第1138話 峡谷エリアの偵察開始!


 いざ峡谷エリアへ出発! さっきの偽装を再発動するのは、エリア移動になってから!


「そういやケイはどこにいる気だ? 流石に樹洞の中からじゃ、操作系スキルを外には発動出来ないはずだぞ」

「それなら、アルの隠す部分の根の中にいようかなーと思ってるぞ。俺は岩の中に隠れる!」

「……なるほど、それはありだな」


 ふっふっふ、岩の生成量的には問題なかったからな! 岩の操作を使う為に樹洞の外にいなければいけないとしても、アルの偽装の中に紛れ込めるから問題なし!


「あー、ケイさん、アルマースさん、少しいいか?」

「どうした、羅刹?」

「何か問題でもあったか?」

「いや、中と外で会話をどうする気かと思ってな? 言ったろ、声……というか音が響くって」

「「あっ」」


 しまった、そこの対応が完全に抜け落ちて……って、俺らに関してはそこは特に問題ないわ。移動は俺がやるんだから、こうすればいいだけ!


「アル、共同体のチャットで意思疎通はよろしく! 獲物察知で敵を見つけたり、何かあった時はクジラの背中を叩いて教えればいいし。えーと、敵を見つけた時は2回、岩の操作の再発動が必要な場合は3回叩く感じでどう?」

「あー、そういう手段があったか。よし、それを採用するとして……ケイに何かを伝えるのはどうする?」

「そこは普通にPT会話でいいんじゃね? 俺は返事出来ないけど、聞くのは問題ないだろ? 必要に応じて共同体のチャットで返事すればいいし」

「そういえばそうか。よし、それでいくぞ」

「ほいよっと!」


 割とあっさりと、意思疎通の問題点は解決! PTにはPT会話だけでチャット機能はないけど、共同体の方のチャット機能を使えば問題はない!


「そうなると私かヨッシが、羅刹さんやケイ……場合によってはハーレに色々と伝えていけばいいのかな?」

「そうなりそうだね。ハーレ、目視での索敵中には声は出さないように要注意ね」

「はーい! サヤも索敵を交代する時は要注意なのさー!」

「うん、そこは気を付けないとかな!」

「……随分とスムーズに問題点が解決したな。まぁ小規模な共同体だからこそか」

「そういう事だなー」


 灰のサファリ同盟みたいな大規模な共同体だと不可能な手段だろうけど、羅刹以外のPTメンバーがそのまま共同体の全メンバーだからこそ出来る事! この手段って、紅焔さん達の飛翔連隊とかも出来そうだよね。


「さてと、いつまでも話してても仕方ないか。アル、頼んだ!」

「おうよ! 『樹洞展開』! ケイ以外はサクッと入ってくれ。あぁ、遮音設定にもしておかないといけないか」


 アルは音が漏れないように設定をしつつ、俺以外のみんながアルの木の樹洞の中に入っていく。さて、俺は俺でアルのマングローブの根みたいになってるとこに移動しよ。


「お邪魔しまーす! はっ!? 中が暗いのです!?」

「それならこうしよっか。『ファイアクリエイト』『火の操作』!」

「あ、そっか。ヨッシ、別に火魔法が使えない訳じゃなかったかな!」

「あはは、そうだよ。まぁLvは低いし属性的にも使いにくいけど、明かりとしてはこれで十分でしょ」

「もちろんなのさー!」

「ともかく邪魔するぜ。まぁ戦闘は極力控えるなら、そこまで変な事もないとは思うがな」


 俺からは樹洞の中の様子は見えないけども、特に問題はなさそうだね。明かりについても失念してたけど、ヨッシさんが対処してくれたから問題なし!

 持ってるだけで使えてないスキルって色々あるけど、その辺もなんとか使えるようにしたいとこだよね。折角分析した危機察知回避の遠距離攻撃も、自分達で使えるように改造がし切れてないしなー。これから行く峡谷エリアこそ、あの攻撃は相当警戒が必要だろうしさ。


「みんな、準備はいいか?」

「アルさん、まだ樹洞投影がされてないのさー!?」

「おっと、そういやそうだったか。『樹洞投影』!」

「アル、重要な部分を忘れるなよー」

「これを使うのは久々なんだから、そのくらいは大目に見てくれっての」

「まぁそれもそうか。えーと、今度こそ準備は問題ない?」

「よいしょっと! 巣の方に移動完了なのさー!」

「中の方は問題ないかな!」

「いつでも行けるよ!」

「俺も問題ねぇぞ。アルマースの視界の投影も問題ねぇ」


 どうやら樹洞の中のみんなの方は準備完了のようである。俺とアルの偽装はエリアを切り替えてから。岩の操作での偽装の再発動が必要になった時の手段は考えているし、もう出発は出来るな!


