第1150話 これからの行動方針


 俺なりの赤の群集の狙いを推測してみたから、それをこれから群集のみんなに伝えていく事になった。情報共有板にも流したい情報ではあるけど、今動きがあるのは峡谷エリア。だから先にここの競争クエスト情報板に書き込んでいくのみ!


 ベスタ   : すまん、少し遅れた! 今の状況はどうなっている?

 招き猫   : まだ弥生さんが大暴れしまくってる! 高笑いが聞こえ続けてて、不気味ー!?

 富岳    : 赤の群集の狙うエリアが絞れなくなってるから、どういう意図で動いているかが読めんぞ!

 ツキノワ  : ……赤の群集がここを狙うなら、他のエリアを狙った方がいいのか? いや、そんな単純な話ではない気がするな……。

 肉食獣   : それは同感だな。……何か違和感があるのは間違いないが、それが何かがはっきりせん。

 メガネくん : うぅ、奇襲を受けて倒された! 安全圏の比較的近くだったのに!

 しゅん   : なんか奇襲も多いよね。

 ローズ   : 奇襲の相手は見れたのですわよね!?

 メガネくん : 一応は! 赤の群集5人と傭兵1人の6人PT!

 柊     : あ、やっぱり傭兵が絡んでた!?

○北斗    : ちっ、悪い情報だ。ウィルの世話になってた無所属を数名ほど、安全圏から離れた場所で確認した。灰の群集よりも傭兵の数は桁が違うと考えてよさそうだ。とりあえず俺は見つからないように距離を取って、様子を伺うぞ。

 ベスタ   : あぁ、任せたぞ、北斗。

 ツキノワ  : 少し前に推測は出てたが、奇襲を仕掛けてるのは傭兵か。こりゃ昨日から仕込んでやがったな。

 ベスタ   : 赤の群集、何を狙って……いや、待て。北斗、赤の群集のプレイヤーはどれほど確認出来た!?

○北斗    : 結構奥まできてるが、そんなに数は確認出来てねぇな。

 七四ノ二八 : それってなんだか不自然じゃないか?

 あくあ   : でも、遭遇情報自体は結構出てるよね。


 ふむふむ、どうにも赤の群集の動きというか、狙いが掴みきれてないっぽいね。でも、傭兵が明確に動いているのが確定情報になってるのは重要だな。俺の推測と一致する動きだしさ。

 さてと、どこまで俺の推測が役立つか分からないけど、とりあえず話してみますか! 話した上で、みんながどう判断するかが重要だしね。俺じゃ見落としてる部分もあるかもしれないしさ。


 ケイ    : 赤の群集の動きについて、少し推測をしてみた。合ってるかは分からないけど、話してみていいか?

 ベスタ   : ケイか。推測があるなら話してくれ。何か突破口が見つかるかもしれん。

 招き猫   : 今はなんでもいいから、可能性を考えていきたいもんね!

 富岳    : どんな推論か、気になるところだな。

 ケイ    : それじゃとりあえず話していくぞ! まずは赤の群集の狙いについて――


 それからアル達に話した内容と同じ事を書き込んでいく。この推測がどこまで頼りになるかは分からないし、的外れな可能性もある。だけど、ベスタが言ってるように突破口に繋がる可能性があるんだし、思い付いた以上は出し惜しみはなし!



 ……よし、説明終わり! さて、どんな反応が返ってくるか……。


 ベスタ   : なるほど、赤の群集は俺ら灰の群集と真っ向勝負を望んでいる……か。俺はこっちに来たばかりだから判断し切れないんだが、この場にいた人達はどう考える?

 招き猫   : 赤の群集なら、あり得そうな話かも?

 黒曜    : 妙な不自然さは感じてたから、その推測は納得いくね。

 シン    : この峡谷エリアなら声が響くし、意図さえ汲み取れれば伝える側は楽か。

○北斗    : 無所属からの傭兵としても、そこは納得だ。赤の群集に傭兵に行ってる奴は、灰の群集と戦いたがってる奴が多いからな。青の群集と三つ巴になるよりは、直接対決が可能ならそっちを選ぶ可能性は高い。

 あくあ   : 確か、もう赤の群集だけとの対戦エリアは残ってないんだよね?

 ツキノワ  : 海の再戦エリアの『ナギの海原』は赤の群集の勝ちでもう終わってるからな。新エリアだと青の群集が絡んでくる以上、策を巡らせなければ実現は叶わない状況なのは間違いないか。


 あ、地味に『ナギの海原』での再戦は負けてるのか……。折角作ってた海上のバーベキュー会場は奪われてしまったんだな。まぁそういう勝負だし、それだけ赤の群集が強くなってて、必ず防衛し切れる訳じゃないのか……。

 でも、あそこは海エリアの人だけでの総力戦をしてたって話だし、そもそもそれじゃリベンジって形にはならないもんな。


 ローズ   : でも、なんで直接言ってこないのかしら?

