第986話 大量の経験値


 電気の昇華魔法ではない、ちゃんとした討伐手段で順番に残滓の敵を倒していく。なんだかんだで6人の俺らに対して、30体以上はいそうだし、地味に数がとんでもないな! Lvの割に弱いけど、それなりに時間はかかるね。

 てか、一番最初の電気の昇華魔法が早すぎただけだな。手段こそPTによって違ってくるだろうけど、今の方が無駄な待ち時間は少なくて済む。


「ケイ殿、残り2体であるよ!」

「あ、もうそんなもんか。一般生物の魚が多くて分かりにくい……てか、どこにいる?」

「タコが1体と、ウツボが1体である!」

「そういう2体!?」


 タイドプールに残っている一般的な魚の姿とは全然違うやつだった! 片方はそもそも魚ですらないし……えーと、冗談抜きでどこにいる? あ、岩場の影に隠れて顔だけ出てるウツボっぽいのは見つけた。

 くっそ、獲物察知を使いたいけど、成熟体の敵がいるからなー。すぐに崖上にいる成熟体の人達が倒してくれるだろうけど……そういや、その辺どうなってるんだろ? アルの生成した海水の中に放り込む時以外はタイドプールの中にいて、それ以外の情報がさっぱりだ。

 まぁここで一区切りつきそうだからその後に確認すればいいか。成熟体が魚だったんだし、みんな海中に飛び込んで戦闘中って可能性もあるしね。……てか、本当にタコはどこだ?


「あー、タコが見つからないから刹那さんに任せた! 俺はウツボを捕獲する!」

「承知! 【我は射抜く刃なり! 風遁・風刃衝!】」

「刹那さん、お見事!」

「先に行っているのであるよ!」

「ほいよっと」


 今のはヒトデで指向性を操作してウィンドボムを受け、その勢いを乗せてタチウオでの刺突攻撃をしたっぽい。見事にタコを貫いて、空中へと浮かび上がっているね。

 さて、それじゃ俺もサクッと最後の1体を仕留めていきますか! 残り1体なら石の銛じゃなくて他の手段でもいくのもあり? そもそも岩の隙間から出してくる必要がありそうだな、あのウツボ。


「刹那さん、アル、風雷コンビ、そのタコはそっちで仕留めてくれ!」

「承知である!」

「おうよ! 風雷コンビ、仕留め切る気でやれ!」

「交互に撃ち込むぞ、疾風の! 『エレクトロボム』!」

「おうともよ、迅雷の! 『エレクトロボム』!」

「『エレクトロボム』!」

「『エレクトロボム』!」


 ここからだと様子が見えないけど、経験値が入ってきたからどうにか倒してくれたっぽいね。うーん、やっぱり経験値が美味い! ここに来てから20分ちょっとくらいなもんなのに、既に経験値は半分以上はいった。

 って、のんびり考えてる場合じゃないか。考えるにしてもウツボを仕留めてからだね。


「ハーレさんは行動値の許す範囲で最大Lvの爆散投擲を準備! 残る1体のウツボは2人でやるぞ!」

「そんなに行動値はないから、Lv1になるけどいいですか!?」

「まぁ倒し切れなきゃ別の手段で倒すまで!」

「そういう事なら了解なのさー! 『爆散投擲』!」


 まぁ俺の方ももうそんなに行動値はないけど、これで仕留め切れなきゃ岩場にまで持っていって通常攻撃でぶん殴って倒すまで! あ、それなら発動すべきはこっちか。この後、餌用の一般生物を仕留めていくんだしこの方が都合がいい。


<行動値上限を2使用と魔力値4消費して『自己強化Lv2』を発動します>  行動値 28/84 → 28/82(上限値使用:3): 魔力値 202/230 :効果時間 12分

<熟練度が規定値に到達したため、スキル『自己強化Lv2』が『自己強化Lv3』になりました>


 おっと、地味に上がってなかった自己強化がここでLv3に上がったか。うん、まぁこれは単純に良かったね。

 さて、ウツボの近くまで跳ねて……よし、隠れたつもりで無防備な頭の横に一気に移動完了! 自己強化での移動速度アップが地味に効いたか。ウツボが俺に気付いたっぽいけど、もう遅い!


<行動値を15消費して『万力鋏』を発動します>  行動値 13/82(上限値使用:3)


<『万力鋏Lv1』のチャージを開始します>


 ハサミでウツボの首根っこを挟み込んで、捕獲完了! ついでに銀光が徐々に強くなっていきながら、チャージもしていく!

 そういやロブスターの応用スキルって、全然Lv上がらないよなー。まぁ俺の主力は魔法と操作だから別に悪い訳じゃないけど、オールラウンダーを目指してるんだしどこかタイミングでもう少ししっかり鍛えた方がいいか? うーん、優先順位を決める必要もあるし悩むところだなー。


 それはともかくウツボを挟んだまま海面まで浮上! まぁ浅いからすぐだったけど……普通に脚がつくもっと浅いとこまで移動しとこ。ハーレさんの方は……まだチャージは終わってないっぽい。


「ケイさん、まだチャージが終わってないのです!」

「みたいだなー。ま、俺もチャージ中だし、根本的に雑魚だから問題なし!」

「確かにそれはそうなのさー!?」


 なんかウツボがウネウネと動いてるのが地味に嫌だけど、今回の残滓は普通の時に出てくる残滓よりも遥かに弱いからね。数と経験値は多いけど、敵としての手応えはあんまりないんだよな。


「確かに今回の残滓達は雑魚も雑魚である! 拙者、これらの敵がLv20後半とは到底思えないのであるよ!」

「今回はどうも経験値を稼がせる事に重点を置いてるクエストみたいだしな。ま、たまにはこういうのもいいんじゃねぇか? ……多分、次が楽勝にはならないだろうしな」

「……そうであるな、アルマース殿。次は競争クエスト……気が抜けないのである」


 あー、確かに次はほぼ確実に競争クエストで対人戦になるしね。その目前で難易度が高いクエストだと流石に負担が大きいか。

 単純に競争クエスト目前の最後の追い込みをかけろって事なのかもしれないね。……冗談抜きで、ここでどれだけの人が成熟体まで辿り着けるかで勝敗が変わってくるんじゃないか?


「ケイさん、チャージ完了なのさー!」

「ほいよっと! それじゃそのままぶっ放せ!」

「はーい! いっくよー!」


 ハーレさんが思いっきり振りかぶって、俺が挟んでいるウツボに直撃して爆散した。おっと、爆発の勢いでちょっとバランスを崩しかけたけど、脚がつく場所に移動してたからセーフ。

 うーん、ウツボのHPは今ので半分を切ったくらいか? 万力鋏のチャージが終わっても、仕留め切れるかがちょっと怪しい。よし、挟んでない側のハサミで殴りまくっとこう。


「……あぅ、仕留め切れなかったのです。魔力集中が切れたら、どうしても威力が下がるのさー!」

「あー、そういや効果時間が切れてたっけ」


 どうしても石の銛の時には出来るだけ同時に刺そうとしてたから、狙いをつけるのに時間がかかったからなー。どれだけ電気の昇華魔法が早かったのかがよく分かるというものだ。……あれ、ほぼ一瞬で終わってたけど、他のPTは10分くらいかけてたんだしね。


<『万力鋏Lv1』のチャージが完了しました>


 よし、チャージが完了したから、そのまま一気にウツボの首を挟み切る! 途中から殴ってた効果もあったみたいで、これでウツボは討伐完了。


「さてと、これで残滓の討伐は終わりでいいのか?」

「拙者の見落としがなければ、今ので終わりの筈であるよ、ケイ殿」

「あー、刹那さんを信用しない訳じゃないんだけど、見落としがないかを獲物察知でチェックはしても大丈夫なやつ?」

「拙者とて見落とす事はあるので、それは構わぬが……そういえば、成熟体のクエはどうなったのであるか?」

「成熟体の人達が飛び込んで海中で戦闘中なのです!」

「ケイ、獲物察知が邪魔になる可能性があるから今はやめとけ」

「……そりゃそうだ」


 見落としチェックの為で、成熟体同士の戦闘の邪魔になる可能性の事はしたくないもんな。てか、海中戦の真っ只中なのか。……2体目に出てきた成熟体のクエって、意外と強い?

 まぁ完全に海の種族の成熟体が相手だし、海エリアの方の人も海の中で戦ってる最中だろうし、色々と条件的に戦いにくいってのはあるのかもね。……もしかして1戦目の時に電気の昇華魔法でタイドプールを空にしたのって、地味に役に立ってた? その辺は後で聞いてみるかー。


「とにかく次はみんなで手分けをして餌になる一般生物の回収なのさー!」

「あー、少し思ったんだが、こういうのはどうだ? 『海水の操作』!」


 おぉ、アルがタイドプールの中にある海水を全て持ち上げた!? うん、持ち上げられた海水の中から一般生物の魚やタコやイカが落ちて、岩場で跳ねまくってる。今の落下で死んだのもいたっぽいけど、あくまでそれは一部っぽいね。


「アルマース殿、ナイスアイデアである!」

「これならばやり過ぎる心配はないな、なぁ疾風の!」

「そうなるよな、なぁ迅雷の!」

「それじゃみんなで岩場で跳ねてる一般生物を仕留めに行くのです!」

「だな。アル、しばらくそのまま海水は持ち上げたまま待機で!」

「おう、任せとけ!」

「他のみんなは、適度に餌を確保したら各自でばら撒いていく感じでやるぞ!」

「承知したのである!」

「了解なのさー!」

「「了解だ!」」


 さーて、アルが良い案を思いついて実行に移してくれたからそれを活用していこうっと。もし残滓の討伐の見落としがあったとしても、これならそれも見つけられる可能性は高いはず! 一般生物を倒すのにスキルまでは必要ないから、遠慮なくぶっ倒しまくるぞ!



 ◇ ◇ ◇



 そんな流れでタイドプールに敵の補充、残滓の討伐、ばら撒く餌にする一般生物の撃破、そして新たな成熟体と登場と共に再び敵の補充というループになっていた。

 その途中で無事にLv29に到達した上で、上限になるLv30までの必要経験値の3分の1くらいまでは稼げた! いやー、ほんと美味い、美味い。


 さてと、もう少しで1時間経つし、今回の一巡での残滓の討伐は残り1体! そろそろ終わり時って感じだけど……うん、なんか凄い事になってるんだよなー。


「えっと、忘れ者の岩場での順番待ちの待機場所ってここで合ってる?」

「おう、合ってるけど、PTで並ぶ場合は5人以上なー。満たない場合はソロとか2人組とかと一緒になってくれ」

「1人なら俺らのPTに来るか? 空いてるぞ?」

「あ、そうしてもらえるとありがたいよ!」

「おっしゃ、PTメンバー勢揃いで到着! これ、空きってどんなもん!?」

「多少の開始のタイミングのズレがあるから、その分だけズレはあるが、あと2〜3PTってとこだな」

「よし、それなら19時からすぐ狩れる!」


 気付けばいつの間にやら崖上の方にタイドプールの空きが出来るのを順番待ちしている集団が発生していた。途中まではタイドプールに空きがあったから順次埋まっていったけど、定員オーバーになってこんな状況になっている。

 どうも整理役をしてるのが、成熟体の討伐の連結PTに入る順番待ちをしてる人なんだよなー。そっちは一戦ごとに交代みたいだけど、それでも普段より安定して成熟体の討伐が狙えるって事で悪くはないらしい。まぁ思いっきり2つの順番待ちの中でバーベキューやら特訓やら情報交換やらをしてて暇そうではないけどね。


「これでトドメなのさー! 『連速投擲』!」

「見事なのである、ハーレ殿!」

「お疲れさん、ハーレさん」

「さて、そろそろ切り上げと言いたいところだが、これは一般生物を餌としてばら撒いてから交代をするべきか、それともそこは任せて交代した方がいいのか、どっちだ……?」


 あー、確かに言われてみたらそうなるのか。まだ交代をしたのはどこも出てないし、微妙に判断が困るところ……。ふむ、どうしたものか?


「それならば単純な話である! 聞けば良いだけであるよ!」

「あ、そりゃ確かに」

「という事で、少し聞いてくるのである!」


 分からなければ聞けばいい。うん、単純かつ明確な答えが返ってくる手段だよね。さてと、とりあえずその辺を聞きに行ってくれた刹那さんが戻ってくるまでは待機だなー。


「これ、サヤとヨッシさんは戦闘出来るのか?」

「さっき聞こえてた範囲ではまだ微妙に空きはありそうだから、タイミング次第だな」

「場所が限られるというのは難儀なものだな。なぁ、疾風の」

「インスタンスエリアじゃねぇから、仕方ない部分でもあるがな。なぁ、迅雷の」

「……確かになー」


 各プレイヤー単位やPT単位で専用エリアが用意されるインスタンスエリアならこういう順番待ちは発生しないけど、それだと今みたいなバーベキューをしながらワイワイと騒いで待つという光景はないだろう。

 それに、競争クエストに向けて交流がなかった人と交流したり、情報交換をする良い機会でもあるよね。まぁ俺らは待ってないけども。


「皆、一般生物については放置で良いそうである! 敵が補充されてから動く方が面倒との事!」

「あー、そういう理由か。それならこれで離れるけど、みんなは良いか?」

「もう制限がかかるし、問題ねぇぜ。なぁ、迅雷の!」

「あぁ、問題ないな。なぁ、疾風の!」

「それじゃ私達はとりあえずここまでなのさー! サヤとヨッシに関しては運次第なのです!」

「ま、こればっかりは運というかタイミングが絡むから仕方ねぇな」


 よし、そういう事で方針は決定! それにしても成熟体についてはほとんど海中戦ばっかだったみたいで、具体的にどんな戦いをしてたかはさっぱりだ。

 流石に電気の昇華魔法を使わない戦い方だと敵の補充までにそれほど時間の余裕がなかったから聞けなかったんだよね。晩飯を食った後に余裕があればその辺を調べとこ。


「それじゃアル、とりあえず崖上まで移動して交代で!」

「おうよ!」

「拙者はこれから海エリアの方に戻るのでこれにて御免! そのうち進化して落ち着いたら、アンモナイトへのリベンジをしに行くのであるよ!」

「だな! その為にも群集クエストを進めないといけないか!」

「そうなのである! それではまたの機会に!」


<刹那様がPTから脱退しました>


 そうして挨拶を済ませてPTから抜けていった刹那さんは海の中へと飛び込んでいった。今はあの成熟体のアンモナイトと戦えるような環境ではないだろうけど、前に約束したようにリベンジには行かないとね。


「腹が減ったな、迅雷の」

「確かにそうだな、疾風の」

「「一度飯にしよう!」」

「という事で、今回は世話になったな」

「また一緒にやる事があれば頼んだぜ」

「こっちこそ、またその時はよろしく!」

「「ではさらばだ!」」


<迅雷様がPTから脱退しました>

<疾風様がPTから脱退しました>


 そうして風雷コンビはどこかにあっという間に駆け出していった。えーと、崖上に行ってログアウトするのかと思ったけど、どこに向かって走っていったんだ? いや、まぁ別にどこでもいいけどさ。



 それから崖上で順番待ちをしている人と交代をして、俺らは崖上でログアウトをしていった。うん、この調子なら今日中にLv30の達成は現実的な範囲だな!

 問題はサヤとヨッシさんが俺らの食事中にLv上げが出来るかどうかが問題だけど……こればっかりは今の時点ではなんとも言えないし、その辺は合流してから考えようっと。


 って事で、アルはサヤとヨッシがログインしてからになるけど、俺とハーレさんは晩飯の為に一旦ログアウト! あ、そういやいったんからスクショのコンテストの報酬をもらってこないとね。スキル強化の種を何に使うか悩むよなー。



【ステータス】


 名前:ケイ

 種族:同調強魔ゴケ

 所属:灰の群集


 レベル 28 → 29

 進化階位:未成体・同調強魔種

 属性:水、土

 特性:複合適応、同調、魔力強化


 群体数 462/8100 → 462/8250

 魔力値 126/230 → 126/232

 行動値 6/85 → 6/86


 攻撃 87 → 88

 防御 150 → 153

 俊敏 109 → 111

 知識 229 → 234

 器用 257 → 263

 魔力 339 → 347



 名前:ケイ2nd

 種族:同調打撃ロブスター

 所属:灰の群集


 レベル 28 → 29

 進化階位:未成体・同調打撃種

 属性:なし

 特性:打撃、斬撃、堅牢、同調


 HP 5267/9650 → 5267/9850

 魔力値 108/108 → 108/109

 行動値 75/75 → 75/76


 攻撃 338 → 346

 防御 307 → 314

 俊敏 256 → 262

 知識 82 → 83

 器用 104 → 106

 魔力 54 → 55

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