第1022話 成熟体での変化 前編


 少しロブスターのハサミのゴツさが薄れてスマートになって、全体的に一回りくらい大きくなった感じで進化は完了。コケは……まぁこれまで色以外に目立った変化は無いから、そういうもんだと割り切ろう!

 コケの方は変に見た目が変わったら、その辺のコケを群体化した時にバレバレになりから、これで良いのさ。……正直、少し残念な気もしてるけど!


「とりあえずこれで全員の進化は終了! 手早く進化後の内容を確認していくぞー!」

「「「「おー!」」」」


 見た目の確認は簡単にしたというか、まぁ見たままだったから見て思った通りに言っただけではあるけどね。さて、進化してどれだけ強くなったのか……。


「あ、その前に共生進化に戻した時にちょっと称号とスキルが手に入ったから、その辺を伝えておくかな!」

「え、そんなのあったの?」

「確かにそれがあったのさー! 称号は『共生を選び続けるモノ』だったのです!」

「それでスキルは『共生情報』だったかな」

「あぁ、それは共生進化の相手のステータスやスキルの取得が出来るようになるってやつだな。確か『共生を続けるモノ』の称号を持った上で、成熟体になってから共生進化にしたら手に入るって話だぞ」

「おー、そんなのがあったのか」


 アルが説明してくれたけど、共生進化を続けていく事によってそういう利便性は向上していくんだな。これでログインを切り替えなくても、共生相手の内容が把握しやすくなる訳だ。

 そういえば単独での進化でも未成体の時にステータスが強化されるスキルで『孤高強化Ⅰ』が手に入るんだっけ? 支配進化でもその派生の同調でも強化用のスキルはあったし、手に入るタイミングこそ違っても、成熟体からも何かしらそれぞれの進化で固有の強化がありそうな……って、あれ? 


「……そういえば、融合進化や合成進化の場合って固有の強化って何?」

「ケイ、いくらなんでもそれは今更過ぎないか? 普通にそれはあるぞ」

「確か合成進化は単独進化と同じ扱いになって『孤高強化Ⅰ』になるはずなのさー!」

「融合進化の場合は、固有スキルの統合や改変がそれに該当するみたいだよ」

「あ、どっちも既に知ってたやつじゃん」

「だから、特に気にしてなかったかな?」

「なるほどなー」


 うん、どれがどれに対応してたのかを把握してなかっただけで、存在自体は既に知ってたっぽい。合成進化が単独進化と同じ扱いなのが少し腑に落ちないけど……根本的に片方の種族は合成素材として扱われるからなのかも? あぁ、単純にアイテムとの合成もあるからその辺も関係してそう。


「……悪いんだが、脱線は程々にして進化後の確認を頼む」

「そりゃそうだ!? 羅刹、すまん!」

「俺も一緒に動く都合上、ケイさん達の進化後の特徴は知っておきたいから頼むぜ?」

「だよなー!」


 この後、ベスタからの依頼で羅刹と共に新エリアのジャングルへと囮を兼ねて進出するんだ。ここでしっかりと全員の進化後の変化を確認しておくべき! てか、人のを気にする前に、まずは自分のを確認しようっと。まずはコケの方から!


【ステータス】


 名前:ケイ

 種族:同調激魔ゴケ

 所属:灰の群集


 レベル 1

 進化階位:成熟体・同調激魔種

 属性:水、土

 特性:複合適応、同調、魔力強化、魔法耐性、属性強化


 群体数 460/9400

 魔力値 234/274

 行動値 87/107


 攻撃 99

 防御 173

 俊敏 126

 知識 284

 器用 324

 魔力 415


 

 えーと、進化階位が上がった時にLvが1になるのはいつもの事だよな。属性に変化はないけど、特性に『魔法耐性』と『属性強化』の2つが増えてる。『魔法耐性』は見覚えがあるけど、『属性強化』は初めて見る特性だね。

 うーん、特性って地味に具体的な説明はないから結構想像で効果を把握するしかないんだよな。ある程度傾向が分かればまとめに整理されてたりはするけど、そこを見ておく? 名前的に持ってる属性の強化っぽい気もするし、とりあえず今はそういう認識で良いか。


 それにしてもステータスはかなり上がってるね。特に魔力が400を超えてるのが凄い。逆に攻撃が100にも届いてなくて貧弱過ぎるけど、ここは支配進化からの同調で補える部分だから別に良いや。

 ステータスの強化幅も良いんだけど、魔力値が40、行動値が20も増えているのは相当ありがたいな! ふっふっふ、やはり進化での強化は凄まじい!


 みんなも自分のを確認していて無言だし、このままロブスターの方も確認していこうっと。てか、コケは魔法型に相当偏ってるから、同調じゃなければ近接が出来るようなステータスじゃないな。それはロブスター側にも言えるだろうけど、こっちはどんな風になってるかが楽しみだね。


【ステータス】


 名前:ケイ2nd

 種族:同調激強ロブスター

 所属:灰の群集


 レベル 1

 進化階位:成熟体・同調激強種

 属性:なし

 特性:打撃、斬撃、強靭、堅牢、同調


 HP 10050/12050

 魔力値 110/130

 行動値 77/97


 攻撃 414

 防御 376

 俊敏 318

 知識 94

 器用 123

 魔力 66



 ふむふむ、ロブスターはHPがかなり増えて、魔力値は程々の増加、行動値の増加量はコケと同じか。まぁロブスターの魔力値も行動値も使わないから、ここはどうでもいいや。

 それにしてもロブスターは攻撃が400超えって地味に凄いなー。防御も300後半だから、こっちも中々良い数値。知識や魔力が低いのは……まぁ仕方ない。ここはコケで補えるしね。……片方がやられたらどうしようもなくなる同調だけど、ステータスの良いとこ取りはやっぱり凄い。


 そして地味に特性に強靭が増えている。多彩の進化先を選んで近接攻撃を色々使えるようにしたのが影響して、新たな特性を得たっぽい? 堅牢が無くなる可能性もありそうな気はしてたけど、そのまま残ってくれてるのもありがたいね。


「さてと、それじゃ1人ずつ進化後の変化を報告していくか」

「「「「おー!」」」」

「それが終わったら、俺の方も話しておくか」

「お、そうしてくれると助かる!」


 一緒に行動する以上は、羅刹の特性や属性は知っておきたいもんな。まぁ無属性の近接物理ってのは大体分かるんだけど、それ以上は詳細は分からないしさ。


「それじゃ誰からいく?」

「はい! 私からいくのです!」

「それじゃハーレさんからな」


 他のみんなは異論も無いようで頷いているし、ここはハーレさんの進化情報から聞いていこうっと。まぁ大体の進化の方向性はみんな把握してるから、特性や属性の追加があるかどうかが重要なところ。


「リスは『多彩豪投リス』に進化して、多彩豪投種になったのさー! 属性は無しのままで、特性が『投擲』『採集』『豪腕』『強靭』『射程延長』なのです!」

「え、『射程延長』って特性があるのかな!?」

「初めて見たけど、あったのさー! とりあえずクラゲの方もいくねー!」

「ほいよっと」


 ハーレさんのリスに『強靭』と『射程延長』の特性が増えたのはびっくりだけど、これは遠距離物理攻撃としてかなり強化されそうな予感。


「クラゲは『魔風帽クラゲ』で、強風伸縮種なのさー! 属性は『風』で、特性は『浮遊』『伸縮』『陸地適応』『魔力強化』なのです!」

「お、クラゲの方に『魔力強化』の特性か。そりゃいいな」

「ふっふっふ、アルさん、そうなのです! それほど劇的に強い魔法型って感じじゃないけど、補助として使うなら充分なのさー!」


 ご機嫌な様子のハーレさんだけど、まぁ実際にメインで使うんじゃなければそこまで重要でもないか。リスが完全に物理型の構成なのは変わらず魔法には弱いけど、いざという時はクラゲの風魔法で防御も出来るんだしね。


「割とハーレに近い感じだから、次は私でもいいかな?」

「それじゃ次はサヤだな」


 サヤは……そういやハーレさんと同じで多彩系の進化先だったはず。爪刃双閃舞と連閃がLv3に……あれ、いつなってたっけ? 進化先を確定してたんだから上がってたのは間違いないんだろうけど、いつ上がったのかを覚えてないや。

 って、その場合だと進化先は多彩系になるのか? ちょい待った、冗談抜きでサヤのクマの進化先って何になってるんだ?


「私のクマは『連強魔鋭爪グマ』で、連撃魔鋭爪種。属性はなし、特性は『斬撃』『打撃』『強靭』『鋭爪』『連撃強化』かな」

「サヤは多彩じゃなかったのです!?」

「多彩の方も出てたけど、連撃の上位が出てたからこっちにしちゃったかな。ほら、アルのクジラや、ハーレの投擲でチャージはあるし、ケイは溜めのある応用魔法スキルを取りそうだから、連撃の方がいいかなって思ってね?」

「そう言われたらその方がいいかも?」

「なるほど、俺やケイやハーレさんの攻撃の時間稼ぎも兼ねてるんだな」

「あー、そういう理由でかー」


 俺らのPTで1番前衛をやっているサヤだからこそ、全体的な強化よりもPTでの戦闘に向いている方の進化先を選んだって事か。サヤ自身も連撃の方が使用頻度も高いという理由もありそうではある。うん、この辺はサヤの気遣いに感謝しておくとして……。


「前々から思ってたんだけど、魔法要素がないのに『魔』が付いてるのってなんでだ?」

「えっと、多分だけどこの可変式の外骨格化したこの爪が『魔爪』なんじゃないかな? あ、今回は『魔鋭爪』だけど」

「あー、そういう解釈になるのか」


 確かに可変式でかつ、腕の中に格納可能な外骨格化している爪はどう考えても普通の爪ではない。なるほど、これが『魔爪』と考えれば違和感もないか。


「ただ、地味に『硬爪』が『鋭爪』に変わってるから、そこの影響が気になるかな?」

「……何がどう違うんだ?」

「うーん、少し外骨格の爪の幅が薄くなってるかな? 強度が落ちる代わりに鋭さが増す?」

「あぁ、その解釈で合ってるぜ、サヤさん。鋭さが増す代わりにこれまで折れなかった爪が、折れる可能性が出てくるのが『鋭爪』って特性だ。時間経過で修復はされるが、爪の破損には気を付けろよ」

「あ、そうなんだ。羅刹さん、ありがとうかな!」

「なに、今回は味方だからな」


 ほほう、ここで羅刹から新しく出てきた特性の説明をしてもらえるとは思わなかった。というか、羅刹のティラノの大きさがかなり違っているからそれほど気にしてなかったけど、よく見たら割合的にはティラノの爪も細めな気がする?


「羅刹も特性で『鋭爪』を持ってたりする?」

「まぁそういう事になるが、その辺は後でまとめて説明をする」

「それもそだなー。それじゃサヤ、竜の方をよろしく!」

「うん、分かったかな!」


 もう1つの新しい特性の『連撃強化』は、どう考えても名前のままの効果だろうから特に気にしなくていいだろ。その名前で連撃系スキルの威力強化以外の効果だったらびっくりするよ。


「竜の方は『小雷竜』で、小竜種かな。属性は『雷』で、特性は『飛行』『魔力強化』『魔法耐性』『小型』になって……地味に風属性が無くなったかな」

「あっ! そういえばサヤの竜って風属性も持ってたっけ!?」

「ケイ、忘れてたのかな!?」

「……正直、今の今まで忘れてました」

「正直に言えば私もです!」

「……あはは、私もだね」

「俺も忘れてたから、全員が忘れてたのか……」

「……まぁ私自身も風属性の維持は完全に頭から抜け落ちてたから、何とも言えないかな」


 まさかのサヤ自身も風属性の事を失念していたっぽい! まぁ風属性はハーレさんがクラゲで必死に鍛えてたとこだし、それを考えたら忘れてしまっていても仕方ないか。ぶっちゃけ、近接で戦うサヤの補助役として使う魔法なら風魔法より電気魔法の方が便利そうではあるしね。

 というか、成熟体へと進化した時に魔法型になっていたら『魔力強化』か『魔法耐性』は手に入る感じ? この2つのどちらも持ってなければバランス型とか、そういう目安になりそうな気もする。


「サヤの件で分かったが、進化の状況次第で属性は無くなるんだな」

「特性も変化するのがあるっぽいなー」

「うん、そうみたいかな!」

「でももし必要になれば、後から追加すればいいのです!」

「それもそうだけど、成熟体で属性を追加するのって『進化の軌石』との合成でいいの?」

「あー、ヨッシさん、それは今は不明だ。成熟体で『進化の軌石』との合成進化で成功した例は聞いた事がない。……まぁ情報を見たのは結構前だから今はどうなってるかは分からないが、『属性付与の水』の使用が推奨されてたはずだ」

「え、アルさん、そうなの?」

「マジか!?」


 成長体では『進化の軌石』を1個、未成体では『進化の軌石』を2個で合成進化すれば属性は得られたはずだけど、成熟体からはそのルールが通用しなくなってる? あ、もしかしてそういう部分があるから『属性付与の水』っていう別のアイテムが存在してるのか?


「アル、成熟体用の『進化の軌跡』……あ、使い捨てのやつの方な。あれって存在はどうなってる?」

「……そういやその手の話は聞いた覚えがないな? 成熟体で纏属進化は出来るのか? いや、成熟体での纏浄と纏瘴は見た覚えがあるぞ」

「羅刹さん、その辺は何か知らないかな?」

「……ふむ、俺もその辺はよく知らんな。未成体用の小結晶を、成熟体用の何かに変換する必要がありそうな気はするが……」

「今のところは詳細不明なとこかー」

「あはは、まぁ成熟体からの事は色々と謎が多いんだね」

「そうみたいだなー。まぁそういう事なら検証のやり甲斐もあるってもんだ!」

「それでこそ、ケイさんなのさー!」


 正直テスト期間でいない内に調べ尽くされてしまって後追いだけになるかとも思ってたけど、こういう状況ならまだまだ新発見の余地はありそうだ。まぁ3rdの育成に手を出す余裕は当分なさそうだけど、それでも成熟体に進化を果たした今なら出来る事も増えたはず!


「さて、次は俺とケイとヨッシさんの誰がいく?」

「あ、私でいい?」

「いいけど、なんか進化した順番になってない?」

「それならヨッシの次はアルさんで、ケイさんは最後にするのです!」

「俺はそれでもいいが、ケイはどうだ?」

「俺も別にそれでいいぞー。その後に羅刹の今の戦闘スタイルの確認だな!」

「あぁ、それで構わん」

「それじゃ、その順番で決定かな!」


 という事で、それぞれの進化先の確認の順番も完全に決まったから、続きを確認していこう! ……思った以上にちょっと時間がかかってるけど、この辺を把握しておかないとPTで戦うのに支障が出ても困るからね。

 サヤが連撃系を強化する進化をしてるとは思ってなかったし、その辺の確認は大事! アルとヨッシさんは支配進化になったんだし、戦闘方法が少なからず変わってくるから余計に大事だよな。

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