「アル、出発するぞ! エリア切り替えまでは、移動よろしく!」

「おうよ! あー、エリアが切り替わったら、スキルの発動は全部思考操作でやるからな」

「ほいよっと。あ、全体的に移動速度は控えめでいくつもりだけど、いい?」

「俺もそのつもりだから問題ないな。さて、それじゃ出発するぞ!」

「「「「おー!」」」」

「さて、何か新発見があればいいんだが……」


 出来るだけ音を立てないように移動をするんだから、スキルの発動は発声しない思考操作になるのは当然。俺も発声せずに、思考操作でやっていこ。


「あ、ケイ? いつもの独り言の癖、気を付けてかな?」

「……それは善処します」


 そこはごもっともで……うん、大真面目にそこは注意しておかないと変なとこでミスに繋がりかねないもんな。今日は事前調査の一環だけど、それでも要注意!


 さーて、移動速度は成熟体としてはゆっくり進行。まずはどんなエリアなのかをこの目で確かめていこう。

 ふむ、エリアの切り替え地点はジャングルと一緒でバリア的なもので覆われて安全圏を形成してるっぽい。それを抜ければ……。


<『未開の峡谷・灰の群集の安全圏』から『未開の峡谷』に移動しました>


 峡谷エリアに切り替わった! おぉ、マップで高低差があるのは分かってたけど、実際に見ると思った以上に凄いな。岩山エリアよりも、かなり高低差が激しいね。

 今出てきた場所から岩壁に当たる部分の1番上は……エンよりも高くない? 岩山エリアでドラゴンと戦った時に乗り越えた高い部分よりは少し低そうだけど。


 そんな高さの岩壁があちこちに広がっていて、その合間の谷の部分があちこちに枝分かれして複雑化してる。うーん、これは確かに下手に上空へと行けなさそうな地形だな。しかも乾燥こそ問題はないけど、植物は少なくて殺風景ー!

 あ、何かが落ちたような音が響いてきた。ふむふむ、思った以上に音は本当に響くっぽいね。


「ケイ、準備をお願いかな!」

「ほい……っ!?」


 危な!? 思わず普通に返事をしかけたけど、それはここじゃダメなやつ! 安全圏から出たばっかの場所だから大丈夫だとは思うけど……ここは気を引き締めていかないと!


「おい、いきなり大丈夫か、ケイさん?」

「あはは、でも少しくらいは大丈夫だよね? 羅刹さん、ケイさんとフレンドコールをしてたんだしさ」

「……まぁそれはな。ちょいちょい岩陰や窪みとかがあるから、そういう場所だと外には音は響きにくいぜ」

「それは重要情報かな!」


 確かにそういう場所の情報は重要だね。そういう場所があるのなら、同じような場所を作ってしまえば喋っても大丈夫な場所も作れる事になる。

 偽装用の岩の操作の再発動が必要になった時に考えてる手段が、そのまま転用出来そうだな。行動値は有限だから、その辺の使い方も重要になってきそう。


 さて、それじゃアルの偽装を本格的にやっていきますか! という事で、再発動ではないけど、アルのクジラの背を3回叩く!

 これで意図は伝わるはずだけど……おっ、クジラが小さくなっていってるから、ちゃんと伝わったね! 俺の方もやっていこうっと。


<行動値を3消費して『増殖Lv 3』を発動します>  行動値 118/121


 ちょっと増殖でロブスターの表面をコケで覆い尽くす! Lv5までは必要ないから、Lv3での発動! 出来るだけロブスターの顔は出さない方が良いだろうから、コケの方で視界を確保する!


<行動値1と3魔力値消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 118/121 : 魔力値 299/302


 なんだかんだで、成熟体になってから行動値も魔力値も大幅に増えたよなー。でも、その分だけ消費も増えてるから、決して大きく余裕が出来てる訳じゃないってのがね……。

 まぁそこは気にしてても仕方ないし、手早くやるべき事をやっていこうっと。


<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>

<行動値を19消費して『岩の操作Lv4』は並列発動の待機になります>  行動値 99/121

<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>

<行動値を10消費して『獲物察知Lv5』は並列発動の待機になります>  行動値 89/121

<指定を完了しました。並列発動を開始します>


 アルがクジラだけを小型化した状態だから、背負っている木とのバランスが崩れる前に岩を追加生成して覆っていく。その時に俺のロブスターも、一部のコケが表面に出る程度にして、大半は隠す!

