第1002話 未成体のLv30へ


 捕獲した未成体のアロワナを連れて、大急ぎでアル達のいる場所まで戻っていく! 無所属の黒い龍の人と、光るアロワナの成熟体同士の戦いがすごく気になるけど、それを見ながら移動してる余裕はない!


「あっ! アロワナが黒い球を撃ち抜いて相殺したみたいなのです!」

「滅茶苦茶その戦闘が気になるんだけど!?」

「でも、まだこの位置は近過ぎるかな!」

「だよなー! って、なんだ!?」

「水が流れてきたかな!?」

「浮かされていたアロワナが、水の中に落ちたのです!」

「今のってその余波かい!」


 背後で盛大に水の中に何かが落ちる音がしたけど、それで周囲まで波が押し寄せてきたのか! まぁサヤが普通に踏ん張れていたから、流されるほど強い波ではなかったっぽい。


「おっしゃ、到着!」

「おう、戻ったな。ケイ、アロワナを寄越せ」

「ほいよっと!」

「『アクアクリエイト』『水の操作』!」


 とりあえず捕獲してきたアロワナはアルに託す! てか、俺が捕獲したままじゃ養分吸収が使えないから、そうしてもらわないと困るしね。


「さてと、それじゃ養分吸収をさせてもらおうか! あ、フーリエさんも必要ならやってくれよ」

「はい! まだ全快じゃないので、そうさせてもらいますね。『養分吸収』!」


 そう言いながらフーリエさんがアルの生成した水の中に飛び込んで、アロワナに巻きついた状態で養分吸収をしていく。うん、適度にアロワナのHPは減ってるけど、劇的な程の弱り方はしてないな。

 さて、それじゃ俺もやっていきますか! その為に捕まえてきたんだしね。


<行動値を3消費して『増殖Lv3』を発動します>  行動値 33/86


 増殖はLv5に上がってるけど、ロブスターの表面に増やすだけならそこまでは必要ないからLv3で発動! よし、ロブスターのハサミの表面にコケが増殖出来たから、核の位置を移動させて俺も水の中に飛び込む!

 海中や水中だとロブスターの跳ねる移動が楽になるから、便利なんだよなー。飛翔疾走みたいに、空中を飛び跳ねるように出来るスキルとかないもんかね?

 うーん、最近は全然使ってないけど、風の操作との連携でやる事は出来たっけ。あれを連続して使いたいけど……流石に厳しい?


<行動値を3消費して『養分吸収Lv3』を発動します>  行動値 30/86


 とりあえず空中を自由自在に飛び跳ねるのについては今は良いとして、フーリエさんが絡みついてる間にロブスターのハサミのコケの核をアロワナに触れさせて、養分吸収を発動!


「ふー、これで行動値の回復速度が上がるなー! 次からは不動種相手に忘れずに使っとかないと」

「消耗し過ぎているとそれだけじゃ回復し切らないので、確保していたらそれでも助かりますけどね」

「ま、そりゃそうだー」


 この辺はコケの固有の性能だから、上手く活用していかないとなー。養分吸収、地味に大事! さて、とりあえず水から出て、あの黒い龍とアロワナの勝負でも……って、もう空中にいなくて見えないよ!

 うわー、ここからじゃ湖が直接見えないから、どういう状況になってるのかさっぱり分からない。……飛んで上から見るか?


「……少し思ったんだけど、これってアロワナが水属性に纏属進化する可能性はあるのかな?」

「あ、そういやそうか! って、魚が水属性に纏属進化はするのか?」

「苦手な環境の場合のみだから、多分発生はしないな。……むしろ不動種が海水への適応進化をする可能性の方があるかもしれん」

「あー、それは確かに……」


 さっきは発生しなかったけど、思いっきり魔法産の海水の中に閉じ込めてたもんな。あれを吸収して纏属進化が発生する可能性もあったのか。……今の今までその可能性は完全に見落としてたな。


「別にそれなら発生しても問題ないんじゃない? 私とサヤの竜の電気魔法が活躍するよ?」

「それはそうなのです! むしろ弱点が増えて、より効果的なのさー!」

「確かにそうですね!?」

「そうなったら、いっそ更に俺の水の付与魔法で水属性も追加するのもありかもなー」

「あはは、それもありかな!」


 徹底的に弱点狙いにはなるけど、弱点を狙ったらいけないなんてルールはない。むしろ効率的にLv上げをするなら、積極的に弱点を狙った方がいいよな!


「まぁアロワナに関しては、俺とアルで適度に交代しながら確保しとこう。ヨッシさん、適当にアロワナのHPが回復するように何かアイテムを放り込んでおいてくれない?」

「あ、うん、分かったよ。死なせない方向でいくんだね」

「俺とフーリエさんの行動値の回復用に使うからなー!」

「行動値の回復速度が上がるのは重要ですもんね」

「あぅ……行動値の回復速度が上がるスキルは私も欲しいのです……」

「それは私も思うかな?」


 うーん、サヤとハーレさんの言うことも気持ちとしては分かるけど、具体的にどうしろって話だしなー。行動値の消費量がどんどん増えてきてるから、そういうスキルがどこかに存在する可能性はあるけど……。


「アル、行動値の回復速度を上げるようなスキルって何か見つかったりしてない?」

「……一応コケ以外にも固有スキルとして同じような性質を持ってる種族はいるみたいだが、汎用的なのは見つかったという情報はないな」

「ありそうな気もしたけど、ないのかー」

「まだ条件的に手に入らないだけかもしれんし、存在しない可能性もあるからなんとも言えんとこか……」

「……だなー」


 存在するという確定的な情報がないなら、あるかもしれないという仮定で色々試行錯誤をしてみるしかないか。まだまだ未知のものは多そうだし、検証はこれからも続けていかないとな。


「あー、それにしても黒い龍とアロワナの勝負が見たい!」

「はい! 私も見たいです!」

「俺らは明確に目立つが、回復が済むまで浮いて見物しとくか?」

「……それは意味なさそうだよ?」

「アロワナが上空に吹き飛んでますね!?」

「あ、龍の人が爪で切り裂いて……アロワナは死んだかな」

「……見る前に終わったかー」


 あーあ、アロワナがポリゴンになって砕け散っていったからあっさりと倒されて終わった。うーん、具体的にどんな戦闘をしてたかを見たかったけど、そのチャンスは無かったよ。……残念。

 そして、普通に無所属の黒い龍の人は……あ、俺らが入ってきたルートから出ていったね。あの動きの迷いの無さからして、ここに来るのは初めてって訳じゃなさそうだ。


「そういやなんであの黒い龍の人は、ここにアロワナがいるって分かってたみたいに現れたんだ? ネス湖で確認した時には青の群集の人が離れていってたけど、比較的近くにはいたぞ?」

「……無所属の誰かがアロワナをここに落として、それでも聞いたんじゃねぇか? 無所属同士でも情報交換がない訳じゃないからな」

「あー、それもそうか」


 青の群集に関しては、アロワナの姿が見えずに討伐済みと判断してすぐに離れたって可能性はありそうだしね。まぁいくら考えても推測の域は出ないから、これは気にするだけ無駄か。


「おし、過ぎた事は良いや。次の戦闘方法について考えていきますか!」

「だな。それで1戦目と2戦目のどっちを基準にするんだ? まぁそれ以外でもいいが……」

「どっちかというと、2戦目の方だなー。アルが海水を生成して不動種を包み込んで、ヨッシさんとフーリエさんの毒で一気に攻め立てる。木の分身体は、俺とサヤとハーレさんで引き受ける感じで」

「……地味に私の出番は少なめなのです」

「……確かに」


 うーん、ハーレさんの投擲は地味に今回の戦闘との組み合わせが悪いんだよな。どうしてもアルの生成した海水の中で戦う事になるから、威力が落ちる投擲とか風魔法って使い勝手が悪くなるのが……。

 クラゲの方が少しは毒を持ってた気がするけど、ほぼ使わなくなってる俺の毒よりも微妙だったはず。んー、ハーレさんの役割として何か良い手段でもないものか。あ、そうだ。


「ハーレさん、毒の弾って今持ってるか? あと、持ってたら毒の種類も」

「持ってるのさー! 使えそうなのは腐食毒のヤツがあるのです!」

「なら、それを使って風属性で加速させて爆散投擲を頼んだ! ちょっとアイテムの消費が激しくなるけど、まぁ多少は良いだろ」

「ふっふっふ、そこはコンテストの報酬の詰め合わせで補充するから大丈夫なのです!」

「あ、そういやそれがあったっけ」


 アイテムの詰め合わせセットの中にある投擲用の弾の中に毒の弾があるなら、それで補充は出来るもんな。トレードは多分出来るはずだから、俺ら全員分から補充をしていっても良い。それに毒の弾の生産自体も行われてるから、そっちからでも補充は出来る。


「よし、それじゃ不動種への攻撃役はアル、ヨッシさん、ハーレさん、フーリエさんで!」

「はーい!」

「分かりました!」

「了解!」

「それは良いんだが……このアロワナは本当にその辺に放置でいいのか?」

「……やっぱりダメ?」

「いや、不意な攻撃を受けたくはないからな。俺かケイが並列制御で水に閉じ込めておく方が安全だとは思うぞ」

「……確かにそうだよなー」


 うーん、とはいえただ養分吸収の為のアロワナを捕獲しておく為だけに並列制御を使うのもなー。丁度いい入れ物を岩の操作で……こっちの方が行動値の消費が大きいっての! ん? あぁ、そうか。入れ物がないなら、作ってしまえば良いだけだ。


「アル、良い案を思いついたぞ!」

「……ほう? どんな感じだ?」

「実際にやってみるわ」


 という事で、即座に実行に移そう! なんだかんだで話してる間に行動値は全快してるし、並列制御でもこの手段ならそこまで負担じゃない。……多分!


<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>

<行動値を3消費して『土の操作Lv6』は並列発動の待機になります>  行動値 83/86

<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>

<行動値を6消費して『水の操作Lv6』は並列発動の待機になります>  行動値 77/86

<指定を完了しました。並列発動を開始します>


 ここの地面は多分結構な量の水を含んでいると思うから、同時に水の操作も使用する! 指定範囲は、すぐ近くに地面の土とその表面の水!


「おし、良い感じに持ち上げられてる!」

「あぁ、そこにアロワナを入れとく即興の穴を作ろうって事か」

「そういう事! って、岩がちょいちょい混ざってるけど、まぁいいか」


 岩があってもそれ以外の土は操作が出来ているから穴を作る事自体は問題なさそうだしね。ただ持ち上げられない岩が、出来た穴の底に落ちていってるだけ。

 今は水と土が混ざった泥状態になってるけど、出来た穴の部分に水の操作を解除して放り込む! そして、乾いた土になったやつは穴の周りを囲むように置いていく。

 ふっふっふ、少し押し固める感じにして周りの水が流れ込まないように堰にする。まぁ長くは保たないだろうけど、アロワナが逃げさえしなければ問題はない!


「アル、この穴の中にアロワナを放りこんでくれ」

「おうよ! だけど、これだとアロワナから狙われる可能性もあるぞ?」

「そこはハーレさんの危機察知頼りで!」

「おぉ! 私の出番なのさー!」

「任せたぞー!」

「任されました!」


 養分吸収での回復用のアロワナについてはこれでいい。後は2戦目の時と同じ要領で不動種を倒していくのみ! あ、その前にこれを確認だなー。


「みんな、全快はしてるか?」

「全快になってるかな!」

「俺は水の操作を使ってた分だけ減ってはいるが、支障はないな」

「私は全快なのさー!」

「私も大丈夫」

「僕もいつでも行けます!」


 アルは全快ではないみたいだけど、まぁそれを言ったら俺も全快ではないからなー。でもまぁ、この程度ならどうとでもなる範囲だからこのまま開始していこう。


「それじゃ3戦目は、そこの松の木を標的にやっていくぞー!」

「「「「「おー!」」」」」


 さて、もう少しでLv30に到達だし、しっかりと仕留めていこうじゃないか。覚悟しろ、松の木! 



 ◇ ◇ ◇



 それから松の木を倒し、アロワナに回復アイテムを与えつつ養分吸収を使って行動値の回復を早めながら、4戦目の桜の木との戦闘中である。後はハーレさんの毒の弾……正確には毒ありの実を使った爆散投擲のチャージが終わるのを待っているところ。


「チャージ完了なのさー!」

「おし! アル、海水を解除!」

「おうよ! 海水解除!」

「それじゃいくのです! えいや!」


 そうして緑色を帯びた眩い銀光を放つ毒の実が投げ放たれ、溶解毒でボロボロになっている幹に当たり、爆散して桜の木を更にボロボロにしていく。その状態で毒の継続ダメージが残り僅かなHPを削り切り、不動種の桜はポリゴンとなって砕け散っていった。


<ケイがLv30に上がりました。各種ステータスが上昇します>

<Lvアップにより、増強進化ポイント2、融合進化ポイント2、生存進化ポイント2獲得しました>

<Lv上限の為、過剰経験値は『群集拠点種:エン』に譲渡されます>


<ケイが未成体・瘴気強化種を討伐しました>

<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>


<ケイ2ndがLv30に上がりました。各種ステータスが上昇します>

<Lvアップにより、増強進化ポイント2、融合進化ポイント2、生存進化ポイント2獲得しました>

<Lv上限の為、過剰経験値は『群集拠点種:エン』に譲渡されます>


<ケイ2ndが未成体・瘴気強化種を討伐しました>

<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>


<使用キャラクター枠の3枠目が解放されました>

<3枠目の解放ボーナスが獲得出来ますので、ログイン場面より選択してお受け取り下さい>


 おぉ、遂にLv30に到達! これで成熟体への進化も可能になったし、3rdの作成と、3rdの解放ボーナスが貰える! てか、解放ボーナスはいったんから貰う感じか。


「おっし、とりあえずLv上限到達!」

「私も到達なのさー!」

「おう、2人ともおめでとさん!」

「ケイさん、ハーレさん、おめでとうございます!」

「ケイ、ハーレ、おめでとうかな!」

「これで後は私とサヤが到達したら、進化を実行に移せるね」

「だな! この調子で、今日中にサヤとヨッシさんのLv30達成を目指すぞ!」

「「「「「おー!」」」」」


 まだ経験値の結晶の効果時間は30分くらい残ってるし、23時までには達成出来るはず! フーリエさんだけは元々のLv差があったからその辺は仕方ないか。てか、最後に立ち寄った群集拠点種のエンに過剰経験値は譲渡されるのは、前回の群集拠点種の強化と同じ仕様っぽい。

 さーて、明日には競走クエストの1ヶ所目が開始になる可能性があるし、そうなったら明日には即座に成熟体への進化になるかもな! とりあえず今出来る事をやっていきますか!




【ステータス】


 名前:ケイ

 種族:同調強魔ゴケ

 所属:灰の群集


 レベル 29 → 30(上限)

 進化階位:未成体・同調強魔種

 属性:水、土

 特性:複合適応、同調、魔力強化


 群体数 757/8250 → 757/8400

 魔力値 232/232 → 232/234

 行動値 36/86 → 36/87


 攻撃 88 → 89

 防御 153 → 156

 俊敏 111 → 113

 知識 234 → 239

 器用 263 → 269

 魔力 347 → 355



 名前:ケイ2nd

 種族:同調打撃ロブスター

 所属:灰の群集


 レベル 29 → 30(上限)

 進化階位:未成体・同調打撃種

 属性:なし

 特性:打撃、斬撃、堅牢、同調


 HP 8754/9850 → 8754/10050

 魔力値 109/109 → 109/110

 行動値 75/76 → 76/77


 攻撃 346 → 354

 防御 314 → 321

 俊敏 262 → 268

 知識 83 → 84

 器用 106 → 108

 魔力 55 → 56


 

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