第1007話 ネス湖の滝


 さて、夕方のメンバーは全員揃ったから、夜からの経験値稼ぎの為に干潟への移動を開始! 今日の夜空は特別仕様だから、水のカーペットで移動してるけど凄い雰囲気だよな。とりあえずはネス湖が水源になってる川の方へ移動しようっと。


「今思ったんだけど、ネス湖自体はどこから水がきてるのー!?」

「流れ込んできてるんじゃないなら、湧き水じゃないかな?」

「もしくは地下水じゃね?」

「湖底のどこかに地下水が流れ込んできてる場所か、湧き出してる場所がありそうだね?」

「おぉ!? それはちょっと探してみたいのです!」

「成熟体に進化してから時間に余裕があったらそれも良いかもなー」


 流石に競争クエストがいつ始まってもおかしくない現状では、そういう完全な遊びだけの探索に時間は取りにくいけどね。探索自体に行くのは賛成だけど、いつ行くかはタイミングを見計らってからにしたい。


「そういや、今の群集クエストの進行具合ってどうなってる? てか、自分で見たいから少しだけ止まってもいい?」

「あ、うん、大丈夫かな!」

「サンキュー!」

 

 出発する前に確認しておけって話ではあるけど、思い至ったのが今なんだから仕方ない。まぁまだネス湖の上空だし、サクッと確認して再び出発すればいいだけだ。

 という事で、手早くクエスト欄から今の進捗状態を確認! 多分まだ経路確立にはなってないと思うけど、今の状況を確認しておきたい。



群集クエスト《群集拠点種の更なる強化・灰の群集》


【群集拠点種:エニシ(始まりの森林・灰の群集エリア1)】


 転移地点の確立 未達成

 経験値強化  94%


【群集拠点種:エン(始まりの森林深部・灰の群集エリア2)】


 転移地点の確立 未達成

 経験値強化  80%


【群集拠点種:ユカリ(始まりの草原・灰の群集エリア3)】


 転移地点の確立 未達成

 経験値強化  76%


【群集拠点種:キズナ(始まりの荒野・灰の群集エリア4)】


 転移地点の確立 未達成

 経験値強化  93%


【群集拠点種:ヨシミ(始まりの海原・灰の群集エリア5)】


 転移地点の確立 未達成

 経験値強化  84%



 ふむふむ、森林エリアと荒野エリアが90%超えになってるから、この2ヶ所のどっちかが1番最初に経路が確立されそうだね。


「荒野エリアが相当伸びてる気がするけど、これは昨日の忘れ者の岩場が関係してそうだなー。てか、森林深部は意外と低めか」

「森林深部の最寄りは、これから向かう干潟なのさー!」

「干潟はフーリエさんのLv上げにちょうど良かったみたいだし、群集拠点種に回るだけの経験値が少なかった感じかな?」

「多分だけど、そうだろうね」

「……どこの群集拠点種に最後に立ち寄るかが重要になるんだな」


 効率のいいエリアに行こうと思えば、最初はどうしても最寄りの群集拠点種に転移してからの移動になる。特定の群集拠点種に経験値を譲渡したいのであれば、登録済みの転移の種や実を活用していかないと駄目っぽいね。


「まぁその辺は夜にアルさんと合流してからでいいんじゃない? それまでにサヤとハーレは2ndの進化先の確定させなきゃね」

「頑張るかな!」

「そうなのさー!」

「だなー。それじゃ改めて出発!」

「「「おー!」」」


 という事で、止まっていた水のカーペット……いや、今日限定で星空のカーペット呼ばせてもらおう! 星空のカーペットで移動開始! とりあえずネス湖の北端の滝まで移動して、その先の川のあるあるエリアまで移動しよう。


「……ところで、成熟体の魔法型の進化条件って生成量増加のスキルと魔法Lv7だった気がするけど、状況的に達成可能なのか?」


 あんまり深く考えてなかったけど、よく考えたら俺のコケの魔法型への進化条件ってそうなってるよな? サヤもハーレさんもまだ昇華自体に辿り着いてないし、特にサヤの竜は昇華称号を得る為に、雷の発生を待つ必要がある。

 まぁサヤとハーレさんに関しては共生進化だから、先にクマとリスを進化させて後から条件を満たした時に竜とクラゲを進化させてもいけるはずだけど……。


「ふっふっふ、それは元々未成体の段階で上位の方の進化をしていた場合の条件なのさー!」

「進化の輝石と合成進化して得た属性だけだと、少し条件が緩いらしいかな。自力で魔法型から更なる魔法型への進化するよりはステータスは少し下がるらしいけどね」

「その場合は、昇華称号と魔法Lv6があればいいんだってさ」

「え、マジで?」


 ちょ、それって聞いてない!? あー、自力で水属性と土属性を手に入れた俺と違って、サヤの竜もハーレさんのクラゲも進化の輝石を使った合成進化で属性を得てから未成体に進化してるもんな。その分だけ次の条件は緩くなるのは……まぁ妥当なとこか。

 その上で更なる魔法型として強化して進化したいなら、俺と同じ条件を満たせば進化先も解放されそうな気がする。というか、そういう調整にしてそうだ。


「それならスキル強化の種を使えば、俺と同等の進化先にも出来そうだな」

「それは却下なのさー! あくまで1stを主力にして、2ndはサポート役なのです!」

「スキル強化の種は、竜に使うよりクマに使いたいかな?」

「まぁそりゃそうか」


 俺だってロブスターにスキル強化の種を使うよりは、コケに使いたいもんな。主力としているスキルが違うから、この辺の優先度は人によってバラバラになるんだね。でも、それだとヨッシさんの進化は……あぁ、複数属性を持ってる場合はまた条件が違ってたか。


「ヨッシさんは複数の属性での進化だから、魔法はLv6までで良いのか」

「うん、そうなるね。でも、実は3属性に対応する進化先ってないみたいでね?」

「え、マジか!?」

「電気魔法Lv6になって、『氷毒激魔バチ』と『氷電激魔バチ』と『毒電激魔バチ』の3つに進化先が増えちゃってさ。まぁ支配進化から『強異常王バチ』を指定するつもりだから、そこは問題ないけど」

「あー、そういう感じになるんだな」


 なるほど、複数の属性を持っててもそれを主力として進化させられるのは2属性までなのか。『強異常王バチ』の方は魔法の属性への強化ではなく、状態異常への強化の進化みたいだから、状態異常を狙える3属性を持つヨッシさんはそっちが良いだろうね。

 俺のロブスターは確か多彩系の進化先が出てたから、やっぱり今日の特訓で重点的にやるべきはサヤの竜とハーレさんのクラゲだな。ヨッシさんのウニは……どうなんだろ?


「ヨッシさん、ちょっと確認。ウニの進化先はどうなってる?」

「……あはは、上限Lvで出てくる最低限の進化先しか出てないね。凝縮破壊Ⅰも連鎖増強Ⅰも今から取るのは厳しいし、メインはそこじゃないから問題ないよ?」

「……それで良いのか?」

「うん、大丈夫。支配進化ならハチで生成した毒をウニの攻撃部位に乗せられるようになるみたいだし、ウニ自体の強さは最低限でいいからね」

「なるほどなー。そういう事なら納得……って、みんなして進化の情報に詳しくない!?」


 ちょっと待って、改めて考えたら俺が知らない情報が多いんだけど、サヤ達はその情報をどこで得た!? テスト期間中にログインしてたとは思えないし、かといって昨日はそこまで聞くほどの時間は……あー、俺とハーレさんが飯を食ってる間に聞く事は出来たのか。


「それはラックから聞いたのです!」

「今日のお昼休みに、携帯端末でAR表示にしてみんなでお昼を食べながら話をしてたかな」

「ハーレがテストを無事突破出来たって、はしゃいで繋いできたんだよね」

「あぅ!? そこは内緒なのさー!?」

「あー、そういう……」


 なるほど、そういう情報源なら俺が知らなくても仕方ないな。なんだかんだでラックさんも含めて、サヤ達はリアル側でも交流があるんだね。俺の場合、リアル側で学校で交流があるのはフラムだけだしなー。そういや、フラムは結局どうなったんだ?


「フラムさんがどうかしたのかな?」

「あー、あいつはろくにテスト勉強もせずに赤点取って、金も使い果たしてプレイチケットを買えてない状態。水月さんに泣きついてたみたいだけど……なんか、放課後に勧誘されたから生贄にして逃げてきた」

「……あはは、なんか凄いことになってるね。ところでケイさん、勧誘って?」

「あー、俺の通ってる高校にeスポーツ部が出来たみたいでさ。なんかフラムとゲームの話をしてたのを聞かれてたみたいで、部員に勧誘された」


 あの後、フラムは逃げ切れたのかどうか……。まぁ逃げ切れてなくて、そのまま入部してても俺としては問題ないけど。


「おぉ!? 私の学校にもeスポーツ部はあるのです!」

「私達のとこにも、確かあったよね?」

「うん、あったかな」

「やっぱりその手の部活は、結構あちこちの高校にあるんだな」


 VR機器でのフルダイブのオンラインゲームに対応出来る新規格のネット回線が実用化されたのは割と最近だからオンラインゲームのタイトルはまだまだ少ないけどなー。オフラインゲームのタイムアタック的な感じの内容でなら、既にプロプレイヤーとして活躍してる人もいる。

 VRでのフルダイブではない旧来型のゲームでも結構前からプロとして成立するようにはなってるしね。


「ケイはそういうのには興味ないのかな?」

「ゲームは普通に楽しんでやりたいから、勝ちが生活に影響しそうなプロとかは興味ないなー。てか、そもそも上には上がいるんだし、プロになれるとも思ってない」

「まぁその辺は覚悟がないと出来ないよね」

「……確かに気楽に目指すものではないかな?」

「ゲームは楽しくやるのが1番なのさー!」

「まぁそういう事だなー」


 でも、今日はフラムを生贄に逃げてはきたけど……勧誘を諦めてくれるかどうかは分からないんだよな。同じクラスじゃないのに完全に名前は把握されてたし、その辺で面倒な事にならなきゃ良いけど……。


