第985話 緊急クエストの進め方
集まってきた成熟体の人達によって、あっさり過ぎるほどにリュウグウノツカイは倒されていった。……うん、やっぱり進化すると格段に強くなるもんだね。
「くっ、刻印石は出なかったか……」
「こっちも外れ!」
「早く手に入れたい……」
「わっはっは! 出たぜ、刻印石! どの刻印にするか、悩むぜ……!」
「あー、いいなー。受け渡し可能なんだし、何かと交換しない?」
「あ、流石にそれはお断りで」
「だよねー。うん、言ってみただけー」
「倒したら成熟体の奴は崖上の方に移動しておくぞ! 邪魔はするなよ」
「了解だ、リーダー!」
「まぁそこら辺は仕方ないよねー」
「再出現の可能性に賭けて待機しとくか」
そう口々に言いながらベスタを筆頭に成熟体の人達は崖上へと移動していった。どうもこの場を立ち去るつもりは特になさそうである。まぁ敵の成熟体の出現がさっきのリュウグウノツカイだけとは限らないか。
とりあえず俺らが使ってたタイドプールは……なんか海水の量が減ってるのは別に良いとして、何もいないままか。他の場所は、戦闘中の場所と餌探しをしてるとこで分かれてるっぽい。……明確に雷属性っぽいイノシシの人がいるけど、俺らのを見て盛大に電気魔法を使うのは控えてそうだなー。うん、俺でもそうするよ。
風雷コンビはまだ餌をばら撒いてるし、6人で分散してやる事が風雷コンビに集中しちゃってるんだな。
「って、あれ? 同じPTメンバーが仕留めた一般生物のアイテムって、全員に分散されなかったっけ?」
「はっ!? ちょっと離れたら無理だけど、今回の戦闘の距離ならそうなるはずなのです!? バグ報告をした方がいいですか!?」
「……拙者が思うにこれはバグではなく、昇華魔法での一掃を減らす為な気がするのであるよ」
「おそらく刹那さんの意見が正解だろうな。急いで倒しても、別のところで時間がかかるように設定されてそうだ」
「あー、やっぱりそんな感じかー」
「あぅ……そう言われるとバグじゃなくてそんな気がするのです……」
バグの可能性がない訳じゃないけども、これって刹那さんの言うように乱獲防止の仕様な気がする。そうじゃないと今みたいに暇を持て余すって事になる訳だしさ。
早く倒せば倒すだけ無尽蔵に敵が出てくるなら、電気の昇華魔法が使える人が最適解になり過ぎて寄生って事になりかねない。まさしく今の俺らの状態がそれだしな!
「みんな、次の一戦はどういう風にやる? 昇華魔法は封印として」
「はい!」
「ハーレさん、どうぞ」
「アルさんが上空に魔法産の海水を用意して、ケイさんと刹那さんがタイドプールに入って、アルさんの海水の中に打ち上げるのはどうですか!? それでそれを風雷コンビに倒してもらうのです!」
「おぉ、それは良い案であるな! 拙者は峰打ちでやれば良いのである!」
ほほう、その作戦は確かにありだな。てか、タチウオでも峰打ちとかになるんだ? いや、確かに刀っぽい姿だし、刃に見えない側が峰って事になるのか。
「我らはそれで構わん! なぁ、疾風の!」
「おうともよ! なぁ、迅雷の!」
「風雷コンビがそれで良いなら別に良いか。あ、でもハーレさんはどうするんだ?」
「私は仕留め損ねて、海水から落ちていくのを狙い撃ちをして仕留めるのさー!」
「……なるほどね。それじゃその方向でいくか!」
「「おう!」」
「つっても、敵の補充があってからだがな」
「ふっふっふ、補充の敵はいつでも来いなのさー!」
「そうであるな!」
ま、敵が補充されない事には次の一戦に移れないのは間違いない。とはいえ、それがどのタイミングで実行出来るのかが分からない。
あ、風雷コンビ以外にも海へと餌をばら撒く人達がチラホラと見え出したね。うん、これはいた敵を倒し終わったタイドプールが増え始めてきたみたい。
「刹那さん、海側の様子はわかるか?」
「ジンベエ殿とフレンドコールを繋いではいるのであるが、今はよく分からないのであるな。思った以上の乱戦のようで、下手に話すと邪魔になりそうなのである」
「……そんな状態なのか」
うーん、ここからじゃ分からないけど、海の中は海の中で大変っぽい。陸地側の方は全体的に一度落ち着きそうな雰囲気にはなってるんだけどなー。てか、そこの海の中にはジンベエさんが来てるのか。
「っ!? ジンベエ殿、それは本当であるか!? ……承知! 拙者の方で伝えておくのである!」
「刹那さん、何があった?」
「海底の岩の隙間から巨大な成熟体のクエが出現して、周囲の敵やプレイヤーを食べまくり始めたそうである!」
「ちょ、マジで!?」
「……クエ……ジュルリ」
「……そういやクエって高級魚だったな」
餌をばら撒くのは、この成熟体のクエを引っ張り出す為のものか! ……でも、ここからそれがどうなる? 成熟体の再出現だけなら俺らにはこれといって利益はないし、敵の補充は――
「わー!? 急に波が高くなったのさー!?」
「ちょ、これって最初の演出と一緒じゃ!?」
「もしかしてこれは成熟体の敵が発生させてるのか!? とりあえず俺らは上空に退避しておくぞ!」
「ほいよっと!」
今はアルのクジラの上に乗って上空にいたままだから、この大きな波については安全圏ではある。ははっ、どうやら新たな成熟体の登場と同時に敵の補充がされていくみたいだし、さっきのは杞憂か!
