第979話 磯場のある場所へ


 思いっきり緊張しまくったけども、なんとかコンテストの結果発表は見終えた。結果としては俺らは結構良い方だったと思う。なんというか、とびきり参加者が多かったっぽいラックさんの最優秀賞のスクショで結構な人数にスキル強化の種2個が配られてそうだよな。

 灰の群集としては嬉しいとこだけど、そういう側面で考えると赤のサファリ同盟がやばい。元々強い人の集団に更なる強化手段は本当にやばい。どの程度の人が参戦してくるかにもよるけどさ……。


「報酬の受け取りは、晩御飯を食べて戻ってくるタイミングでかな?」

「時間のロスは減らしたいし、その方が良いかもね」

「だなー。俺もそれでいいぞ」

「今は先に移動が優先だしな」

「それじゃそれで決定なのさー!」


 という事で受け取りはこれからすぐにではなく、晩飯を食べた後に各自で貰ってくるのに決定。今の時刻は17時半だから、そろそろ緊急予告の推測場所に向かわないいけないしね。


「ところで、アル。磯場ってどこにあるんだ?」

「あぁ、それか。俺が行こうかと考えてるのは荒野エリアの近くだな。結構前にソヨカゼ草原って行っただろ。あの東側にある場所だ」

「……荒野エリアときたか。てか、ソヨカゼ草原の東側かー」


 あそこに前に行ったのっていつだっけ? そもそも殆ど荒野エリアには行った事がないから、あの辺のエリアの情報はさっぱりだな。


「それって近過ぎないかな?」

「……干潟なら離れた場所にもいくつかあるんだが、磯場で思いつく場所は他にねぇんだよ。厳密にはあるにはあるんだが、赤の群集や青の群集のエリアに近いぞ?」

「あ、それは仕方ないかな……」

「まぁ荒野エリアから行く場所って事で、意外と知られてない穴場ではあるがな」

「はい! アルさん、それはどういう風に穴場なんですか!?」

「あー、それの説明はするが、その前に移動だ。話の続きは荒野エリアに行ってからにするぞ」

「それもそだなー」

「確かにそうなのです!」

「って事で……そういや全員乗ったままか」


 あー、降りてもよかったはずだけど、降りずにそのままスクショの結果発表を見てたよ。うん、まぁ今更言っても遅いし、特に問題もなかったから大丈夫だろ!


「それじゃ、荒野エリアに向けて出発なのさー!」

「「「おー!」」」

「おうよ! とりあえず今は速度は控えめにしとくぞ」

「ほいよっと」


 そうして、久々の荒野エリアへと移動していく事になった。ふむ、穴場とは言っていたけど、どんな風に穴場なんだろうね?

 まぁとりあえず移動しながら聞いていきますか。とはいえ、ミズキから森林深部へ転移して、そこから更に荒野へ転移だから、そこまで終わってからの方が良いだろうな。



 ◇ ◇ ◇



<『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』から『始まりの荒野・灰の群集エリア4』に移動しました>


 そして、久々にやってきました、荒野エリア! 群集拠点種のサボテンである……えーと、確かキズナだっけ? キズナは相変わらずデカいなー。デカいサボテンならテスト期間前に砂時計の洞でも見たけど、あっちよりもこっちの方がデカいね。


 それにしてもキズナの近くは水や草花は生えているけども、全体的に荒野というだけあって不毛な地だなー。うん、他の群集拠点種の近くに比べても明らかに人は少ない気がする。

 模擬戦をしてる人も荒野エリアは少なそうな感じだなー。まぁ殺風景な荒野だと、エリア的な人気はあんまりないか。逆に何かイベント事を……。


「あ、そうだ! アルに聞こうと思って、そのまま忘れてた!」

「ん? あぁ、そういや何か聞きたい事があるって言ってたのを後回しにしてもらってたな。どういう内容だ?」

「あー、聞くのは聞くけど、ちょっとだけ待って。さっさと乾燥に適応するから」

「……そりゃケイには必須だな」

「冗談抜きで死にかねないからなー」


 冗談抜きで俺の天敵は乾燥である。まぁでもそこは専用の対処アイテムを持ってるから問題なし!


<ケイが『特性の種:乾燥適応』を使用しました>

<ケイに『乾燥適応』が一時特性として付与されます>


 よし、これでここへの適応は完了っと。ふー、乾燥だけは本気で対策しないとコケもロブスターもアウトだから困る。

 そういやみんなは……あー、アルは木の水分貯蔵で平気なんだっけ。サヤとハーレさんはそもそもクマとリスは平気……というか、今はサヤの竜も平気そう。ヨッシさんは……暑さに弱いだけで乾燥自体は問題ないか。


「よし、それじゃ話は移動しながらで!」

「おうよ。ここからは少し飛ばすぜ。『略:高速遊泳』!」

「久しぶりの荒野なのさー!」

「ここは相変わらず殺風景かな」

「まぁ荒野だしね」


 そんな風に言いながら、東へ向かって移動を開始していく。って、ちょっと待った。え、前にソヨカゼ草原に行った時って南に行かなかったっけ?

 あ、そうでもないか。確か共闘クエストの時にもボス戦で来たはず。その時は南には向かわなくてもエリア切り替えになってたっけ。


「アル、荒野エリアとソヨカゼ草原のエリア切り替えの位置関係ってどうなってんの?」

「あー、それか。ちょっとここは変わってて、東から南東部分がソヨカゼ草原に繋がってんだよ」

「……東と南で分かれてないのか」

「あぁ、そうなる。他の隣接エリアも説明しとくか?」

「いや、今は他の話もあるし別にいいや。サヤ達もそれでいいか?」

「うん、問題ないかな」

「その辺りは何か用事があった時でいいよ」

「それよりもケイさんの聞きたい事を優先なのさー!」

「どうやら問題はなさそうだな」


 ふー、ここで脱線しても問題はないけど、俺が聞きたい事をまた忘れたら困るからね。さて、これはあるのかないのか、そこが重要だ。


「それで、ケイ、聞きたい事ってなんだ?」

「えーと、模擬戦とかトーナメント戦についての話だな」

「……何となく内容は予想は出来たが、どういう内容だ?」

「成熟体への進化が足止め状態で、2ndや3rdの育成が進んでるみたいじゃん? それで思ったんだけど、そういう人を対象に幼生体限定や成長体限定の模擬戦とかトーナメント戦とかやってたりしない?」

「あー!? それは面白そうなのです!?」

「……進化階位の制限付きのトーナメント戦って事だよね?」

「それ、面白そうかな!」


 お、なんか女性陣3人が食いついた。これって制限はありまくるけど、アイテム狙いの参加はしやすいと思うんだよね。情報ポイントは全キャラで共通の仕様だから、3rdを作った直後でも使えるはずだし。


「……それはあるにはあったが、上手く回らなかったってとこだな。ただ、学生組が戻ってきて、成熟体への進化が進み出したらやりやすくはなるか」

「え、あったけど失敗してたのか?」

「灰のサファリ同盟に学生組が多かったって言ったろ。他にも地味に開催する共同体の方が安定してなくて、参加者を募っても中々上手く纏まらなくてな。小規模のなら普通にあったが、大規模なのは無理だったんだよ」

「あー、そういう影響があったのか」

「そういう事だ。どうしても大規模になると待ち時間も発生するし、その間に変にLv上げもしにくいし、勝ち抜いた人以外は熟練度にも経験値にもならんから、普通にLv上げに行く方が多かったぞ」

「……なるほど」


 うーん、進化階位限定でトーナメント戦自体は考えてた人はいたけど、それを実際に行うには色々と不安定な状態だった訳か。確かに今のを聞いてみたら、そりゃそうだよなって思う。

 あー、俺の考えが甘かった? いやでも、色々な状況が安定さえしてしまえば、不可能でもなさそう?


「ただ成熟体への進化が安定して出来る状況になれば2ndや3rdの育成を急ぐ必要も無くなるし、開催役の共同体も安定したら可能にはなるだろうよ。それこそ今頃、開催の計画を立ててるんじゃねぇか?」

「もしやるなら、3rdを作ってみんなで出るのさー!」

「え、でもアルが無理なんじゃないかな?」

「あー、俺の事は気にしなくていいぞ。いない間に小規模のなら参戦してたしな」

「アルは既にやってたんかい!」

「あはは、そうなんだね」


 そういうトーナメント戦にアルが既に参戦済みだとは思わなかったよ。まぁここでアルに配慮をしたら、俺らの3rdは未成体までトーナメント戦に出たらいけない事になるもんな。


「ま、どっちにしてもケイ達は3rdの解放が先だろ。それに成熟体への進化が安定してからじゃないと、流石に無理だろうしな」

「……まだ時期尚早か」

「そういう事だ。参戦については俺への配慮はいらんが、どっちにしてもまだ先の話だ。出来る時期になれば、自然とそういう話は出てくるだろ」

「確かにそりゃそうだ。ともかくLv30到達が最優先だな!」

「はーい!」

「何事も順番にかな!」

「今、最優先は磯場への移動だね」


 うんうん、結論としてはそういう事になるよな。思い付いたからって、すぐに実行に移せる訳じゃないのはよく分かった。幼生体や成長体での進化階位限定の模擬戦やトーナメント戦についてはしばらく棚上げの話題だな。


