第1135話 峡谷での競争クエスト情報板
最新情報の確認という事で、参戦して使えるようになったばかりの競争クエスト情報板のチェック! 参戦してからじゃないと使えないのが、この機能の使い辛いとこだよなー。まぁそこはわざと不便に作ってるような気はするけど。
しゅん : どうも戦闘になるのは、雑魚敵ばっかり?
翡翠 : ……一応、他の群集もいるにはいる。
メガネくん : どこも今は偵察ばっかだよ。遭遇してもすぐ逃げる。
ミゾレ : まぁそれは灰の群集も同じですけどね。この地形、下手に深追いし過ぎれば危険ですし。
七四ノ二八 : ……待ち構えられてて、袋叩きとかもあったしな。
ディール : トーナメント戦で大幅に戦力自体が減ってるし、それが有効な状況だからな。こっちもあちこちに待ち伏せを仕掛けるか?
ラーサ : 同じ事をしてもねぇ? お互いに下手に手が出せなくなるだけじゃないかい?
しゅん : 既に手出ししにくくなってない?
メガネくん : 深追い出来ないから、遭遇しても戦闘にならないしねー。
ハク : 赤の群集と青の群集の総力戦の後から、どちらも目立った動きもないしな。無所属だけは動いてるみたいだが……あそこは個別で動くから読めん。
◯ドライア : 無所属に組織的な動きは期待するな。基本的にそれが性に合わんって連中が多いんだからな。
神奈月 : そりゃそうかー。羅刹さんには普通に話が通じてたから、勘違いしそうになるよな……。
◯ドライア : あれは羅刹だからこそだ。イブキみたいな方が多いからな?
ラーサ : それも厄介な話だねぇ。
ん? なんだろ、このドライアって人の名前の前にある『◯』は? うーん。話の内容から推測するとドライアさんは無所属の傭兵っぽい気がするし、無所属の証かも?
それにしても、お互いに下手に手が出せない状況か。もう少し詳細を知りたいし書き込んで聞いて――
ハーレ : 少し質問です! ドライアさんの名前の前にある『◯』ってなんですか!? もしかして傭兵の証ですか!?
◯ドライア : ……ふざけるな。羅刹を傭兵に入れた共同体の奴が何故それを知らん!
ハーレ : わわっ!? 怒られたのさー!?
アルマース : あー、そこはすまん。情報収集は手分けをしてて、ハーレさんが今回のでこれを見るのは初めてでな。
ケイ : 羅刹とは直接フレンドコールで連絡してたってのもあるから、その辺は勘弁してくれー!
◯ドライア : ……手分けをしていて見ていないだと?
ベスタ : その辺で勘弁してやってくれ。こいつら、なんだかんだで今日1日中ほぼ動きっぱなしだったし、見てる余裕はほぼなかっただろうからな。
◯ドライア : どういう意味だ?
ベスタ : そのままの意味だ。動いてるのはこの峡谷での競争クエストだけじゃないのを理解してくれ。それにソロとPTの動き方の違いもだ。
七四ノ二八 : 確かケイさんって、午前中のジャングルの方ではリーダーの代わりに総指揮をしてたよな?
ミゾレ : 成熟体のフィールドボスの撃破と、それに関する報告もありましたね。その際に疲れ果てていたと聞いていますけど。
◯ドライア : ……傭兵の俺からは見えないとこで盛大に動いてたって訳か。あー、さっきのは俺が悪かった。ベスタ、これでいいか?
ベスタ : ハーレが構わなければ、俺はそれで問題ないが……どうだ?
ハーレ : 私は気にしないのさー! ドライアさん、よろしくお願いします!
◯ドライア : ちっ、これだから群集は調子が狂う……。
ふぅ、なんか変な雰囲気になりかけたけど、なんとかそこは落ち着いたみたいでセーフ!
「あぅ……びっくりしたのさー」
「ハーレ、大丈夫?」
「あんな感じで怒られるとは思わなかったのです……。でも、謝ってくれて良かったのさー!」
「でも、もう少し言い方がありそうな気もするかな!」
「サヤ、気持ちは分かるが落ち着け。落ち着いたところを掘り返しても何も良い事はないぞ」
「言い方は悪いとは思うけど、実際俺らが知らなかったのも事実だしなー。羅刹とも知り合いっぽいし、ここはな?」
「……分かったかな」
サヤは不満げな感じではあるけど、一応は引き下がってくれた。なんだかドライアさんは癖のある感じだけど、今は味方だ。味方内で揉めても意味がない。でも変な流れになったのは、早めになんとかした方が良さそうだね。
ケイ : 俺らは今さっきこっちに参戦したばっかだから、こっちの動きを教えてもらえない? 直接現地にいた人から、状況を聞いて把握しときたい。
しゅん : 了解っと! とりあえず、今は他の群集に目立った動きは特になし!
◯ドライア : 何も無さ過ぎて退屈してたとこだ。スキル強化の種の入手の為にトーナメント戦をしているとは聞いたが、競争クエストへ流れてる奴が減り過ぎじゃねぇか? 何を考えてやがる!
