うと弥生さんを倒すには、シュウさん対策が必要かー」
「シュウさんの防御は凄そうなのです!?」
「弥生さんの邪魔をさせないように全力で補佐してきそうだよね?」
「魔法でサポートに徹する可能性は高そうかな!」
「だよなー」
今までの傾向としては、シュウさん自身が積極的に倒しに動いてくる事はないはず。だけど、その分だけ全力で弥生さんのサポートに動いてくる可能性は極めて高い。……シュウさん自身が強いのに、完全にサポートに徹して動かれると相当厄介だな。
「……確か……土属性のアブソーブ持ち?」
「だなー。属性自体は光で、確か風魔法と電気魔法も上げてるって言ってたはず」
「……防御に土……移動に風……状態異常で電気? ……役割を……分散させてる?」
「性質的にそうなるよなー」
今まで本格的にシュウさんの対策を考えてはいなかったけど、改めて考えてみると持ってる魔法の性質がどれも異なってるのもヤバい。属性として持ってはいないから、相関関係で強い部分は出ないけど、弱い部分も出ないのが厄介なところ。
本格的に攻略方法を考えると、弥生さんよりシュウさんの方が厄介かもしれない。いや、弥生さんが楽な訳じゃないけどさ……。
「ねぇ、ケイさん。正直に思った事を言ってもいい?」
「ヨッシさん? 別にいいけど、その前置きっている?」
「あはは、いらないかも? それじゃ遠慮なく直球で言うけど……赤の群集は弥生さんとシュウさんだけじゃないし、私達も戦うのは私達だけじゃないよ?」
「……確かにそりゃそうだ」
色々考えてたけど、これは俺らだけで考えててもどうしようもないわ! 他にも弥生さんとシュウさんの対応に動くメンバーを集めてくれてるんだし、そのメンバーが揃ってから考えよう!
てか、アルはまとめの確認に集中したままだけど、どうなってるんだろ? クジラで使えそうなLv10のスキルはあったんだろうか?
「アル、そっちは使えそうなのはあった?」
「あー、一応な。これを試したのはどこの誰だと思うような内容だが、俺にとっては興味深い内容だ」
「その反応、一体どのスキルなんだよ!?」
「アルにしては珍しい反応かな?」
俺らだって色々試してたりするのに、その上でアルがこの反応は本当にどういう事!? いや、冗談抜きで本当に何のスキルをLv10まで上げて、どういうスキルを得たのかが謎なんだけど!?
「……まぁそれだけ、今の段階でよくこれにスキル強化の種を使ったなって思ったんだよ。だって『旋回』だぜ?」
「……はい?」
え、『旋回』ってアルが時々、緊急回避に使ってるあの『旋回』? 根本的に攻撃用のスキルですらなく、移動でも頻繁に使う訳でもないのに、それにスキル強化の種を注ぎ込んでんの!?
「……アルの反応の気持ちはよく分かった。俺もそれは思うわ! よくそこに使ったな!?」
「一応『旋回』には吹き飛ばし効果もあるにはあるから、それ狙いかもしれんがな」
「あ、そういう効果もあったのか」
それは普通に知らなかった……って訳でもないか。時々だけど、尾ビレを叩きつけて吹っ飛ばすのに使ったりはしてたっけ。ふむ、そう考えてみると意外と使い道もあったりする?
「アルさん! 『旋回』はLv10でどうなるんですか!?」
「『旋回保護』ってスキルが手に入って、いくつか効果があるそうでな。旋回中の被ダメの大幅軽減と、吹き飛ばし効果の強化と、味方プレイヤーを振り落とす事が無くなるって内容だ」
「おぉ!?」
「え、マジで!? どれも便利だよな、それ!」
「かなり使い勝手は良さそうかな!」
「3つ目の効果は、私達にも良さそうだね」
「おう、それは俺も思ってたとこだ。俺の旋回中のクジラを盾にしながらでも、ケイなら位置を見失わずに魔法は撃てるだろ?」
「足場が安定しているって前提なら動きながらでもなんとかいけるとは思うけど……正直、やってみないと何とも言えないぞ?」
「出来る可能性があるだけで、今は十分だろ?」
「まぁ、そりゃそうか」
もしやるとしたら、ぶっつけ本番じゃなくて練習をしたいとこではあるけどね。というか、この感じならアルは『旋回』をLv10にするので確定か? 攻撃向きの性能ではないけど、緊急回避用としては普通に便利そうだし、悪い選択肢ではない気も――
「ただ、ちょっと問題もあってな……」
「問題って、どういう問題だ? 攻撃用ではないのは、まぁ惜しい気もするけど……」
「いや、そういう問題じゃねぇよ。単純に俺の旋回がまだLv5なだけでな? 別に『旋回』は上がりにくくなるタイプのスキルじゃねぇのに、Lv6に上げるのにスキル強化の実を使うのは……」
「あー、そういう……」
「それは確かに勿体無いのさー!?」
アルは確かスキル強化の種は5個持ってたはずだから、それでも上げようと思えば上がりはする。でも、自力で普通に上げられる範囲のLv帯のスキルに使うには……確かに惜しいよな。そりゃ躊躇する理由は分かる!