「おし、それじゃ磯場が穴場な理由を説明していくか」

「その理由が思いっきり気になるのさー!」

「だよなー」


 穴場になるにしては初期エリアに近過ぎる気もするし、そこまで特殊な場所なのか? うーん、ここら辺は聞いてみないとよく分からん。


「ここから行く磯場はもう命名クエストは終わって『忘れ者の岩場』ってエリア名なんだがな?」

「……『忘れ者の岩場』? え、何か忘れていくのか?」

「その辺が穴場ってとこに関係してるんだよ。基本的に『忘れ者の岩場』はリアルの時間での日中は海の中に沈んでいて16時過ぎくらいから少しずつ岩場が出てくるんだが、18時以降は特に旨味がなくてな?」

「それってどういう事かな?」

「根本的に潮が引いてる時には固定の敵がいねぇんだよ。18時以降は潮が引いて潮溜まり……タイドプールが出来て、その中に敵がいるようになる。ただし、敵のLvはバラバラだ。潮が満ちてる時には、普通に海の敵はいるらしいがこれといった特徴はないんだよ」

「……もしかして、潮が引いた後はタイドプールに取り残された敵しかいないの?」

「おう、ヨッシさん正解だ。敵のLvが安定しないから狩場として成立しないのと、決して足場が良いとは言えないからな」


 ふむふむ、確かにそれは狩場としては不適格にも程がある。……わざわざ出向いたのに雑魚ばっかとか、逆に強敵ばっかとかなる可能性もある訳だ。

 あー、だから『忘れ者の岩場』か。魚達が置き忘れられていってるんだなー。


「ちょい待った! なんでそれが穴場?」

「さっき言った敵の特殊さと、場所の問題だな。後で現地を見たら分かりやすいだろうが、パッと見では磯場があるのが分からないんだよ。だから、他の群集の目を避けてフィールドボスの連戦をしたい人には穴場になっている。近くのエリアでLv20の成長体も確保しやすいしな」

「……ソヨカゼ草原から、普通には見えないのかな?」

「ソヨカゼ草原の東側って崖になってんだよ。その下が半日だけ陸地になる『忘れ者の岩場』だ」

「確かにそういう条件なら穴場だね」

「赤の群集の人は来ないのー!?」

「全く来ないって事はないらしいが、灰の群集でも穴場扱いだからな。よっぽどの事がなければ、早々来ないだろうよ」

「……なるほど」


 ここまでの話を聞く限りでは、フィールドボスの連戦をしたい時でもなければあまり来るような機会はなさそうな場所だな。

 それにフィールドボスの連戦が出来るみたいだけど、他の初期エリアに比べて人が少なめの荒野エリアの近くだから、人の集まり方は良いとも思えない。まぁだからこそ穴場なんだろうけどさ。


「でも、潮の満ち引きがここまで影響してるエリアなら、夜からの緊急予告の対象エリアの可能性は高そうかな!」

「下手すりゃ、干潟よりもボーナスな可能性もあるかもな?」

「それに関しちゃ、実際になってみるまで分からねぇぞ。一種の賭けだからな、今回のは」

「ふっふっふ、それはどこに行っても同じなのさー! 敵のLvが不明なのは同じなのです!」

「うん、そこはそうだよね」

「ま、そりゃそうだが……。まぁその辺は実際に発生してから考えるか」

「だなー」


 こればっかりは元々のエリアの適正Lvを参考にして良いのかも分からないし、時間が来てからどうなるかを見るしかない。

 まぁダメならダメという結果は分かるし、ボーナスが発生するのは今日だけじゃないっぽいからそういう情報は重要だもんな。……どこがどのLv帯なのかが判明した後は混雑しそうだけど。


「……そういえば、海エリアの人にとってはどうなるのかな?」

「え、サヤ、どういう意味だ?」

「あ、そっか。潮が引いて陸地になった部分がボーナスエリアになるなら、海エリアの人にはあんまり良い影響じゃないよね?」

「そういえばそうなのです!? それじゃ海エリアの人向けの場所もどこかにあるのー!?」

「……あるかもしれんが、そっちの情報は全然知らねぇぞ?」

「……ちょっと考えてみるか」


 基本的に俺らの活動範囲が陸だからそっちの基準で考えてたけど、よく考えたら海エリアの人にもボーナスエリアの存在は必要になるもんな。

 海エリアの人も地上で狩れという可能性もあるにはあるけど、それはそれで不公平感はある気がする。だから何か用意されている可能性は高いはず。多分、海の中の方で。


「潮が引いてるって事は、海の方も浅瀬にはなるよな?」

「まぁそうなるが……何か得する事があるか?」

「……ないよなぁ」


 浅瀬になったら海エリアの人が来にくいだけになるし、それで何か良い事があるとも思えない。何がある? どういう要素が隠れてる? 考えろ、考えろー!

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