第1152話 赤の群集との戦いに向けて
臨時のメンバーとして、風音さんが俺らのPTに参加するのは確定。羅刹がログインしてなかったのは痛いけど、この時間帯から大規模な衝突を想定してなければログインしてなくても仕方ない。というか、多分俺もハーレさんに起こされてなければまだログインしてなかったくらいだし。
それとは別に、十六夜さんがこっちに向かって来ているっぽいというのはありがたい! 連携して動けるかは状況次第な気がするけど、強いと分かってる人が参戦してくれるのは助かるもんな。
「ケイさん、十六夜さんがこっちに来てるの?」
「桜花さんのとこにいたのが、飛び出していったらしい。俺らのPTに来るって感じでもないけどさ」
「あ、そうなんだ。そっか、十六夜さんの参戦は心強いね」
「だよなー。ただ、一緒に動けるかは分からないけど……」
「そこは……まぁ仕方ないよね」
十六夜さんには昨日のジャングルでの1戦では危ないところを助けられたし、頼もしいには間違いない。戦場で一緒になるかどうかは、実際に動いてみないとなんともなー。まぁそこはなるようになれでいいとして、他の状況を確認していこう。
「アル、そっちはどうだ?」
「望んでた情報は出てないな。樹木魔法か海水魔法をLv10にしようかと思ったんだが……」
「あー、その手の情報はまだ上がってないのか」
うーん、まだ決してスキルLv10に到達させるのが簡単な訳じゃないし、例外属性の魔法は基本属性の魔法とは法則性も違うしなー。俺が水魔法Lv10にした時もスキル強化の種を持ってても注ぎ込むのに躊躇してる人が多かったんだし、情報が出てないのは仕方ない部分もあるか……。
「別に俺が検証するのでも良いんだが……」
「……流石に今から検証はなー」
「魔法のLv10だと、確実に色々と検証案件が増えるよね?」
「……使い道に迷い過ぎて、その機会を逃したな。こうなると、どうする……? 分かっている範囲なら俺も水魔法Lv10という手もあるにはあるが……」
アルが思いっきり悩み始めてるけど、俺と同じ水魔法Lv10かー。ウォーターフォールの威力は凄まじい事になりそうだけど、相手にアブソーブ・アクア持ちがいれば……いや、それなら吸収はし切れないのか。
「ケイ、その辺はどう思う?」
「……うーん、悩ましいとこだよなー」
アルと俺が被る属性は水だけだし、今後の事を考えるのなら被る事自体は問題はない。でも、魔法Lv10がまだまだ珍しい状況だし、スキル強化の種を使ってまでとなると微妙なところ。
PT内での属性被り自体をデメリットだと考えて、その上でもし水魔法Lv10で被せた場合にはどんなメリットがある? 確実にメリットだと言えるのは、ウォーターフォールの威力は確実に強力に……なるのか? 清水魔法を手に入れる段階で『水属性強化Ⅱ』は手に入ってるから、昇華魔法が強化される事はない気がする?
あ、でも、俺1人なら吸収し切れない2人での発動のウォーターフォールも、2人でアブソーブ・アクアを使えばほぼ完全に無力化出来そうな気がする。……そんな攻撃を俺ら相手に仕掛けてくるか?
うん、それはないな! もっと所持者が増えてからならまだしも、今の状況で俺ら相手に水魔法をわざわざ使ってくる相手はいないだろ! 却下だ、却下!
「あー、可能なら2人で過剰魔力値を持った状況で、ウォーターフォールをぶっ放したい!」
「……サラッと恐ろしい事を言うな!? いや待て、出来なくもないのか?」
「アル? え、なんか手段でも思い付いた!?」
「あぁ、まぁな。時雨さんの協力を得られれば、ワンチャンあるんじゃねぇか?」
「時雨さんって黒の統率種の……って、あー!? そうか、黒の瘴気強化種に昇華魔法を使ってもらうのか!」
「そういう事だな。つっても、作戦としてはありだが……属性を被せるメリットにはならないな。それこそ、そこは風音さんや他に来るだろうアブソーブ系スキル持ちの人に頼んだ方がいいし、別に同じ属性である意味もないしな」
「……確かにそりゃそうだ。属性被りのメリットじゃなくて、凶悪威力の昇華魔法の発動方法の案だしなー」
時雨さんが味方なのは、レナさんがリアル側からの接触で確認してくれたから確定事項。どこまで細かく瘴気強化種に指示を出せるのかは分からないけど、状況の説明さえ出来れば、可能な範囲ならやっていくれるはず。
この手段なら、ウォーターフォールに限定しなくても、昇華魔法を発動させられる他の属性での組み合わせで問題ないしさ。
「ケイさん、アルさん、その方法は案の1つとして報告を上げておくね。私達がそういう機会に遭遇出来なくても、誰かが実行出来る状況になるかもしれないし」
「あ、それもそうだな。ヨッシさん、そこは任せた!」
「うん、任せて!」
集団戦なんだから、思い付いた戦法があればどんどんみんなと共有していけばいい。……今の手段は赤の群集も使ってくる可能性も考えておいた方が良いかもしれないしね。
それはそうとして、アルが水魔法Lv10を取るメリット……あー、2人でアクアクラスターを撃ちまくって、回避を困難にする? ありっちゃありだけど、これも属性が同じであるメリットじゃないな。
俺かアルのどっちかがアクアウィークンで弱体化を入れて、そこから間髪を入れずに水魔法を叩き込むくらい? でも、これなら1人でもある程度は出来るしなー。
「ねぇ、アル。クジラの方で何か取るって方向はどうかな?」
「……そうだな、そっちの方で考えてみるか」
「あー、無理に魔法に拘らなくてもいいもんな」
アルは支配進化なんだし、ステータスとしてはどっちでもいける。それに俺より木の魔法に偏ってなくて、クジラの物理攻撃も上がってるもんな。……俺ももうちょっと、ロブスターの方を鍛えないとね。せめて、応用連携スキルが1つくらいは取れるようにしておきたい。
「クジラで何か良いスキルがないか見繕うから、少し時間をくれ」
「ほいよっと! あ、アル、決まらないなら決まらないでも良いから、無理に今すぐ何かに確定しようとはするなよ! 納得した上でならいいけど、変な妥協で決めるなー!」
「……おう。まったく、そういうところでしっかりと気遣いはあるんだよな……」
「あはは、ケイは確かにそういうとこはあるかな」
小声で言ってるけど、普通に聞こえてるからなー! そりゃこの状況だと新しい手段は欲しいけども、その為にアルが納得してない形で貴重なスキル強化の種を大量に消費させるのは無しだっての。気遣いというか、根本的にそこら辺は無理強いする事でもないし。
「ふっふっふ、遂に『大型化』を取得成功なのさー!」
「おっ、マジか! ずっと静かだと思ってたら、今回は成功なんだな!」
「毎回、気が逸れてたのが原因だから今回は集中したのさー! それじゃサクッと『大型砲撃』も取ってくるねー! 『大型化』! えいや! 『略:傘展開』!」
「ほいよっと」
そうしてハーレさんのリスがかなり大きくなって、アルのクジラの背の上から飛び降りていった。今のでリスからネコサイズくらいには大きくなってたし、これまでよりも大きな物は確実に投げられそうだ。
えーと、確か『大型砲撃』を手に入れるには称号で『大きな物を投げるモノ』を手に入れれば良かったんだっけ? 特に他の称号の取得と重ねる必要はなくて、それなりに大きい物を投げれば取れる内容だったはずだし、そこまで時間はかからないか。
「そういや、サヤは結局どうするんだ? さっきアルにも言ったけど、無理に今すぐ何かを取る必要はないけど……」
「あはは、気遣いをありがと。でも、私はもうどうするかは決めたかな!」
「お、マジか! 具体的にどうするんだ?」
「まだ試してる人の情報は無かったんだけど、『爪刃乱舞』をLv10にするかな!」
「サヤはその方向で行くんだね。でも、まだ情報はなかったんだ」
「おー、そう来たか! ……どういう強化内容になるんだろうな?」
「それはやってみてのお楽しみかな! それじゃ時間もそんなにないし、早速やっちゃうね。とりあえずこれでLv8!」
そうしてサヤは爪刃乱舞をLv10にする為にスキル強化の種をどんどんと使用していく。……Lv9まで上げた段階までは特別に何か別の強化スキルの取得になったりはしてないみたいだけど、この辺は物理攻撃だから?