 これでロブスターの視界は潰れたけど、コケの方で視界は確保出来てるな。ちなみにアルへの意思疎通をする為にハサミを動かす必要はあるから、その可動域の分だけ空洞も用意した! これならパッと見では、俺の存在には気付けないはず。


「ケイ、アルから伝言かな。出発が出来るようになったら、背中を1回叩いてだって」


 ふむふむ、アルのクジラの視界も見えない状態だし、木の方から俺の状況は見えないもんな。直接会話が出来ない以上、こういう形で教えてもらうしかない。出発する時はクジラの背中を1回叩くのは了解っと。


 さて、すぐに出発といきたいとこだけど、その前に獲物察知の反応を見ていきますか。えーと、黒い矢印はちょいちょいあるけど、岩壁を貫通してるのが多くて地味に役に立たん!

 他の群集の矢印は……特に反応なしか。灰の群集の反応はまばらにあるにはあるけど、人数は少なめ。あー、白い矢印に灰色の縁取りがされてる人は傭兵かな? 何人か割と近場に反応はあるけど、ここは特に気にしなくていいか。


 さて、簡単だけど確認は終わり! という事で移動を開始していくとして、まずはアルのクジラの背を1回叩いて……って、ちょっと待った!?

 そういえば進行方向については全然話し合ってなかったよ!? これは直接話さないと無理な内容だし、共同体のチャットで伝えないと!


 ケイ    : 悪い! 決め忘れてた事があった!

 アルマース : ……奇遇だな。俺も丁度そう思ってたとこだ。

 ケイ    : だろうなー! 進む方向、どうする?

 ヨッシ   : その辺は羅刹さんに決めてもらうのはどう?

 サヤ    : 私達よりも遥かに把握してそうだから、賛成かな!

 ハーレ   : 同じく賛成なのさー!

 ケイ    : おし、それじゃ羅刹に任せるって事で! 進行方向に敵の反応があったら、さっき言ってた合図で叩くからな!

 アルマース : おう、了解だ!

 ヨッシ   : それじゃそう羅刹さんに頼んでみるね。

 ケイ    : 頼んだ!


 さて、マップを軽く見た程度ではこの周辺は踏破済みの場所は多い。その辺をどう判断して進行方向を決めるかは、羅刹頼りだね。なんかちょっと押し付けるような形になるのが心苦しいけど。


「羅刹さん、進行方向の決定を任せてもいいかな? 多分、その方が無駄がないと思うんだけど」

「そりゃ別にいいが、全員の確認は取れて……あぁ、動く気配もなく無言だったのは、その確認をしてたのか」

「あはは、そうなるね」

「そういう事かな。それで、お願いは出来る?」

「俺は出来るだけ隠れておいた方が良い状況だし、戦闘は出来そうにないからな。そういう形で役目があるなら引き受けよう」

「羅刹さん、ありがとね」

「なに、協力する為の傭兵だしな。礼はいらねぇよ」


 今まで無所属の人には何人か会ってるけど、頼りになる人とそうでない人の落差が激しいもんだな。羅刹はどう考えても頼りになる方!

 うーん、傭兵と言わず、普通に灰の群集としての戦力に欲しいけど……羅刹の場合は、居場所を無くした訳じゃなくて自ら無所属になってるタイプなんだよね。ほぼ確実に、勧誘しても無駄だろうなー。


「さて、この位置からとなると……とりあえず傾向を掴んでもらう為にも、中央を目指していくか。おそらく南に青の群集の安全圏、北に赤の群集の安全圏がある。そこは避けるようにいくぞ」

「それだと西に向かって真っ直ぐかな?」

「でも、真っ直ぐは進めなさそうだよ?」

「谷の部分は広い部分もあれば、狭い部分もあるからな。通れる幅の場所を優先しつつ、踏破出来てない場所を優先的にいくぞ」


 あ、そうか。場所によっては、今の状況でも通れない場所もあるんだな。上空を通れれば気にしなくても良さそうだけど、そういう訳にもいかないのが厳しい!

 でも、赤の群集と青の群集の安全圏がある方向の目処は立ってるんだな。それについては良い情報! 今はその辺を避けつつ、未踏破の場所を優先するのはありか。

 なんだかんだで、近くであっても踏破出来てない場所も結構あるもんなー。そういう場所に群集支援種のサソリがいるかもしれないしね。


「まず、初めの分岐は右の方だな」


 よし、それじゃ出発の合図としてアルのクジラの背中を1回叩いて、岩の操作で前進開始! アルもそれに合わせてクジラを進めている。うん、これは岩の操作への負担はそれほど無くていけそうだね。

 さーて、俺らは後からやってきた捜索隊ではあるけど、何か成果が見つかればいいなー。可能なら敵と味方のどっちでもいいから、群集支援種を見つけておきたいところ。

 あ、でも今見つけても確保し続けるのが大変かも? ま、その辺はなるようになれか!

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