第1132話 休憩していた間の進展
21時まではひたすら寛ぐという事で、ハイルング高原の人が少ない場所で盛大にダラけきっている。あー、オフライン版には癒しスポットとして人気があるエリアがあったりもしたけど、このハイルング高原もそういう場所に近いよなー。
「……桜花が……ログインした!」
「おっ、マジか。あー、あと5分で21時だし、このくらいなら前倒しはあり?」
「許容範囲ではあるな。風音さん、桜花さんに連絡を取ってもらえるか? 桜花さんが問題ないようなら、そっちに行こう」
「……アルマースさん、分かった! ……桜花、今は大丈夫?」
そうして風音さんは立ち上がって少し距離を取ってから、桜花さんへとフレンドコールをかけ始めた。多分、ログインしたばっかなら大丈夫だと思うけど……いや、他の人と約束がある可能性も否定は出来ないか。まぁその辺の都合を確認する為のフレンドコールだな。
「勝手に話を進めたが、サヤ達はそれでいいか?」
「問題なしかな!」
「同じくなのさー!」
「私も大丈夫だよ」
「アル、俺には聞かねぇの?」
「……少しの前倒しがありかどうかを言ったのはケイだろうが」
「うぐっ、そういやそうだった……」
そりゃ聞かれなくても仕方ないかー。まぁ設定した寛ぎタイムはそろそろ終わりなんだし、そろそろ動き出さないとね! でも、多分そんなに劇的な動きは無さそうな予感。
もし大きな動きがあれば、ベスタ辺りからフレンドコールがきそうな気がするしなー。ベスタがログインしてるのは確認したから、今はそんなに戦力が必要な状態ではないはず!
「……みんな、桜花が来てほしいって。……『瘴気珠』について……話があるみたい」
「あー、桜花さんの方も俺らに用事がある感じか。よし、それじゃ桜花さんのとこに行きますか!」
「移動は俺だな。『空中浮遊』『根の操作』! みんな、乗ってくれ」
「ほいよっと!」
「……今回は自分で飛んでいく」
という事で、いつものようにアルのクジラの背の上に乗っていく。風音さんだけは自分で飛んでいくつもりのようである。まぁその辺は本人にお任せで。
さーて、それじゃ桜花さんの元へ出発だ! 具体的にどんな話があるのか、気になるところ。既にフィールドボスの誕生条件まで判明してたりするのかな? まぁそれは行って聞いてみれば分かるか。
◇ ◇ ◇
サクッと移動を済ませて、桜花さんの桜の木へと辿り着いた。ハイルング高原からはそんなに距離はないから、成熟体の今となっては早いもんだよ。
さてと、今の桜花さんの樹洞には普段よりは人は少なめか。でも、ログインしてそんなに経ってない割には結構人がいる方だな。不動種として人気ですな、桜花さん。
「……来たよ、桜花」
「お、来たな、風音さん。それにケイさん達も」
「おっす、桜花さん! ログイン早々で悪いね」
「いやいや、別に構わねぇよ。用件は『瘴気珠』だろう?」
「そうなのさー! 何か新情報はありますか!?」
「おう、あったぜ! まだ自分で出来てないが、新情報は聞いてるぞ」
「お、マジか!」
「……桜花、どんな内容?」
何か成果があったって事は、ベスタやレナさん達があのフィールドボスのヤシの木を倒すのに成功したんだろうね。でも、桜花さんにサンプルが渡ってないのは正直意外だったなー。
「経緯については後で話すか。どういう内容かの方が気になってるだろうしな」
「あはは、確かにそれはそうかな!」
「それは違いねぇな」
「その言い方だと、スムーズに進んだって訳でもなさそうなのは気になるけどね」
「だなー。だけど、まぁそっちは後回しで!」
もしかすると、思ったようにすぐにはフィールドボスの討伐メンバーが集まらなかったとかはありそうだ。俺らは疲れてログアウトしたタイミングは、早い人なら晩飯時にもなるしね。
それこそ、20時くらいからとかで時間を決めてから討伐をやってた可能性もありそうだ。その辺が桜花さんの言う経緯なのかも? まぁ、それは後で聞けばいい話か。
「さて、説明をしていきたいとこだが……誰か『瘴気珠』を1個貰えねぇか? 相応の物は返すからよ」
「そりゃいいけど、なんでまた?」
「あるスキルの取得に『瘴気珠』の消費が必須だそうだ。『瘴気再構築Ⅰ』ってスキルでな。これを持った上で初めて『瘴気収束』や『浄化の光』での『瘴気珠』の強化が可能になるらしい」
「要は、昇華の生成量増加のスキルみたいなもんか?」
「そういう事だぜ、アルマースさん! だけど、俺はまだ『瘴気珠』を持ってなくてな?」
「……そういう事なら……桜花、使って」
「あんがとな、風音さん! 今、何か欲しいものはあるか? 可能な限り用意するぜ?」
「……ううん、それはいい」
「あー、気持ちはありがたいんだが、流石にそれは……」
