第1051話 魔法への興味
かなり魔法に対して興味津々な風音さんと情報交換をして、闇魔法の取得条件を知る事が出来た。ちなみにこの情報はレナさんが即座にベスタへ伝えてくれている。
風音さんを巻き込んでしまった水魔法Lv8の説明をしてる時に聞いたけど、教えてもらった闇魔法の取得方法は風音自身で見つけたもので、群集での情報公開は好きにしていいっていう話でもあった。
「……要するに水魔法Lv8は……味方には影響は与えず……全方位の敵だけを吹き飛ばす?」
「味方でも今のは全く影響がない訳じゃなかったです!」
「え、そうだったのか、ハーレさん!?」
「軽くだけど、バランスを崩しかけるくらいの衝撃はあるのです!」
「……乱戦でみんながそれぞれに戦ってる時は、変にタイミングが狂いそうだから下手に使わないで欲しいかな?」
「でも、大勢に囲まれてどうしようもない時とか、集中砲火を受けた時にまとめて相殺する感じが良いかもね?」
「ふむふむ、そういう使い方か」
「俺が飛んでる時に、下からの攻撃をまとめて吹っ飛ばすのにもいいかもな」
「あー、なるほど」
「……面白い使い方」
使い所を間違えるとみんなの邪魔にはなりそうだけど、正しく使えば攻撃というよりは防御に適している感じの魔法みたいだね。競争クエストでは俺らは確実に狙われるだろうから、これは便利なのかもしれない。
そういえば味方にも影響が出るのは水だから? 火魔法とか雷魔法みたいに明確に物理的に当たるものが無ければ、味方への影響は少なさそう。まぁそうなると今度は防御向けにはならなさそうだけど……。
「よし、それじゃ次は魔法砲撃にしてやってみるか!」
「「「「おー!」」」」
「……楽しみ」
さてと、それじゃ実行する前にこっちを発動しておかないとな。色々と考えるのは後にしよう!
<行動値上限を1使用して『魔法砲撃Lv1』を発動します> 行動値 103/107 → 103/106(上限値使用:1)
ん? 少しの間だったけど地味にちょっと行動値が回復してるし、成熟体からの行動値の回復速度の上昇の恩恵が体感出来てますなー。この変化は本当にありがたい! それじゃ、次!
<行動値8と魔力値24消費して『水魔法Lv8:アクアディヒュース』を発動します> 行動値 95/106(上限値使用:1) : 魔力値 236/274
地味に魔力値も回復してるような気もするけど、こっちも回復速度が上がってるのか。うん、総量が増えてる分だけ、回復速度は上がるよな。
さてと、全く未知の魔法を早く試したいから概要は分かってるLv8のは手早く済ませようっと。今回は魔法砲撃にしてロブスターの右のハサミを基点に指定して……狙いは、湖の上でいいや。別に今回のは広範囲だと分かってるし、的は必要ないな。
「それじゃぶっ放すぞー!」
とりあえずみんなに一言かけてから、湖の上に向けて発射! 散弾みたいに飛んでいくって聞いたけど……おぉ!? 大量の水滴が一気に広がりながら凄い勢いで飛んでいく! 確かにこれは散弾だな。
でも、威力としてはサンドショットの方が強そうだなー。まぁこの辺は属性の使い分けやら、行動値や魔力値の消費量やら、発動までの速度の違いやらを考慮した上での使い分けか。
「……通常発動は全方位……魔法砲撃は特定方向への面制圧……興味深い……」
なんというか、風音さんってどことなく不思議な雰囲気の人だよなー。昨日はここまで積極的な感じじゃなかったけど、魔法の事になったら明確に様子が変わったしね。まぁ別にそれが駄目な訳じゃないけども。
「ケイ、実際に使ってみてどんな印象だ? 砂岩魔法のサンドショットと範囲は大して変わらないような気がするが……」
「んー、威力もサンドショットに比べれば落ちてそうではある。だけど、こっちの優位性は消費量の低さと発動の速さだな。まぁLv8の魔法ともなると、それでも普通に消費は多いけど……」
「あくまで、サンドショットに比べたら少ないって話か」
「まぁそんなとこ。って、そういやまだアルの清水魔法の『ウォーターハンマー』って見てない気がする?」
「確かにそうだった気もするが……ケイも手に入れたんなら普通に自分で使えば良いだけだろ」
「あ、そりゃそうだ……って、風音さん!?」
「……清水魔法、砂岩魔法、どっちも見たい」
ちょ、なんか少しテンションが上がり気味で迫ってきてるんだけど!? いやいや、風音さんのこの魔法への執着っぷりはなんなんだ!? ん? なんかみんなの方も見回してる?
