第1136話 仕切り直して


 なんだか変に荒れた状態になってしまったけど、気分を切り替えてやっていこう! 俺がサラッと言った手段は、灰のサファリ同盟が本格的に動ければ状況としては実行は可能なはず。

 それはそうとして、少し気になった事があるから羅刹に確認しとこう。……これは聞いておいた方が、俺らの心境的にかなり違う気がするし。


「羅刹、ちょい質問」

「ドライアに関してなら、昼間から問題は起こしまくってたからな。ケイさんが原因って訳じゃねぇから気にすんな」

「……ほいよっと」


 確認したい事を聞く前に、先に内容が返ってきた。……そりゃ、ベスタやレナさんが珍しく怒ってる様子が出てくる訳だよ。やっぱり、さっきのは最後通牒のなるきっかけになっただけか。


◯羅刹    : すまんな、無所属の奴が迷惑をかけて……。

◯北斗    : 無所属として謝ってんじゃねぇよ、羅刹! 俺まであれと同じ括りにすんな!

◯羅刹    : そう思うなら、見てないで何か言え!

◯北斗    : そこは知るか! 俺はあいつの保護者じゃねぇんだよ!

 ベスタ   : おいおい、ここで喧嘩を始めるな。無所属全体とは思ってないから、その辺は気にしなくていい。

 あくあ   : そうそう! 早く戦わせろだとか、元々ケチつけてたし!

 やのこのは : 『未開の霧の森』だっけ? そこで誰に殺されたのか把握も出来ずに殺されて、峡谷に来てたんだよね?

 柊     : ジャングルで暴れ損ねたから、こっちで暴れさせろってうるさかったけどねー。

 ケイ    : ……そりゃ確かに鬱陶しいな。てか、『未開の霧の森』が森林深部から行ける新エリア?

 ベスタ   : そうなる。ドライアが飛ばされてきて判明した内容ではあるんだが……。

 アルマース : その情報があったから、あの態度か……。


 うーん、傭兵だからこそ分かる部分だけど、ぶっちゃけそれだけで偉そうにする内容か? 確かに新エリアの情報は大事だけど、傭兵なら瘴気収束で行き来が出来るんだし、もっと協力的な方がありがたい。どっちにしても経路を確立したら分かる情報でもあるし……。

 羅刹も言ってたけど、競争クエストは大規模な集団戦だ。完全に指揮下に入って言われた事以外をするななんて真似はしないけど、それでも作戦の目的くらいは聞いてもらわないと困る。その上での単独行動ならいいけどさ。


 ケイ    : まぁそれはもういいや。改めて具体的なここの状況を、軽くでいいから教えてもらえない? 空中はヤバそうな感じっぽいけど。

 しゅん   : 今はそうでもないけど、昼間がヤバかったからねー。

 メガネくん : 近くに敵がいたら、大体昇華魔法が飛んでくる! 場合によっては同時に何発も!

 レナ    : 追加情報としては、昼間はどうも弥生とシュウさんが2人でこっちの調査に動いてたみたいでねー。そっちも猛威を振るってたみたいでさ。

 柊     : 赤の群集のネコ夫婦に送り返された人は結構いるよー。

 ハーレ   : その2人は危険なのさー!?

 ケイ    : あー、そういう状況か……。


 空中で索敵をするのは相当危険なのはよく分かった。まだ実物の地形は見てないけど、マップを見る限り高低差が凄まじいもんなー。切り立った岩場があちこちに広がってるし、その間は複雑に入り組んだ峡谷部分。


「弥生さんとシュウさんが出向いてるのなら、さっきのケイの偽装案も厳しくないかな?」

「だよな……。あの2人が些細な違和感を見逃してくれるとは思えないし……」


 上空から見下ろすのが確実だと思ったけど、やっぱりその辺は対策してくるよな。しかも、よりにもよって抑えに弥生さんとシュウさんの2人が投入されてるとか……。総力戦に加わっていなかった理由って、その辺もありそう?

 何が厄介かって、観察力と戦闘力と機動力を全て併せ持ってるとこがヤバい。この2人を抑える方法を考えるか、いないタイミングを狙わないと危険過ぎるな。


◯羅刹    : それに前にも伝えたが、ここは声も響くからな。迂闊に喋ってると……回り込まれて奇襲って事もある。まぁそれは俺もやってるが。

 神奈月   : 飛ぶなら、峡谷の岩場の上までは行かない範囲が良いっぽいぞー!

 七四ノ二八 : 谷底には瘴気が溜まってる場所も多いから、少し地面から浮いて、足音を立てないのがあり。

 メガネくん : でも、今度は土の操作とかであえて物音を立てて、足音に偽装するって事も増えてね。

 ケイ    : なるほど。あー、だから待ち伏せか。

 富岳    : 自分達は動かずに、敵の方を誘導しようって作戦を青の群集がやっている。今は人数が少ないみたいで劇的な動きはないが……その辺は途切れずに続いているな。

 ヨッシ   : 下手に少人数で動いても、待ち伏せに引っかかる可能性が高いんだね。

 ディール  : そうなるな。その辺の対抗策も含めての、魔法Lv10のトーナメント戦だ。

 ベスタ   : 昇華魔法を無効化する為に、アブソーブ系の所有者を増やしているからな。魔法だけに偏ると危険でもあるから、並行してそれ以外もだが。

 ケイ    : そういう意図もあったのか!?


 なるほど、確かに空中に行けば昇華魔法が飛んでくるのなら、それを吸収して無力化を狙うのは有効な手段になってくる。それだけで全てカバー出来る訳じゃないけど、それでも人数が多いほど上空からの索敵の際に撃破される危険性は下げられるはず。

 それに昇華魔法が効かない事が多くなれば、手段を変える必要性も出てくるね。あー、だからこそ魔法以外も対象にしたトーナメント戦も開催してる訳か。かなり次の1戦に向けての準備としての役割が大きいみたいだな。


 サヤ    : そういう待ち伏せ作戦って、灰の群集でもやってるのかな?

 ミゾレ   : 意図的に狙う場合もありますが、結果的にそうなるという形が多いですね。PT単位で動いていると、死角がある場所へは全員で一気に突っ込まないようにしていますし。

 ハク    : それで敵と遭遇した場合、逃げを選んでも深追いされたら結果的にPTメンバーのとこに戻った時に待ち伏せって形になるんだよ。

 サヤ    : あ、確かにそういう形にはなりそうかな?

 アルマース : そうならなかった場合は、そもそも戦闘が発生しない感じか?

 あくあ   : そんな感じだねー! 獲物察知で見つけても、向こうも持ってたら地形で簡単に振り切られる状態だし。

 やのこのは : 慎重に敵の動向に注意しながらの探索になってるのが今。

◯羅刹    : ここにも逸れてる群集支援種の……種族はサソリで、名前はカナデだったか? それがいるらしいが、捜索が遅々として進んでねぇな。探索人数を大幅に増員しねぇと、流石に効率が悪過ぎるぞ。

 ケイ    : 現状じゃ、人員不足って事かー。


 ふむ、今の峡谷エリアの問題点は見えてきたね。根本的に地形の問題で、地上からの索敵は困難で地道に進むしかない。上空からの索敵は、色々対策を取らないとむしろ危険。

 この辺は参戦人数が増えてくれば完全には対処しきれなくなるはず。ある程度の対抗策……今用意してるアブソーブ系スキルが増えてくれば、そこを防御の中心にして上空からの索敵をしていけばいいかも?


 ベスタ   : 問題は、同じ事を他の群集も考えている可能性が高い事だな。ジャングルと海溝の攻略手順自体は大差無かったらしいからな。

 ケイ    : え、マジで!?