「おし、そういう事なら今回は保留で! 無理して取る必要はない!」
「おい、ケイ!? 勝手に決め――」
「アルが躊躇してるのに、俺らの為に使うとかは許容しないからな!」
「私もケイさんに同意だね。それとアルさん、単純に時間切れだよ? ベスタさんから、次の動きの指示が出たよ」
「……はぁ、分かったよ。今回、無理に使うのは無しにしとくわ」
「それでよし!」
俺ら全員で共有してるアイテムでやるなら別に止めはしないけど、スキル強化の種についてはアルが個人で貰ってる報酬だ。別にアル自身が何も躊躇ってないのなら止める方がなしだけど、俺らに合わせる為に無理して使うのはなし!
サヤやハーレさんもそれで納得したみたいで頷いてるし、アルのスキル強化の種の使用は見送りって事で! 折角調べたのに、そこは申し訳ない気もするけど……どうも時間切れみたいだしね。
「ヨッシさん、ベスタからの指示はどういう内容? とりあえず連結PTを組みに集合ってとこ?」
「えっと、それがちょっと無理みたいでね? 連結PTを組むのは後回しで、先に私達は先行してくれって」
「……マジで? え、無茶振り過ぎない?」
風音さんを臨時メンバーに加えて6人にはなってるとはいえ……って、そういや今のPTリーダーのアルがまとめを調べてたから、PT加入自体がまだだった!?
「アル、風音さんをPTにお願いかな!」
「ん? あ、そういや今は俺がPTリーダーか!? すまん、風音さん!」
「……それは大丈夫。……ところで……ログインは龍の方だけど……これでいい?」
「シュウさんは光魔法を使うし、闇魔法を使える龍の方が今回は良いかもしれないから、それで問題ないぞ」
「……分かった!」
<風音様がPTに加入しました>
ふぅ、これでちゃんと風音さんを俺らのPTに入れられた。てか、アルは自分がPTリーダーだった事を忘れてたのか。まぁ誰がリーダーをやっててもこういう誰かを新たにPTに加入させる時以外は関係ないから、忘れてしまう事自体はよく分かる!
「……みんな……今日もよろしく!」
「風音さん、改めてよろしくかな!」
「よろしくなのさー!」
「よろしくな、風音さん。それでヨッシさん、俺らが先行する理由って……?」
「風音さん、よろしくね。えっと、それは単純に他の弥生さんとシュウさんを相手に戦えそうなPTで、メンバーが揃ってるのが私達だけみたいでね? 他は1〜2人、ログイン待ちの状態なんだって。でも、全員揃うまで待ってる訳にもいかないから、揃ったPTから先に行く感じになったんだよ」
「あー、そういう感じか。まぁ急な話だったもんなー」
俺らだって、アルとハーレさん以外は呼び出された訳だしな。弥生さんとシュウさんを相手に足止めが出来る可能性のあるPTは決して多くはないだろうし、まだメンバー不在な状況になってても仕方ないか。
「おし、誰かが少しでも引き付けておかないとみんなが動きにくいだろうし、無茶は承知で動くか!」
「ま、そうするしかなさそうだな。最悪、負けて追い返されてもそこから合流すればいいだろ」
「そうはならないように、頑張るのです!」
「何度も負けてられないかな!」
「……頑張る!」
「あはは、やっぱりやるからには負けたくないもんね。あ、私達は目立っていいから、森林か海でステータス多めの『灰の刻印』を使えってさ」
「ほいよっと! って、それは俺らが狙われたりしない!?」
「上空は弥生さんとシュウさんが制空権を握ってて、飛んでいくと真っ向勝負で潰しに来るんだってさ。それ以外は、あちこちで空中も含めて乱戦が始まってるみたい」
この峡谷エリアは広いのに、弥生さんとシュウさんだけで制空権を握ってるってどういう状況!? いや、パッと見はそう見えるだけで、普通にあちこちで乱戦になってるだけか? それで狙われにくい状況になってる?
うーん、俺らが動き出す前にその辺の情報は聞いておくべきか。ヨッシさんがその辺の確認をしててくれたから、まずはそれを聞いて最新の状況を把握してからだな! 多分、今回は峡谷エリアに入ってから情報収集をする余裕があるとも思えないしね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます