第31章 2回目の競争クエスト
第1047話 現状の確認から
現在時刻は、土曜日の朝の8時頃。とりあえずいったんのいるログイン場面へとやってきた。さて、何かお知らせは……『今日の昼にも緊急クエスト開催だー!』となってる。なんか今までと比べると内容が雑ー!
というか、まだ普通に経験値のボーナスのあれってやってるんだな。しかも昼間のは初めて見た。まぁ俺は不要にはなったけど、そうでない人もまだまだいるか。
「いったん、緊急クエスト以外にお知らせって何かある?」
「今は特に何もないよ〜」
「それじゃスクショの方は?」
「そっちも特にないね〜」
「ほいよっと」
少しくらいならありそうな気もしたんだけど、意外とそうでもなかったっぽい。まぁ無いなら無いでチェックの手間が省けていいか。
「おし、ならコケでログインを頼んだ!」
「はいはい〜! あ、これは忘れずにね〜!」
「お、サンキュー!」
「それじゃ今日も楽しんでいってね〜!」
そうしていったんから今日のログインボーナスを受け取ってから、ゲームの中へと移動開始! さーて、まずはみんながいるかの確認と、現状の情報確認からやっていきますか!
◇ ◇ ◇
昨日の夜はミズキの森林の湖の畔でログアウトしたけど、いくらなんでもここまで競争クエストの再戦エリアになってるって事は……うん、そういう事はなさそうだ。とりあえず今日は昼の日で、普通に晴天っぽいね。
土曜の朝8時にしては人が多い気もするけど、割と普段通りの様子っぽい。竈で色々焼いてる人もいれば、薪を割っている人もいるし、長い竹の中を覗き込みながら何か細工を……って、そこはいつも通りじゃない!?
「おっし、これでとりあえず仕上がった! さーて、これでどうなるか……」
あ、なんか竹を抱え始めたサルの人が……って、カインさんか。もしかして昨日の夜のやつをカインさんが試してるのか?
というか、なんだかカインさんの様子が変わってる気がする? 全身がレナさんのリスと似たような感じに赤くなってるし、成熟体へ進化してるっぽいな。
「おぉ、ケイさんの方が少し早かったのです!」
「ハーレさんも来たか」
「あー! カインさんがなんかしてるのさー!」
「ちょ、ハーレさん!?」
なんの躊躇いもなく普通に駆け出していったよ、ハーレさん。まぁカインさんは普通に知り合いなんだし躊躇する理由もないんだけど、邪魔にならないようにタイミングは考えてたんだけどな。
まぁ既にハーレさんは行ったし、俺もここで変に待つのは無しにしますか。実際、何をやってるのかは気になるとこだし、その辺を聞きに行こうっと。
「お、ケイさんとハーレさんか! 朝から早いな!」
「おっす、カインさん。とりあえずその言葉はそっくり返しとく」
「カインさん、おはよー! 何やってるのー!?」
「ん? こりゃ昨日ケイさん達がやってたっていう検証の改良版だな。油はねぇんだが、俺にはこういうのがあるんだよ」
そう言ってカインさんが抱えてた竹を置いて……って、あれ? 竹の中がチラッと見えたけど、貫通してる? 油がないと昨日のはどうにもならないと思うんだけど……なんかカインさんが差し出してた手の先にトカゲがいる。いや、単純なトカゲじゃないな。これはフーリエさんのヘビとコケの融合種によく似てる感じだ。
「前に作ったまま放置になってたコケとトカゲの融合種にした、コケメインの土属性持ちの物理型だ。昨日の夜に成熟体の進化直前まで辿り着いて、さっきサルとの支配進化を実行したとこだぜ」
「おぉ!? なんか凄い事になってるのです!?」
「……コケの方が本体か?」
「いんや、こっちは隠して運用するから、本体はサルの方にしてるぜ!」
「あー、なるほど」
ふむふむ、カインさんとしてはあくまでサルをメインにした上でトカゲ型のコケは表には出さない方向性で使うんだな。どうやら俺とは運用方法がまるで違うっぽい。
「さてと、昨日原型を用意してくれたケイさんとハーレさんが、このタイミングで来るってのはやり甲斐があるってもんだぜ! ちょっと試し撃ちを見てってくれや!」
「わくわく! どんな風になってるんだろ!?」
「あれの改良版かー。それは見てみたいな」
そもそも昨日のあれ自体が青の群集の攻撃を分析して検証していく上で魔改造したものだけど、それに更にカインさんが改良を加えたとなると、どういうものになっているかが非常に気になる。
てか、なんか周囲に他の人達も集まってきてるね。うーん、パッと見た感じでは知ってる人は少ないし、名前は見た事あっても交流がない人ばっかだな。まぁ時間帯が時間帯だから、その辺は仕方ない。
「あ、ケイさん、悪いんだが湖の方に的を用意してくれねぇか? やっぱりこういう時は、狙うべきものがあった方がいいしな!」
「それもそうだなー。それは任せとけ」
試し撃ちには的がいるというのは、俺としても賛同だね。狙いが正確かどうかの指標にもなるし、ここはサクッと用意していこうっと。
<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 106/107 : 魔力値 271/274
<行動値を3消費して『土の操作Lv6』を発動します> 行動値 106/107
とりあえずこれで湖の上に、大き過ぎず、小さ過ぎずくらいの土の塊を生成完了っと。うーん、最近は水の操作よりも土の操作の使用頻度は高い気がするんだけど、土の操作はLv7に上がってくれないものか……。Lv7って、そう気軽には上がってくれないもんだね。
「おっし、それじゃ始めるか! 群体擬態解除! 『増殖』『グリース』!」
ん? トカゲ型のコケを竹の側面に空いていた穴から中に進ませたと思ったら、ただのコケに戻した上で増殖させてからグリースを発動!? え、これって竹の内側がコケで覆われてる状態なんじゃ? しかも穴を左手で抑えることで、コケとの繋がりも保ってるっぽい?