まぁ今までの経験則としては、物理攻撃のスキルの強化内容は魔法や操作系スキルとは法則は違うもんな。その辺は違いがあっても不思議じゃない。
「……それじゃLv10にするね?」
「……ほいよっと」
「……なんだか緊張するね」
「その光景を見たいけど、大きめの石を探すのが大変なのさー!? 人が、人が多いー!? 今までと大きさが違うから、身動きが取りにくいのです!」
「えっと、ハーレ? 一旦、大型化を解除をすればいいんじゃない?」
「はっ!? そういえばそうだった!? 慌てたら、変な状況に……あー!? 風音さんを発見なのさー! 風音さん、こっち、こっち!」
おっと、もう風音さんはこっちのエリアまで来てたっぽいね。ハーレさんが風音さんを見つけたのなら、PTリーダーをハーレさんに……って、今はアルがPTリーダーだけど、まとめをチェック中だから後でもいいか。
「え、こういう風になるのかな? それじゃもしかして……」
「「サヤ?」」
「あ、ごめんかな! ちょっと意外なスキルが手に入って、びっくりして……」
「ん? サヤがびっくりするスキルってどういう内容だ?」
「それはかなり気になるね?」
「えっと、簡単に言えば『爪撃Lv10』で手に入る『行動値還元Ⅰ』と同じで、『爪刃乱舞Lv10』でも『行動値還元Ⅰ』が手に入ったかな。称号としては『爪刃乱舞を極めしモノ』だね」
「……はい!?」
「え、そんな事ってあるの?」
「なに? サヤ、それは本当か!?」
「それは確かにびっくりするのさー!?」
あ、アルとハーレさんまで反応してきた。まぁでもその気持ちは分かる! 地味に『爪撃Lv10』で手に入るスキルの名前が『行動値還元Ⅰ』だという事を初めて知ったけど、『爪撃』と『爪刃乱舞』、どっちもLv10で手に入るスキルが同じだったとは……。
「あ、でもスキルの威力によって還元される行動値の量が違うみたいかな? 爪刃乱舞だと、有効な1撃を当てる毎に行動値が1回復みたい」
「……威力に合わせて、還元量が減る感じ?」
「どうもそうっぽいかな?」
爪刃乱舞は10連撃もないから、全部当てても消費行動値を上回る回復量にはならないんだな。でも、この手のスキルは統合があったりするし、場合によっては恐ろしい可能性を秘めてる気がする!?
というか『行動値還元Ⅰ』の説明を今まで見てないから、一度まとめで内容を確認しとこ。多分、載ってるはずだから……お、あった、あった!
『行動値還元Ⅰ』
Lv10に至った物理攻撃スキルの威力に応じて、使用した行動値を回復する。
ただし、行動値の回復は有効なダメージを与えた場合に限る。
あー、これは早い段階でちゃんと内容を確認しておくべき内容だったっぽい。この記載のあるまとめの部分に注意書きがあるけど、『他の条件からもう1つ『行動値Ⅰ』を取得した場合に統合されて『行動値還元Ⅱ』へと強化される可能性がある為、実行可能な者の検証を求める』ってなってるよ。
まぁそりゃその可能性は考えるよなー! 統合されて『行動値還元Ⅱ』になれば、爪刃乱舞でも行動値の消費よりも回復の方が上回る可能性も出てきたな。あー、でも『行動値還元Ⅰ』と『行動値還元Ⅱ』の両方が必要って可能性もありそう?
