第960話 テスト期間と掲示板その38


 あー、ちょっと蒸し暑さで目が覚めた。まだ梅雨明けにはかかるけど、晴れた日は気温が上がってきてるから暑っついなー。


「兄貴、起きろー!」

「起きてるわ! ドアを思いっきり開けんな、晴香!」

「あ、起きてた! それなら早く下りてきてー!」

「……なんか妙にテンションが高いな?」


 なんというか今の晴香の様子は、何かを待ち切れずにいるように見えるけど、これは何があった? ん? なんだかちょっと香ばしい匂いがするような気がする?


「今日の朝ご飯は、昨日のバーベキューで残ったお肉を使ったホットサンドなのです! 兄貴に焼いてもらえってメモ書きがありました!」

「……テンションが高い理由はよく分かったよ」


 バーベキューで肉は全部食べ切ったものかと思ってたけど、普通に残ってたんだな。そしてこの香ばしい匂いは父さんと母さんが朝飯として食べていった残り香だね。

 朝からガッツリとしたメニューな気もするけど、たまにはそういうのもいいよな。うん、そう聞くと俺も早く食べたくなってきた。


「って、ホットサンドメーカーなんか家にあったっけ?」

「元々こうするつもりだったみたいで、昨日買ってきてたんだってー!」

「あー、なるほど」


 となると、余った肉というのは正確ではないな。そもそも今日の朝飯用に元々用意していたという方が正しそうだね。

 そして、料理が関わると壊滅的な被害の出る晴香には任せられないから、自動的に俺がホットサンドを作る事になる訳か。ま、ああいうのは出来立てが一番美味いもんな。


「おし、それじゃホットサンドを作るか!」

「やったー!」


 という事で、しっかり目を覚まして台所へ移動! 時間的には全然余裕があるし、ホットサンドは作った事はないけど、作り方は書いてるだろ。まぁ大体の想像も出来るし。



 ◇ ◇ ◇



 ホットサンドメーカーの説明を見ながら、無事にホットサンドを作って食べ終えて登校中である。ホットサンドに挟む肉は漬け込んでいたので、もう確実に元々予定通りだったね。まぁ美味かったけど。


 そうして今日からテスト期間になる学校へともう少しで辿り着く。あー、テストは憂鬱だー。でも学生である以上、避けては通れない……。


 そんな事をぼーっと考えながら、学校に辿り着き、教室までやってきた。今日も一番乗りか。今日くらいは掲示板を見るのはまだいいよな。

 明日からはスクショのコンテストの投票日程を確認するくらいに抑えておかないと、テスト勉強は間違いなく脱線する! ただでさえテスト勉強って、集中力が切れたら脱線しがちなにに。


 さて、とりあえず総合スレから見ていくかー。あの騒動の最中に見てから、その後は見てないもんな。

 運営からの補填に対する反応とか、スクショのコンテストの終了日時の延期とか、その他の反応も少し気になるところだし、ちょっと昨日の朝辺りの部分から見ていきますかね。



【セキュリティロック】総合情報スレ その30【大事件発生!】


1:通りすがりのモンスター

 ここは総合情報スレになります。

 各種エリア、新種族、クエスト情報など総合的に扱っています。


 深く掘り下げたい場合は各種情報の専用スレにお願いします。


 前スレ

 http://*************


176:通りすがりのモンスター

 まさか、全国ニュースにまで発展するとは……。

 オンラインゲームが5タイトル同時に攻撃とかありえねぇ!

 

177:通りすがりのモンスター

 あちこちで大騒動になってんなー。


178:通りすがりのモンスター

 そりゃなるだろ。

 逮捕者、最終的に何人出るのやら……。


179:通りすがりのモンスター

 もう終わった事は良いって。

 それより、補填がどうなるかが問題だ。


180:通りすがりのモンスター

 その辺はいつ決まるんだろうな?

 流石に運営に非がある事件じゃないけど、月額を払ってる以上はその辺はしっかりして欲しいところ。


181:通りすがりのモンスター

 今日はガッツリやる気だったのに、散々なんですけどー!

 あー、もう、犯人許さん!


182:通りすがりのモンスター

 お、12時に補填内容を説明するってお知らせが出たぞ。

 サービスの再開の日時も決定だと。


183:通りすがりのモンスター

 マジか!?