「皆、波に呑まれぬように気をつけるのである!」
「全員、波に流されるな! 近くの岩にしがみつくか、波より上に退避しろ!」
「うひゃー!? このパターンは予想してなかったー!?」
「ダメージがどんなもんか分からんから、ともかく直撃は避けろ!」
「防壁魔法でも凌いでみるよ! 『並列制御』『アースウォール』『アースウォール』!」
「助かるぜ!」
そんな風にそれぞれの方法で大量の魚やそれ以外の何かも大量に混ざった波が磯場に押し寄せてきた。……これって海流の操作だったりするのかな? うーん、分からん!
「……あれ? ダメージ皆無って訳じゃないけど、思ったほどダメージはないっぽいね?」
「演出用で、ダメージ量は下げられてる感じみたいだねー」
「ちょ、溺れる! 誰か助けてー!?」
「流されて海に落ちてるネズミがいたー!?」
「ちょっと待ってろ! 『根の操作』!」
「……た、助かった!」
唐突な出来事だったから他の人達も焦ってたけど、流されて落ちたネズミの人は木の人に根で引き上げられて無事だったみたいだね。まぁ今のは咄嗟に対応し切れない人がいても仕方ないか。
まぁそれは置いておいて、パッと見た感じでは今のでここら一帯のタイドプールに敵が補充されたっぽい。これが今回の緊急クエストの進め方か!
「風雷コンビはそのまま上空で待機! そういや魔力値の回復状態は!?」
「全快はしている! なぁ、疾風の」
「いつでも全力でぶっ放せるぜ! なぁ、迅雷の」
「それなら、交互にエレクトロボムかエレクトロインパクトで攻撃! アル、魔法産の海水の用意を頼んだ!」
「「了解だ!」」
「おうよ! 『シーウォータークリエイト』『海水の操作!』 ちょっと高度も下げとくぞ」
「ほいよっと!」
よし、これで本格的に仕留めていく場所の確保は問題なし! 後は俺と刹那さんがタイドプールに入って、補充された敵を打ち上げて行くのみ!
あ、そういや成熟体のクエって……まぁいいか。海中にいようが、海面に顔を出していようが、まだ俺らがまともに戦える相手じゃないしね。
「ハーレさんは無理に全部倒す必要はないからな! その辺は後でみんなでやるから!」
「了解なのさー!」
「それじゃ刹那さん、行くぞ!」
「承知!」
って事で、アルのクジラの上からタイドプールの中に飛び込む! よし、アルが高度を下げててくれたおかげで問題なく着水完了。ふむふむ、ざっと見ただけでも結構な数の魚がいるね。
さて、これらをアルの海水まで飛ばすとなるとどうするのが最適だろう? ……狙いの正確性が必要だし、ここは使い慣れた方法でいきますか。
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 83/84(上限値使用:1): 魔力値 227/230
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値2と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 81/84(上限値使用:1): 魔力値 224/230
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
昇華魔法にならないように、重ならない位置で小石を生成。てか、地味に行動値も魔力値も全快してたよ! まぁあれだけ暇で戦闘行為もしてなかったら回復もしてくれるか。さて、次!
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値を3消費して『土の操作Lv6』は並列発動の待機になり> 行動値 78/84(上限値使用:1)
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値を6消費して『土の操作Lv6』は並列発動の待機になり> 行動値 72/84(上限値使用:1)
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
よし、これで小石2個をそれぞれ支配して、それを追加生成で合計6個の操作に変更。タイドプールで海より狭いとはいえ、相手は泳ぐ魚がメインだ。他にもウミウシとかタコとかもイカも見えるけど、敵がなんであっても正確に捕まえなきゃいけないもんな。
「ケイ殿、拙者が追い込むので、打ち上げるのを任せても良いであるか!?」
「あー、連携してやるのか。俺はそれでもいいぞー」
「ではそのように! これは拙者1人ではまだ扱い切れないのであるよ。【我が身を数多に変化させよ! 多重分身の術! 翻弄せよ、我が身を荒れ狂う刃として!】」
「ちょ!? 合計4体!?」
しかもヒトデと繋がってるのは1体だけ? もしかして前よりも数が増えているこの分体って、常に接してる必要はないのか!
あ、刹那さん1人じゃ扱い切れないって意味が分かった。これってちゃんと狙いが定められてる訳じゃなくて、闇雲の振り回してるだけだ。でも、刹那さんの無差別な攻撃に反応している魚は多いな。
出来るだけ同時に狙いたいとこではあるけど、多少の外しはこの際許容しよう。そして、今回は速度重視で使用時間については考慮に入れない方向で。間違っても一般生物の魚に無駄撃ちはしないようにしないとね。
刹那さんに注意が行っている魚をよく狙え。小石も小石の形ではなく、槍みたいに細長く尖らせろ。イメージするのは魚を獲るための銛。狙いだけ個別にイメージして、真っ直ぐに移動させるイメージは共通でいい。
「……よし、今だ!」
6体の魚に向けて、石の銛を一斉射出! おし、良い感じに6体全部に突き刺さってくれた! それじゃこれをそのままアルの用意した海水の中まで持っていくまで! あー、でも海中からじゃ分かりにくいから一度海面に出ようっと。海中だとロブスターでの跳ねる移動はしやすいね。
よし、海面に到着したから突き刺した石の銛ごと、アルの海水の中にぶち込もう。うーん、流石に勢いよく使ったから操作時間はそれほど残ってないか。使い切ってないだけマシだけど、流石にこれでもう1度は失敗しそうだから一旦解除だな。
「ケイさん、ナイスなのさー!」
「ケイ、ナイスだ!」
「どうも! 風雷コンビ、任せた!」
「まずは我がやる! 次はでいいな、疾風の」
「ここは交代でだな、迅雷の」
「それではいくぞ! 『エレクトロインパクト』!」
どっちがやるかとか揉める事もなく普通に順番にやってくれるんだね。うん、それは俺らとしてもありがたい。おぉ、しっかりと6体ともに電気が流れて大ダメージにはなってるな。
そういや、これって俺が魚を石の銛で突き刺しているから落ちていく様子はないね? あれ、これってハーレさんの出番があるのか?
「おっと、倒し切れてねぇな! やらせてもらうぜ、迅雷の!」
「あぁ、分かっている、疾風の」
「んじゃ次は俺だ! 『エレクトロインパクト』!」
「おー! でもまだ生き残ってるのさー!?」
あー、流石に昇華魔法に比べると威力は格段に下がるんだな。残滓とはいえLvがLvだし、エレクトロインパクト2発と俺の串刺しでは仕留め切れなかったか。でも、それでも充分な程に弱ってはいるね。
「アル、一旦海水は解除! ハーレさん、連速投擲で仕留めろ!」
「お、そこで決めていくか。海水の操作、解除!」
「了解なのさー! 『連速投擲』!」
魔法産の海水は魔法産の水みたいに表面に弾性を設定する事が出来ないからハーレさんの投擲の邪魔にはなりにくいだろうけど、海水が無い方がダメージは出やすいはず。ハーレさんがしっかりと狙って、銀光を放ち始めた連続投擲で綺麗に仕留めていってるね。
「あ、1体だけ残ったな」
「あぅ……微妙に連撃の強化が6体分には足りなかったのです!?」
「ならば、最後は拙者にお任せを! 【風遁・空斬り】!」
「お、刹那さんナイス!」
えーと、ヒトデで空中浮遊を使って浮いて、ウィンドボム辺りで加速させて、タチウオの方で何かの斬撃スキルを使ったっぽい? 相変わらずのオリジナルの名称っぽいから、やってる事は推測するしかないよなー。
今は結構知ってる未成体だから分かるけど、成熟体に進化したら本気で何をやってるのかが分からなくなりそう。……地味にやってる事はとんでもないんだよな、刹那さん。
「あぅ!? トドメを持っていかれたのさー!?」
「やや!? これは失礼を!」
「刹那さん、次のトドメは私がやるのさー! だから、海中の方をお願いするのです!」
「承知! それでは次の獲物を狙いに行くのである! ケイ殿、同じ手順でやるのであるよ!」
「ほいよっと! アル、海水の再生成を頼んだ!」
「おうよ。『シーウォータークリエイト』『海水の操作』!」
「この調子でどんどん狩ろうではないか、疾風の!」
「おう、どんどんやってくぜ、迅雷の!」
なんだかんだで6人全員分の役割が分散してるし、一般生物の方についてはまだ手つかずだ。さーて、とりあえず未成体の残滓を全部倒すとこからだな!
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