第1006話 湖畔で合流


 もう少しすればサヤとハーレさんもログインするから、今はそれまで湖畔でまったりと待機。ふむふむ、よく見たら全く人がいないって訳じゃなくて、湖の中に入っていく人もそこそこいるね。ボーナス期間が始まるまで、他でLv上げをしておきたい人達なんだろうな。

 さてと、ただボーッとネス湖を眺めてても仕方ないし待ってる間に何かして……お、ネス湖にある小島の中から西洋系の龍が飛び立ったね。


「今の西洋系のドラゴンって、ここのもう1体のフィールドボスだよね?」

「多分そうだろうなー」


 ネス湖での自然発生のフィールドボスは首長竜と樹属性の龍の2体だったはず。何気にこの樹属性の龍って湖底森の存在を示唆してたりしてたんだろうか? うーん、その辺はなんとも言えない気がする。

 それにしてもこの星空の下を飛ぶ龍って、なんか神秘的なとこがあるね。贅沢を言えばもっと大きい方が……あー、そうでもないか? イメージ的に大きそうな龍な感じはあるけど実際はそこまで大きくないから、星空の雄大さを強調してるような気がする。


「これ、ハーレさんが絶対にスクショを撮りたがるやつだよなー」

「あはは、確かにそうかも。うん、ハーレなら絶対に撮りたがるよね」

「撮るだけ撮っとくかー!」

「ハーレがログインした時にまだいるとも限らないし、そうしとこっか」


 という事で、雄大な天の川の下で飛ぶ龍のスクショを撮っておこう。これってスクショのコンテストの対象だったら、結構レアな光景な気がする。……よし、撮れた。まぁ良いスクショが撮れたもんだな。


「ねぇ、ケイさん。ちょっとリアル絡みの事で質問して良い?」

「ん? まぁ内容にもよるけど、別にいいぞ」

「それじゃ聞かせてもらうね。ハーレは3月生まれだけど、ケイさんって誕生日はいつなの? 1学年しか違わないから、少し気になっててさ」

「あー、それか。俺は4月生まれだから学年的には1年差だけど、ほぼ2歳差にはなるなー」

「あ、そうなんだ。……ケイさんはもう誕生日、過ぎてたんだね」

「まぁなー。そういうヨッシさんは何月生まれ?」

「私は7月26日だよ。夏休みにハーレが遊びに来る件って、実はその辺もあるんだよね」

「あー、なるほど。てか、夏休みになって割とすぐなんだな」


 ふむふむ、ハーレさんとしてはサヤとヨッシさんのとこに遊びに行くのは誕生日祝いもしたいってとこなのか。あー、その辺もあって父さんからの資金的な支援じゃなく、自力でのアルバイトを選んだのかもしれないな。


「てか、それだともうハーレさんがいつ遊びに行くのか、日程は決まってる感じ?」

「テストが終わるのを待ってたから、これから調整するところ。まぁサヤの家が広いから、私とハーレを泊めてもらえるようにはなってるんだけどね。ちなみに、サヤもハーレも夜は普通にゲームもするつもりだよ」

「って事は、ハーレさんはVR機器まで持っていく気かい! あ、いや数日ならレンタルでもいけるか?」


 フルダイブの認証に必要な個人データを、ちゃんと旅行での移動の申請さえしておけば一時的なレンタル機器でも使用は出来る。俺は使った事がないけど、急な故障とか、仕事の出張とかでは使う人もいるという話。……決して安くはないし、本当に急ぎでない限りは修理を待った方が良いくらいだけど。


「あはは、そこはサヤのお古をね?」

「私がどうかしたのかな?」

「お、サヤもログインしたか」

「こんにちはかな、ケイ。ヨッシ、私のお古って事は夏休みに泊まりに来る件の話かな?」

「うん、その話。普通に夜はいつも通りにゲームもやるなら、その辺は話しておいた方がいいかなって思ってね」

「まぁそれはそうかな?」


 ふむ、この感じだとまだ具体的な計画が立て終わってない感じか。まぁテストが終わるのを待ってたって言ってたし、ハーレさんが赤点を取ってたら追試やら補講やらでヨッシさんの誕生日に合わせるのは厳しかっただろうしなー。

 その辺が問題ないのは今日のテストの返却で確定したから、本格的に予定の話が進められるようになったってとこか。そりゃテスト勉強も頑張ってたはずだよ。


「それで、サヤのお古ってどういう事なんだ?」

「あ、それは春にVR機器を入学祝いで新しいのをもらって、その前に使ってたのがあるんだよね。私の認証データはもう今のに移行済みだから、ゲスト認証で数日くらいならハーレが使っても大丈夫かな」

「あー、なるほど」


 というか、そういう環境が揃ってるからこそサヤの家から揃って一緒にゲームをやろうとしてるような気もする? てか、旅行に行ってまでゲームをしなくても良い気もするけど……。