ベスタ : いや、今はこっちに大々的には戦力を割けん。まだ状況を動かすにはマップ情報が足らんし、他の群集の動き的にも良くはない。
◯ドライア : そりゃどういう意味だ?
レナ : トーナメント戦はどこの群集もやってるから、こっちも強化しないと戦力差が開いて後が危険だよ。少なからずどこの群集も偵察に人は回してるけど、全体的に疲弊はしてるし、休憩も兼ねて牽制しあってる状態だしね。
ツキノワ : 今、下手に大きく動く方が危険だな。それこそジャングルであったボスの横取りを、今度は勝利ごと持っていかれる可能性もある。
◯ドライア : ふん、横取りなんてのは総指揮のただの油断だろ。見落としただけの間抜けだろうが!
神奈月 : はい!?
レナ : ……へぇ? 油断……ねぇ?
ちょ!? 確かにあそこで横取りされたのはその可能性を考えてなかった俺のミスだけど、ただの油断って!? 傭兵で味方とはいえ、その言い方はイラッとするんだけど!
「ケイ、落ち着いてかな? 声が思いっきり出てるよ」
「いや、だってさぁ!? こいつ、何様だよ!?」
いくら味方でも……いや、味方だからこそ、この言い方は腹が立つ! 油断さえしなければ、なんでも完璧にこなせて当たり前ってか!?
ベスタを筆頭に強い人が相当抑え込まれてて、青の群集は色々な事を次々と仕掛けてきて、その状態でボスの撃破をその場にいたメンバーでやってたんだぞ!
「ケイさん、落ち着け。……ドライアの野郎、また好き勝手な事を言ってんな」
「へ? あ、羅刹! え、なんでここに?」
「なんでって、晩飯を食ってログインを……って話じゃねぇな。俺が安全圏にいる理由なら、マップの提供をしに来ただけだ。そろそろ隠れ潜むのも限界だったし、青の群集に遭遇する前にここまで移動したってのもある」
「……なるほど」
「まぁその辺は後だ。ドライアの野郎を黙らせないと、これは悪影響が出るだろうよ」
「ケイ、ここは羅刹さんに任せるかな!」
「……そうだな。頼む、羅刹」
「はっ、こういう頼まれ方ってのは微妙な心境ではあるが、任せておけ」
今の俺じゃ完全に感情的になるだけだから、ここは同じ傭兵である羅刹に任せよう。売り言葉に買い言葉で、こんな所で大喧嘩をする訳にもいかないしさ……。
ベスタ : どういうつもりだ、ドライア?
◯羅刹 : どういうつもりも何もねぇよ、ベスタ。ただこいつは自分には出来ない事を、後から好き勝手に言ってるだけだ。
◯ドライア : はぁ!? 羅刹、喧嘩売ってんのか!?
招き猫 : ちょっと待ったー! なんでこんなに険悪になっていくの!?
◯羅刹 : 悪いが、いい加減我慢の限界だ。ここではっきり言わせてもらう。PTを纏め切れずに見放されて無所属に来た奴が、誰の何を、ただの油断で済ませてんだ?
◯ドライア : それは今は関係ねぇだろうが!
カイン : ちょ!? 参戦しに来たと思ったら何事!?
ミゾレ : ベスタさん、レナさん、止めなくて良いのですか!?
レナ : うーん、ベスタさん、ここまでになってくると悪影響が出てくるし、強引に止める? 人数的にはいけると思うけど。
ベスタ : ……それは最終手段だ。もう少し待て。
レナ : はーい。
◯羅刹 : 関係ない? 何を寝惚けた事を言ってやがる。競争クエストは集団戦で、俺とお前は無所属の傭兵だ。指揮系統としては俺らが群集の下に入っている事を理解してるか?
◯ドライア : 何言ってんだ、俺らは選ぶ奴が少なかった灰の群集にわざわざ傭兵に来てやってんだろうが!
えぇ、そんな認識で傭兵に来てたのかよ……。俺らが来る前まではどうだったか分からないけど、輪を乱すだけの傭兵なんていらないんだけど。
◯羅刹 : ……灰の群集が傭兵の剥奪権限を持ってる事を認識してるか? ついさっき、レナさんとベスタがその行使を匂わせた事に気付いたか?
◯ドライア : はっ! 少ない傭兵にそんな真似が出来るかよ!
ハク : いや、来てやってるって意識の傭兵なら、別にいらねぇよ?
ミゾレ : ……申し訳ないですが、ハクさんに同意せざるを得ない状況です。
ツキノワ : 青の群集に横取りされたのは、あの戦場にいた全員の油断が招いた事だ。俺らはそれを総指揮をしていたケイさんだけの責任にする気はねぇよ。
ディール : 今の状況、どっちが喧嘩を売ってるのか、分かってるんだろうな?
レナ : ジャングルでの1戦、わたしを含めてみんなに油断が一切無かったとは言えないけどね。だけど、それを糾弾するような真似をして、輪を乱すのは見逃せないよ。
◯ドライア : ちょっと待てよ! なんでそうなる!? そもそも今の段階で動けば危険ってとこにすら納得がいかん!