「……他にも……応用魔法スキルってない?」
「えっと、あるにはあるけど……」
「……ホント!?」
「風音さん、待って!?」
ワニサイズのトカゲで、ヨッシさんのハチに向かって突っ込んでいくと迫力があるな!? ヨッシさんも流石に慌ててるみたいだし……この様子だと変に抗毒魔法の事は言わない方がいいか?
「はーい、風音さん、ストーップ! それは交換条件の中に入ってないよ?」
「…………レナ……地味に……ケチ」
「そう言われても、困るんだけどなー。うーん、そもそもわたしが自分で持ってる情報じゃないし……清水魔法だけならダイクも取ってるから、そこなら見せられるけど……」
「…………ダイクなら……それは確実に……見せてもらう」
なんかダイクさん本人がいない所で、ダイクさんが持ってる清水魔法の公開が決定されていってるけど、レナさん的にはそこは良いんだ!? というか、この様子だと風音さんはダイクさんとも面識がありそう?
「うーん、ダメ元で聞いてみるけど、風音さんは傭兵として灰の群集に味方する気はある? それなら戦力情報の共有って事で教えられるんだけど……」
「…………ない。……競争クエスト……一度目ので、もういい……赤の群集……嫌い……」
「やっぱりそうだよねー。赤の群集で散々好き勝手言われた側としては、そうなるよねー」
「…………反省したから……全て水に流せ……というのは……都合……良すぎる」
詳しい内容までは把握出来ないけど、どうも風音さんは元赤の群集っぽいな。こりゃ、赤の群集が荒れてた時に色々と嫌な思いをして無所属になった感じか。……深く詮索はしないけど、まぁあの時の事を考えたら競争クエストで赤の群集と戦う状態になる事自体が嫌なのかも。
「まぁその気持ちは分かるんだけど、ここでケイさん達に持ってる魔法を全て見せろって言うのは、その嫌な事をしてきた人達と同じになるよ?」
「…………その言い方……ズルい」
「この場合、ズルいのは風音さんの方じゃない? 水魔法Lv10までが交換条件だし、それ以上を求めるなら味方になるか、相応の対価は用意して貰わないとね。わたしの裁量の範囲なら融通出来るけど、これはその範囲を超えてるよ?」
「…………それなら……昨日手伝った分の……対価……貰う」
「そこはダイクの『清水魔法』を見せるので相殺ってとこだね。それ以上は対象外」
ちょ!? なんかレナさんと風音さんがどっちも引かないって感じで睨み合い始めてるんだけど、これってどうすんの? 検証が全然進められない状況になってきてるんだけど……ん? なんか共同体のチャットが光ってる? このタイミングでって事は内緒話か?
サヤ : ケイが清水魔法を持ってるって、どういう事なのかな……?
ヨッシ : それ、私も気になってた。
ハーレ : そういえば説明してなかったのです!?
ケイ : あー、その説明の前に検証を始めちゃってたな……。
水魔法Lv10で得た称号とスキルは説明したけど、水魔法Lv8で得た称号とスキルの説明をすっかり忘れてた……。忘れてたというか、その辺をアルに説明するのをハーレさんに頼んだので済んだ気になってたというべきか。
アルマース : 俺はハーレさんから聞いたが、なんか水魔法Lv8にする事も清水魔法の取得条件の1つだったらしいぞ。
サヤ : あ、そうなのかな!
ヨッシ : それでケイさんも清水魔法を手に入れてるんだね。
ケイ : まぁそうなるなー。正確には水魔法Lv8で称号『水魔法に長けしモノ』が手に入ったってとこ。それで、この状態はどうする?
アルマース : 流石にこの流れは想像してなかったな……。
サヤ : うーん、傭兵で片付けば解決しそうだったけど、そうもいかないみたいかな……。
ヨッシ : 1回目の競争クエストでの悪影響って、全然無くなった訳じゃないんだね。まぁ仕方ない気もするけどさ……。
ハーレ : 傭兵が無理なら、灰の群集への移籍ならどうですか!?
ケイ : それで済むなら、もうやってるんじゃ?
アルマース : そんな気もするが、ダメ元で聞いてみるんでもいいんじゃねぇか? 意見が変わってるって可能性もあるしな。
サヤ : 聞くだけ聞いてみる?
ヨッシ : このままだと検証が進まないし、私は賛成だよ。
ケイ : それもそだなー。ダメ元で聞いてみるか。
みんなのスキルの熟練度稼ぎまで止まっちゃってるし、検証する為の時間ももったいない。この提案が断られるなら、風音さんには悪いけど他の魔法については諦めてもらうしかないよな。レナさんも言ってたけど、情報の提供の強要は……流石にね。
「風音さん、ちょっと提案!」
「…………なに?」
うわー、露骨に不機嫌そうな声。レナさんが風音さんは集団行動が苦手だと言ってたのが、なんとなく分かった気がする。とんでもなくマイペースなんだな、風音さん。
まぁマイペースな人って他にも何人もいるし、完全に話が通じないという訳でもなさそうだからその辺は大丈夫だろ。風雷コンビとかマイペース……コンビなのにマイペースってのも不思議ではあるけど、騒動を起こしつつも馴染んではいるしなー。
「嫌なら無理にとは言わないけど、灰の群集に入る気はあるか? それなら競争クエストに関係なく、見せても問題はなくなるぞ! 競争クエストが嫌なら無理に参加する必要もないしさ」
「あ、ケイさん、それは前にわたしが誘ったけど――」
「…………少し……考えさせて」
「およ!? 前は断られたのに、心変わりしたの!?」
「…………断ったの……半月以上前。……まず水魔法Lv10まで……見せて。……それまでに……結論を……出す」
「うーん、まぁそれで良いなら、いっか! ただし、灰の群集に入らない場合は諦めること!」
「…………分かった」
ふぅ、ダメ元で言ってみたけど、言ってみるもんだ。これで風音さんが灰に群集入りになったら、魔法絡みの検証って地味に活発化しそうな気がする。戦えば相当強いっぽいけど競争クエストは嫌みたいだから、そこに期待するのは無しだな。
「よし、それじゃ検証を再開していくぞ!」
「「「「おー!」」」」
「なんとか収まって、ホッとしたよ……」
「……中断させて……ごめん」
一安心したようなレナさんと、なんだか申し訳なさそうな風音さんである。ここで謝ってきたなら本当に悪意も何もなかったし、変な状態にしてしまったって自覚もあったんだな。なんかその言葉を聞けて少し安心した。
「それじゃ水魔法Lv9の通常発動をいくぞー!」
さて、Lv9の水魔法はどんな内容だろうね? 今までの法則から考えると、ここは補助的な魔法の可能性が高いけど……。
<行動値9と魔力値27消費して『水魔法Lv9:アクアウィークン』を発動します> 行動値 97/106 (上限値使用:1): 魔力値 247/274
ほほう、水魔法Lv9の名前は『アクアウィークン』か。ウィークならゲーム的にはよく見る弱点とかになるんだろうけど、ウィークンならどういう意味だ? 弱めるとか? うーん、ちょっと自信がないから、ここはアルに聞くべし!
「アル! この水魔法Lv9は『アクアウィークン』って名前なんだけど、意味は分かる?」
「ウィークンなら、弱めるって意味じゃないかな? 流石に薄めるって意味じゃないよね?」
「多分、弱めるで合ってると思うが……ケイ、発動対象はどうなってる?」
「あ、それはすぐに確認する!」
アルに聞いたら、すぐにサヤから答えが返ってきてビックリした! 流石はサヤは成績優秀なだけはあるんだな。うん、そこは今ので思いっきり実感した。
それはまぁ良いとして、発動範囲は……ん? 範囲指定がない!? あ、いや違う。ヨッシさんの抗毒魔法と同じ感じで、自分を中心にして水の膜を張るのか? いまいち使い方が分からないぞ、これ。
「なんか俺を中心にした範囲指定の魔法っぽい! 実際に発動してみないとよく分からないから、とりあえず使ってみる!」
「……ほう? とりあえず見てみないと分からないか」
という事で、アクアウィークンを展開! おぉ、抗毒魔法の色違いって感じで、青い膜が生成された。範囲としては抗毒魔法と同じくらいで、そこそこ広めだな。これは……水魔法に対する防御魔法って事になるのか?
うーん、防御魔法ではないような気がするんだけど、敵がいないとどういう効果か分からないな。あ、てか、この魔法って発動中は動けないっぽい!?
「これって、水魔法に対する防御魔法なのかな?」
「それは何か違う気がするのです!?」
「範囲での魔法になってるけど、防御だと『アブソープ・アクア』との相性も悪そうだしね」
確かにそこはヨッシさんの言う通りな気がする。あー、手っ取り早く魔法の説明欄を読んで内容を把握するかー。
出来ればその辺を見ずに探っていきたかったけど……あ、今は風音さんがいるから、そうでもないのか? いや、でもさっきの状況でこっちから頼むのも……。
「……この青い膜の中……入ってみていい?」
「え、風音さん、良いのか?」
「……効果を知りたいから……問題ない」
「それなら任せた!」
「……任せて」
そうして風音さんが俺の展開している青い膜の内側へと入ってきた。ある意味、ここに風音さんがいてくれたのがラッキーだったかも。
まぁ風音さん自身が知りたがって手伝ってくれてるけど、この分のお礼は後でしとかないとな。もし灰の群集に入らないという決断をしても、サンドショットのお披露目くらいはしようっと。
それにしても風音さんが膜の内側と外側を出たり入ったりしてるけど、それで何か変化があったりするのだろうか? うーん、とりあえずしばらく待ちますか。
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