第959話 砂漠と海と朝日


 さて、無事に到着したからこれからスクショの撮影を……って、よく考えたらこの位置からじゃ砂漠が写らないじゃん!?


「アルマースさん、こちらです! 砂漠の光景も一緒に撮りたいので、ここでは駄目ですからね!」

「ここだと完全に海のみになるか。ふむ、とりあえずこの崖の上に行けば良いんだな」


 そうしてルストさんが、海岸に面した岩場の洞窟の入り口から上へと登っていく。やっぱり砂漠も写すならそうなるか。


 とりあえずアルがルストさんを追いかけて普通に飛んでくれてるし、周囲を観察しようっと。へぇ、ここは岩場になってるけど、その左右には砂浜みたいに砂漠が広がってるのか。……砂漠という事を知らなきゃ普通の浜辺っぽい感じ。


 てか、崖みたいな岩場なんだけど、ルストさんは根で簡単に登っていくなー。オフライン版で木をやった時には崖上まで根を伸ばして引き上げるみたいなやり方はよくやったけど、今のルストさんみたいに根でジャンプしながら崖を登るのはやった事ないぞ……。


 まぁその辺は今更な気もするから別にいいや。今のうちに色々と余計なものは解除していこうっと。


「とりあえずもういらないだろうから、明かりは消すぞー」

「はーい!」

「ま、これから日の出を見ようってんだから、その方が良いだろうな」


 もうかなり明るくなってきて、日の出間近って感じだからね。別に発動したままでもどうにかなりそうだけど、スクショの撮影の邪魔になってもいけないからなー。


<『発光Lv5』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 25/71 → 25/76(上限値使用:7)

<『移動操作制御Ⅰ』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 25/76 → 25/82(上限値使用:1)


 よし、これで発光も飛行鎧も解除完了! というか、明るさ的にもう夜目も必要ないか。むしろ日の出を見るには邪魔かもね。


<『夜目』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 25/82 → 25/83


 これで良しっと! ふー、まぁ色々とギリギリだったし、結構無茶をした気もするけどとりあえずギリギリ日付が変わる前だから日の出には間に合ったー!


「何とか日付が変わる前には辿り着きましたね!」

「ギリギリ間に合ったのさー!」

「ケイとアルが頑張ってくれたおかげかな! どういう状態か全然見えなかったけど」

「ケイさん、アルさん、移動ありがとね。結構大変だったんじゃない?」

「……正直に言えば、もうしたくないな」

「……あんな方向が変わりまくる場所は流石に勘弁だ」

「それでもやってくれたアルさんとケイさんには感謝なのさー!」


 相当荒っぽい移動にはなったし、二度とやりたくないのは本音だけど、まぁそのおかげで間に合ったから良しとしよう! それにみんながこう言ってくれるなら無茶した甲斐もあったもんだよ。

 途中で轢き逃げみたいに何体か敵を倒してたりもしたけど、分裂したっぽい雑魚ばっかで討伐報酬も無かったから残滓のみだったよなー。ま、強い敵の方が厄介だったから今回はこれでよかったか。


「さぁ、それでは砂漠と海と朝日のコラボのスクショを撮っていきましょう!」

「もちろんなのさー!」


 そして、日付が変わり太陽が海から顔を出し始めてくる。それと同時に予想していた通りにテンションが上がっているルストさんとハーレさんであった。ま、この為に今のルートを大急ぎでやってきたんだから、当然の反応ではあるよね。


「ふむ、演出を色々とやるのもそれはそれで良いですが、この元々用意された自然の風景の

一部分を撮るというのも良いですね! どちらが優れているという訳ではなく、どちらもそれぞれの良さがあります! 朝焼けの海の砂漠と海は、天候の都合でコンテストの期間中に撮るのを諦めていましたが――」