「次々行くぜー! 『並行制御』『アースクリエイト』『アースクリエイト』『並列制御』『岩の操作』『爆散投擲』!」
「おぉ!? 竹を支える岩の土台が出来たのです!?」
「それと同時に、竹の中を通るギリギリくらいのサイズの石も生成してきたか!」
まだテストだからか魔力集中は使ってないし、爆散投擲も強弱が発生してないから威力は抑えめにしてるようだね。ただ、ここまで見たら改良のコンセプトはなんとなく分かった。
今カインさんがしてるのは弾道を曲げるのではまだ安定していない狙いの精度を上げる手段ではなく……グリースで滑らせる事での加速を狙った手段だな。ははっ、コケのグリースをそういう使い方にするか!
「竹の角度と、爆散投擲の投擲方向の補正線を合わせて……おし、チャージも完了! いくぜ!」
カインさんは掛け声と共に眩い銀光を放ちながら丸い石が投げ飛ばされ、俺の用意した的に見事命中して爆散していった。……魔力集中を使ってないのに、同等以上の速度が出てなかった? あ、いや、でも成熟体になった分だけ加速はしてるのか。
「おっし、ちょっと抑えめにはしたが、大成功じゃねぇか!」
「カインさん、速度重視で改良したのー!?」
「おう、そうだぜ! 曲げる方も試してみたくはあるんだが、油も足りねぇし、付け焼き刃じゃ使い物に並んだろうからな!」
「……それは確かに。それにしても、グリースで加速をさせるとは予想外だったぞ!」
「そこは昨日のケイさん達の検証のおかげだな! 弾の抵抗が少なきゃ、どんどん滑って加速してくってのは参考になったぜ」
「それなら良かったのさー!」
昨日の段階ではまだまだ未完成だと思ってた。だけど、今のカインさんの手段は危機察知を掻い潜る事は出来ない気はするけど、その代わりに命中精度を落とさないこれまでよりも加速する投擲手段を確立した気がする。
とはいえ、条件的に誰でも使えそうでもないけどなー。まぁ今のなら2人でなら普通に出来そう? 俺が竹を支えておいて、ハーレさんが投げる的な感じで……。あ、でも狙いをつけるのが難しいか。ま、その辺は追々考えてみますか。
「さてと、これで一応の目処は立ったか。ケイさんとハーレさんはログインしたばっかっぽいが、これからどうすんだ?」
「とりあえずみんなが揃うまで、ここで情報収集の予定です!」
「そんなとこだなー。って、ちょっと悪い。忘れないうちにログインボーナスをもらっとく!」
「はっ!? つい忘れていたのです!?」
「おっと、そりゃ忘れたらダメなやつだな! 現状の情報は俺がある程度は把握してるのを教えるから、サクッと確保してこい!」
「はーい!」
「サンキュー、カインさん!」
あんまり待たせるのも悪いから、ここはすぐに終わらせてしまおう。
<ケイが『進化ポイントの実:灰の群集』を使用します>
<アイテム使用により、増強進化ポイント4、融合進化ポイント4、生存進化ポイント7獲得しました>
<ケイ2ndが『進化ポイントの実:灰の群集』を使用します>
<アイテム使用により、増強進化ポイント4、融合進化ポイント4、生存進化ポイント7獲得しました>
よし、これで今日の分のログインボーナスの確保は完了! ふー、今の段階だと大した量じゃない進化ポイントだけど、それでも折角貰ったんだから無駄にはしたくないもんな。
「ログインボーナス、取得完了なのさー!」
「おう! ケイさんの方はどうだ?」
「俺も手に入ったから、もう大丈夫だぞ」
「それなら……知りたがってる競争クエストの話をしていこうか」
なんだかカインさんが急に神妙さを出しながら話し始めたけど、何か大きな動きがあったのか? もしかして夜中のうちに結果が出てしまったエリアが――
「一番大きな動きとしてはこれだな。海エリアから新エリアへ経路が確立になった」
「お、マジか!」
「対戦エリアがまた1つ増えたのさー!」
「いやいや、ハーレさん、それは違うぜ? 増えたのは2ヶ所だ」
「2ヵ所なの!?」
「って事は、もしかして再戦のエリアは海エリアか!?」
「おう、赤の群集と灰の群集の対戦エリアになる『ナギの海原』だ。新エリアは『未開の海溝』ってとこだな」