「ケイ、昼間は精一杯リアル側で遊ぶから、その辺は問題ないかな!」

「私としてはハーレがはしゃぎ過ぎて疲れ果てて、結局ゲームにはならないって予想はしてるんだけどね」

「それはありそうだなー」


 まぁ3人が納得していて、その上でゲームもやろうって計画なら余計なお世話かもなー。なんだかんだでサヤとヨッシさんとハーレさんの縁を繋いだのがこのゲームなんだし、昼間は盛大にリアルで遊んで、夜は一緒にゲームをやろうっていうのも悪くはないか。


「ふっふっふ、その時にはケイさんに思いっきり楽しんだ話をするのです! 特に料理関係!」

「……それが狙いか、ハーレさん!?」

「細かい日程はこれから詰めていくのです! あ、ケイさん、アイスはありがとなのさー!」

「どういたしましてっと。ま、金は母さんから出てるけどな」


 いつの間にやらハーレさんもログインしてきたし、これでこの時間帯は全員集合っと。さてと、それじゃ進化への仕上げの為の特訓開始といきますか!


「あー、とりあえずPTを組むか」


 という事で、みんなにPTの申請を送っておこう。


<ケイ様の率いるPTが結成されました>

<ハーレ様がPTに加入しました>

<サヤ様がPTに加入しました>


 よし、これでPTについては問題無しっと。さて、特訓をするとして、どこでやるのが――


「おぉ!? この景色は凄いのです!」

「わぁ! ホントかな!」

「って、サヤもハーレさんも今反応するのか!?」


 ちょい待って、既に見終わった後で話しかけてきたのかと思ったけど、サヤもハーレさんも星空を見る前に話しかけてきてたっぽい? あー、でも目の前で話してたらそっちが優先にはなるか。


「さっきは西洋系のドラゴンが飛んでたんだけど……あ、もう見えなくなってるね」

「ここでそれは、フィールドボスのあれですか!?」

「うん、そうだよ。スクショを撮っておいたけど、見る?」

「それは是非とも見たいです!」

「私も見たいかな!」

「はい、これで見れるよね?」

「おぉ!? これは凄いのです!」

「なんというか雄大で神秘的かな!」


 おー、サヤもハーレさんもヨッシさんが撮ったスクショを見て盛り上がってますなー。まぁあの光景は、そういう反応になる気持ちはよく分かる。


「あぅ……これは自分で撮りたかったのです……」

「ケイ、ヨッシ、もう龍はいないのかな?」

「あー、どうだろな? ヨッシさんと話してて、途中から見てなかったからどうなったか分からん」

「他にもチラホラと人はいるから、気付かない間に倒された可能性もあるね」


 これといった戦闘音は聞こえてなかったけど、必ずしも音がするような攻撃ばっかじゃないしなー。むしろ、ここまで聴こえるほどの盛大な音が出るスキルの方が少ないか。


「そういやさっきヨッシさんから誕生日を聞いたけど、サヤの誕生日っていつなんだ?」

「あ、そっか。ハーレが泊まりに来る話をしてたならそういう話題にもなるよね。えっと、私は9月16日だけど、ケイはいつなのかな?」

「俺は4月25日だぞ」

「あ、既に過ぎてたかな……」

「ちなみに私は3月3日で、ひな祭りなのです!」

「「「もう知ってる」」」

「みんなの声が見事に揃ったのさー!?」


 まぁここにいる全員と繋がりがあるハーレさんの誕生日については、そりゃこうなるよな。しかもハーレさんの誕生日はひな祭りと被ってるから、滅茶苦茶覚えやすいっていうね。


「夜にアルがログインしたら、アルにも誕生日を聞いてみるか」

「おー! 賛成なのさー!」

「アルは教えてくれるかな?」

「その辺はどうだろ? 聞いてみないと分からないよね」

「まぁ断られたら、その時はきっぱり諦めるって事で!」


 みんなもそれで同意のようで頷いてくれている。まぁ誕生日を聞くくらいなら普通に教えてくれそうではあるけど、それでも個人情報でもあるもんな。もしアルに断られた場合に無理に聞き出すのは無しだね。


「さて、それじゃ特訓をするとして――」

「あー!?」


 今日の夕方からの緊急クエストの事前調査も含めて今の段階から干潟に行くか、それともしばらくここで特訓するかを聞こうと思ったのに、ハーレさんに思いっきり遮られたよ。……今度は何事だ?


「あ、また龍が……って、あれは違うぞ!?」

「……無所属の黒い龍の人かな!」

「昨日、湖底森で見た人?」

「そんな気がするけど、それは良いのさー! 絶好のスクショのチャンスなのです!」


 あ、滞空してたかと思ったら、一気にネス湖の中に飛び込んで盛大に水飛沫が上がった。おぉ、なんか水飛沫に星空の明かりが映り込んでて、龍の人が黒い事もあってより映えて見える。


「ふっふっふ、良いスクショが撮れたのです! これ、承諾がきたら嬉しいのさー!」

「承諾してくれたらいいけどね?」

「……無所属の人だから、そこはなんとも言えないかな」

「だよなー」


 てか、昨日も今日も唐突な出現だったから名前を見そびれたなー。うーん、今の無所属の人の名前は確認しておきたかった。


「……ふと思ったけど、無所属の人って競争クエストの時はどうなるんだ?」

「そういえばどうなるのかな?」

「それは全然分からないのです!?」

「何も無し……とも思えないよね?」

「……後で羅刹にでも連絡を取ってみるか」


 無所属の事については無所属の人に聞くのが1番だしね。まぁ必ずしも教えてくれるとは限らないし、そもそも今の時点で知っているとも限らないけど……。

 でも、ヨッシさんの言ってるように無所属だけ何も無しというのもない気がする。そもそも前の群集クエストの時には、無所属には増援クエストという別枠のクエストが用意されてたんだ。今回も何かがあると考えて動いた方が良いはず。


「あー、まぁ今考えても仕方ないし、とりあえず特訓の予定を考えていこう! ぶっちゃけ、特訓はどこでやる?」

「はい! もう干潟に向かって、早いうちにPTでの順番待ちを確保してから、色々やりながら特訓すれば良いと思います!」

「私もハーレに賛成かな。昨日との傾向の変化は確認しておきたいし、18時を10分くらいなら過ぎても大丈夫なように調整はしてきたかな」

「私も同じ調整はしてきたから、傾向の変化の確認はしていくつもりだよ」

「あー、そういう調整はしてきてくれたんだな」


 俺らは18時から戦闘をするつもりではないけど、他の人の様子を見て昨日との違いは確認しておきたいしね。多分干潟まで移動して辿り着いた頃で17時くらいだろうし、そこから色々とプレイヤー主催のイベントに混じりながら特訓というのもありか。

 俺としても昨日やってるのを見た操作系スキルでのバトルロイヤルは興味があるしなー。うん、そういうのにも参加しやすいように早めに移動してしまおう!


「……そういやネス湖を源泉にした川のエリアってアルと一緒に進出してないけど、その辺はどうする?」


 新エリアへの進出はみんなで行くという事にしてたけど、今回はどうなんだろ? 流石にテスト期間で俺らの不在中はその辺の制限は無くしてたから、既にアルはこの辺は踏破済みって可能性は十分ある。うーん、これは昨日のうちに確認しておくべきだったかも?


「アルさんと一緒に行くとなると、干潟に辿り着くのは20時近くにならない?」

「合流を待つ必要があるから、そうなるのさー!」

「アルがその辺を考えてないとは思えないし、大丈夫じゃないかな?」

「まぁよく考えたらそうなるかー」


 確かに昨日アルは別に何も言ってなかったし、むしろ干潟の変化を確認してくれとも頼まれているから問題はなさそうな気がする。

 てか、そもそも海沿いのエリアに関しては俺らから調べてもらうように頼んでたんだし、少なくとも今回目指す干潟は高確率で行ってるはず! 下調べを頼まれている以上、迷う余地はなしか。


「よし、それじゃ干潟に向かって川下りをしていきますか!」

「「「おー!」」」


 その為にはまずネス湖の北側にある滝の方へ向かっていこう。えーと、今のメンバーなら移動役は俺がするのが良さそうだな。川になってるならそのまま川下りをするとして、そこまでは飛んで移動にしようっと。


<行動値上限を2使用して『移動操作制御Ⅰ』を発動します>  行動値 87/87 → 85/85(上限値使用:2)


 とりあえず広めの水のカーペットを生成して……って、これの表面にも天の川が映り込んで不思議な光景になってるんだけど!? うわー、星空の上に乗るみたいな不思議な感じになりそう。


「おぉ!? 今日の星空は、色々と凄いのさー!」

「流石は七夕の特殊な演出かな!」

「こういう季節的な演出は嬉しいね」

「だなー!」


 折角だから、水のカーペットに乗る前にスクショを撮っとこ。うん、ハーレさんも地味にクラゲで浮かんで思う存分撮りまくってるしね。


「さて、とりあえず乗ってくれ!」

「お邪魔します」

「ケイ、よろしくかな」

「はーい! それで星空のカーペット、飛行開始なのさー!」

「ほいよっと!」


 星空のカーペットとはよく言ったもんだね。今の光景としてはしっくりとくる表現だよなー。

 こんな風に七夕で季節的な演出があるんなら、これから先も似たような事はあるかもなー! 多分今回の緊急クエスト自体もその一部な気もするし、その辺には今後も期待しておこうっと!

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