 あー、またルストさんの長い独り言での語りが始まったけど、まぁそこはスルーしとこ。一応俺も記念に撮るだけは撮っとこうかな。

 スクショのコンテストには……ハーレさんが出すだろうし、別に良いか。本来ならコンテストに間に合って撮れるタイミングじゃなかったスクショだもんな。


「あれ? みんなは撮らないのー!?」

「もちろん撮るかな!」

「ねぇ、みんなで集合したスクショも撮らない? コンテストとかそういうのは抜きにして、みんなで来た記念に撮影って事でさ」

「おー! それは撮りたいのです!」

「お、そりゃいいな。ケイ、頼めるか?」

「ほいよっと。遠隔同調で撮ればいいんだな」


 地味にこういう集合したスクショを撮る時には便利な遠隔同調だよね。まぁ俺はスクショを撮るのが上手い訳ではないから、本当ならハーレさんに撮ってもらいたいとこだけど。


「おや、そういう事でしたら私が撮りましょうか?」

「いや、ルストさんも写ってくれ。これはコンテストには無関係なやつだし、ルストさんを除け者には出来ないだろ」

「……そうですか。たまにはそういう記念のスクショというのも良いでしょう! ……やはり遠隔同調が欲しくなってきましたね。ふむ、どういう形にするのが良いのか、非常に悩みます。3rdが解放されるという予測も出ていますし、2ndと3rdで小回りのしやすい小動物と草花の組み合わせもありですね。……まだ確定するにはタイミングが悪いかもしれません」


 あー、なんだかルストさんが考え込んでるけど、遠隔同調が欲しいみたいな事はちょいちょい言ってたっけ。まぁそろそろ3rdの解放はあり得る可能性だし、ルストさんが悩む理由もよく分かる。

 とりあえず今は邪魔しないように、遠隔同調で記念撮影の準備だけしとこ。


<行動値上限を15使用して『遠隔同調Lv1』を発動します>  行動値 25/83 → 25/67(上限値使用:15):効果時間 5分


 さて、これで視界はコケとロブスターの両方が表示されるようになったね。それじゃ、順番にやっていこー!


「ハーレさん、小石を1個くれー!」

「はーい! 背中のコケの上に置いておくのです!」

「サンキュー!」


 さて、ハーレさんがコケをすぐ増殖させられるように小石を置いてくれたから、サクッと増殖だな。この状態なら発動Lvは低くていい。


<行動値を1消費して『増殖Lv1』を発動します>  行動値 24/67(上限値使用:15)

<行動値を1消費して『群体内移動Lv1』を発動します>  行動値 23/67(上限値使用:15)

<行動値を3消費して『土の操作Lv6』を発動します>  行動値 20/67(上限値使用:15)


 よし、これでコケ付き小石の操作と、コケの核を移して視点の移動も可能になった。まだまだ戦闘中では使う機会も少なくて使い慣れない遠隔同調だけど、こういう時には本当に便利だな。

 てか、思いっきり今更だけど今度自前で小石を用意しとこ。別に俺自身が持ってても特に問題もないけど、全然それはやってなかったしさ。


「それじゃ撮るから、みんな並べー!」

「はーい! アルさんが一番後ろなのです!」

「ま、サイズ的にはそうなるな。それに砂漠に降りた方が良さそうか」

「私はアルマースさんの木の前に行きましょう。クジラの頭側だと邪魔ですしね」

「サヤはアルさんのクジラのお腹辺りにで良いんじゃない?」

「竜に腰掛けて、その位置にするかな!」

「私はサヤの頭の上に乗るのです! 」

「ケイはどうすんだ? 地面に降りると微妙じゃねぇか?」

「あー、どうしよう? アルのクジラの背中の上に乗っとくのが無難?」

「そうかもな」

「私はサヤと、アルさんのクジラの顔の間くらいで飛んでるね」

「ほいよっと!」


 さて、バタバタとしながらだけど、各自の位置は決まっていった。まずアルが砂漠に降りた状態で、クジラの側面が見えるように待機。撮影するコケから見て右の方にルストさんで、アルの木の前に陣取っている。

 その左隣に竜に腰掛けているサヤのクマと、そのクマの頭の上に座っているハーレさん。その更に左隣で、アルのクジラに重ならないよう位置でヨッシさんが飛んでいる。俺のロブスターは大体サヤの上の方になる位置で、アルのクジラの上だね。


 そこから全体的に砂漠や海も写るように距離を少し離して、しっかりと朝日も映るように……って、地味に逆光だな。

 とはいえ、まぁそこまでまだ朝日は眩しくないから何とかなる範囲だろう。とりあえず撮ってみて駄目そうなら撮り直せばいいしね。


「それじゃ撮るぞー!」

「「「「おー!」」」」

「えぇ、よろしくお願いします!」


 それじゃスクショを撮影して――


「「「「「「……え?」」」」」」


 って、ちょっと待ったー!? え、そんな事ってある!? いや、水飛沫を上げながら逆光気味の太陽が少し隠れて、キラキラと反射してなんか神秘的ではあるけど……そこで成熟体のデカいクラゲが出てくるってどういうタイミング!?


