第33章 競争クエスト、進行中
第1129話 休憩をしてから
晩飯の生姜焼きを食べ終え、自室へと戻ってしばらくのんびり寛ごうかと思ったら……ベッドが占拠されている!? 犯人はいつもの事だけど、先に食べ終えていた晴香である。椅子の占拠はよくあるけど、地味にベッドは珍しいな。
「……流石にそのまま寝るなよ?」
「それは大丈夫なのさー!」
「なら良いけどさ……」
とりあえず俺は椅子に座っておくか。ベッドを占拠されると、他にいられる場所がないしなー。
「というか、寛ぐなら自分の部屋で寛げ。しばらく居座る気か?」
「ううん、違うよー! 兄貴に聞きたい事があるのです!」
「……聞きたい事?」
「アイルさんって、どんな人ですか!?」
「クラスは違うし、ほぼ話した事がないから全然知らないっての! てか、それを聞いてどうする!?」
「その確認をしておきたかっただけなのさー!」
「……は?」
そんな事を確認して何か意味があるのか? 晴香は一体何を聞きたがってるんだよ、これ。あ、もしかしてこの心配か? 同じ共同体で一緒に活動してるんだし、ここは心配されてもおかしくないかもしれないな。
「改めて言っとくけど、eスポーツ部には入る気はないぞ?」
「それは聞いたー! でも、これからアイルさんと仲良くなる可能性は否定出来ないのです!」
「あー、まぁそりゃ絶対に無いとは言えないけど……」
同じ高校に通ってるんだし、昼は俺のクラスの誰かと食べてるみたいだしな。スーパーにアイスを買ってきた時にも遭遇はして、地味に割と近くに住んでるっぽくもある。
しつこく勧誘をしてこない限りは別に意図的に距離を置くつもりもないし、今後はちょっと話をする事くらいは普通にあるだろうしなー。んー、それで部活に入る事になるのを危惧してる? いや、でもそんなどうなるかも分からない先の事を心配されてもな……。
「流石にずっと関わらないままでいろってのは無理だぞ? 露骨に避けるとか、失礼過ぎるしな」
「あぅ……確かにそれはそうなのです……。これはどうすれば!?」
「いや、そこはそんなに悩むとこか……?」
「兄貴にもし彼女が出来たら、大問題なのさー!」
「はい!? てか、それが大問題って失礼じゃね!?」
いきなり何を言い出してんの、晴香!? アイルさん……えーと、相沢さんだっけ。欠片もそんな風には考えてなかったし、万が一にそうなったとしても大問題扱いは酷くねぇ!?
「……まさかとは思うけど、晴香って本気でブラコンだったりすんの?」
「違うよ!? 兄貴、そこでドン引きしないで欲しいのさー!?」
「……そうでないなら、俺に彼女が出来る事そのものが異常ってか! おし、その喧嘩、買ってやる!」
「わー!? そういうつもりでもないのさー!?」
「だったら、どういう意味での大問題だ!?」
「それは言えないのです!」
「あ、逃げんな!?」
ちっ、俺の部屋から飛び出て自分の部屋に逃げ込みやがった。……本気でどういうつもりだ? あー、もう晴香の場合は本心を隠しまくる部分があるってのは痛感してるから、冗談抜きで何を考えてるのかが分からん! 本当にブラコンなんて事は……いくらなんでも無いはず。
これは単純に晴香はアイルさんの事が気に入らないだけか? サヤもかなり怒ってたし、その線が1番あり得るのかも。いやでも、今後も接点があるってだけでそこまで警戒されても困るんだけど……。俺はどう対応すりゃいいの、これ?
「あー、分からん! ……ん?」
頭を抱えたくなってたら、なんかメッセージの通知がきたけど……誰からだ? あー、慎也からか。ふむふむ、内容としては今月分のプレイチケットが買えたって報告で、これからログインするとこか。
不可抗力とはいえ、こいつが迂闊に話し過ぎたのが今の状況の遠因にはなってるよなー。なんかイラッとしてきた。よし、この後でログインした時に遭遇したら、まずはコイツから仕留めよう。八つ当たり? 知ったことか!