 って、お知らせのお知らせか。


184:通りすがりのモンスター

 とりあえず実行犯は捕まったみたいだから、セキュリティロックの延長はなさそうだね。


185:通りすがりのモンスター

 そこはシンプルに一安心だな。

 後は補填の内容次第か。


186:通りすがりのモンスター

 そこはまぁ12時を待つしかないな。

 下手すると運営はまともに休めてないだろうし、ここは労っておこう。


187:通りすがりのモンスター

 外部の掲示板だと、運営は悪くないのに荒れまくってるもんな。

 ご苦労さまです、運営の皆さん。


188:通りすがりのモンスター

 BANした運営が悪いとか、意味不明な事を言ってたりするしねー。

 どう考えてもBANされるような事をした方が悪い。


 とりあえず12時まで待機ー!


189:通りすがりのモンスター

 実際にプレイしてない奴やBANされた経験がある奴が好き勝手言ってるだけだろ。

 まぁそういうのがあるから個人認証なしの外部掲示板は好かん。


 予定外に時間が空いたし、解禁されたオフライン版の配信でも見てくるか。


190:通りすがりのモンスター

 あ、それは良いかもな。

 でも、オンライン版が出てからオフライン版が解禁になっても、配信するやつっているのかね?

 フルダイブには時間制限あるし、両方は出来んぞ。


191:通りすがりのモンスター

 一般の誰でも配信が出来るようにって配信アプリが軽量化されて、それが実際に稼働になったんだから、人によってはやるんじゃない?

 ほら、配信者を増やす為か投げ銭機能には制限はかかってないしさ。


192:通りすがりのモンスター

 あー、そういや投げ銭機能があるんだっけか。

 それなら小遣い狙いでやる奴もいそうだな。


 ま、見てみりゃ分かるか。


193:通りすがりのモンスター

 そういや超越体までのタイムアタックの配信はやってたな。

 あれは凄かった。


194:通りすがりのモンスター

 何それ、面白そう!?

 その配信のアドレス、プリーズ!


195:通りすがりのモンスター

 ここ、外部サイトのアドレスを貼るのは禁止だぞ。

 確かオフライン版の公式サイトの掲示板の方に、それ用の項目が出来てた筈だからそっちいけ。


196:通りすがりのモンスター

 あ、そういやそうだった!

 よーし、そっちを見に行こう!


197:通りすがりのモンスター

 あー、すまんがリアルタイム配信だけで、アーカイブは残ってないから見れないぞ?

 しかもその1回っきりで、2度目はあるのかすら分からん。


198:通りすがりのモンスター

 な、なんですと!?


199 :通りすがりのモンスター

 それ、オンライン版にいる誰かじゃね?


200:通りすがりのモンスター

 試しにやってみたって事はありそうだよな。



 ふむふむ、なんか興味深い話をしてるけど、基本的には知ってるような話かー。てか、外部の掲示板だと荒れてるんだな。外部の掲示板はそれがあるから見る気になれないんだよね。

 どうしたらBANした運営が悪いなんて発想になるのか分からないけど、どう考えても今回の一件はBANされた奴が悪い。実際に犯罪で逮捕されてるし。


 それにしてもこのタイミングだと考える事はみんな一緒なんだね。俺も配信が解禁されて間もないオフライン版の配信を見てたしなー。

 なんか凄い人が配信をしてたみたいだけど、それは是非とも見たかった。アーカイブとして残されてないのが残念だよ……。


「おーっす、圭吾!」

「……なんだ、慎也か」

「その雑な反応は酷くね!?」

「……いや、単純に今日からテスト期間だと思ったら憂鬱でなー」

「あー、それは分かるぜ!」

「その割には元気だな?」

「赤点さえ回避出来れば問題はねぇ! 水月が次の月額分を払ってくれる条件はそこだ!」

「目標、低いな!?」

「無茶な目標はやる気を削ぐんだぞ!」

「……はぁ、もう勝手に言ってろよ」


 俺は赤点は論外というか、そこまで行くとガチで心配されるから平均点以上は目指す。頑張る以上はそれ以上も目指すけども。


「あ、そうそう! ルストさんから伝言。『昨日はありがとうございました』ってさ。圭吾達はバトルロイヤルには参加せずに、ルストさんと一緒にLv上げに行ってたんだってな?」

