第1003話 成熟体への進化まで


 俺とハーレさんが未成体の上限Lvに到達した。進化項目が光り出したけど……これは、ほぼ確実にLv上限になったら出てくる最低限の進化先だから気にしなくてもいいや。

 とりあえず一時的に作った穴にいるアロワナに俺とフーリエさんが養分吸収を使って行動値の回復速度を上げておく。それで弱った分だけ、ヨッシさんが小魚を与えて回復させているから問題なし!


 それにしても、未成体もようやくLv上限か! 同時に2体の育成をしてるせいでもあるんだろうけど、オフライン版より随分と時間がかかった気がする。まぁあんまり気楽に進化階位が上がってしまうと、オンラインゲームとしての寿命が縮まるからこの辺は仕方ないね。


「ふっふっふ、これで3rdが解放になったのです! 解放のボーナスはいったんからもらうのさー!」

「そういう風になってるんだ?」

「おう、そうだぞ。そもそもあそこでしか使えんアイテムばっかだしな」

「あー、そういやそうか」


 確か解放のボーナスは選択制で『空白の称号』2個、『部位合成の種』1個、『特性付与の水』と『属性付与の水』のセットのどれかが貰えるという話だったはず。どれもいったんのいるログイン場面で指定して使う類のアイテムだから、あそこで貰う以外の方がおかしいか。


「私は空白の称号を手に入れるのです! あ、でもLvは上限になったけど、まだクラゲが風の昇華になってないのさー!?」

「……そういえば私の竜も、電気の昇華はまだかな?」

「そうか、1stの方は目処はついてたが、2ndが微妙なラインなんだな……。ケイ、この後はその辺を鍛えながらに戦法を変えるか?」

「あー、その方が良いかもなー」


 今鍛えたいのは、サヤの竜の電気の操作と、ハーレさんのクラゲの風の操作かー。どっちも俺の付与魔法で強引に弱点にする事は出来るから、その方向性でいく?

 でも、操作が得意じゃないサヤはアルと合わせて動くのは厳しそうだから単独でになるよな。それに付与魔法は同時に複数属性は付与出来なかったはずだし、サヤとハーレさんを同時には厳しい……。どうするのが効率がいい? うーん、これは悩む……。


「ケイさん、悩むのなら鍛えるのは明日の夕方でも良いのです!」

「今日のうちにLv上限にして、2ndの進化先は明日どうにかするかな!」

「あー、まぁ2人がそれでいいならその方が効率が良いからそうするかー。あ、ヨッシさんのウニはどうする? 支配進化で確定?」

「うん、そのつもり。それに合わせて、少しで良いからウニの強化もしたいとこだね」

「なるほど、ヨッシさんも特訓希望か」


 そうなってくると、もうこれは明日の予定は確定だな。今日はアルが有給で昼間でもいたけども、明日は平日の金曜日だから夜まではアルがいない。


「よし、それじゃ夕方は進化前のスキルの最終仕上げといきますか!」

「「「おー!」」」

「おう、頑張れ! で、夜からは群集クエストの進行を中心にやっていく感じか?」

「ま、そうなるなー。まぁ群集クエストの進行具合では、明日で成熟体への進化を実行するかもだけど」

「森林エリアの転移地点が確立されそうですもんね! 僕はまだLvが足りないので、明日もLv上げです! ……シリウス、早めに復帰出来るといいなー」

「あー、もうそれは運に祈るしかないよな……」


 フーリエさんといつもやってるシリウスさんだけど、VR機器が故障でログイン不可って話だもんな。早めの修理が終わる事を祈っておこう。

 さて、行動値の回復中だからもう少し雑談でもしておきますかー。


「あ、そうだ。そもそも森林エリアから経路確立がされた時点での進出はどうする? 多分混むと思うけど……」

「そりゃ実際になってみてからの状況次第だな。まぁ1ヶ所目が確立したら成熟体の敵も増えるだろうし、様子見に行くくらいはしても良いと思うぜ?」

「はい! 混雑してても、新エリアへの進出は醍醐味なので行きたいです!」

「アルの上に乗ってたらある程度は混雑は避けられそうかな?」

「それは明日の様子を見て決めたらいいんじゃない? そもそも新エリアがどんな場所かも分からないしね」

「……まぁそれもそうか」


 転移の為の経路が確立されてからじゃないとどんな新エリアなのかは分からないし、他の場所の経路の確立もしなきゃいけない。そこから2度目の競走クエストが開始になるだろうから、他の群集の動向にも要注意だな。


「あ、そうだ、ケイ。付与魔法を半自動制御に使う件は、俺の方でさっき報告は上げておいたぞ」

「あっ、完全に報告を忘れてた!? サンキュー、アル!」

「いや、これくらいはどうって事ねぇよ。ちなみに見落としてたって反応が多かったぜ?」

「あー、そうだったんだ」


 まぁ人がやってる事なんだし、見落とす事もあるよなー。ぶっちゃけ俺だって付与魔法の存在を知ってから、あの使い方をした今日までは知らなかったしね。うん、そういう事もある!


「そういやみんなはスキル強化の種は何に使うのかな?」

「……それは思いっきり悩み中。3個あるから全部水流の操作か岩の操作に注ぎ込んでLv7にしたり、水魔法をLv10まで上げてみたり、温存して成熟体からのスキルの強化に回してみたり、選択肢がありすぎて悩む……」

「俺もケイと似たようなもんだが、具体的にどうするかは成熟体に進化してからのつもりだ」

「悩むけど、私もそうするつもりなのです! 応用スキルの投擲系を上げたかったりするけど、その分だけ消耗が激しくなり過ぎるのさー!」

「操作系の応用スキル以外は行動値の消費量はどんどん多くなりますもんね」

「……逆に操作系は制限が緩和されるから、使い勝手は良くなりそうなのが悩ましいね」

「そうなんだよなー」


 どれを選ぶとしても、メリットばかりじゃないからなー。普通の物理攻撃スキルや魔法スキルだと威力が上がる分だけ明確に消耗が激しくなる。操作系スキルなら精度は上がるけど、それを扱い切れるかは使う人次第。

 俺は操作系スキルの扱いは得意だから選択肢としてはありなんだけど、1属性だけの注ぎ込むのもなー。全体的に分散させて強化させたい気持ちもあるんだよね。うーん、一気に手に入りすぎて、使い道に悩む……。


「まぁ今すぐに決めなくても、アルの言うように成熟体に進化してから考えてもいいや! そういや、そろそろみんな回復したんじゃないか?」

「あぁ、いつの間に全快してたか」

「全快したなら、Lv上げの続きなのさー! サヤとヨッシはLv30を、フーリエさんはLv 28を目標に頑張るのです!」

「それが終わったら、ネス湖の湖畔でスイカ割りかな!」

「あ、でもそんなにスイカはないよ?」

「それならいくつか俺の方で確保しといたぞ。とりあえずヨッシさんに渡しておく」


 おー、流石はアルだね。しっかりとハーレさんがテスト明けにスイカ割りをやりたがっていたのを覚えていて、その準備をしていてくれたようである。

 傷だらけな決して見た目が良いとは言えないスイカが5個くらいあるけど、まぁ割ってしまうんだから問題ないか。


「わっ、結構な数があるね! アルさん、ありがとう!」

「アルさん、ありがとうなのさー!」

「ま、元々スイカ割りをするって話だったしな。ちなみにあんまり回復アイテムとしては質が良くないのをあえて選んでるが、味は変わらんから気にすんな」

「スイカ割りにはぴったりかな!」

「ところで、これってどうやってスイカ割りをするんです?」


 あ、そういや普通にリアルでやるスイカ割りと同じようには出来ないよな。うーん、俺の土の操作で目隠しするのが無難だろうね。


「そこはケイさんに目隠しをしてもらって、各自のスキルでやるのです! もちろん方向が分からないように、回転させていくのです!」

「そういう感じでやるんですね!」

「なんか初耳だけど……まぁいいか。おし、その辺は後の楽しみって事で、経験値2倍の残り時間を戦っていくぞ!」

「「「「「おー!」」」」」


 この後の楽しみも待っている事だし、今日の目標は達成していかないとな! さて、不動種の討伐手順はこれまでと一緒だけど、サクサク倒していきますか!