ふむ、風音さんの気持ちもわかるけど、商人プレイをしている桜花さんとしてはタダで貰うというのも気は引けるのか。まぁ取引をしてこその商人だしなー。
「風音さん、そこは貰っとく方が桜花さんの為だぞ」
「……アルマースさん? ……桜花、そうなの?」
「対価無しでもらうのは気が引けるからな……。まぁそういう事だから、欲しいもんがあったら言ってくれや! 可能な限り、融通はするからよ!」
「……そういう事なら……分かった。……欲しいものがあった時に……お願いするね。……別に……今すぐにじゃなくてもいいよね?」
「まぁ風音さんがそれで良いのなら、それでもいいぜ」
俺が何か言おうと思ったけど、その前にアルが言って片付いたね。桜花さん的には対価を受け取ってくれた方が気楽だろうし、あんまりタダで物を受け取り過ぎる商人だと、評判も悪くなりそうだからね。
まぁ風音さんが今すぐ欲しいものが特にないなら、後からって形でも問題はないか。ただで貰ったという状況を避けたい訳だし、フレンド同士なら後払いもありだろ。
「さて、とりあえずこれで『瘴気再構築Ⅰ』を取らせてもらうぜ。……よし、取得完了だ」
「それって、他の取得条件はどうなってるのかな?」
「あぁ、それか。『魔力制御Ⅱ』の所持と、『瘴気収束Lv6』か『浄化の光Lv6』のどっちかを持ってて、その上で『瘴気珠』を消費するのが条件だな」
「そういう条件なんだね。要は、瘴気石+29まで強化に参加出来る状態になってればいいの?」
「ま、そういう事になるな。なんだかんだで量産はするから、どっちかはそのくらいのLvになってる奴は多いしよ」
「片方だけで良いのは、纏浄と纏瘴が連続して使えないから?」
「多分そうだと思うぜ、ケイさん! その辺は分担して強化したりするからな」
「なるほどなー」
この辺は俺らが直接やる事がない不動種固有の部分だけど、興味深いもんですなー。てか、分担して強化とかしてるんだね。まぁ纏浄や纏瘴の使用制限を考えたらそうもなるか。
「それで、これで具体的に強化は出来るようになったって認識で良いっぽい?」
「おう、それで問題ねぇぜ、ケイさん。ただ、まだフィールドボスの誕生には遠いな」
「もしかして、成熟体のフィールドボスの最低Lvが判明したのかな!?」
「確定ではないけどなー。あれだ、ケイさん達が逃げてきたっていうヤシの木の不動種がLv16だったらしくてな? 2人の不動種が『瘴気再構築Ⅰ』を取得して、『瘴気珠』の強化に注ぎ込んで判明したそうだぜ。フィールドボスの最低LvはLv16だ」
「おー! 未成体よりも少し最低Lvが上がったのです!」
なるほど、成熟体はLv16からがフィールドボスになるんだな。そうなると通常の成熟体の敵でLv16以上が出てくるようになれば、『刻瘴石』や『刻浄石』を試す事が出来そうだね。まぁその辺はもうちょっと先の話だけど。
それにしてもLv16かー。そうなると+15まで強化した『瘴気珠』が必要に……って、ちょっと待った。これって、数的にギリギリ過ぎない? この辺は確認しとかないと!
「桜花さん、瘴気石だと単独でフィールドボスの誕生用に瘴気石+15を作るには16個いるよな? 不動種の人2人で最低でも2個『瘴気珠』を使ったなら、連結PTの18人分を使い切っちゃったんじゃ? 2体分でやるなら、更に1個いるし……」
「あー、まぁ疑問に思っても仕方ないとこではあるか。今回のは単独でのフィールドボスの誕生の方って話だぜ」
「なるほど。でも、それだと城塞ガメの再戦は……?」
「再戦は先にやってたぜ、ケイさん! 『瘴気珠』1個で城塞ガメとの再戦は可能になるし、その戦闘で落ちるのも確定だ。ちなみに『瘴気珠』を落とすのはハチの方で、城塞ガメが落とすのは『刻印石』だな」
「あ、そういうパターンか」
なるほど、なるほど。てか、それならオリジナルのあのハチを倒した時に落ちてくれても良くない? あの時、手に入れてないんだけど。
というか、先に城塞ガメに使ったんだな。まぁ絶対にフィールドボスになるという確証はないんだし、その辺は優先順位の問題か。
「だた、参戦人数によってハチの方の『瘴気珠』の入手確率は下がるっぽくてな。1PTで戦闘して、運が良くて2個らしいぜ。ちなみに『刻印石』は確定ではないけど、落ちやすいらしいぞ」
「お、『刻印石』が落ちやすいのはいいな。でも、『瘴気珠』は再戦に1個使うのに運が良くて2個って減る事の方が多いんじゃね? あ、運良く手に入ってフィールドボス用に足りた感じ?」
「いや、一時的に減って足りなくなったらしいぜ」
「それ、ダメじゃん!?」
え、ちょっと待って。そうなるとフィールドボスの誕生に使う為の『瘴気珠』の強化に足りなくなるんじゃ……? いや、でも結果的にはフィールドボスの誕生には成功してるんだし、個数は足りてるはず?