 富岳    : どうやら逸れている群集支援種を見つけ出して、ボスの居場所を割り出させるのは共通っぽいぞ。まぁ細かな手順は違うみたいだが……。


 うわー、マジか。そうなるとここの峡谷エリアも、他の2ヶ所も同じ法則になってそうだな。新エリアでの競争クエスト、後になればなるほどそれまでの戦闘の情報の蓄積が重要になってくる?


 レナ    : 大枠の攻略手順が同じ可能性が高いから、どこのエリアを狙ってくるかが重要なんだよね。残りの新エリアはこの『未開の峡谷』と『未開のサバンナ』と『未開の霧の森』だし。

 ケイ    : あー、そうか。他の群集が手を出してないエリアを優先的に狙うって手もあるのか。

 富岳    : まぁどこを狙ってくるかが分からないってのが問題なんだがな。

 ハーレ   : はい! それなら早めにサバンナと霧の森への経路確立をした方が良くないですか!?

 ツキノワ  : そこも悩ましいとこでな。全体としてどこを狙うかを定めておかないと、それぞれの自由意志で戦力がバラけちまう。

 ミゾレ   : その結果、全部の場所で戦力不足に陥る危険性もありますからね。

◯羅刹    : 戦場が複数あるからこそ、厄介な状態だな。

 メガネくん : どこのエリアが欲しいかって話だよね。

 

 なんだかこの峡谷エリアだけではない話になってきたけど、実際そうなんだよなー。多分、残っている全エリアで全ての群集が同じタイミングに同じだけの戦力を投入してくる可能性は低い。

 確実に勝ちを取りに行く為に他の群集が選びそうにないエリアを狙うか、それとも勝てる可能性を上げられるだけ上げてから、エリアとして欲しい場所を全力で取りに行くか……。中々難しい選択になってくるね。


 ベスタ   : おそらく今日はもうどこの群集も大きく動く事はないはずだ。勝負は明日、人が増えてきてからマップ情報を充実させてからになるだろう。

 レナ    : 後はどこのエリアを狙っていくかだねー。ただ、その辺の意見の収集が難しいんだけど……今のうちに手を回しておこっか?

 ミゾレ   : それでしたら、私の方で灰のサファリ同盟の方で意見を募ってみましょうか? レナさんは灰のサファリ同盟以外の他の方々へ聞いていただけると助かります。

 レナ    : うん、そういう事なら了解ー! それを元に、明日の午前中にでも、何処を取るかを考えていかないとね。

 メガネくん : うーん、明日ってミヤ・マサの森林の対決もあるのが……。

 柊     : 仕方ないけど、あちこちで重なると厳しいね。

 しゅん   : 確かにねー。


 うーん、こうなってくると今の段階で峡谷エリアの探索は控えておいた方がいいのか? ここを狙わないという結論になったら、下手に探索をしても無駄足になる可能性は否定出来ない。


「そういえば、峡谷エリアって乾燥はどうなってる? ケイは大丈夫なのか?」

「あー、そういえば……。まぁ乾燥適応の種はあるから、どうにでもなるけどさ」

「その辺は聞いてみればいいのです!」

「まぁそりゃそうだ」


 これは聞けばすぐに分かる内容だしね。取るエリアを選ぶ基準にもなってくるだろうし、この確認は大事!


「ケイさん、それなら別に問題ねぇぜ? ここは川も流れてるし、多少は乾燥してるが、それで弱ったり死んだって報告は聞いてねぇ」

「あ、そうなのか。それなら一安心だな」


 書き込んで聞こうと思ったけど、羅刹が先に教えてくれたよ。乾燥は特に気にしなくていいのはありがたいね。

 てか、川も流れてるんだな、ここ。あー、そういやさっきマップを見た時にそれっぽいのはあった気がする。


「羅刹さん的には、ここのエリアはどうなのかな?」

「ん? ここは音が響くのさえ気にしなければ、周囲とは分断されやすいから特訓には向いてると思うぜ。まぁ残りの『霧の森』と『サバンナ』を見てないから、どれが良いかとは断定は出来んが……」

「うーん、そうなると他の2エリアの情報も必要になりそうだね」

「どんな特徴の違いがあるのかを比べてみないと分からないのさー!」


 確かにそれはその通り。でも、下手に経路を確立してしまうと、話題にも出てたけど戦力に分散が発生する危険性もあるんだよなー。はぁ、情報の取捨選択が難しいとこだね。

 

 ベスタ   : ケイ達はこれからどう動くつもりでいる?

 ケイ    : んー、ぶっちゃけ決めかねてる。『霧の森』と『サバンナ』の情報も、狙うエリアとして判断する為に必要な気もしてきたしさ。

 しゅん   : 確かにそうだよねー。

 七四ノ二八 : 判断材料は大事。

 ベスタ   : やはりそういう結論になるか。仕方ない、富岳、草原エリアの方で『未開のサバンナ』への経路を確立してもらえるか? 風雷コンビも協力して、手が空いてる奴に声をかけて軽くでいいからエリアの傾向を調査してほしい。

 富岳    : 今はそれぞれのエリアの情報収集に動くんだな。了解だ。

 迅雷    : それは任されようではないか! なぁ、疾風の!

 疾風    : おうともよ! なぁ、迅雷の!

 ベスタ   : 頼んだぞ。『未開の霧の森』へは俺が行く。紅焔が確か来ていたな?

 紅焔    : おう、いるぜ! 俺らはそっちに行けばいいのか?

 ベスタ   : あぁ、そうだ。モンスターズ・サバイバルはトーナメント戦は終わりにしてたはずだから、そこで余力のある奴らにも声をかけていこうか。

 紅焔    : おっしゃ、了解だ!


 おぉ、サクサクと他のエリアの探索部隊が決められていってる。まぁ実際にはこの後、もっと人数を集めて動くんだろうけど、中心となって動く人達は大体決まった感じだね。


 ベスタ   : 羅刹やケイ達、その他にもこの場所にいる奴らは、無茶はしない程度にここのマップ情報を増やしてくれ。この際、調査が無駄になるエリアが出てくる可能性があるのは許容するしかないだろう。

 ケイ    : まぁそれは確かになー。

◯羅刹    : それが傭兵としての役目だというなら、引き受けるまでだ。

 やのこのは : とりあえず、ここの峡谷エリアについては探索継続だねー!

 柊     : そだね。探索、頑張ろっか。

 しゅん   : 頑張ってマップ情報を集めるぞー!

 レナ    : わたしとミゾレさんで、その情報を元に希望エリアの選出をやっていかないとね。

 ミゾレ   : そうですね。明日のミヤ・マサの森林での対戦の解禁になる前までにはまとめておきたいところです。

 ベスタ   : それでは各自、健闘を祈る。ただし、無茶だけはするな! 明日動けなくなったら、本末転倒だからな。

 ケイ    : ほいよっと!


 峡谷エリアの探索だけのつもりだったけど、他の人達が他にエリアへ情報収集に行く事にもなったね。まぁ任されたからには、無理をしない程度に頑張りますか!


「おし、それじゃ峡谷エリアの探索に行くぞー!」

「「「「おー!」」」」

「あー、それは俺も連れて行ってくれよ?」

「そりゃもちろんだ!」


 既に峡谷エリアの事を知っている羅刹がすぐ近くにいるんだし、目的も同じなんだから一緒に行かない理由がないしね。という事で、今は俺はPTリーダーだから羅刹にPT申請を送ろう!


<羅刹様がPTに加入しました>


 これで今回の臨時メンバーは羅刹になった。さて、それじゃ羅刹に詳しい状況を聞きながら現地入りして探索といきますか!



――――――


Twitterで募集した、名前だけでも登場したい方が前回と今回で6名登場!

また機会があれば、どこかのタイミングでやるかも?

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