 ベスタ   : 青の群集も参戦しているんだ。再戦エリアでない限りは、迂闊に言える内容じゃないぞ。

 やのこのは : 確かにそうなるよね。漁夫の利を狙われそうだし。

 紅焔    : そりゃそうだ! それでもやろうと話をしようと思えば……青の群集には、どこかを進呈するくらいは必要じゃねぇか?

 アルマース : それは断りそうだがな。

 招き猫   : 確かに『はい、そうですか』で青の群集が受け取るとは思えないよねー!

 ケイ    : 確かにそりゃそうだ。


 大人しく受け渡すのを許容するのであれば、もう今頃ミヤ・マサの森林は青の群集の占有エリアへと変わっているはず。まず間違いなく、こっちからの打診では相手にされないだろう。

 でも、逆に知らない間に手薄になったという状況になれば、青の群集は占有エリアを取る事を優先して動く可能性はある。ジェイさん個人は俺への個人的な感情でこだわるかもしれないけど、そこまで個人の都合を押し通すほど無茶な性格はしてないはず。というか、それは斬雨さんが止めるだろうし。

 それこそ、ミヤ・マサの森林で対戦は残ってるんだから、そっちに全力を出してくる方向で警戒する方がいいだろうね。青の群集はまだ新エリアでの占有エリアを持ってないんだし、ここで無茶はしてこないはず。


 ベスタ   : 問題は、その赤の群集からの誘いに乗るか、それと青の群集が気付くかどうかだな。青の群集はサバンナでの動きが見えているから、もう既に気付いている可能性があるな。

 富岳    : 気付いた上で、サバンナを取りに行ってる状況か。……新エリア狙いで確実に1ヶ所は取るつもりかもな。

 レナ    : およ? こっちの確認に来たら、かなり状況が進んでるね? んー、でもこれって何もかもが推測じゃない?

 ツキノワ  : まぁ、確かにな。だが、確定させるには情報が足りん。

 招き猫   : レナさんはサバンナの調査に行ってたんだよねー? どんな様子だった?

 レナ    : 夜だから明かりを抑えてるかと思ったら、青の群集があえてあちこちで光源を用意してるねー。んー、それと今見た情報を総合すると……推測ばっかだけど、やっぱりその推測が合ってる気がするかも?

 ベスタ   : ……あえて目立つ状況にして、気付いているアピールか。赤の群集を無視して青の群集とサバンナで一戦交えるという選択肢もあるが……大乱戦は覚悟する必要があるな。

 シン    : それ、下手すれば赤の群集と青の群集が共闘して潰してくる可能性もあるんじゃね?

 あくあ   : それはありそう!?

 七四ノ二八 : 灰の群集に、過剰にヘイトが集まる?

 ベスタ   : ……その可能性は否定出来んな。

 ケイ    : あー、確かに……。


 青の群集の方は作戦を根本からぶっ潰したし、赤の群集からの誘いを無視したとなればそういう状況にもなり得るかー。あれ、これって俺らの選択肢はほぼ潰されてね?


「……ケイ、少し思ったんだがちょっといいか?」

「ん? アル、どうした?」


 みんなで競争クエスト情報板を見てるんだし、ここは安全圏だし、書き込んでも良いような気がするけど、わざわざこっちで直接聞く内容ってなんだろ?


「昨日のフラムさんとの遭遇……本当に偶然か?」

「……アル、どういう意味だ?」

「いや、確証はないから黙ってたんだが……水月さんがあんなミスをするのかが疑問でな?」

「あ、それは確かに私も思ったかな!」

「……そう言われると、確かに?」


 フラムが馬鹿な事をやらかすのは今に始まった事ではないからそこまで深く考えなかったけど、あれを投げたのって水月さんになるんだよな。……あー、アルが考えてる事が大体分かったよ。


「それ、フラムさんを通じて私達に『赤の刻印』の存在を教えてきたって事? 今回の誘いを、正しく受け取れるようにする為に?」

「そうなると、どこかで私達は見られてたの!?」

「……あの視界の良くない状況なら、その可能性もありそうかな」


 あの直後に群集クエストが進んで『灰の刻印』の存在は判明はしたけど、あれがなければみんなに情報を伝えて再現を考えたはずだ。昨日の夜に間には無理だったとしても、俺らの知らない深夜帯に動く人達が引き継いで検証をして朝には判明していても何も不思議じゃない。

 今の赤の群集には高確率で作戦立案者がいるし、昨日の段階から灰の群集との対戦を望んでいたのなら……その為の方法を考えて実行するのはあり得るはず。でも、なんでフラムを……って、フラムだからこそいいのか!?