なるほど、ここで海エリアの対戦エリアが2ヶ所になったのか。そうなると現時点で灰の群集の対戦エリアは、新エリアでは『未開のジャングル』と『未開の海溝』、再戦になるエリアでは『ミヤ・マサの森林』と『ナギの海原』の4ヶ所になるんだな。
同時に4ヶ所は戦力の分散を考えると厳しいけど、海と陸で分かれてるだけ幾分マシか。それにまだ緊急クエストでの経験値のボーナスタイムは続いてるみたいだし、時間が経てば戦力も増強されてくるはず。……それは敵にも言えることだけど。
「それで海エリアの方の動きは?」
「『未開の海溝』の調査を進めつつ、『ナギの海原』の防衛に動いてるっぽいぜ」
「はい、質問です! 昨日聞きそびれたんだけど、新エリアへの転移が確立した後の再戦になったエリアの群集支援種ってどうなってますか!? 『ミヤ・マサの森林』はミヤビは移動したよね?」
ん? あ、言われてみたら新しい群集支援種がどうとかって話だったような気が? 今の今まで、そこは全然気にしてなかった。そういやミヤビの忠犬みたいになってたキツネのマサキはどこに行ったんだろ?
「あぁ、エリアを手放す側になった群集には新たな群集支援種が手配されてるから、そいつを導く感じだな。ただ、『ミヤ・マサの森林』の場合だとジャングルの方へとミヤビと一緒に移動したキツネのマサキが行方不明になってて、今日の早朝辺りにミヤビが心配し始めるって演出があったらしいぞ」
「……それ、何かありそうだな?」
「なんだか不穏な雰囲気がするのです!?」
まさかの公式の設定としての行方不明だったよ。ミヤビと一緒に移動したというなら、マサキは『未開のジャングル』のどこかにいる? もしかすると、そこら辺が新エリア側の攻略条件に繋がってくるのか?
「もしかして、マサキが瘴気に呑まれてボス化する可能性がある……?」
「その推測はもう出てたが、まぁまだ実物が確認出来てないから推測の域は出てないぜ?」
「……確認出来てないなら、そうなるか」
でも、これはこれで重要な情報になりそうではある。一度黒の暴走種になってから元に戻ったとしても、再び黒の暴走種にならないという保証はないもんな。
それに場合によっては……黒の暴走種や瘴気強化種に乗っ取られて、支配種の傀儡側で敵の片割れになる可能性だって否定は出来ない。プレイヤーの場合は中身が同じ精神生命体だから問題ないけど、異形なゾンビやスケルトンなんて敵が出てき始めたんだから、可能性としては考えておくべきだ。
「あぁ、それとな。この辺はリーダーから後から大々的に呼びかけはあると思うが、11時くらいを目処に一度『ミヤ・マサの森林』で青の群集に攻め込むつもりだとよ」
「え、マジで!?」
「おぉ!? もう攻め込むんだ!?」
「青の群集が本気を出してきてるから、赤の群集との再戦で戦力が分散してる間に終わらしておきたいってよ」
「あー、そういう感じか!」
確かに青の群集は盛大に警戒してきてるっぽいもんな。赤の群集の森林エリアと青の群集の森林深部エリアでの再戦エリアだったはずだし、前回青の群集が勝ち取ってるエリアだから、そっちを死守する方に動くという読みなのかもね。
再戦エリアが何エリアあるのか分からないけど、既に8エリアあるのは確定。ここからもう3エリアも追加があるとも思えない。赤の群集としては、青の群集から絶対に取りたいエリアのはず。
「こりゃ俺らも負けてられないか!」
「『ミヤ・マサの森林』は守り抜くのさー!」
「俺もそのつもりで、色々と改良案を練ってたんだぜ!」
ふむふむ、カインさんとしても青の群集との再戦に向けて色々と準備してる訳か。そういう事ならアルとサヤとヨッシさんのログインを待って、11時から攻め込む為の準備をしていくのがいいかもね。
まだ成熟体になってからLvは上がってないし、刻印系スキルの方も刻印石が手に入ってないから手付かず。あぁ、羅刹がどうなったかも確認しておかないといけないし、グリースの強化もしておきたい。それにちょっとスキル強化の種で魔法の大幅強化も考えてるから、そこの結論も出さないとな。こりゃ忙しくなりそうだ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます