第955話 砂時計の洞での戦い方
戦闘中に突然光が強くなったサボテンだけど、ぶっちゃけあれって何をやってるんだろ? 空中を飛んでた大量の半透明で茶色いクラゲを照らしてるっぽいけど。
てか、ルストさんが星空を撮ってた時みたいに真横になって撮ってるよ。うん、まぁ木では上にあるものはその体勢が撮りやすいんだろうな。
とりあえずルストさんは黙々とスクショを撮っていて、俺らは岩場の上で一休み。この砂時計の洞はPTメンバーの人数に合わせて敵の数が増えるみたいだし、グラナータ灼熱洞と同じように全員で戦って1戦ずつ回復していく方が良さそうだ。
さてと、みんな大体の戦い方は把握出来てるだろうけど、ここは明確に整理して共通認識にしておこう。……サボテンの様子も気になるけど、まだ収まる気配はないしそれは後回し!
「グラナータ灼熱洞と同じような感じで、しばらくは行動値と魔力値を回復だな。それと、これからの戦闘の作戦会議ー!」
「だな。今回はケイの土の付与魔法と、サヤとハーレさんの風魔法か風属性を付与した攻撃で、まずは動物側の敵を倒すのが良さそうか?」
「ふっふっふ、私とサヤの出番なのです!」
「ハーレ、ケイさんの付与魔法での支援を忘れてるかな?」
「ケイさんの付与魔法も大活躍なのさー!」
「だなー」
今回は予想外にも土の付与魔法が大活躍だったね。あえて土属性の敵に土属性を強化する付与魔法をかけて、その上で弱点の風属性ダメージを増やす。
ここでの戦い方をスムーズに進めるにはありな手段だよな。出来れば風の昇華持ちがいれば良いんだけど、まだいないから仕方ない。ハーレさんのクラゲか、サヤの竜がそのうち取れそうではあるんだけどね。
「動物側を倒し切ったら、私の毒の出番だよね?」
「ヨッシさん、頼りにしてるぞー!」
「任せて! 毒魔法Lv7を目指して頑張るよ」
「早めにトキシシティ・ブーストが使えると良さそうなのです!」
「そうなれば、ヨッシの毒は更に強力になるかな!」
「うん、そうなればいいね」
ヨッシさんの状態異常の特化の構成であれば、敵の毒の抵抗を下げられたり、自身の毒を強化出来るのは相当強力だ。とはいえ、下げても毒が効かない敵もいるはずだから過信は禁物だけど。
「サヤとハーレさんも、植物のみになった時点で完全に物理に切り替えだな。アル、今回はクジラで近接をやるか? それとも海水魔法?」
「あー、根下ろしをしたデカい木の場合はクジラの突撃で、小さいのはさっきみたいに海水の操作と根の操作の捕獲コンボでどうだ?」
「おー! アルさんも使い分けなのさー!」
「よし、それじゃアルはそういう方向で!」
「そういうケイはどうすんだ?」
「んー、植物側と戦う時の行動値と魔力値の残り量次第? 余裕があれば、その時考える」
「ま、それが妥当なとこか」
「それじゃ基本的にはそんな感じでやってくって事で! あ、ルストさんは俺から指示が出せたらそれに合わせて欲しいけど、特になければ臨機応変によろしく!」
って、あれー? ルストさんはスクショを撮るのに集中してるっぽくて、返事がこないんですけど? ……うん、ルストさんへの作戦指示は後で伝えなおそうっと。
「……とりあえず行動値が全快するまでは休憩! ところで、あのサボテンって何をやってるんだ?」
「さぁな? 無意味な行動とも思えんが……」
「だよなー」
んー、可能性としては硬化草の群生地への入り口へのヒントか? そもそも硬化草の群生地ってまだ発見されてないよな。
あれ、そういやレナさんとダイクさんがここに来てたはずだけど、その成果って出てるのか? うーん、ちょっとまとめを確認してみる? お、共同体のチャットの項目が光ってるし、考える事は同じか。
ハーレ : 硬化草の群生地が見つかったかどうかが気になります!
サヤ : レナさんとダイクさんが見つけてないかな?
ヨッシ : 見つけてる可能性は充分あるよね。
アルマース : それは俺も同感だ。まとめを見てみるか?
ケイ : そだな。確認してみるか。
今はルストさんがスクショの撮影に夢中になってるし、みんなでササっと確認してみよ。あ、探し始めたらすぐに情報が見つかった。
えーと、どういう内容だろう? 大空洞の中に流れてる砂の中に、更なる地下空洞への入り口が隠されてて、その奥に硬化草の群生地があるんだ。へぇ、あのサボテンの周りにある水が流れ込んでいってるっぽいんだ?
でも、地味に自力での戻り方が不明ってなってるよ。ふむふむ、ログアウトすれば望海砂漠に戻されるんだ。……ただしアイテムでの適応はログアウトした事で解除になるから、時間帯によっては戻ってすぐに適応が必要と。まぁそりゃそうだ。
アルマース : 更新情報の欄にあったから、あっさり見つかったな。
サヤ : 命名クエストでエリア名が変わったのが、更新内容みたいかな。
ハーレ : 砂の中に潜れば行けそうなのさー!
ケイ : でも、砂の中での活動はそのままじゃ無理だろ。あ、ここで地中適応の特性の種や実を使うって書いてるか。
ヨッシ : そうみたいだね。とりあえず今は情報の確認だけだね。
ケイ : だなー。いつまでも無言じゃあれだし、天井のあれでも見とくか。
ハーレ : 賛成なのさー!
このサボテンがクラゲを照らしているのが硬化草の群生地の発見に関係してるのかと思ったけど、別にそういう情報はなかったなー。何かありそうな気はしたけど、ただの景色の演出に過ぎないのかもね。
「それにしても天井が凄いのさー!」
「なんというか……説明しにくいけど万華鏡みたいだね?」
「……それよりはプラネタリウムが天井に映し出された感じじゃないかな?」
「んー、なんだかどれもしっくりこないな……」
「これ、あれじゃねぇか。水面が反射して、壁や天井に映ってるような感じだろ」
「「「「それだー!」」」」
「お、おう? 揃ってその反応はびっくりしたぞ」
アルにそう言われてみれば、確かにそういう感じだよな! ちょっと微妙に色合いが違ったり、クラゲの動きに合わせて不規則に模様が変わってるけど、イメージとしてはそれは一番近い!
「アルマースさん、良い例えをしますね!」
「……そうか?」
おっと、さっきまで全然無反応だったルストさんが反応してきた。なるほど、戦闘関係の作戦とかは完全に反応なしで、景色絡みだと一発で反応するのか。
「えぇ、そうですとも! はっ!? 水面……ケイさん、アルマースさん、あの光の前に水を薄く広げて波立たせる事は可能でしょうか!?」
「それ自体は出来ると思うけど、それってあのサボテンから攻撃されない!?」
「あ、死ぬかもしれませんね。ですが、それは問題ないでしょう!」
「いやいやいや、大問題だから! 俺達、Lv上げに来てて、経験値増加のアイテムも使って、まだ1戦目が終わったとこだから!?」
「……そういえばそうでした。それは失礼しました」
ふぅ、今のルストさん、完全に俺らを巻き込んで成熟体のサボテンを敵に回す気だったな。こういうとこが危ないな、この人は!
「はい! それをやるなら切り上げる時ならいいと思います!」
「おぉ、それならば問題ありませんね! それなら団体部門として……ふむ、ケイさんとアルマースさんは水を生成してもらうとして、ヨッシさんは薄氷という手もありますね!」
「え、私もやるの!?」
「撮影は私もやるのさー! サヤ、足場をお願いします!」
「任せてかな!」
「てか、地味に全員の役割が出来たな」
「えぇ、これならば赤の群集と灰の群集の団体部門に出せますね!」
「だなー。あ、ルストさん、あくまでもタイミング良くサボテンが光ってたらだからな?」
どういう頻度でまた光るのかも分からないし、ここは言っていかないと。明日は普通に平日だから、そこまで遅くまでは出来ないしね。今日は普段よりも遅めまでやるけど、それでも24時くらいまでやるのが限界だ。
「それは承知しておりますとも! それでは2戦目を張り切って――」
「ルストさん、待ったかな! まだみんな回復中かな!?」
「おや、思ったほどは時間は経っていなかったのですね。これは失礼しました」
危ねー!? サヤが止めてくれたけど、ルストさんは思いっきり2戦目の敵を連れに行きかけてたよ!? ……ルストさんと一緒にLv上げって、地味に大変なんだな。
「ところでルストさんとしては、あのサボテンは何をしてると思う?」
「あぁ、それですか。それなら、植物系の種族の光合成の発動を誘発させる時間であると同時に、硬化草の群生地への入り口を示しているそうですよ」
「……はい? え、赤の群集って硬化草の群生地はもう発見してるのか!?」
「灰の群集でも既に発見されていたのでは? 赤の群集で発見した方が辿り着いた時には、既に灰の群集の方がいたそうですが……」
「あー、なるほど、そういうタイミングか」
「どうやらただ皆さんが知らなかっただけのようですね」
「まぁ、そうなるっぽい?」
実際、さっきまとめを見て初めて知ったばかりだし、赤の群集も発見済みって情報は書いてなかったもんな。
それにしても、このサボテンの光が目印ねぇ? その情報はまとめに無かった気もするけど、レナさんはもしかしてノーヒントで硬化草の群生地を発見した? サボテンが強く光るタイミングに居合わせなきゃいけないだろうし、その可能性はありそう。
「あー!? 流れてる砂で光に照らされてる部分があるのです!?」
「え、どこかな!? あ、私達が入ってきた時に、自然発生で落ちてきてた砂があった場所の近くに流れてる砂が光に照らされてるかな!?」
「……なんでそこだけ?」
サボテンの光はこの地下空間全体を照らしてはいるけど、今は特に天井を強く照らしているよな? 光の方向が変えられてるから光の操作を使ってるんだとは思うけど、それだとなんで地面の方に集中的に照らされる場所がある?
「……おや? 空中に見覚えのないクラゲが混じっていますね」
「え、マジで?」
ルストさんが見覚えがないって言ってるなら、この成熟体のサボテンの行動パターンが変わった原因か?
えーと、見覚えがないって事は、他の大量にいるクラゲとは見た目が違うはず。お、それっぽいのを見つけたけど、これは……。
「あぁ、なるほど、そういう事ですか」
「あー! クラゲ自体が光っているのさー!」
「それに、何か細いものでサボテンと繋がってるかな!?」
「あ、見つけた! あれ、これってもしかして……」
「よし、俺も見つけたぞ。なるほど、あのサボテンが不動種なら、繋がってるクラゲは不動種の『樹の分け身』による分身体か」
「あー、やっぱりそれだよな」
確かサボテンはオフライン版だと草花じゃなくて、木の分類だったしね。オンライン版でも木の分類っぽいし、不動種の固有スキルが使えるんだな。少し違うのは根の先が繋がってるんじゃなくて、サボテンの棘の先が繋がってるっぽい。
そして、その分身体のクラゲもサボテン本体と一緒に光ってるようである。これ、もしかして光の操作を同時に使ってる? ……今はいいけど、下手に手を出すと光の操作で焼き切られそうな気がする。
「要はこのサボテンの分身体のクラゲに照らされた流れてる砂が行き着く先が、硬化草の群生地って事か」
「えぇ、ケイさん、そうなりますね。ただし、まだ情報は少ないのですが、毎回照らされる位置が違う可能性があるとは聞いていますよ。……今照らされているのは、私が事前に聞いていた場所とは違いますし」
「……ここ、入り口の流砂も含めて、時間で位置が色々と変わるエリアか」
「そして照らされている間は、植物系種族の強化タイムでもあるのさー!?」
「随分とここも癖があるエリアかな」
「……あはは、そうみたいだね」
「ま、その分だけ経験値も良いって事だろうよ!」
「そういう事なんだろうなー」
多分、同じくらいのLv帯の敵が出てくるエリアもあるんだろうけど、エリアそのものにギミックがある場所ほど経験値が良いんだろうね。そういう意味で考えるなら、海エリアでの海面とかもある意味そういう場所なのかも。
ギミックや制限がある分だけ戦う難易度は上がるけど、そこでちゃんと作戦を立てて連携して戦えるならこれが良い。完全にPT向けっぽいけども。
逆にソロの人とか少人数向けのエリアとかもありそう。ベスタや十六夜さん辺りなら、もしそういうエリアがあるなら知ってそうな気もするね。まぁまとめをよく見たら書いてあるかもしれないけどさ。
あ、サボテンの発光が元に戻っていった。……発光が途切れてる様子がないんだけど、もしかして発光のLvって一度解除しなくても切り替えれる? んー、それは試してみないと分からないな。
「さて、皆さん、そろそろ回復はどうでしょうか? サボテンの光も収まりましたし、2戦目は可能ですか?」
ふむ、それなりの時間でサボテンの光は強まるけど、しばらくすれば元通りになるっぽいね。それと同時に分身体のクラゲの姿が消えたか。
うーん、空中にいるクラゲを思いっきり範囲攻撃で仕留めてみたいけど、正直相当リスクはありそうだよなー。下手したらあの成熟体のサボテンが襲ってきそう。
まぁそれは今はいいや。えーと、俺の回復状況は行動値は全快だけど、魔力値は全快までもうちょっとか。みんなの回復状態次第だけど、回復アイテムを使っても良い状況だね。
「あ、私は行動値は全快してたのです! 魔力値はちょっと足りないのさー!」
「私もハーレと同じかな」
「私もちょっと魔力値の回復がまだだね」
「俺も魔力値は回復しきってないし、アイテムを使っていくか」
「賛成なのさー!」
「俺はどっちも全快だ。みんな行動値が全快してるなら、アイテムでどうにかなるのはそれでいくか」
この辺のアイテムの使用はグラナータ灼熱洞でもやってたから、特に問題なし。変に出し惜しみして、自然回復のみに任せると時間もかかるもんな。
サヤもハーレさんも魔法を結構使ってたみたいだし、クマとリスの魔力値の総量は少ないもんな。魔法型なら魔力値の総量が増える分だけ回復速度も上がってるけど、物理型のサヤのクマとハーレさんのリスだと魔力値は自然回復だけじゃ追いつかないか。
アル以外は明日からはしばらくログイン出来ないし、アルはその間に自家生産のレモンは増えていくから、今日使い切るつもりで使っても問題ないだろ。
「それでは魔力値の回復が終わり次第、2戦目の開始ですね!」
「「「「「おー!」」」」」
なんだか今日は号令をルストさんによく取られてる気もするけど、まぁ気にしても仕方ないし別に良いや。
それじゃレモンを齧って魔力値を回復していきますか! ガブリといったら酸っぱ……くない? あ、そういやレモンを齧る回数が多かったから、味覚の設定は切ってたんだった。今日はこのままの設定でいいか。
「あ、ルストさん! さっき聞こえてなかったっぽいんだけど、俺が指示を出せる時は指示を出すけど、無理そうな時はルストさんの判断で臨機応変によろしく!」
「えぇ、了解しました!」
さて、それじゃみんなの魔力値の回復が終わったら2戦目をやっていくぞー! ルストさんがいるおかげで傾向の把握は早めに終わらせられたし、サクサク倒していきますか!
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