第978話 第1回のコンテストの結果 下


 さて、赤の群集の団体部門までは見終わった。次は青の群集での団体部門だけど……ここは関係してるのが全然ないから、ただ単純に見るだけになりそうだね。念のため、一応確認しとくか。


「青の群集で、俺らが参加して通ってるのって無かったよな?」

「……俺の知る範囲では覚えはないな」

「確か無かったと思います!」

「うん、私もそうだったと思うかな?」

「……発火草の群生地での合同撮影会の待ち時間の演出で、何か通ってれば良かったんだけどね」

「まぁ駄目だったもんは仕方ねぇとして、とりあえず見ていくか。早くケイとハーレさんのを確認しなきゃならんしな」

「……だなー」

「あぅ!? また緊張してきたのです!?」


 うん、俺も同じく緊張してきた。……ふぅ、とりあえず順番だ、順番。今はまだ落ち着いて、青の群集の団体部門を見ていくタイミング。

 本格的に緊張するのは、その次だけでいい。……もう何度も緊張しまくってるけども! とにかく見ていくぞー! そしてハーレさんは俺以上に緊張してくれ。それを見て俺は落ち着く。


「ケイさん、それはお断りなのさー! むしろケイさんがもっと緊張して下さい!」

「……あー、また声が出てたか。俺もお断りだよ!」

「うん、思いっきり言ってたかな」

「というか、発想が同じじゃねぇか……」

「……あはは、流石は兄妹だね」

「「そこは似てても嬉しくない!」」


 あ、思いっきりハーレさんと台詞が被った。おいこら、この手の事を言い出したのは晴香の方が先だったよなー!? 久々にやるか、兄妹喧嘩を!


「それ以上はストップだ、ケイ、ハーレさん。緊張して仕方ないのかもしれんが、少し落ち着け」

「……ほいよっと」

「……はーい」

「よし、それでいい」

「……あはは、アルは強引かな?」

「まぁ、ちょっと緊迫感が無駄にあったしね」


 思いっきり無発声の思考操作で水球を用意されたら、そりゃ頭も冷える。……よし、なんかショック療法なのか、少しは落ち着いた。


「それじゃ見ていくぞ」

「ほいよっと」


 まぁ無駄に緊張してピリピリしてても仕方ないし、ここでハーレさんと喧嘩をしたところで何の意味もないもんな。ともかく今は青の群集の個人部門の確認だ!



・青の群集

   優秀賞:【コイの群れの滝登り】

   撮影者:昇龍


   優秀賞:【魔法の花火よ、乱れ散れ!】

   撮影者:ポップコーン


   優秀賞:【襲い来る雷龍】

   撮影者:コケッコー


    入賞:【ネコ科の競争!】

   撮影者:ジークフリート


    入賞:【逃げろー!】

   撮影者:エルク


    入賞:【瘴気と浄化の対立】

   撮影者:三日月

   

    入賞:【時を刻むモノ達】

   撮影者:アオダイショウ



 お、知ってる人も知らない人もどっちも混ざってるなー。そして撮影してる時の見覚えがあるのが2つほど。……うん、一番下のは個人的にスルーしたい。


「雷龍のスクショってあれだよな。ペガサスの人とニワトリの人が撮ってたやつ」

「そうなのさー! あれが優秀賞だったのです!」

「ん? ケイとハーレさんはコケッコーさんを知ってるのか?」

「いや、撮った人は知らないけど、撮ってた様子は見てたんだよ。偶然近くに居ただけだけど」

「なるほど、そういう事か。面識があるのかと思ったぞ」

「そういう言い方だと、アルは面識があるのかな?」

「あぁ、Lv上げをしてる時にちょっと会ってな」


 へぇ、アルはこの雷龍のスクショを撮った人と会った事があるんだな。まぁ俺らがテスト期間中でいなかった間に、アルにも色々あったんだろうね。

 

「アルさん、どういう経緯で知り合ったの?」

「あー、グラナータ灼熱洞で流れ弾から一緒に逃げた感じだ。あぁ、ちなみにコケッコーさんはペガサスだぞ」

「名前的にニワトリの人かと思ったけど、ペガサスの人かい!」


 いや、ダメな訳じゃないけども! そこはなんか盛大にツッコミを入れたい! なんでペガサスで、コケッコーって名前!?


「……ケイ、そのツッコミは今更かな」

「変わった名前の人は今に始まった事じゃないのです!」

「……そりゃそうだ」


 ふぅ、とりあえず落ち着こう。……今のはもうペガサスの人の方だとは知りたくなかった気分ではあるけど、まぁここでそれは重要じゃない情報だ。他にも見ていきたいし、撮影者については流していこう。


「えーと、コイが群れで滝を登ってるのと、煮付けさん達がやってた魔法での花火の演出が他の優秀賞か」

「ポップコーン……ヨッシ、作れませんか!?」

「え、ゲーム内だとどうなんだろう? 炒めるのに土器の鍋を使えばいけそうだけど、トウモロコシがあるかだね……」

「そういう問題なのかな?」

「……あはは、完全に脱線してるね。ハーレ、それはまた今度ね?」

「はーい! ところでポップコーンさんは『青の野菜畑』の人ですか?」

「……多分会った事がないから分からん。みんなは?」

「俺も会った覚えはないな」

「同じくかな?」

「私も分からないね」


 誰も知らないから、撮影者がどんな人かが分からない。まぁコンテストなんだし、知らない人がいる方が普通だけどなー。


「明確に知ってるのはジークさんとエルクさんくらいかな?」

「……エルクさんってどこで会ったっけ? 名前には覚えがあるんだけど、どこで会ったか忘れた……」

「初めに会ったのは……確か手に負えなくなったフィールドボスが手に負えなくなって助けを求められた時かな?」

「あー! あの時か!」


 そういや川沿いに下っていってる時にそんな事もあったっけ! 確かその時にウナギだったはず! そうだ、そうだ、思い出した!


「後は涙の溢れた地で、タケノコで飛んできてたな」

「はっ!? そういえばそんな事もあったのです!」

「そういやあったなー」


 逆に言えばそれくらいしか会ってはないはず? まぁそれでもジークさんよりはまだ交流があると言えるか。


「雪崩から逃げてるのを撮ったのはエルクさんなんだなー。ウナギとタケノコ、どっちで撮ったんだろ?」

「それを知るには本人か、このスクショの撮影に関わった人に聞くしかないな」

「ま、そりゃそうだ。それに関してはジークさんの撮ってるライオンとかヒョウが競ってるのも同じか」

「そこは桜の不動種の方じゃない? 確かジークさんの1stって草原で不動種じゃなかった?」

「え、そうだっけ?」

「ネス湖で挨拶してた時に、そう言ってたのさー!」

「うん、確かに言ってたかな!」

「撮ってるのは草原エリアみたいだし、不動種で撮っていてもおかしくはないな」

「あー、そう言われればそうだよな」


 うん、草原エリアで撮られていて、そこに不動種としているのならその可能性は高そうだ。まぁだからなんだって話ではあるけど、気にはなるもんな。


「瘴気に侵された海を浄化してるっぽいタチウオのスクショは、あのシャコの三日月さんかな!」

「青の群集だし、このタチウオって斬雨さんか?」

「可能性はあると思います!」

「でも、自分達が関わってないと誰が写ってるのか分かりにくいよね」

「ま、それは仕方ないだろ。写ってる人、全てのプレイヤー名を出されてもどうしろって話だしな」

「確かに撮影者だけでも知らない名前は結構あるもんなー」


 別に具体的に誰なのかを特定したい訳じゃないし、その辺は分からなくても問題ないか。写ってるのが誰なのか分かれば持ってるスキルの推測とかは出来るけど、そこまでやっても撮ってからそれなりに時間は経ってるからあんまり意味もないし。


「さーて、それじゃ……覚悟を決めて、灰の群集の個人部門を見ていきますか!」

「ケイ、待ったかな!」

「待たない! 俺には枝で作られたアナログ時計にしか見えないし!」

「……あはは、ヘビの人達が集まって、数字と長針と短針でアナログ時計にしてるもんね」

「ケイ、投票する時は大丈夫だったのか?」

「……地味に見覚えがないから多分飛ばしてるけど、それで問題なし!」


 今はゲーム内だから苦手生物フィルタの効果が出てるけど、公式サイトのスクショにはそういう機能はないはずだからそれでよかった! というか、プレイヤー名からして、完全にヘビ好きだよなぁ!?


「ケイさんが慌ててる勢いで、そのまま灰の群集の団体部門を見に行くのです!」

「そうするか、ハーレさん!」

「そうするのです!」


 もう緊張とか、なんか吹っ飛んだ! 地味にやってる事は凄いんだろうし、良いと思った人が多かったから入賞してるんだろうけど!

 撮った人達には申し訳ないけど、個人的になんか無理! 苦手生物フィルタがあっても、時計を構成出来るだけの数が集まってるって想像すると……うん、ごめんなさい。


「まぁこれはこれでいいのかな?」

「緊張しまくってるよりは良いんじゃねぇか?」

「勢いって大事だしね」

 

 でも、この勢いのまま、灰の群集の団体部門を見ていけば緊張せずに済む! って事で、表示だー!



・灰の群集

   優秀賞:【みんなで汚れを落とそう!】

   撮影者:カンキツ


   優秀賞:【まだ焼けてないから!?】

   撮影者:焼肉食べたい


   優秀賞:【四面楚歌!?】

   撮影者:ハーレ


    入賞:【敵をみんなで誘導!】

   撮影者:招き猫


    入賞:【後ろー!?】

   撮影者:ケイ


    入賞:【瘴気に敗れる浄化の龍】

   撮影者:ソラ


    入賞:【一触即発のキノコとタケノコ】

   撮影者:ラック


   

 おっ、マジで!? 優秀賞は取れなかったけど、俺の成熟体のクラゲとみんなの集合のスクショが入賞になってる! うっわ、これは嬉しい!


「おっしゃ、俺のやつは入賞!」

「やったー! ライムさんが追い詰められてるスクショで優秀賞をゲットなのさー! ふっふっふ、みんなも関わってたから、これはみんなスキル強化の種が手に入るのです!」


 おぉ、あれって撮影中のハプニングを撮ったやつではあったけど、ちゃんと一連の流れとして俺らもちゃんと団体部門として通ってるんだね。


「ケイ、ハーレ、おめでとうかな!」

「2人とも、おめでとう!」

「おめでとさん。これでみんなにスキル強化の種1個と、アイテムの詰め合わせが1個ずつ……いや、入賞の詰め合わせは2個ずつか」

「だなー。思った以上に、報酬が手に入ってるかも」


 最終的に何個手に入ったかは全部の確認が終わってからにするけど、それなりに数は貰えそうではある。補填で貰ったスキル強化の種はまだ使ってないし、これなら少し余裕を持たせた上で使えそうかもね。

 さて、その辺をしっかり確認していくのは後だ! とりあえず他の受賞作品を見ていこうっと。気になるのは色々あるしさ。


「灰の群集にもいたか、ネタの名前の人! 希望そのままの名前だな!」

「しかもスクショの内容にも合ってるよね」

「サボテンの棘に肉を刺してのバーベキューだし、灰の群集ならこのサボテンはシンさんの確率が高いのです!」

「もう1つの優秀賞は、カンキツさんが撮った灰のサファリ同盟の本拠地スクショだな」

「どっちも、みんなの楽しそうな様子が伝わってくるのです!」

「この感じだと楽しそうってのも、投票する基準だったりするんだろうな。ま、それだけって訳じゃないみたいだが」


 こうして色々見てきたら、大勢で楽しそうにしているのもあれば、必死で逃げてるのもあるし、果敢に強敵に挑むのもあり、綺麗な景色のものもあった。どういうスクショなら突破しやすいという明確な傾向はあんまりなさそうだよね。

 でも、演出をするのも、シンプルに飾らないのも、普通の自然体でも、どれでも通用するというのが分かったのは良かったかも。


「招き猫さんが逃げるイカの誘導のスクショを撮ってたんだね」

「これ、私達はどういう判定になるのかな?」

「あー、これは多分無理だろ。俺らはアンモナイトと戦ってたから、イカの誘導……特にこのスクショを撮ったっぽい終盤には関与してないしな」

「……多分そうだろうな」

「そこは残念だけど、流石に仕方ないかな?」

「あぅ……残念なのです」


 一応全くの無関係ではないから、もしかしたら報酬が貰える可能性もない訳じゃないけど、ここは期待薄だろう。

 成熟体のアンモナイトの方を撮っていたら可能性は高かったんだろうけどさ。ま、そういう事もあるさ。入賞の方ならそこまで悔しくなるほどではないしね。


「あ、俺と紅焔さんの瘴気魔法と浄化魔法のやつも入賞してるな。あー、全体像の構図がソラさんが撮ったんだっけ」

「上空の雲が吹き飛ばされてて、対決の様子も良い感じかな!」

「でも、少しスクショがブレているのです……」

「そこがちょと惜しいとこだね。えっと、これは私達の中ではケイさんとハーレだけの参加のやつだよね」

「そうなるなー」


 どうも全体的な傾向として、サヤとヨッシさんが参加出来てない時の分の受賞が多めだな。でも、何個かはスキル強化の種は貰えそうだし、成果としては上々。


「ラックさんが撮ったキノコとタケノコの睨み合いも入賞してるし、それなりに報酬は貰えそうだよなー」

「スクショを撮るのが上手な知り合いが多くて良かったかな!」

「……結局、誰が何個になったんだ?」


 あ、それは確かに気になるところだね。全部の確認をし終えたから、報酬の数を確認していった方がいいかも?


「えっと、順番に整理してみよっか。まずアルさんはスキル強化の種がラックさんの最優秀賞で2個、ルストさんの団体部門の優秀賞で1個、ハーレの団体部門の優秀賞で1個で、合計4個。アイテムの詰め合わせはケイさんとラックさんとルストさんの団体部門での入賞で6個だよね」

「あー、確かにそうなるか。ケイはどうなる?」

「俺はスキル強化の種がルストさんの団体部門の優秀賞で1個、ハーレさんの団体部門で1個の、合計2個か。アイテムの詰め合わせはアルのに加えて、ソラさんの団体部門の入賞で合計8個か」

 

 多分、これで合ってるはず。うん、アルが貰いすぎなだけで、スキル強化の種が2つは良い結果だろう。


「私はスキル強化の種は、ルストさんの団体部門の優秀賞で1個、自分の団体部門の優秀賞で1個、個人部門で1個の、合計3個なのさー! アイテムの詰め合わせは……えーと、多分ケイさんと同じなのです!」

「私とヨッシは完全に同じかな?」

「多分、そうだね。スキル強化の種はルストさんの団体部門の優秀賞で1個、ハーレの団体部門で1個で、合計2個だね」

「アイテムの詰め合わせは、ケイとラックさんとルストさんの団体部門の入賞で6個かな?」

「うん、多分それで合ってるはずだよ」


 もしかしたら勘違いもあるかもしれないけど、これで誰が何を何個貰えるかの整理は出来たね。アルは最優秀賞のスクショに関わってるからスキル強化の種が特に多いけど、そうでなくてもみんな最低2個は手に入ったんだ。

 まだ使ってない補填で貰った1個も含めたら、結構使いやすくなったはず。……ただ、何に使うか悩むのは変わらなさそうだけどね。


 まぁその辺については追々考えるとして、これでコンテストの結果の確認は終わった。なんとか17時半までには片付いたし、ここから先は移動しながらの話になるね。

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