ベスタ : ……はぁ、それすら分かってないのか。
迅雷 : そんなものは他の群集が動いていないと見せかけて、ボスを倒す終盤になって一斉攻撃で壊滅を狙ってくるからに決まっておろうが! なぁ、疾風の!
疾風 : それだけじゃねぇぜ! 次はボスだけじゃ駄目な可能性が高いから、消耗したプレイヤーの方を重点的に狙うだろうな! なぁ、迅雷の!
◯羅刹 : そういう事だ。大規模な戦力を隠しやすいって地形なんだよ、ここは。上空からの索敵は一斉攻撃を受ける的になってる事すら忘れたか。
◯ドライア : そ、それは……。いや、でもそれは他の群集も同じだろうが! 倒されたとしても上から偵察する手段もある! 攻撃される前にそれを見つけちまえばいいだけだ!
げっ、空中は一斉攻撃の的なのか!? しかもそれは既にここでは共有されてる情報だったっぽい。獲物察知封じは普通に使われるだろうし、一斉攻撃されるならさっき考えてた囮作戦は迂闊に使えないな。
あー、地形の繋がりがどの程度把握されてるか次第にはなるけど、ボスの討伐メインに動けば、先に動いた群集が不利には確かになるよな。簡単に死んでもいいから見つけたらいいとか言ってるけど、パッと1つほどその偽装手段を思いついたしさ。まぁここに来る前に話してた内容の応用だけど……。
ケイ : 並列制御の岩の操作を複数人で使えば、パッと見で誤魔化す事は出来るよな。
レナ : んー、連携精度は必要だけど、それ自体はありだね。
アルマース : 灰のサファリ同盟なら出来るんじゃねぇか?
ミゾレ : 確かにそれなら可能でしょうね。ですが、それが出来るのは灰のサファリ同盟だけではないでしょう。青の群集なら、青の野菜畑の連携は凄まじいですし。
ケイ : だよなー。全ての地形を把握し切って、倒される前に即座に変化を把握出来れば気付けるだろうけど……レナさん、出来る?
レナ : んー、出来なくはないけど、一切気付かれずには無理かな? わたしだけで全方向は流石にカバー出来ないしさ。
ツキノワ : 今の状況でそういう偽装をする敵の動向を探りつつ、足止めもして、ボス戦は現実的じゃねぇよ。こっちも偽装をしなきゃいけないしな。
富岳 : 今来たとこだが、その辺の対策を確立しないと大々的には戦えないって事か。こりゃまた厄介な状況だな。
七四ノ二八 : 何気にサラッと偽装策が出てきたのが恐ろしい。実行出来そうなのが尚更……。
しゅん : その偽装、根本的にレナさんくらいしか把握は無理だよね。
メガネくん : でも、普通に赤の群集のネコ夫婦はやってきそう……。
レナ : 弥生とシュウさんなら、そこから迎撃……場合によっては隠してる部隊壊滅までやっちゃうかもね。
◯羅刹 : 根本的にこのエリアに合った攻略法を探っていかなきゃいけないのに、その理由すら把握出来ずに輪を乱し続けてるのお前だ。それが分かったか!
ベスタ : 強要はするのは嫌いだが『来てやっている』という意識は改めてくれ。……それが出来ないのなら、味方として一緒には戦えん。悪いが出ていってもらう。
◯ドライア : あぁ、そうかよ! はっ、こんな気分で続けられるか! 傭兵なんざ、こっちから願い下げだっての!
うわー、なんか逆ギレしてきてる。なんというか……この人がなんで無所属になってるのかが分かった気がするよ。無所属の人といっても、人によって理由は本当にバラバラなんだな……。まぁ無所属になる理由が統一されてる訳もないか。
<灰の群集の傭兵、1名の権利を剥奪しました。競争クエストの傭兵リストを更新します>
あ、傭兵の権利の剥奪ってこういう風に通知が出てくるんだ。……あんまり良い気分ではないし、使いたい機能でもないけど、色々と拗れちゃった以上はもうどうしようもないか。
これでドライアさん……なんかさんを付ける気はしないな。ドライアは灰の群集の傭兵では無くなって、競争クエストの参戦権は完全に失ったか。あー、仕方ないとはいえ、気分のいいものじゃないな、これ。
「後味は良くないけど……とりあえず一安心かな」
「まぁなー。はぁ、なんでこうなったのやら……」
峡谷エリアでの現状を確認したかっただけなのに、こんなトラブルに発展するとは欠片も思ってなかったよ……。
でも、地味に峡谷エリアの厄介さは少しは分かったね。羅刹がマップ情報を提供しに安全圏へとやってきてた理由もよく分かった。ここはボスやいるかもしれない群集支援種を探すよりも先に、マップ情報の充実が最優先。その上で敵の動向を把握する手段の確立……もしくは、防衛戦力の確保が重要になってきそうだね。
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