 ◇ ◇ ◇



 それから経験値の結晶の効果が切れるまで、討伐と休憩を繰り返して時間切れとなった。途中で捕獲してるアロワナに背後から攻撃されたのは焦ったけど、最後の1戦を始める前に仕留めさせてもらったよ。

 いやー、行動値の回復速度を上げるのに役立ってくれた上に、最後は経験値に変わってくれてありがとう。まぁ残滓だったみたいで、経験値はいまいちだったけど。


「これでトドメなのさー!」


 そうしてハーレさんの毒の弾を使った爆散投擲で、杉の不動種のHPが全てなくなりポリゴンとなって砕け散っていった。


<Lv上限の為、過剰経験値は『群集拠点種:エン』に譲渡されます>

<ケイが未成体・瘴気強化種を討伐しました>

<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>


<Lv上限の為、過剰経験値は『群集拠点種:エン』に譲渡されます>

<ケイ2ndが未成体・瘴気強化種を討伐しました>

<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>


 よし、これで今回のここでの戦闘は終了! サヤもヨッシさんもフーリエさんも2戦前くらいでLvは上がったてたけども、経験値の結晶の効果が勿体なかったからね。


「目的も達成したし、スイカ割りをしに移動かな?」

「そうするのさー! その為にも登録し直した転移の種を使うのです!」

「それじゃネス湖の砂浜のとこまで戻るぞー!」


 という事で、転移の種を使用していこう。それからテスト勉強の打ち上げと、Lv上限への到達への打ち上げだ! もう今日は充分過ぎる程に育てたから、最後は育成は考えずにただはしゃいでしまえー!


<『湖底森』から『ネス湖』に移動しました>


 転移の種での転移の演出である花びらが散るように覆っていた光の膜が消えていき、転移は完了! あ、少しずつだけど夕暮れになりつつあるね。うん、日付が変わってくる証だな。


「もう夕暮れかな」

「少し遊んだら、今日はもう切り上げだね。えっと、とりあえずスイカはここで良い?」

「問題なしなのさー!」


 なんというか、ハーレさんのテンションが高いなー。まぁテスト期間から解放された上に、ようやく成熟体への進化が可能な状況まで到達したんだしね。そりゃテンションも上がるか。

 とりあえずヨッシさんがネス湖にある砂浜に、アルが調達してくれていたスイカを置いてくれたから、後は誰がどういう順番でやるかだけだな。


「ふっふっふ、それじゃ思いっきり遊ぶのさー! 誰からやりますか!?」

「あはは、ハーレからで良いんじゃない? さっきからずっとウズウズしてるよね?」

「あぅ!? 見抜かれていたのです!?」

「ケイ、用意してやれ!」

「よし来た!」


 いつの間にか俺が目隠しをするって話になってたけどその役目はやってやろうじゃないか! それなりに行動値は消耗はしてるけど、まぁそれくらいなら問題はないだろ。


<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 24/87 : 魔力値 200/234

<行動値を3消費して『土の操作Lv6』を発動します>  行動値 21/87


 これで平たい石を生成してハーレさんのリスの目を覆うようにして、準備は完了! あ、でもこれだけじゃ回転する事が出来ないな? うーん、これはちょっと失敗したか? あ、別に俺1人でやる必要もないよな。


「アル、根で巻き付いて思いっきり回してやれ!」

「おっ、そりゃいいな。『根の操作』!」

「わー!? 巻き付かれたのです!?」

「おらよっと!」

「あーれー!?」


 うん、ハーレさんもこの状況は完全に楽しんでるね。まぁ本当に目が回りはしないし、楽しんでいるなら全然問題なし! 方向さえ分からなくなればそれでいいしね。さて、それじゃハーレさん待望のスイカ割りの開始だ!


「ハーレ、左かな!」

「ハーレ、左じゃなくて右だよ!」

「いやいや、反対方向に行ってるぞ?」

「ハーレさん、そのまま真っ直ぐで2メートルくらい先です!」

「もう目の前だぞー!」

「みんな、全然言ってる事が違うのさー!?」


 まぁスイカ割りってそんなもんだよね。誰もが正しい方向を言ってくれるとは限らない。今の中では、実はフーリエさんが正しい事を言っているんだけどね。


「あ、ハーレさん、クラゲに視点を切り替えるのは反則だからなー?」

「そんなズルはやらないのさー! そこなのです! 『投擲』!」

「あ、惜しかったかな」

「少し左に逸れたね」

「さて、目隠しを外すかー」

「あー!? フーリエさんの言ってたのが1番正しかったのさー!?」

「さて、次は誰がやる?」


 そんな風に順番を変わりながら、スイカ割りをしていった。まぁ根本的に人型じゃないから勝手が違ったし、そもそも棒で叩いて割るのじゃなくて、スキルを当てるって形だったしね。

 結果としては、俺とサヤは方向を見失わずスイカ割りは成功。アルは惜しかったけど微妙に外して、フーリエさんとヨッシさんは見当違いの方向になってたね。


 そんな楽しい時間を過ごしていく。ゲーム内で本格的に暗くなってきた時点で今日はネス湖で現地解散になった。

 あー、テストから解放されると気が楽なもんだ。さて、それじゃ今日はこれでお終いって事でログアウト!



 ◇ ◇ ◇



 そうしていつものいったんの場所へとやってきた。えーと、今回の胴体部分は『色んな場所で荒ぶる戦闘が繰り広げられている!』ってなってるね。うん、具体性は皆無だけど、まぁ言いたい事は何となく分かる。

 てか、なんかコケやロブスターの姿が浮かび上がってる立体映像の部分に、もう1枠追加されてるし、これが3枠目のやつか。とうとう3枠目の解放なんだな。


「3枠目の解放、おめでとう〜!」

「お、サンキュー!」

「それで3枠目の解放にはボーナスがあるけど、その説明をしていくね〜」

「ほいよっと」


 既にアルから内容は聞いて知ってはいるけども、一応聞くだけ聞いておこうっと。



 ……うん、聞く意味なかった。内容、アルから聞いたままだったよ。


「ボーナスはすぐに使う必要はないから、すぐに決めなくて大丈夫だよ〜」

「了解っと」


 ぶっちゃけ『空白の称号』2個を選ぶつもりでほぼ決めてるけど、ここで使う事になるんだから無理に今すぐ決めなくてもいいか。

 さて、それはそうとしてダメ元で聞いてみたい事があるから聞いてみようっと。


「いったん、明日の緊急クエストも開催時間って同じ? てか、開催場所も同じ?」

「それは教えられません〜」

「……やっぱり教えてはもらえないか」


 とはいえ否定もされていないから、可能性としては十分ありそうだよね。まぁ変化があるんじゃないかって予想はしてるから、それについては明日になってから確認すればいいか。


「そういやスクショの承諾は来てる?」

「うん、来てるよ〜。はい、これ〜」

「サンキュー!」


 という事で、一覧を受け取って確認していこう。ふむふむ、忘れ物の岩場で戦闘してた時のスクショがメインで、灰の群集の人ばっかだな。そこまで枚数はないし、これは全部承諾でいいや。


「これでよろしく!」

「はいはい〜。それじゃそう処理しておくね〜」

「ほいよっと。さてと、今日はこれで終わりにするわ」

「お疲れ様〜。今日も楽しんでいってくれてありがとうございました〜」


 そんな風にいったんに見送られながら、今日はこれで完全に終了! 明日はテストの結果が返ってくるけど……今回はどうだろうな? 割と今回のは自信あるんだけど、まぁそれは明日になれば分かるか。


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