「これ、ヤバいかも!? 多分思いっきりスクショで撮れた!?」

「わっ! あれって前に見た成熟体のクラゲかな!?」

「今度はケイさんがやらかしたのさー!?」

「……あはは、これは予想外だね」

「……すげぇタイミングだな」

「これは絶好のチャンスではありませんか! 朝日に照らされる成熟体の巨大なクラゲ、良い被写体が出てきましたよ!」


 いくらなんでもこのタイミングでそんなのありかー!? あー、でもまぁいいか。これはこれで思い出の記念のスクショとしてはあり?

 しっかりとみんなが写ってるはずだし、ハプニングとしてもありなはず。やっぱりこれはコンテストに出しとくべきかな。


「さーて、逃げる意味もないから、サクッと殺されますか!」

「ま、そりゃそうだな」

「了解なのさー!」

「それじゃ、死んだら森林深部に戻る感じで良い?」

「んー、全員が死ぬまで待機で良いんじゃないかな?」

「あ、それいいな。それじゃサヤの案を採用で!」

「おうよ! これからの話もしときたいしな」

「はーい!」

「了解!」

「皆さん、死ぬ気なのですか!? いえ、それもありですか。それでは私は全力で襲い来るクラゲを撮影しましょう!」


 だって、変に戦っても今は得する事もないし、もうすぐ側まで迫ってきていて逃げ切れるとも思えないしね。それならさっさと仕留められても問題はない!


「おっ、なんかクラゲの触手が白光を放ち出したなー」


 いまいちまだあの白光するスキルの性質が分からないけど、まぁあれが凶悪な効果を持っているのだけは確定だろう。……それにしても、スクショを撮っただけでこれなんだから、成熟体って凶暴だよな。

 そんな事を考えている間に、白光と銀光が混ざり合ったような触手による連続突きで俺らは全員仕留められた。HPのないコケすらあっさり消滅させるんだからとんでもないな!




 そうして、全員が死亡状態になってその場に漂っている。いやー、見事な死にっぷりだね!


「ふぅ、良いスクショが撮れました! さて、皆さんは私がいたら話しにくい事もあるでしょうし、この辺りで失礼します! それではまた!」


<ルスト様がPTを脱退しました>


「ルストさん、早っ!?」


 俺らが返事するのも待たずにあっという間にリスポーンをして、PTを抜けていったよ、ルストさん。……会話の内容的に気遣ってくれたのか?

 まぁルストさんに変に気兼ねする必要もなく、テスト関係の話が出来るのはありがたいか。でも、今日は色々と助かったってお礼くらいは言わせてほしかったね。


「さて、とりあえず予定外だったけど、お疲れさん! さっきの集合のスクショはいったんに申請を出しとくよ」

「ケイさん、それはコンテストに出すべきなのです!」

「うん、私もそう思うかな」

「完全にハプニングのレアなスクショになったもんね」

「俺もそれが良いと思うぞ」

「あー、やっぱりそう思う? それならログアウトする前にコンテストに出してくるかー」


 今回のは本当にただの記念撮影のつもりだったけど、こうなったら団体部門で出した方が良いよな。珍しい光景とはいえ俺が撮ったやつだから事前審査を通らないとは思うけど、一応森林深部に戻ってコンテストに出してておこう。

 俺以外はログアウトして共生進化に戻す必要があるから、解散はここでした方がいいかもね。でもってアルが話しておきたいのは、俺らのテスト期間についてかな?

