第1023話 成熟体での変化 後編


 サヤとハーレさんが進化して、どう変化したかは分かった。サヤのクマは物理型で更に連撃に特化して、ハーレさんのリスは物理型の汎用的な投擲に進化している。竜とクラゲについては、まぁ無難に順当な魔法型としての進化だったね。


「それじゃ次は私だね」

「見た目の変化が大きいヨッシの進化先は気になるのです!」

「実は種族名は意外とあっさりしてて『支配異常バチ』なんだよね。支配異常種で、属性は『氷』『雷』『毒』、特性は『支配』『統率』『異常付与』『伸縮』だよ」

「特性に『伸縮』があるのがびっくりかな!?」

「合成したイカの触腕が影響した部分だろうなー」

「ヨッシさん、それって『イカパンチ』とか取れたりするんじゃねぇか?」

「あ、それは確かにあるかも? んー、でも特に急ぎじゃないし、その確認は後でだね」

「ほいよっと」

「ま、それが無難なとこか」


 ヨッシさんのハチは、状態異常になる属性が盛り沢山って感じか。でも『魔力強化』も『魔法耐性』もどっちの特性も得られていないから、魔法としては少し質は下がりそうだ。その分だけ状態異常に特化した感じだから、更に凶悪な状態異常が期待出来そうだね。


「それでウニの方が『傀儡硬棘小ウニ』の、傀儡硬棘小種。属性は無し、特性は『傀儡』『堅牢』『伸縮』『小型』だね」

「……ウニは大して強くはなってないかな?」

「まぁLv30になって出てきた進化先にしたからね。これでも攻撃は今までのハチよりも相当高いから、充分だよ」

「ヨッシの本領は状態異常だから、それで良いのです!」

「……なぁ、ヨッシさん。ちょっと質問なんだけど、ハチとウニの両方に伸縮があるってどうなんだ?」

「うーん、それは私も気になったとこなんだけど、使ってみないとなんともね?」

「あー、それは確かにそうだよなー」


 そもそもアシナガバチっぽい感じの小さなイカの触腕が増えたの自体がついさっきだから、その運用方法はこれから考えていくとこか。でもまぁ、使い方次第では面白そうではあるよな。

 支配進化なら俺のロブスターが魔法砲撃にしたコケの魔法をハサミから撃ち出せるみたいに、傀儡にしてる相手の部位を攻撃の指定に使えるようになる。ウニの物理の攻撃のステータスも活きてくるから、物理毒の使い勝手が上がるはず!


「さてと、これでとりあえず私は終わりだね。次はアルさん!」

「おうよっと!」

「アルは……木の根が思いっきり変わったよなー。何そのマングローブみたいな根?」

「俺もそこは想定外だから驚いてるとこだよ! さっきも言ったけど、水の昇華と海水の昇華を両方持ってるからだと思うぜ?」

「その辺は情報が欲しいとこだよなー」


 アルの木のマングローブっぽい根は淡水と海水が混ざってる汽水に関係していそうではあるもんな。うん、まぁこれはこれで便利そうだから良いけど。


「とりあえず木の方からいくぞ。木は『支配拠点柑橘』で、支配拠点種だ。属性は『樹』と『水』、特性は『移動』『拠点』『果実』『汽水』『魔力強化』だな」

「おいこら、思いっきりそのマングローブっぽい根はその『汽水』って特性が理由じゃん!?」

「まぁそうだろうな。この『汽水』の特性を得るのが水の昇華と海水の昇華が必須なんだろうよ。確定ではないけどな」

「大体予想が出来てるなら、分かってないような紛らしい言い方すんなー!?」

「おー、期待してた反応通りだな」

「……完全にからかわれてんな、ケイさん」


 くっそ、完全にアルに遊ばれてしまってんじゃん! ふぅ、落ち着け。これ以上の反応をしたらアルの思い通りだし、冷静に流していこう。そもそも明確にあれだけの見た目の変化があったんだから、新たな特性を得ている可能性は考えておくべきだった。


「えーと、とりあえずアルの木は完全に魔法型になったって事で良いのかな?」

「おう、まぁそうなるな。どうも海水で海属性ってのはないみたいだが……」

「海水は特殊な立ち位置みたいだし、そこは仕方ないんじゃない?」

「ま、特に気にしちゃいねぇから問題はねぇな。さて、クジラの方は『傀儡多彩突打クジラ』で、傀儡多彩種だ。特性は『傀儡』『強靭』『突撃』『打撃』『堅牢』だな」

「おぉ、私と同じ多彩系の物理型なのさー!」

「でも、特に新しい特性はないっぽいな?」

「ハーレさんより、1ランク下の多彩系だからな。ま、それでもかなりの強化にはなってるぜ」

「だろうなー!」


 アルの本体はあくまでも木の方だけど、クジラで突撃と打撃の攻撃が出来るなら相当便利になりそうだ。場合によってはクジラを小型化して……って、あれ? 今まで俺は片方がコケだったから気にした事はなかったけど、この状態で個別に小型化って出来るのか?