 おっと、そんな話をしてる間にネス湖の北端が見えてきた。おー、見事な滝になってるなー。大瀑布とまでは言わないけど、涙に溢れた地の滝よりも規模は大きいね。


「ふっふっふ、ネス湖の北端まで到着なのさー!」

「……ハーレがウズウズしてるのは、私の気のせい?」

「私にもハーレが何かやりたそうに見えるかな?」

「一応聞こうか。ハーレさん、何をやりたいんだ?」

「滝下りをしたいのです!」

「ちょっと待て、滝下り!? いや、言葉の意味は分かるけど……」


 いやいやいや、そういうのはここまでの規模の滝じゃなくて、程々の高さで川下りの中でやるようなもんじゃね!? ここでやったら滝下りというよりは、ただの落下だぞ!?


「私がやりたいだけだから、1人で大丈夫なのさー! みんなは滝の下で待っててください! えいや!」

「え、ハーレ!?」

「あ、ネス湖に飛び込んだかな!?」

「おいこら、ハーレさん、ちょっと待て!」


 止める間も無く、ハーレさんはネス湖に飛び込んで滝に向かって泳いでいっている。多分これで滝から落ちても死にはしないだろうし、それほど時間ロスが発生するとも思えないけど、みんなの返答を待ってからにしろー!

 多分ヨッシさんはこういうのは得意じゃないのは分かってるし、結構な無茶な事をしてるのは自覚があるから1人で飛び込んだんだろうけど、せめて返答するくらいまでは待ちなさい!


「ケイ、滝の下まで回り込んでかな!」

「分かってる!」

「……この星空を見て、ちょっとテンションが上がり過ぎてるね」

「この単独行動、そういう理由!?」

「うん。昔からたまにあるんだよね」

「……なるほどなー」


 以前に時々暴走していくようなのがあったのは元気があるように見せる為の演技だったりしたけど、本質的にテンションが上がれば本当にそういう行動を取る事もあるのか。って、俺の晩飯のおかずを横取りしてくる時がまさしくそうじゃん!?


「いやっほー!」


 あ、滝のとこまで辿り着いて、流されて落ちていった。ここって結構な高さな気がするけど、絶叫系は全然平気なハーレさんからしたらダメージがないならバンジージャンプをしてるのと大差ないのか!

 とりあえず大急ぎで……って、別に大急ぎにする必要もないか。普通に水が盛大に落ちていく滝の前を飛んで降りていこうっと。


「ぷはっ! あー、楽しか……わっぷ!?」


 そんな声が聞こえると同時に、滝壺の中から顔を出したハーレさんが……滝の勢いに呑まれて滝壺の中に沈んでいっている。落下したダメージ自体は全然問題ないけど、水中での窒息の場合はヤバくない? この場合って地形ダメージだし、死ぬよな!?

 今度こそは急いで滝の下まで移動! 早めにハーレさんを引き上げなきゃ、変な理由で死ぬ可能性も出てきた! 


「水面に……わっぷ! 留まれ……わっぷ……」

「もう、仕方ないね。『アイスクリエイト』『氷塊の操作』!」


 あ、ヨッシさんがハーレさんを周囲の水ごと凍らせて氷塊にして持ち上げていった。うん、氷漬けのリスが出来ているけど、これならダメージ判定は出なくて死なないんだから問題なし。すぐにヨッシさんが氷塊の操作も解除して、星空のカーペットの上にハーレさんが戻ってきた。


「ぷはっ!? 死ぬかと思ったのさー!?」

「ハーレ、テンションが上がってるのは分かるけど、次は見捨てるよ?」

「あぅ!? ご、ごめんなさい!?」

「今のをやるのがダメとは言わないけど、みんなには予め了承を取る事!」

「了解です!」

「うん、それでよろしい!」


 ふー、とりあえずこれでハーレさんのちょっとした暴走は一段楽だね。やっぱりなんだかんだでハーレさんの事をよく理解してるのはヨッシさんだよな。


「そういえば、滝のどの辺りに癒水草の群生地への入り口があるのかな?」

「……それは確かに気にはなるけど、その確認までしてたら脱線し過ぎるぞ?」

「あ、確かにそれもそうだね。その辺はまたの機会でかな!」

「だな。それじゃ改めて干潟に向けて出発だ!」

「「「おー!」」」


 という事で、北に向かって流れている川を下っていきますか! 干潟は川の先にあるんだから、変に横道に逸れずに川沿いに進めば良いだけだ。

 それにしてもネス湖の滝を越えた時点でエリアが変わるかと思ったけど、そうでもなかったっぽい。もう少し北に進んで滝の範囲から抜けたらエリア変更になるのかもね。

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