「……足りない分は……どうしたの?」
「足りる数になるまでやろうとしたらしいが、まぁ単純にマサキから交換が出来たらしくてな。数はそんなに手に入らなかったそうだが」
「そこでも手に入るんかい!」
「ま、その辺が俺が晩飯を食う前に把握してた範囲だな。誕生させたフィールドボスがどうなったかは知らんが、まぁ倒せてはいると思うぞ」
「あー、そういう感じか」
ふむふむ、桜花さんが知ってる範囲でも結構有益な情報は多い。とはいえ、まだまだ『瘴気珠』の入手量が多くないから、フィールドボス戦をどんどんやっていくのは無理っぽいね。
そもそも最低Lvが16からなら、普通にLvを上げていく方が先だ。……今考えるととそういう判断になるのに、よくLv17のフィールドボスに挑んだよね、俺ら。
「はい! 無いような気はするけど確認です! 『瘴気石』を『瘴気珠』にする事は出来ますか!?」
「あー、それか。『瘴気石』を『瘴気珠』にする手段は、残念ながら見つかってねぇな」
「あぅ……そんな気はしたけど、それは残念なのです……」
「まだ何か条件があったりするのかな?」
「どうなんだろ? 根本的に不可能って可能性も否定は出来ないし……」
「ま、そりゃ追々と探っていけばいいだろ」
「……頑張る!」
「だなー」
そういう条件を探っていくのも、ゲームの醍醐味だしね! もしかすると瘴気収束Lv7で可能になるって可能性もあるし、出来ないと判断するにはまだ早い!
どっちにしても、まだ成熟体のフィールドボス戦をやっていくのは早いのはよく分かった。まずは順当にLv上げ……といきたいとこだけど、競争クエストの事も無視は出来ないな。
「ちなみにヤシの木のフィールドボス戦は結構大変だったみたいだぜ? 募集をかけてたレナさんがリアルの都合で離脱したり、晩飯の人が多かったり、トーナメント戦の決勝に出てたり、ケイさん達みたいに疲れてダウンしてたりでなー。募集をかけてから18人が揃って戦闘開始になったのは19時くらいだったはず」
「うわー、それはタイミングが悪いなぁ……」
てか、募集をしてたレナさん自身が離脱とはね。まぁレナさんにだってリアルの都合はあるだろうし、食事もしなきゃだろうしなー。他の人もそりゃそれぞれの都合もあるよね。
「ただ、その代わりと言ったらなんだが、待ってる間に別の検証は進んでたぞ。あっちの新エリアの河口域だっけか? あそこにLv上限の成長体を持ち込んで、未成体のフィールドボスの誕生には成功したってよ」
「おっ、マジか! それを倒した時の称号ってどうなってたか分かる?」
「それなら『河口域の強者を討ち倒すモノ』だったそうだ。『猛者』になるのは、成熟体フィールドボスを討伐した時の固有の称号みたいだな」
「おっし! その情報はありがたい!」
「確かにな。それが出来るなら、新しい称号が用意出来るようになる」
「でも、周囲には気を付けた方がよさそうかな?」
「……未成体は……Lv30のフィールドボスでも……もう雑魚」
「あー、それは確かに……」
成熟体に進化した今の俺らじゃ、未成体相手だとなー。どちらかというとこっちの新エリアにいる未成体Lv30を、これまでのエリアに持っていってフィールドボスに進化させた方が……って、まだ『瘴気珠』が足りてないっての。……ん?
「ちょい待った。未成体Lv30のフィールドボスを、成熟体のフィールドボスに進化させる事って可能か?」
「……そうか、そういう可能性もあるのか。やってみたいとこではあるが……」
「どうしても『瘴気珠』が足りないかな?」
「出来たとしても、今日は絶対にパスなのさー!」
「あはは、そこはハーレに同意だね」
「……今日はもう……大規模な戦闘は……したくない」
「ですよねー!?」
まぁ言い出した俺が言うのもあれだけど、俺も同じ意見だしね。今日はもうLv16のフィールドボスとか戦ってられるか!
「休憩を取ってたとは聞いてたが、それでもかなり疲れてるみたいだな? 無理はするなよ?」
「そのつもりー。でも、明日に備えて峡谷エリアの偵察くらいは行くけどなー」
「ま、頑張ってくれ。『瘴気珠』がもっと手に入るようになったら、強化はやっていくしよ」
「その時は頼んだぞ、桜花さん!」
「おう、任せとけ」
とりあえず思った以上に色々と有益な情報は得られたね。残念なのはどれもまだ現状では早い段階のものって事くらいかー。でも、そのうちこの辺の情報は役立つ時がくるのは間違いない!
そうなった時にはシュウさんとの検証に約束の続きをやらないとね。その辺は今から楽しみだけど、その前に競争クエストをしっかり進めていこう!
――――
今年の更新はこれで終わり!
今年1年、色々とありましたがお世話になりました。また来年も変わらずよろしくお願いします。
また、電子書籍版の第1巻の無料キャンペーンを実施中です。
詳細は近況ノートの記載していますので、ご確認いただけると幸いです。
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