第1049話 上限に至る水魔法


 3個持っているスキル強化の種の使い道は、水魔法をLv10まで上げる事に決めた。Lv8の火魔法が『ファイアディフュース』っていう自分を中心にして球状に火を拡散させる魔法らしいから、水魔法Lv8は高確率で同じような性質のはず。

 そこは予想の範囲内だからいいとして、俺が知りたいのは水魔法のLv9とLv10。そしてもしあるのであれば上限Lvに到達した事で解放される何か。

 あればいいんだけど、ある可能性は高いとも思うんだけど、絶対にあるという保証はないんだよなー。だからこそ、確認したいというのもある。


「……おし、水魔法のLvを上げていきますか!」

「おー!」


 とりあえず今はまだアルやサヤやヨッシさんはログインしてないけど、ログインした時に驚かせるつもりでやっていくか! さーて、どんな魔法になっているのかを楽しみにしながら貴重なスキル強化の種を盛大に使用だ!


<『スキル強化の種』を使用します。対象となる任意のスキルを選択してください>


 そういえば前回使った時も地味に水魔法だったっけ。Lv7にして付与魔法が使えるようにして、情報を広げたんだよなー。あれはあれで色々あったっけ。

 まぁ今は思い出に浸っていても仕方ないし、所持スキルで上げられるスキルの一覧が出てるから、その中から水魔法を選択っと。ここで間違えたら色々と台無しだから、間違えないように要注意!


<『スキル強化の種』の効果により、スキル『水魔法Lv7』が『水魔法Lv8』になりました>

<規定条件を満たしましたので、称号『水魔法に長けしモノ』を取得しました>

<スキル『水属性強化Ⅱ』を取得しました>

<『水属性強化Ⅱ』『魔力制御Ⅱ』により、『清水魔法』を取得しました>


 ちょ、待った、待った!? えぇ!? 応用魔法スキルの取得条件、こんなとこにもあったのか!? いや、確かに水魔法の上位版になるんだから不自然な話でもないけどさ!

 え、でもこれなら火魔法Lv8の内容は確定してるのに、昨日の情報収集の時になんで話に出てこなかった!?


「この情報がなんで存在してない!? いや、昨日見た時に判明してなかっただけか!? ちょ、これはすぐにまとめを確認!」

「ケイさん、慌ててるけどどうしたのー!?」

「水魔法Lv8で『清水魔法』の取得条件を満たしたんだよ!」

「え、そうなの!?」


 流石にこの展開はいきなり予想外だ! とりあえず大急ぎでまとめで応用魔法スキルの取得条件を部分を確認しよう。……よし、応用魔法スキル取得方法のまとめはあった! えっと、この手段での情報は……なんで無いんだよ!? どうなってんだ、これ!?


「ケイさん、少し落ち着いてー!?」

「……それもそうだな」


 なんか妙に取り乱してしまったけど、少し落ち着こう。そもそも同じ称号を複数の手段から手に入れる事って、これまであったっけ? ……うん、荒らすモノの系統の称号なら細かな手段問わずで普通にあったな。

 よし、称号に関してはとりあえずそれでいい。何故、まとめにこの情報が無いのかを考えてみよう。普通に考えたらLv8まで上げた魔法は、その人の主力スキルなのは確定と考えていいはず。俺の場合は水と土の2属性が主力になってるけど、応用魔法スキルとしては『砂岩魔法』を先に取得して……あ、なるほど、もしかしてそういう事か!


「……火魔法Lv8にした人は、その時点で既に炎魔法を取得していた? だから、取得済みの称号で火魔法Lv8になった時には何も出てこなかった……?」

「おぉ!? その可能性は確かにありそうなのです!? ケイさんが昨日、『砂岩魔法』じゃなくて『清水魔法』を取得してたらそうなってた可能性もあるのさー!」

「そうなるよな。俺が今、土魔法をLv8にしてたらそういう結果になるし……」


 この取得条件がまだ不明な理由はそこら辺にありそうな気がする。戦闘が得意ではないサファリ系プレイヤーの人ならスキル強化の種を手に入れても、魔法をLv8にするよりは生産に使いやすい操作系スキルを上げるのに使いそうだしね。

 逆に戦闘をする人なら、自力で成熟体と戦って応用魔法スキルの取得を狙うはず。実際に俺だって『砂岩魔法』はそうしたし、機会があれば『清水魔法』もそっちで取るつもりだった。


「……しまったな。火魔法Lv8と炎魔法の両方を持ってそうなカインさんがさっきまでいたのに……」


 聖火の人と呼ばれる程の火に関しては第一人者であるカインさんならその辺を知ってる可能性はあったのに、ついさっきログアウトしてしまったのが惜しい!