出来れば遭遇するのは、競争クエストの対象エリアだといいな。多分、競争クエストのエリアなら雷属性のツチノコでログインしてくるだろうし、遠慮なくぶっ殺せるってものだしね。
ん? またメッセージが送られてきて……って、晴香からか。はぁ、このパターンは直接言えないけど、謝ろうとしてるって気がする。まぁ一応メッセージは見てみるけどさ。
「……『余計な事を言ってこめんなさい。でも、ブラコンではないよ!』か。まぁ悪気があったようにも見えなかったしなぁ……」
はぁ、ここはとりあえず流しておきますか。もしサヤと晴香が、アイルさんに対して悪感情を持っているのなら、仲良くならないでほしいって気持ち自体は分からなくもない。同性だから感じる何かがあるのかもしれないし、それを俺には言いたくないのかもね。
うーん、この辺はアルと2人になるタイミングがあったら相談してみるか? あー、場合によってはヨッシさんに相談するのもありだな。よし、そうしてみよう。
「とりあえず返事をしとこ。えーと『もう怒ってないから、普段通りでな』でいいか」
別に兄妹喧嘩をしたい訳じゃないし、ここは流しておこう。あと出来るかどうかは分からないけど、サヤと晴香はアイルさんとは遭遇しないように気を付けておこうっと。
「兄貴、兄貴! 公式サイトに大型アップデートのお知らせが出てるのさー!」
「って、復活が早いな!?」
メッセージを送ってそんなにまだ経ってないけど、普通に俺の部屋に入ってきたんだけど!? これ、俺の部屋の前で待ってたか? はぁ、まぁいつも通りの様子だし、これでいいか。
「それならログアウトした時に19時にお知らせがあるって事前告知はあったぞ? 見てなかったのか?」
「眠かったから、その辺は完全にスルーしたのです! ログアウトしてVR機器を外すまでが限界だったのさー!」
「あー、あの状況じゃそうなるか」
むしろ、正規の手順でログアウトが出来てた分だけマシなのかもね。警告が出てたのは確定だし、強制ログアウト寸前だったのは間違いないからなー。
「もう内容は見たのか?」
「ううん、まだー! そこで提案なのさー!」
「……提案?」
「ログインした時の状況次第だけど、ゲーム内でみんなで内容を確認しませんか!?」
「あー、なるほど。でも、アルへの連絡はどうすんの?」
「はっ!? そういえばそうだったのです……」
公式サイトへはゲーム内からでもアクセスは出来る。だから、今から公式サイトで確認したり、いったんから説明を聞くのではなく、みんなで一緒に確認をするという案自体には賛成。でも、アルとはリアル側で連絡を取る手段が無いのがね……。
アルなら気にするなとは言ってくれそうだけど、それに甘えっぱなしなのもどうかと思う。うーん、中々判断が難しいとこだね。
「あ、ヨッシからメッセージが来たのさー!」
「ん? ヨッシさんから?」
「おぉ、ヨッシも同じ事を考えてたようなのです! あ、サヤからも同じようなメッセージが来たのさー!」
「……なんか、みんなして地味に休憩時間を持て余してない?」
「多分そうだと思うのです!」
まだ集合予定時刻の21時まで1時間近くあるんだけど、全然気にしてない感じがするぞ! サヤとヨッシさんは俺らよりも先に晩飯は食べた訳だし、休憩としてはもう充分なのかも?
晴香は寝てかなりスッキリしてるみたいだし、俺も多少の疲れは感じるけど激戦でなければもう大丈夫な範囲。そうなると、アルも時間を持て余してる可能性はあるな。
「まだ20時を少し過ぎたくらいだけど、そういう事なら早めにログインしてのんびりしながらチェックしていくか。もしかしたら、アルも似たような事を考えてるかもしれないしなー」
「確かにその可能性はありそうなのです! それじゃヨッシとサヤに連絡しとくねー!」
「ほいよっと」
切れてたエネルギー補給は晩飯を食った事で解消済み。集中し過ぎでの疲労は、まぁゲーム内でのんびりしてても回復はするし、ミズキの森林の湖の畔辺りで寛ぐのもありだよな。
あんまり遠出するのはパスだけど、近場の癒しスポットの情報を探して、そこに行くというのもありか。
「ヨッシもサヤもそれで良いそうです! どこかでのんびりしながら、大型アップデートの確認なのさー!」
「おし、それじゃログインしていくか!」
「はーい!」
さて、晴香は自室へと戻っていったね。ふぅ、アルも俺らと同じような事を考えていたら良いんだけど、そればっかりはログインしてみないと分からない。
出来れば全員で見たいけど、まぁその場合はアルは既に確認済みにはなるから、情報的には問題はないはず。一緒に見れなかったって要素が出るだけ。……出来れば、それを避けたいんだけどね。
こういう時はアルへの連絡手段が欲しいよなー。ゲーム外の連絡手段はアルが嫌がってるけど、公式の方で伝言を通知出来るような機能はないものか?
あ、こういう時こそ要望を出せばいいのか。よし、ログインした時にいったんに要望を出してみようっと。
◇ ◇ ◇
という事で、予定よりもかなり早めにログインだ! まずは、いったんのいるいつものログイン場面へとやってきた。今回の動体部分は予想出来てるけど、一応確認していこう。えーと『夏の大型アップデートについてのお知らせがあります。詳細はいったんか、公式サイトまで!』か。まぁ予想通りの内容だったね。
「いったん、ちょっと要望があるんだけどいいか?」
「はいはい〜! 要望はいつでも受け付けているから大丈夫だよ〜。って、お知らせは聞かなくていいの〜?」
「共同体のメンバーとゲーム内で一緒に確認しようって事になったから、そこは今は必要ないな。というか、それ関係の要望」
「どういう内容の要望かな〜?」
「機能的にかなり簡単なので良いから、ゲーム外で他のプレイヤーへ伝言を送る機能とかって実装出来ない?」
「あ、そういう内容なんだね〜! うーん、それは悩ましい……」
「え、そんなに厄介な事なのか……?」
運営からのメッセージが送られてきたりもするんだから、そんなに複雑な機能だとは思えないんだけどな。SNSとかなら普通に通知機能はあるんだし、悩まれるような無茶な要望を出したとも思えないんだけど……。
「えっと、機能的に実装が難しいとかじゃないんだけどね〜」
「ん? だったら、何が……って、もしかして大型アップデートの中に既に実装予定に入ってたりする?」
「そういう事になります〜! お知らせは今は聞かないって事だったけど……」
「あー、そういう事情なら問題ないよ。流石にそこにケチをつけるのは難癖だしなー」
「そう言ってもらえると助かります〜! 他にも色々とアップデート内容はあるから、確認していってねー!」
「それは了解っと。それじゃコケでログインをよろしく!」
「はいはい〜! スクリーンショットの承諾も来てるけど、そっちはどうする〜?」
「あ、それは確認しとくわ」
「はいはい〜! それじゃこれね〜!」
「サンキュー!」
いったんからスクショの一覧を受け取って、内容を確認。多分そんなに枚数はきてないと思うから、手早くチェックは済ませておこう。
えーと、ルストさんが撮ってたスクショは俺がメインで写ってる訳じゃないけど、角度的には俺も写ってる可能性はあるんだけど……特に無いな? まぁ無いなら無いでいいか。
それだと何が承諾に……って、疲れ果ててみんなして突っ伏してた時のスクショが撮られまくってるー!? これは灰の群集に人ばっかだけど、内容的に却下で! 他には……特に無いか。今回は承諾は一切無しで!
「いったん、これで頼む」
「これは確かに承諾したくないかもね〜。それじゃこう処理しておきます〜」
「よろしく! それじゃコケでログインを頼んだ!」
「はいはい〜! それじゃ夜も楽しんでいってね〜」
「ほいよっと!」
そうしていったんに見送られながら、ゲーム内へと移動していく。さてと、アル以外は直前にメッセージでやり取りをしてたから、タイミングはそうズレないはず。どこでのんびりするかは、合流してから決めればいいか。
あれ? そういやアンデッド系の苦手生物フィルタ絡みの話は? もしかして、まだ対処が終わってない? まぁ俺やみんなは平気みたいだし、別にいいか。
◇ ◇ ◇
予定よりも早いけど、戻ってきたぞ、群雄の密林! さーて、他のみんなはもうログインしてるかな? とりあえず周囲を確認してみたけど、まだ誰の姿はないから俺が1番乗りだったっぽいね。
現状では高Lvの敵が出てくるエリアの切り替え場所のすぐ近くだから、他のプレイヤーの姿もなし。風音さんが寝落ちで強制ログアウトになったのがどうなったかが気になるとこだけど、確認する手段がないからどうしようもない。フレンド登録をしそびれてたし、今度会った時にはしとかないとなー。
「ん? ケイ、もうログインしてたのか」
「あ、アル。早めにログインしてそうな気はしたけど、やっぱりか!」
「なんだ? 何か俺に用事でもあったのか?」
「いやさ、みんなで大型アップデートの内容をゲーム内で確認しようって話が出て、それでログインしたんだけど……アルは既に確認済み?」
「なるほど、そういう事か。ははっ、考える事は似たようなもんだな!」
「おっ、そういう反応って事は……?」
「どっかでのんびりしながら、ゲーム内で確認しようと思ってたとこだ。だから、まだ確認はしてねぇぞ」
「おっし! 偶然だけど、良い状況!」
そういう可能性はあるとは思ってたけど、まさか本当にそうなるとはね。これならみんな一緒に大型アップデートの内容が確認出来る!
「……あれ? ……ケイさんとアルマースさん?」
「風音さんもナイスタイミング!」
「本当に良いタイミングだな。少しでも疲れは取れたか?」
「……うん。……でも……誰もいないと思ってた?」
「あー!? アルさんも風音さんもいるのです!」
「あ、本当かな」
「あはは、これは丁度いいかもね」
おっと、そうしてる間にサヤ達もログインしてきたね。いやー、かなり偶然が重なってるけど、これは良いタイミングで全員集合になったもんだ。さてと、それじゃ大型アップデートの内容を確認していきますか!
まだまったりとしていたいから、競争クエストの現状の確認はその辺が終わってからで!
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