「おー、そうだぞ。そういやあのバトルロイヤルってどうなったんだ?」

「いやー、色んな属性の操作や、あちこちから輝き出す銀光や、いくつもの昇華魔法が入り乱れててカオスだったぜ! 正直、何が何だかよく分からなかったぞ」

「あー、だろうなー」


 まぁ人数無制限で、全群集が入り乱れてのバトルロイヤルだ。それくらいの状況になるのは容易に想像がつく。


「それだと実況は無理だったんじゃないか?」

「おう、序盤は全然無理だったな! 特に中継越しじゃなー」

「あー、そういや慎也は現地にいた訳じゃなかったな」


 ルストさんと慎也で中継をしてたんだよな。うん、その場にいても把握し切れなさそうな状況だろうし、それが中継越しになれば尚更無理な事か。


「おら、待ちに待ったテスト範囲の発表をすんぞー! さっさと席につけー!」


 おっと、そうしてる間の担任がやってきたか。あー、憂鬱なテスト期間がこれで開幕……。とりあえず頑張れるだけ頑張るかー。



 ◇ ◇ ◇



 そうして午前中の授業は終わり、昼休みになった。とりあえず昼飯を食おうっと。それから、今朝配布されたデータを眺めてみる。

 一応紙で配られるんだけど、携帯端末で電子データとして読み込めるようにもなってるもんな。大半のクラスメイトが携帯端末で読み込んでから見るけど、一部に携帯端末を持ってない人もいるからねー。

 単純に故障中だったり、遊びに使い過ぎて没収されてたり、そもそも持っていなかったり、人によって理由は様々だけど。


 この配布されたデータでテスト範囲が発表され、テストの日程も完全に決まった。今週1週間がテスト勉強の期間で、来週の月曜日〜木曜日までがテスト本番である。その間は全ての部活動が活動禁止だけど、まぁ俺は部活動はしてないから関係ないや。


 そして今回のテストも、今年度から導入された終了後にすぐに採点が可能な電子ペーパーの解答用紙かー。全国的に徐々に広まってるらしいけど、専用のペンでないと書き込めないんだよな、あれ。

 まぁ自前の筆記用具は用意せずに済むし、カンニングとかの不正防止や、問題の解き方を分析しているとかで、単純な点数以外のとこでも評価してるらしいんだよな。

 そしてテスト中は携帯端末は使用禁止なのは、ずっと前からの事。まぁここは当たり前だけど。

 

「また視力補正の診断提出がいるのはめんどくさ! 毎回テストの度にやる必要あんの!?」

「あー、そういや慎也は視力悪かったっけ」


 そういや視力が悪くて携帯端末のAR機能で視力補正してる人には、視力補正機能しかないAR機器が貸与されるんだっけ。まぁ俺は別に視力は悪くないから関係ないけども。

 慎也の携帯端末は眼鏡型じゃなくて、ヘアバンド型だからなー。ぶっちゃけ自己申告がなければ、視力が悪いかどうかって分からないんだよね。


「視力が悪いって言っても全然見えない訳じゃないけど、あるのと、ないのとじゃ全然違うしな……」

「それはご苦労さん」

「まぁ完全に見えないよりはよっぽどマシだけどなー。あれ、大変そうだし……」


 ん? なんか妙な言い方だな。今の言い方だと、目が見えない人の大変さを直接知っているように聞こえる。まぁ慎也の人間関係を詳しく把握してる訳でもないけど……。


「知り合いに目が見えない人でもいるのか?」

「あー、いるっちゃいるが、今のはなしで! 言いふらすような内容じゃねぇしな!」

「……慎也が気遣い出来てるとか、これから土砂降りか。おい、今日は傘を持ってきてないんだから、降ったらどうしてくれる!」

「その言い分は理不尽過ぎねぇ!?」


 さーて、慎也の苦情は放っておいて、掲示板の続きでも見ていくか。昨日の大半が潰れてるから、それほど大した新情報はないだろうけどなー。



【セキュリティロック】総合情報スレ その30【大事件発生!】


1:通りすがりのモンスター

 ここは総合情報スレになります。

 各種エリア、新種族、クエスト情報など総合的に扱っています。


 深く掘り下げたい場合は各種情報の専用スレにお願いします。


 前スレ

 http://*************


361:通りすがりのモンスター

 12時がきたぞー!

 お知らせの更新だー!


362:通りすがりのモンスター

 補填の内容はなんだ!?


363:通りすがりのモンスター

 ちょ!? これ、マジで!?


364:通りすがりのモンスター

 『スキル強化の種』……だと!?

 それに1時間の間、経験値100%アップの『経験値の結晶』が10個!?

 あ、『転移の実』も10個か。


365:通りすがりのモンスター

 こりゃ奮発してきたな!


366:通りすがりのモンスター

 えー、そうか?

 ログイン出来ない時間を考えたら、最低限のレベルじゃね?


367:通りすがりのモンスター

 おま!? 何も分かってねぇな!?

 1日で10時間、Lv上げで狩り続けるのは正直無理だぞ!?


368:通りすがりのモンスター

 連続で10時間ログインし続けると、それだけでログイン時間に制限が発生するんだぞ!

 間で適度に休憩を入れなきゃいけないから、セーフティの都合で10時間の狩りは厳しい!


369:通りすがりのモンスター

 1時間単位で10回に分けて使えるのはありがたい。

 それ以上にスキル強化の種が破格過ぎる!


370:通りすがりのモンスター

 入手手段がもの凄い限られてるのに、ここで全員に配布とかな!

 未だにLv1から全然上がらないスキルも存在するんだぞ!


371:通りすがりのモンスター

 並列制御とか、どんだけ熟練度が必要なのやら……。


372:通りすがりのモンスター

 あー、そうか。

 そういやスキル強化の種って、Lvがあるスキルにならどれにでも使えるんだった。


373:通りすがりのモンスター

 経験値の増加は、妥当なとこでしょ。

 破格なのは、間違いなく『スキル強化の種』!

 それに地味に『転移の実』もありがたいよね。

 

374:通りすがりのモンスター

 『転移の実』は課金アイテムだしな。

 それがこうやって手に入るのはありがたい!



 ほほう、補填の内容が発表された直後はみんな喜んでるんだな。まぁ俺も『スキル強化の種』が補填で配られたのは驚いたけど、そりゃみんなも驚くよね。どう考えても破格なアイテムだしさ。


 それにしても本当に『スキル強化の種』は何に使おうか悩むなー。うーん、これを考えるのはテスト明けになって、環境の変化を把握してからの方が良いかも?

 それこそ、成熟体からの新たなスキルに使うという選択肢は普通にありだしね。どっちにしてもテスト明けまではログインしないんだから、その辺は考えずにいようか。



 他のスレも眺めて見たけど、昨日の夜は色々と事情が特殊だったからこれといって目を引く書き込みは無かった。まぁ全然ない訳じゃなかったけど、タッグ戦やその後のバトルロイヤルで盛り上がったくらいな情報だったなー。

 タッグ戦はもう俺が見てた通りの内容以上の事は特にないし、その後のバトルロイヤルについては今朝の慎也に聞いたくらいの内容しかなかった。ま、昨日はサービス再開の時間が時間だったから、その辺は仕方ないよね。


「なぁ、ケイ。スクショのコンテストの投票っていつからだと思うよ?」

「あー、そこはなんとも言えないよなー。あんまり脱線はしたくないから、早めに分かると良いんだけど……可能性として高そうなのは、次の定期メンテの木曜日くらいか?」

「やっぱ可能性としてはそこだよな! コンテストの受け付け終了が今日の24時に変わってるのが、事前審査に影響があるかもしれんけど……」

「……予定が狂ってズレ込む可能性か」


 確かにその可能性もあるけど、そこは気にしてもどうしようもない。ま、その辺は毎日公式サイトをチェックして、投票開始の日程は把握しておかないと。

 アルがホームサーバーの方に招待されてくれたら、少し息抜きを兼ねてみんなで選ぶって手段もあったんだけどね。


「そういや慎也はコンテスト用のスクショは撮ってんの?」

「おう、撮って出してるぜ! 圭吾もだよな?」

「まぁなー。流石に個人部門は無理だと思うけど」

「だよなー! 狙うは団体部門、ただ一つ!」

「……地味に赤のサファリ同盟にいるって、ズルくねぇ?」

「圭吾だって、とんでもねぇ人達とよくいるじゃねぇか!? っていうか、圭吾自身も大概だろ!?」

「あー、確かにそれは否定出来ないか」


 うん、そう言われると全然否定が出来ないな。そもそも赤のサファリ同盟の人と一緒に団体部門のスクショを撮ってたりしてたよ。


 あ、そうしてる間に昼休みの終わりの予鈴が鳴ったから、もう時間切れだな。


「さーて、昼からの授業も頑張りますか」

「あー、勉強めんどくせー」


 教師によってはテストで重要な点を教えてくれたりもするから、その辺はしっかりと聞いておかないとなー。ま、ともかくしばらくはテスト勉強を頑張っていこうっと。




ーーーーー


ちょっとお知らせ


Twitterにて命名クエストを開催中です。

よければ参加していってください。


それと第28章は今回の掲示板回では終わりじゃなくて、もう少しありますのでご注意を。

今の章が終われば一旦お休み期間に入りますので、それは改めてお知らせします。

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