 

「さてと、今日はここまでだな。あー、明日からのテスト期間が憂鬱……」

「ま、学生は勉強を頑張ってこいよ。ちなみに戻ってくるのは何日だ?」

「えーと、多分だけど俺は7月6日の木曜がテスト最終日? サヤ達は?」

「多分、極端には変わらないと思うよ」

「うん、多分だけど日程は同じかな?」

「私も多分そうなのさー!」


 具体的なテストの範囲と日程が出るのが明日だけど、確か去年はそんなとこだったと思う。テスト期間になって、1週間の猶予があって、その翌週の月曜から木曜の4日間がテスト本番。

 うん、学校によって多少の差はあるだろうけど、俺の高校はそのはず。サヤ達も同じっぽいし、ここで学校による差がなさそうなのが有り難いか。


「……丁度、定期メンテの日だな。俺もその日は出来るだけ早めにログイン出来るようにするか」

「あー、そっか。アルは仕事だもんな」


 テストの日は午前中には帰れるから、最終日は時間があるもんなー。その辺は地味にアルと時間の都合が合わないけど、まぁそればっかりは仕方ない。


「それじゃこれにて解散! みんなが揃うのはテスト明けって事で!」

「絶対に赤点は取らないように頑張るのです!」

「サヤ、頑張ろうね!」

「意地でもハーレには赤点は回避してもらうかな!」

「憂鬱なテストだけど、頑張るぞ!」

「「「おー!」」」

「おう、頑張ってこい!」


 こうしてテスト期間に入る前の最後の1日は解散となった。俺はさっきのスクショをコンテストに応募してから終了だけど、サヤ達はこのままログアウトかな?

 あ、でもその前に共生進化に戻して森林深部に戻るくらいはするかもね。ま、それでもここで解散になるけどね。あー、ともかくテストは頑張ろうっと。



 ◇ ◇ ◇



 手早く森林深部へ帰還の実を使ってリスポーンして、コンテストへの応募は済ませてログイン場面へとやってきた。

 とりあえずさっきのハプニングのスクショは、ランク5で情報ポイントが500貰えて、合計の情報ポイントは6316になったね。そして、団体部門への応募もやってきた。さて、あれがどうなるかは気になるところ。


 それじゃ今回のいったんの胴体部分がどうなってるかを見てみよう。えーと……内容は変わってないのか。まぁあの騒動だと、早々に告知を取り下げる訳にもいかないよなー。

 さてと今回はさっきのスクショの承諾申請を頼まないとね。これをすればみんながスクショを受け取れるしさ。


「いったん、スクショの承諾申請をしたいんだけど、いける?」

「はいはい、それは問題ないよ〜。それじゃ申請したいスクショを選んでくださいな〜」

「ほいよっと」


 えーと、俺がこれまで撮ったスクショで他のプレイヤーが写ってるスクショの一覧をいったんから手渡された。さっきのスクショは撮ったばかりだから、一番上に表示されている。

 それじゃこの一枚を選択して、承諾を申請するにチェックして、いったんに渡せばいいな。


「いったん、これで頼む」

「はいはい〜。それじゃ承諾申請を出しておくね〜。それとスクショの承諾をお願いします〜」

「ほいよっと」


 そういや色々あって承諾は全然出来てないままだったもんな。さてと、一覧を受け取ったけどどのくらい……って、枚数が多い!?


 あー、発火草の群生地での撮影会で、待機中の演出の際のスクショが相当あるな。……もう今回はなんか全部チェックするのも面倒だし、全部許可でいいや。特に撮られて困るような内容はないしさ。

 それにテスト期間でしばらく離れるんだ。戻ってきた際には今の情報は役に立たなくなってるだろうし、今の状態がバレたところで問題はない。


「いったん、全部許可でよろしく」

「あれ? 珍しいね〜?」

「あー、リアルの都合でしばらくログイン出来ないから、別にいいかなってさー」

「なるほどね〜。リアルの都合は仕方ないけど、また来てくれるのをお待ちしております〜」

「もちろんそのつもりだ! それじゃログアウトでよろしく」

「はいはい〜。それではまた〜!」

「ほいよっと!」


 そうしていったんに見送られながらログアウトをしていった。しばらくゲームが出来ないのは惜しいけど、こればっかりは仕方ない。



 さて、現実へと戻ってきた。あ、テスト期間でもコンテストの投票の開始については公式サイトでチェックしておかないとなー。投票参加で転移の実が10個貰えるんだし、そこはちゃんと貰わないと! 単純にどんなスクショがあるかも楽しみだしね。

 でも、あくまでそこは息抜き程度に抑えて、テスト勉強を頑張っていきますか!

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