「俺はヨッシさんの言った可能性を考えているんだが……その辺はどう思う? リアルでフラムさんを知ってるケイの意見が聞きたい」

「……ある意味では、フラムが適任だな。ただし、フラム自身は何も聞かされてない可能性が高いけど。知ってるとしたら、投げ飛ばした水月さんか」

「ケイさん、どういう意味ですか!?」

「……eスポーツ部の件でなんとなく分かると思うけど、あいつは口は軽いんだよ。だからこそ……俺相手には、情報を漏らしても不自然さを感じさせない事が出来る。その上、俺らが灰の群集を巻き込んで検証に動くのが分かってれば……不自然さに警戒しない形には出来る……」

「……やっぱりそんなとこか」


 くっ、これって俺とフラムの関係性と、フラムの口の軽さと、俺らの行動パターンを読んだ上での内容だぞ!? 赤のサファリ同盟で競争クエストに参加する気がある人と、ルアー達の新共同体の『リバイバル』が手を組んでるのはほぼ確実か。


「みんな、その辺でその話は中断なのさー! これからの行動方針を決めるそうです!」

「お、マジか! それは確認しとかないとな」

「だな!」


 という事で大急ぎで競争クエスト情報板へ戻ろう! 推測に推測を重ねてるだけで確証は何もないけども、色んな思惑が入り混じってるのは確実! その上で俺ら灰の群集がどう動くかを決めていかないと!


 ベスタ   : おそらく、どこも動いていない霧の森に行こうが真っ向勝負が目的なら赤の群集は戦場を変えるだけだろう。青の群集は……おそらく、三つ巴の戦いは避けるように動くだろうな。まずは1エリアを確実に取ってくるだろう。

 ツキノワ  : 選択肢はもうほぼなさそうだな。取れる選択肢は、赤の群集を完全に無視して反感を買いながら峡谷エリアを明け渡すか、サバンナエリアで赤の群集と青の群集が共闘してくるのを相手にするか、赤の群集の誘いに乗って峡谷エリアで真っ向勝負にするか、霧の森に追われてそっちで勝負になるか……。

 アルマース : 1つ質問だ。12時までに決着にならなければどうなる?

 レナ    : うーん、青の群集も再戦の方は真っ向勝負が目的だし、終わるまでは攻めてこないんじゃない? サバンナの方も確実に取りたいだろうし。

 招き猫   : そこは実際に動き出してみないと、分からないしねー!

 ケイ    : 結局は出たとこ勝負かー。

 ディール  : なんだか凄い話になってきてるが、重要情報の報告だ。異形に進化した赤の群集の群集支援種のサソリ『エル』を確認した。ここから大きく動くぞ! 俺はこのままこのサソリを追跡する!

 メガネくん : 重要情報じゃん!?

 柊     : そうなると、ここのエリアボスの位置が判明するよね?

 レナ    : 大きく動き出したけど、ベスタさん、どうする?

 ベスタ   : ……もう選択の余地はないな。灰の群集はこれより、峡谷エリアの取りに動く。推測の要素が多いが、実際に動くまでは確定する事も出来んからな。だが、赤の群集と本格的にぶつかる可能性が高いと思って行動しろ。状況に合わせて随時、ここで情報の共有と指示を出していくぞ。

○北斗    : 了解だ。傭兵として、出来る限りの事をやっていこう。

 やのこのは : 頑張っていこう!

 しゅん   : 勝つつもりでいくぞー!

 メガネくん : こうなると、灰の刻印を貰いに行った方がいい?

 招き猫   : 今いる場所によって考えるんでいいんじゃない? わざわざ貰いに戻るのも、状況としては良くないし。

 あくあ   : 確かにそれはそうかも?

 ベスタ   : その辺りの判断は各自に任すが、最新情報の確認は欠かすなよ。

 ローズ   : 分かりましたわ!

 ベスタ   : レナ、灰のサファリ同盟と連携して戦力を集めてくれ。

 レナ    : 了解! あ、その前にこれは報告しとかなきゃね。昨日報告のあった、タコの黒の統率種の人は時雨さん本人だと確認は取れたよ。だから、全面的に味方と考えていいけど……これだけは要注意! 黒の統率種のタコが時雨さんだけとは限らないから、そこは油断しない事!

 富岳    : ……その可能性もあったか。その辺、警戒していくぞ!

 アルマース : おうよ!

 ケイ    : ほいよっと!

 ベスタ   : ケイ、アルマース、少し話があるからその場で待っていろ。

 ケイ    : ……なんとなく予想は付くけど、了解だ!


 多分、これは弥生さんとシュウさん絡みの話だろうね。ベスタを自由に動けるようにした方がいいし、誰かがあの2人を抑える役目をしなきゃいけない。……とんでもなく強い相手なのは分かりきってるけど、なんとかやってやろうじゃん!

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