「ケイさん、詳しそうな人がもう1人いるのです! そして炎魔法は確実に持っているのさー!」

「紅焔さんか! 今ログインしてたらいいんだけど……」


 というか、場合によっては紅焔さんが炎魔法と火魔法Lv8の両方の情報源って可能性もありそうだ。少なくとも炎魔法の情報の初出は紅焔さんだったはず!

 とにかくフレンドリストを確認してみて……よし、紅焔さんはログインしてるし、今は森林深部にいる! 多分、フレンドコールしても大丈夫なはずって事で、確認の為に連絡!


「おっす、ケイさん! いきなりどうしたよ?」

「紅焔さんに確認したい事がある! 応用魔法スキルの取得条件で、未発見のやつを見つけた!」

「マジか!? え、それで俺に確認したい事って何になるんだ? いや、少し待ってくれ。流石のエンの近くだとその話は目立つから、常闇の洞窟の中に転移してくるわ」

「あ、確かにそれもそうか。すまん、なんか焦った……」

「いやいや、良いって事よ。それじゃすぐに転移するから、ちょっとだけ待っててくれ!」

「ほいよっと」


 ふー、いくらなんでも慌て過ぎだな。今は競争クエストの最中だから普段よりは他の群集の人の出入りは少ないとはいえ、競争クエストに参加してない人達は普通に出入りはしてるはず。

 大事な情報だからこそ、ここは迂闊に聞かれないように注意するべきところだった。その辺を紅焔さんの方で考慮してくれて助かったー!


「おし、転移完了だ。で、何を確認したいんだ?」

「単刀直入に聞くけど、紅焔さんは火属性Lv8になってる?」

「おう、騒動があった時の補填のスキル強化の種をそれに使ったからな!」

「やっぱり持ってたか! それって炎魔法を取得した後!?」

「お、おう、そうなるけど……それが何かあるのか?」

「さっきスキル強化の種で水魔法をLv8に上げたら、称号『水魔法に長けたモノ』が手に入ったんだよ」

「なっ!? え、そんなとこに条件あったのか!? ちっ、先に炎魔法を取得してたから、盲点になった感じかよ……。ケイさん、それはナイス情報だ!」

「俺としてもこの情報が出てない理由がはっきりして、なんか落ち着いた……」


 あー、思った通りの内容だったし、実際にそういう見落としが発生する可能性があるって分かって良かった。成熟体絡みの称号取得に合わせなくも、応用魔法スキルが取得出来るって情報は貴重になるはずだもんな。


「なぁ、ケイさん。それって応用連携スキルや応用複合スキルの方でも、称号を使わない取得条件もあるんじゃねぇか? 応用魔法スキルだけって事はないだろ?」

「……確かに、それは無いとは言えないか」


 応用連携スキルも応用複合スキルも、応用魔法スキルと共通して『魔力制御Ⅱ』を前提スキルとして持っている。ならば、似たような条件がある可能性は否定出来ない。……探ってみる価値はあるか?


「ちょっとその辺は、今やってる事が終わってから情報共有板に報告と相談してみるわ」

「それが良いだろうな! てか、ケイさんは今何やってんの?」

「持ってるスキル強化の種を全部使って、水魔法Lv10にしてる最中。でも、Lv8にしたところでいきなり予想外の状態になって、その確認の為に紅焔さんに連絡したってとこ」

「……水魔法Lv10ってマジか。ケイさん、一気にやっちまうんだな?」

「もうこの際、盛大にやってやろうかと思ってなー!」

「おし、その報告を期待してるぜ! それじゃ長々と話してても邪魔になりそうだから、フレンドコールは切るぞ」

「ほいよっと!」


 という事で、紅焔さんとのフレンドコールは終了。確認したかった事は分かったし、応用連携スキルや応用複合スキルで称号と重ねなくても取得出来る方法がある可能性も見えてきた。まぁここはとりあえず後回しだけど。


「ケイさん、どうだったー!?」

「推測通りだったよ。とりあえず気分的にはスッキリした!」

「おぉ、それは良かったのさー!」

「って事で、とりあえず続けて水魔法Lv9に上げていくか!」

「どんな魔法になってるのか、楽しみなのさー! あ、ところで魔法の詳細は確認しないのー!?」

「あー、それはLv10まで上げてからまとめてやろうかと思ってるけど、1つずつの方が良いか?」

「うーん、気になるけどまとめてで良いのです! あ、サヤからもう少しでログイン出来るってメッセージが来たよー!」

「それなら、みんなが揃ってから――」

「わっ!? ヨッシからももうすぐログインするってメッセージが来たのです!」

「うん、それならアルがどうかは分からないけど――」

「俺がなんだって?」

「うわっ!? って、アルか!」


 いきなり声をかけられてビックリしたわ! てか、アルは昨日の夜に俺らがログアウトした後もやってたはずだけど、ここでログアウトしてたのか。


「今、ケイさんがスキル強化の種で水魔法をLv10まで上げてる最中なのさー!」

「ほう? そりゃまた、随分と思い切った選択にしたな?」

「まぁなー。さっきアルの名前が出てたのは、単純にログインのタイミングが分からなかったからサヤとヨッシさんが揃ったタイミングで試しに使ってみようかって話だったんだけど……思ったよりアルは早かったな?」