「ともかく、これで爪刃乱舞Lv10がかなり使いやすくはなりそうかな! 爪撃Lv10同士だと押し負ける可能性はあるけど、弥生さんの爪撃での行動値に回復は封じられるかも?」
「あー、可能性はありそうだけど……爪撃の1撃と、爪刃乱舞の連撃の中の1撃の威力の差ってどうなんだ? 総合的には爪刃乱舞の方が上なのは分かるんだけど……」
「……あっ。それは……多分、爪撃の方が上かな?」
「やっぱりかー。その辺、何か対策を考えないとなー」
対抗手段としては良い気はしたけど、連撃という部分でどうしても1撃辺りの威力が低くなるのが欠点として出てきたか。うーん、白の刻印を使えばその辺の威力差は埋められるか?
場合によってはシュウさんが魔法で防御してくる可能性はあるけど、それも多分白の刻印で破壊は出来る可能性もある。この辺は状況に合わせて臨機応変に動くしかないか。
それにしてもLv10の魔法ではかなり影響幅が広い割に、爪撃Lv10では影響範囲がかなり限定されてるとは思ってたけど、こういう形になってたとはね。
まぁ必ずしも統合されるとは限らなくて、追加で『行動値還元Ⅱ』が手に入って少し効果が強化という可能性もあるにはある。……この辺は実際に2種類の物理攻撃をLv10まで上げないと不明な部分か。2つをLv10は流石に現状じゃ厳しいなー!
「……みんな、来たよ」
「たっだいまー!」
「お、風音さん、来たな! ハーレさんもおかえり」
風音さんの黒い竜の背中に乗って、大型化したままのハーレさんが戻ってきたな。まぁさっきのハーレさんの言葉を聴いてたらそうなるよねー。
「それでハーレさんは、どうだった?」
「ふっふっふ、無事に『大型砲撃』の取得に成功したのです!」
「あ、それは良かったかな!」
「あはは、やっと取れたね」
「地味に、本当に地味に長かったのです!」
何度も取得しようと考えていたけど中々取得出来ていなかったのが、今日ようやく取得に成功だな。ハーレさんが大型化と大型砲撃が使えるようになったなら、出来る事の幅が広がって――
「あ、私は今のを聞いて狙撃をLv10にする事に決めました! 私も弥生さんも同じ物理特化だから、狙撃なら弥生さんの爪撃に有効なダメージを発生させずに行動値の回復を阻止出来るはずなのさー!」
「……理屈ではそうなるけど、弥生さん相手にそんなピンポイントな狙撃が出来るのか?」
「そこはサヤの攻撃に合わせるのです! 弥生さんなら正確にサヤの爪での攻撃に合わせてくるから、逆にそこを狙うのさー!」
「あ、なるほど! 確かにそれはありだな!」
「ハーレ、それはナイスアイデアかな!」
「サヤとハーレで、弥生さんの爪撃での行動値回復を封じる形になるんだね」
「ふっふっふ、そういう事なのさー! それじゃ早速、狙撃をLv10にしていくのです!」
この作戦なら、確かに非常に厄介な弥生さんの尽きる事のない行動値を削れるはず。そうなった時にシュウさんがどう動くかが問題にはなってくるけど、何も対抗手段を用意しない状況で挑むよりはよっぽどいい!
サヤもハーレさんもかなりやる気に満ち溢れて取った感じだし、行動値の節約が可能な高威力の通常スキルを持っているのは後々でも役立つはずだしね。
後はアルがどういう選択をするかが重要か。そこまで区切りがついたら、風音さんをPTメンバーに加えて、ベスタからの指示待ちだな。
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