「……アル、その状態で小型化するとどうなるんだ?」

「ん? そりゃクジラだけが……いや、場合によっては木の小型化も出来るのか?」

「はっ!? 盆栽みたいな小さな松の木がいたから、そう出来る可能性もあるのです!」

「あ、それって両方に小型化を使ったらどうなるのかな?」

「小型化の重複発動って事? 出来そうな気もするけど、それって行動値の処理はどうなるんだろ?」

「ほう? それは俺も知らんから、興味深いな」

「……よし、少し試してみるか」

「アル、頼んだ!」


 多分ヨッシさんも同じ事が出来るとは思うけど、今はアルの順番だからアルに試してもらおう。これって成熟体じゃないと出来ない事じゃないから既にまとめにありそうな気もするけど、試す方が早い!


「それじゃやってみるぞ。『小型化』! ……へぇ、こうなるのか」


 小型化自体は発動したみたいだけど、木もクジラも小さくなってないのはどういう事だ? というか、小型化をするのに待機状態なんてあったっけ? 俺が今まで使った大型化では特にそんなのはなかったはず。


「アル、どうなった?」

「あー、とりあえず実物の1つを見せてみるか。おらよ!」

「わっ!? クジラと木が一緒に小型化したのです!?」

「こんな風になるのかな!?」

「……これは予想外だね」

「……確かになー」


 とりあえず結果としてはクジラと木の形は変わらずに、ただ小さくなっただけである。木が今までクジラを小型化してたサイズに合わせたサイズに変わった感じか。へぇ、支配進化で両方に小型化の効果がある場合ってこんな風になるんだ。

 実物の1つを見せると言っていたし、この形態だけではないっぽい気がする。いや、なんとなくの予想はついてるけど、ここはしっかりと確認しておかないとね。


「アル、それって具体的にどういう仕様になってるんだ?」

「これ、クジラと木とその両方を小型化する対象の使い分けが出来るぞ。行動値の使用量はどれでも変わらんらしい」

「やっぱりそうきたか! 良いじゃん、それ!」

「まとめに情報がありそうな気もするので、少し確認してきます!」

「おう、ハーレさん、頼むわ!」


 ふむふむ、手早くハーレさんが確認しに行ってくれたけど、まとめの情報にどう記載されいるかが気になるね。


「ヨッシも同じ事ような事は出来るのかな?」

「一応、ハチで大型化は持ってるからやってみよっか。『大型化』! あ、ハチもウニも両方とも大型化が出来るし、片方だけも出来るね。これ、こうするのが良いかも?」

「あ、ウニだけ大きくするって事も出来るのか」

「へぇ、これはまたヨッシさんの方も出来る事の幅が広がるんじゃねぇか?」

「あはは、まぁ行動値の使用量が多いから使い所には要注意だけどね」

「まぁそうだよなー」


 今回の進化で一気に行動値の上限値が20も増えたけど、大型化も小型化も最大値の半分を使用するんだからむしろ消費量は増えているもんな。でもまぁ使い所さえ間違えなければ、有用なのは間違いない。


「一度解除してからもう一度『小型化』! このパターンは……あー、微妙だな」

「クジラの背中に、苗木が植わってる感じだなー。意味なくね、それ?」

「木だけを小型化するメリットは薄いか。クジラだけを小型化するパターンはこれまで通りってとこだな」

「そうみたいなのさー! あ、まとめの情報を確認してきたのです!」

「内容はどうだったかな?」

「同時に大型化や小型化をするのは使いにくいという意見が多くて、有用ではあるけど使う人を選ぶという判定になっていました! 使うならPTではなく、ソロ推奨だそうです!」

「ま、それはそうだろうな」

「確かにPTでは使いにくいかー」


 使い方次第では緊急回避とか押さえ込みとかに使えたりはするけど、それをPTで戦ってる時に同時に2キャラで使いつつ連携を取るのは難しそうではある。でも上手くそれを使えたら、良い手段にはなりそうな予感。


「あ、そうか! アル、さっきの木の小型化は意外と使えるかもしれないぞ?」

「何? ケイ、何を思いついた?」

「ほら、アルって木を背負った空飛ぶクジラってイメージが強いじゃん? そこで木だけ小型化して、サヤが目の前に立ってたらどうよ?」

「……なるほど、俺だと認識されにくくなる訳か。確かにそれはありだな」

「おぉ!? 偽装作戦なのです!」

「この後の囮の時に、機会があったら試してみよう! 両方の小型化で地面に降りたり、通常通りにする交互にやっていったら他の群集を混乱させられるかもしれない」

「……相変わらず厄介な事を思いつくもんだな。だが、その案は乗ったぞ、ケイ!」

「そうこなくっちゃな!」


 ふっふっふ、ここで空飛ぶクジラの中でも木を背負っていて目立つアルの特徴を逆に利用出来そうだ。アルの支配進化でこういう手段が可能になるのは想像してなかったけど、これは上手くいけば有利に立ち回れるかも?


「さて、そろそろ俺の番は良いだろ。ケイの番だぞ」

「あ、それもそうだった」


 思い付きでちょっと脱線してしまったけど、今はみんなの進化後の確認中だったもんな。さて、それじゃサクッと話していこうっと。


「俺のコケは『同調激魔ゴケ』の同調激魔種で、属性は『水』『土』、特性は『複合適応』『同調』『魔力強化』『魔法耐性』『属性強化』になったぞ」

「おぉ!? ケイさんにも知らない特性が増えているのです!」

「『属性強化』って事は、名前の通り持ってる属性を強化するのか?」

「多分なー。流石に持ってない属性までは強化されないだろ」

「そりゃそうだな。それにしてもケイのコケは相当魔法には強くなってないか?」

「『魔法耐性』もあるし、ケイさんに魔法でダメージは与えにくそうだよね」

「自分で言うのもあれだけど、それは思う」

「あはは、まぁ魔法はケイを頼りにしてるかな!」

「そういうサヤこそ、近接物理は頼りにしてるぞ!」

「うん、そこは任せてかな!」


 俺もサヤもロブスターと竜で色々と補ってはいるけども、お互いに勝てない部分はあるからね。サヤだけじゃなく、ハーレさんにもヨッシさんにもアルにもそれぞれに違った役割があるし、PTとしての総合力は結構高まってるはず。

 そういう面で考えると地味に足りてないのは火属性なんだよなー。うーん、この状況で火属性を補うとすれば3rdを用意して臨機応変に切り替えるか、サヤの竜かハーレさんのクラゲで鍛えてもらう? ……うん、まぁその辺りは追々考えよう。


「それでロブスターの方は『同調激強ロブスター』の同調激強種、属性はなし、特性は『打撃』『斬撃』『強靭』『堅牢』『同調』だな」

「特に目新しいものはなかったのさー!」

「まぁサヤやハーレさんよりはランクが落ちる進化だったしな。でも、同調で使うならこれで充分な程だぞ? 一番高いステータスの攻撃はコケの魔力と……」


 って、あれ? 進化条件の達成具合によって上位と下位があるのに、一番秀でているステータスが同じくらい? 今の今までステータスに差があるのかと思ってたけど、そうじゃなさそうな気がしてきた。


「ケイ、どうした?」

「いや、ちょっと進化で思った事があった。条件が厳しい方の進化先の方が特性の種類が増えたり、変化してる?」

「あ、それは私も思ってたかな!」

「そう言われるとそんな気がするね? あ、でも進化前のステータスは覚えてないかも?」

「ちょっと待っててー! 進化前のステータスはスクショを撮っておいたので、見比べてみます!」

「お、ハーレさん、ナイス!」


 進化前のステータスの値を正確に覚えてなかったから、感覚的に結構伸びたなーとは思ってた。だけど、進化の上位と下位でのステータスの上昇幅の差は気になるところ。進化階位が上がらない進化をすれば多少のステータスの増加はあったはずだけど、同じ進化階位が上がる進化同士で比べてみた事はないもんな。

 まぁ俺の場合はロブスターを低Lvで強制進化させて、その後に同調への進化を発生させてるから、比較しようにも出来なかったともいう!


「おぉ! リスもクラゲも、ステータスの合計の上昇量は一緒なのです! どっちも200上がってるのさー! そしてリスはHPが多めに増えて、クラゲは魔力値が多めに増えているのです!」

「あ、やっぱり同じなのか。という事は、上位の進化では特性が増えるんだな」

「今、まとめの方を見てきたがそれで間違いなさそうだ。進化の特徴に合わせて、それを更に強化する特性が増えるらしい」

「……それって逆に言えば、後から『特性付与の水』で補えるようになってるの?」

「あ、それはありそうかな!」

「確かにその可能性はあるかもなー」


 進化階位が上がる進化の回数は少ないから、そこで取り返しのつかない要素は入れてこないはず。『特性付与の水』という専用アイテムがあるんだし、条件に届かなくても後からどうにか出来るようにはなってそうだよな。


「まぁ、その辺は今考えても仕方ないかな?」

「確かにな。さて、それじゃ俺らの共同体の全員分は終わったから、次は羅刹だな」

「おうよ。それが済んだら、ジャングルへ向かうぞ」

「もちろんそのつもり!」


 その為にこうやってお互いの進化後の変化を確認してきたんだしね。実際、色々と変化もあって収穫はあった訳だし、やっておいて正解だったはず。


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