「……ちょっと早めに目が覚めてな。軽くだが掃除と洗濯が終わったから、簡単な朝飯を食ってログインしてきたとこだ」

「あー、なるほど」


 カインさんといい、アルの今日は早起きだったんだな。まぁ早い段階で全員集合になりそうだし、それはありがたいとこだね。


「で、現状はどんな状態だ?」

「あー、ハーレさん、状況の説明を頼んでいい? その間に水魔法をLv10まで上げときたい」

「了解なのさー! サヤとヨッシがそろそろログインしてくるから、その時には試しに使えるようにしておくのです!」

「なんだ、まだ上げてる途中だったのか。そういう事なら、ハーレさん、説明を頼む」

「頼まれました! えっとね、まずは――」


 さてと、アルへの説明はハーレさんが引き受けてくれたので、今のうちにサクサクと水魔法のLvを上げていこう。Lv8での事は想定外だったけど、まだ『清水魔法』を取得出来てなかった俺としてはありがたい事だし、新たな取得方法が判明したのも良い事だもんね。


<『スキル強化の種』を使用します。対象となる任意のスキルを選択してください>


 それじゃ次は水魔法Lv9へと上げていく番だね。流石に今回は特に何か別の強化があるとは思えないけど、絶対に無いとも言えないから気を引き締めていこう。


<『スキル強化の種』の効果により、スキル『水魔法Lv8』が『水魔法Lv9』になりました>


 うん、特にこれといって無かったね。……ちょっとだけ期待してた部分もあるけど、少し残念。いや、でも次のLv10では高確率で何かあるはず! 何があるかは分からないけど、爪撃Lv10での効果を考えれば……スキルの性質が違うからなんとも言えないかー。


<『スキル強化の種』を使用します。対象となる任意のスキルを選択してください>


 まぁ実際にLv10にしてみないと何とも言えないんだから、これはやるしかないよな。よし、それじゃ水魔法の最後のLv上げを実行に移す! なんか凄い効果が来いやー!


<『スキル強化の種』の効果により、スキル『水魔法Lv9』が『水魔法Lv10』になりました>

<ケイが規定条件を満たしましたので、称号『水魔法を極めしモノ』を取得しました>

<スキル『アブソープ・アクア』を取得しました>


 おぉ、称号で『水魔法を極めしモノ』って、まさしく上限Lvに達したからこその称号って感じだな! それに手に入ったスキルは『アブソープ・アクア』か。アブソープって確か吸収って意味だったと思うけど、これってもしかするととんでもない効果なんじゃ? よし、とりあえず効果を見てみよう。


『アブソープ・アクア』

 敵の水属性の魔法を吸収して、自身の魔力値へと変換する。

 吸収可能量は、自身の魔力に依存。

 Lvはないため、使用時は常に上限値使用10となる。


 ちょ、敵の水属性魔法の吸収して、それを魔力値に変換!? え、マジでこんな効果ってありなの!? あー、でも俺に対して水魔法の攻撃を仕掛けてくるって事はある?

 いや、待てよ? 別に俺を狙ってきてなくても、他の人を狙ってる攻撃に割り込んで吸収してしまうというのもありなのか。吸収量はステータスの魔力に依存するみたいだから、全てを吸い尽くす事は出来なさそうだなー。でも、ダメージ軽減にもなりそうだし、ありな効果だね。


「あ、みんな揃ってるかな!」

「みんな、おはよう!」


 おっと、サヤとヨッシさんがログインしてきたからこれで全員集合だな! ふっふっふ、なんとか全員集合までに水魔法Lv10まで上げ切れたぞ。


「おっす、サヤ、ヨッシさん!」

「ふっふっふ、サヤ、ヨッシ、これからお楽しみタイムなのです!」

「え、どういう事かな?」

「何かあったの?」

「ケイが水魔法Lv10に上げてるんだとよ」

「丁度、今上げ終わったとこだな! それじゃこれからお試し発動をやっていくぞ!」

「それは確かにお楽しみタイムかな!?」

「あはは、確かにそうだね」


 さーて、経緯については試し終わってから改めて説明するとして、まずはLv8〜Lv10の水魔法の性質を見ていきますか!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る