第1052話 判明していく水魔法の効果


 水魔法Lv9のアクアウィークンを発動したはいいものの、未だ効果がよく分からず。どういう効果なのかを説明欄で確認しようかと思ったら、風音さんが検証を申し出てくれたのでお任せ中。さて、どういう結果になるのか……。


「……うん……どういう性質か分かった」

「おっ、マジか!」

「……これは防御魔法じゃない。……効果は……範囲内にいる敵の水属性への……耐性の低下。……膜の中に入ると……『水魔法耐性低下』の……状態異常になる。……膜の中から出たら……解除になる」

「範囲内だけで有効な耐性低下のデバフ魔法って事か!?」

「……そうなる」


 ただ、俺自身がアクアウィークンを展開している間は動けないみたいだし、抗毒魔法と発動の性質は近いのかもしれないね。あー、これの影響範囲の拡大とか出来ないもんか!?


「だー! 範囲指定ってのが微妙に使い辛い!」


 性質としては水属性の耐性を低下をさせられるのは申し分ない。だけど、この効果ならピンポイントで狙った敵に……あ、待てよ? これってさっきのアクアディヒュースとも連携はしやすいのか。

 並列制御で使う事にはなりそうだけど、乱戦の中で多数の敵に対して水属性の低下効果かけて、その上でアクアディヒュースで全方位へと攻撃するってコンボにはなる。


「いや、ケイ、俺の存在を忘れんなよ?」

「あ、そうか! 俺の水魔法への抵抗を下げるんじゃなくて、水魔法そのものへの抵抗が下がるんだもんな!」

「アルさんに魔法弾に使う魔法を貰うのも出来るのさー!」

「攻勢付与での追撃も狙えるかな!」

「アルさんのクジラが攻め込まれた時に、大活躍しそうだね」

「こりゃまた、使い方によっては恐ろしいものが出てきたねー!」

「……近距離が苦手な……魔法型の……近距離での……反撃手段」


 あー、今言われて気付いたけど、確かにそういう側面もあるのか。俺の場合はロブスターで近接での戦闘手段は確保してるけど、完全に魔法型のみの場合だと距離を詰められた場合から打開する為の手段にもなるんだな。

 魔法型で強くなればなるほど、物理攻撃に対する防御力は心許なくなっていくだろうし、それを補う為の魔法なのかもしれない。


「これ、魔法砲撃にしたらどうなるんだろう?」

「……それも……興味ある。……すぐ……試そう!」

「ま、試してみるのが確実か」


 という事で、一旦通常発動のアクアウィークンは解除。時間経過で減っていく耐久値が設定されてたから、破り方は抗毒魔法と同じ感じかもな。まぁこれは時間がある時に試してみようっと。

 今はとりあえず魔法砲撃でアクアウィークンがどう変化するかを試してみよう。今、この場に風音さんがいるには都合が良い……って、よく考えたらこの辺は普通に模擬戦機能で試せば良かっただけでは? 


 うーん、まぁいいか。とりあえずまだ色々とやる事が残ってるし、サクサク進めよう。


<行動値9と魔力値27消費して『水魔法Lv9:アクアウィークン』を発動します> 行動値 88/106 (上限値使用:1): 魔力値 220/274


 ふー、こうも高Lvの魔法を連発してると、成熟体で行動値や魔力値が大幅に増えてなかったら運用が厳しいとこだね。スキル強化の種は強力だけど、ただ単純にスキルLvだけを上げれば良いって訳じゃないのを実感するよ。


 さてと、それじゃ今度は魔法砲撃にしてロブスターの右のハサミを起点に設定。ふむふむ、ここまではいつもの手順で出来てるね。狙いもこれまでと特に変わらないし、普通に撃ち出せそう? 


「これ、もしかして魔法砲撃にしたら、対象が範囲じゃなくなる?」

「え、そうなの!?」

「……それなら……こっちに撃ってみて。……どうなるか確認する」

「なんだか風音さん、活き活きしてるよね?」

「……レナ、それは当然!」


 確かに風音さんが魔法について話す時は、その他の時に比べて言葉の途切れ具合が少ないもんな。それが活き活きとしてる証なんだろうね。まぁ楽しそうなら何よりだなー。


「さてと、それじゃ風音さん、効果の確認を頼んだぞ!」

「……任せて!」


 という事で、魔法砲撃にしたアクアウィークンをロブスターの右のハサミから発射! って、撃ち出して出てきたのが今までと見た目が全然違うぞ!?


「わっ!? 水色のシャボン玉みたいなのです!?」

「ほう? 魔法砲撃だとそうなるのか」

「でも、動きは早いかな!」

「種類を区別する為の演出の違いっぽいね?」


 弾速自体は今までの他の魔法砲撃のものと大差はないけど、ここまで明確に見た目が変わってくるとは思わなかった。それだけ特殊な効果って事になるのか?

 風音さんは微動だにせずに待ち構えてくれているけど、当たった時にどういう効果になるかが重要になるよな。当たった瞬間にその部分からシャボン玉みたいなのが広がって範囲化する可能性はありそうだ。


 あ、そうしてる間に水色のシャボン玉が風音さんに当たって……弾けただけ? なんか当たった時の演出はショボかったけど、どうなった?


「……これ、思った以上に凶悪な効果。……『水魔法耐性低下』じゃなくて……『水魔法耐性低下(特大)』になってる。……対象が単体化した上に……効果自体が大幅に強化。……解除は……水魔法に被弾した時のみみたい」

「ちょ、そんな性能になってんの!?」

「えげつない効果になってるのさー!?」


 魔法砲撃にしたらここまで性質が変わるのか。範囲で効果が出ていた分を1体に集中して効果を発揮させているって事なのかも。ん? え、通常発動の時は動けなかったのに、魔法砲撃なら効果中でも地味に動けるんだけど!? 

 アクアウィークンって、魔法砲撃で使う方が良いのでは? あー、でも狙いがバレバレだから当てにくいって欠点があるのはこれまでと変わらないか。うーん、状況次第で使い分けだなー。


「とにかく水魔法Lv9なだけはあるって事は分かった。こりゃ、相当凶悪だ」

「……だな。狙いがバレバレな魔法砲撃を確実に当てる必要はありそうだが、そこは連携してやればいい」

「ここは、アルさんやヨッシの出番なのです!」

「……今の、ハーレの魔法弾には出来ないのかな?」

「え、どうなんだろう?」

「はっ!? その可能性もあったのさー!」

「あー、確かにそういう方向もあり得るのか!」


 実際に試してみないとなんとも言えないけど、サヤの言ったその可能性は否定出来ない。俺の魔法砲撃より、ハーレさんの投擲の方が命中精度や射程距離は長いし、もし使えるならそっちの方がより便利かもしれない。今のも後で検証してみた方がいいかもな。


「……魔法弾……そっちも興味ある。……でも、今は水魔法Lv10が先」

「まぁとりあえず全部使ってみるのが先だよな」

「なんだかどんどん検証内容が増えていくねー! まぁ一気にLv3も魔法を上げたらそうもなるかー!」


 まさしくそれはレナさんの言う通り。他のスキルとの連携で性質が変わる魔法を一気に上げたらこうなるのは分かりきってた話だもんな。まぁだからこそ順番に確実に確かめていく必要があるんだしね。

 てか、サヤ達は……結局熟練度上げをしてなくない? うーん、まぁアクアディヒュースでみんなの邪魔をしちゃった感じもあるし、風音さんやレナさんがやってきた事で余計にそれどころじゃなくなったもんな。流石にそこは仕方ないけど、こっちは重要だから確認しとこ。


「アルは報告を上げてくれてるか?」

「おう、ばっちり上げてるぜ。スキル強化の種をそう何個も持ってる奴は少ないし、何個か持ってても他に使った奴も多い感じだぞ。上限Lvに達した魔法って事で、大注目になってる様子だな」

「わたしもその情報を見て駆けつけてきたからねー! 上限Lvになったスキルの情報は、すっごい貴重だよ!」

「まぁ今の時点ではそうなるよなー」


 俺だって他に色々上げたいスキルはあったし、それぞれ1個ずつで上げようかとも思ったしね。岩の操作とかも思いっきり上げてみたい気もしたけど、弥生さんが爪撃Lv10を持ってる可能性があるって事でLv10に届く魔法に一気に注ぎ込む事にしたからなー。

 実際に既に色々と予想外の内容が出まくってるし、その価値は間違いなくあった。まだ性能は把握出来てないけど、『アブソープ・アクア』の効果は早く試したいところ。その為にもサクッと水魔法Lv10の内容も把握していこう!


「おし、それじゃ次は水魔法Lv10をやっていくぞー!」

「「「「おー!」」」」

「……楽しみ!」

「さてさて、どんな効果なんだろねー?」


 という事で、水魔法の終着点であるLv10を実際に使っていってみよう。パターン的には次は攻撃魔法にはなるとは思うんだけど、最後だから全然違うって可能性もあるんだよな。


<行動値10と魔力値30消費して『水魔法Lv10:アクアクラスター』を発動します> 行動値 78/106 (上限値使用:1): 魔力値 190/274


 ん? 名前はアクアクラスター? え、全然効果が分からないんだけど、これってどういう内容? クラスターって集団とか群れとかって意味じゃなかったっけ?

 しかも範囲指定も、照準指定も何もないぞ!? ただ、任意のタイミングで発動する猶予時間があるだけ? いかん、攻撃魔法なのか、補助魔法なのか、さっぱり不明だ。


「ケイ、どんな内容だ?」

「名前はアクアクラスターってなってるけど、さっぱり分からん!」

「およ? そうなの?」

「……アクアクラスター……水の集団?」

「とりあえず使ってみたらどうかな?」

「……それしかないか」


 まぁ魔法の説明欄を見ろって話ではあるだけど、やっぱりこういうのは実際に試しに使ってみるのが分かりやすいもんな。って事で、アクアクラスターを発動!


「ん? なんか上空にデカい水の塊が生成されて……って、水が勝手に分割した!?」

「えっと、12個に分かれたね?」

「レナさん、数えるのが早いのです!?」

「……ここからどうなるのかな?」

「おい、クラスターの意味ってまさか――」


 何かアルが言いかけた瞬間に、地面に向かって12分割になった水球が勢いをつけて落ち始めてきた!? ちょ、これって無差別な広範囲攻撃か!


「……とりあえず……受けてみる」

「わたしもそうしよっと!」

「ちょ、レナさん、風音さん!?」


 2人して躊躇の欠片もなく、水の落下地点に移動していった! レナさんにダメージはないだろうけど、風音さんはダメージが確実にあるだろ! てか、これって他にいた人達にも影響が――


「うぉ!? なんじゃこりゃ!?」

「グリーズ・リベルテがやってる水魔法の検証だ! 俺らにはダメージはないから、壊れて困るものだけ守れ! 『大型化』!」

「了解! 『並列制御』『アースウォール』『アースウォール』!」


 あ、いつもの湖の畔での野外炊事場の方にも2発ほど落ちていってるけど、なんとかそこは防いでくれたっぽい。予想外過ぎる広範囲の無差別攻撃だったけど、巻き込まれる状態に慣れてるおかげでなんとかなったか。

 でも、次々と地面に着弾して……うっわ、あちこちで木が折れてたり、土が抉れてクレーターみたいになってる。威力もえげつないな、これ……。


 てか、レナさんと風音さんはどうなった!? あ、風音さんは思いっきり押し潰されて結構なダメージを受けてるんだけど!? 明確な狙いになってないから、1発毎の威力が高いのか!


「……勢いに比べると……思ったほどのダメージじゃない」

「風音さん、はい! 回復してください!」

「……ありがと」


 ふぅ、すぐに駆け寄っていったハーレさんが風音さんに蜜柑を渡して回復してくれていた。こりゃ、思った以上にクセが強い魔法に――


「ケイさん、ケイさん!」

「わっ!? 何かな、それ!?」

「レナさん? どうし――」


 ちょっと待った!? レナさんの全身が青い光を放っていて、その中に水滴をイメージした様なマークがあるのは何!? え、もしかして当たった対象によって効果が違ってくるのか!?


「レナさん、もしかしてそれって刻印か?」

「うん、そうみたいだよ、アルマースさん! 『水の刻印』で水属性耐性の大幅強化だって」

「……白の刻印と……黒の刻印以外にも……刻印があった?」

「でも、水属性への耐性強化以外の効果はなさそうだねー! 白の刻印や黒の刻印は1回効果を発揮したら無くなるから、これも多分同じっぽい? 風音さん、少し試してもらえない?」

「……分かった。……お試しだから簡単なので『アクアボール』」


 そうして風音さんが放ったアクアボールがレナさんに当たって、青い光と水滴っぽいマーク……このマークが刻印なのか。それが消え去っていった。

 なるほど、水魔法に対する耐性を1撃だけ強化する感じになるんだな。てか、アクアボールで威力が低いとはいえ、火属性のレナさんのHPが全く減ってないんだけど……どれだけ耐性が上がってんの!?


「うん、やっぱり予想通りだったねー。でも、ここで別系統の刻印が出てくるとは思わなかったよー!」

「使った俺が言うのもあれだけど、俺もビックリしたよ……」


 まさかここで刻印があるとか欠片も想像してなかった。しかも『水の刻印』なんて情報は今までどこにもなかったし、刻印石すら使用していない。

 このアクアクラスターって魔法は敵には普通に攻撃になり、味方には『水の刻印』を付与出来る、攻撃と補助の特徴を併せ持つのかー。流石は上限Lvの魔法なんだな。問題は一切の狙いがつけられないとこなのかもね。


「あ、そうだ。アル、クラスターの意味がどうとか言ってなかった?」

「……それか。多分だが、由来はクラスター爆弾だと思ってな」

「クラスター爆弾?」

「あ、言われてみたらアルマースさんの言う通りかも!」

「レナさん、どういう事かな?」

「えっとね、クラスター爆弾ってのは……どう説明したらいいんだろ? んー、大きなケースに入れた小さな大量の爆弾を、投下途中でばら撒いて、広範囲を爆撃する爆弾?」


 あ、そういう風に言われてみたら、なんとなく分かったような気がする? あれだ、絨毯爆撃とか言われるやつか!

 なるほど、確かのさっきのアクアクラスターの発動の仕方は、そういう感じではあったもんな。恐るべし、アクアクラスター! さてと、これを魔法砲撃にしたらどうなるんだろ?

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