第949話 行きそびれた場所へ
ルストさんの異常に早い一気に距離を詰めてくるのと同時に根で捕まえられた。……うん、目的地が同じだから一緒に行きたいという事で食いついたのは分かるけど、俺を捕まえなくても良いんじゃない?
てか、こういう事になるとルストさんの暴走癖がとんでもないな。いきなりだからってのもあるけど、全然回避出来る気がしないのも恐ろしい。
「ルスト、とりあえずケイさんを離そっか?」
「ぐふっ!?」
「おわっ!?」
ちょ、弥生さん!? ルストさんを止めようとしてくれたのは良いんだけど、ルストさんの根で捕まった状態で真上にぶっ飛ばさないで!?
「ごめんかな、ルストさん! 『魔力集中』『強爪撃』!」
「助かった、サヤ!」
弥生さんにルストさんとまとめて吹っ飛ばされたけど、即座にサヤが根を切ってくれて何とか……なってないな。このままだと落ちるし、これは確実にダメージ判定だから対処しないとまずいか。
<行動値上限を6使用して『移動操作制御Ⅰ』を発動します> 行動値 79/79 → 73/73(上限値使用:9)
即座に飛行鎧を展開して、なんとか落下は防止成功。ふー、ただ普通にルストさんが同行したいと言えば済むはずなのに、何がどうしてこうなった。
あ、そういえば発光を使ったままか。これ、移動前に解除していくのをジェイさんに言っておかないとなー。
「ケイさん、ごめん! 止め方を間違ったけど、大丈夫?」
「あーうん、何とか大丈夫だけど……出来れば巻き込まない方法にしてくれると助かる」
「今のは本当にごめんね! えっと、ルストも迷惑かけちゃったし、流石に今のはお詫びを――」
「いきなり何をするんですか、弥生さん!?」
「それはこっちの台詞だからね!?」
「はいはい、暴走癖があるのは2人とも同じだし、そこで喧嘩は無しだよー? ケイさん達の移動の邪魔しちゃ悪いしね」
「……それはそうだね」
「時間が勿体ないのは確かですね! それでは皆さん、望海砂漠へ向かいましょうか!」
「レナ、やっぱりルストは殴っておいた方がいい気がするんだけど?」
「……うーん、今のは否定し切れないねー」
何かサラッと俺らがまだ同意をしてないのに、普通に何事もなかったかのように着地しているルストさんは既に同行する気満々なんだけど……。えっと、これはまずは何処から処理すべき?
うん、まずはみんなに意思確認か。……なんか普通に喋って相談すると面倒そうだから共同体のチャットでやるか。
ケイ : ルストさんが一緒に来たいみたいだけど、どうする?
アルマース : PTに空きはあるし、戦力的には問題ねぇし、別に俺は構わんぞ。
サヤ : 私も構わないけど、移動はどうするのかな?
ハーレ : そういえば望海砂漠の近くは、灰の群集の草原エリアと、青の群集の荒野エリアなのさー!?
ヨッシ : あ、そっか。それだとルストさんが一緒に来るのも大変だよね。
ケイ : ……移動の事は全然考えてなかった。
アルマース : 俺もだ。だが、そこがどうにか出来ないと流石に一緒には行けないぞ。
ふむ、ルストさんはその辺はどうするつもりなんだろ? 元々1人で行く予定みたいだったし、転位の種か実で登録済みとかそんなとこかな。
ケイ : だよなー。そこさえ問題なければ、一緒に行くには異存なし?
サヤ : うん、問題ないかな。
ハーレ : 同じくなのさー!
ヨッシ : 戦力的には少し楽になりそうだしね。
アルマース : とりあえず移動について確認からだな。
ケイ : だなー。
さて、それじゃルストさんにその辺をどうするつもりか聞いてみて、問題がなければ一緒には……って、ルストさんさんがレナさんと弥生さんにボコられてる!?
「ちょっと待ってください!? なぜ止めたレナさんまで一緒に!?」
「んー、ちょっと場外負けの八つ当たりを兼ねた、お仕置きの手伝い?」
「とりあえずルストは同意を得る事の大事さから叩き込まないとねー?」
「あ、そういえばケイさん達のまだ了承は得ていませんでしたか!? 理由は分かりましたから待って下さい! 弥生さんはともかく、レナさんからは本気で死にますから!? シュウさん、止めてもらえまえんか!?」
「……ルスト、怒って止めてもらえるうちに、その悪癖は治そうか」
「私に味方はいないのですか!? くっ!」
「「あ、待ちなさーい!」」
流石にレナさんからも攻撃を受けてるとダメージがあるから、思いっきりルストさんが逃げ出した。そしてレナさんと弥生さんがそれを追いかけていく。……うん、なんだ、これ?
「慌ただしくてすまないね。それで、ケイさん達は相談は済んだかい?」
「あ、相談してたのはバレバレか。まぁ一緒に行くのは良いって結論にはなったよ。でも移動をどうするか確認したいんだけど、シュウさんは状況は分かる?」
「あぁ、そうか。ケイさん達は草原エリアから移動していくんだね。ルストならあちこちに転移の実の登録をしているはずだから、そこは問題ないはずだよ」
「それも言い忘れていましたねー! グラス平原に登録済みの転移の実があるので、そこら辺は大丈夫ですよ!」
なんか思いっきりレナさんと弥生さんに追いかけられながら、思いっきりこっちの会話にも参加してきてるよ。ルストさん、地味にまだまだ余裕がありそうだな?
まぁとにかく移動して合流するのは問題なさそうだし、みんなの同意も得られてるから今回ルストさんが臨時メンバー入りだね。
「ルストさん、問題なさそうだから同行はOKだぞ!」
「おぉ、それはありがとうございます! という事なので、追いかけるのは止めていただけませんか!?」
「はぁ……レナ、もう終わりにしよ。とりあえず、最低限のやり取りは済んだみたいだし……ルスト、迷惑はかけないように! あとお詫びも兼ねて、あそこに関しての知ってる情報を教えるのは不問にするからね!」
「そだね-。ケイさん達、変なことがあれば連絡よろしくー!」
「レナさん弥生さんも、私が変なことをするという前提で話してませんか!?」
「「……え?」」
「心底不思議そうな声ですね!?」
うん、今のレナさんと弥生さん気持ちはよく分かる。弥生さんの暴走は怒らせた場合以外は戦闘に限定されるけど、ルストさんの暴走は本当に唐突だもんな。
一緒に動く時の変さではルストさんの方が上だろう。弥生さん暴走については、本人の自覚ありでもあるしね。
レナさんに関しては、別に特に暴走とかはないしさ。レナさんの無自覚さは、意図的にそう演じてるだけだし。
「……なんだか釈然としませんが、まぁ良いでしょう! それでは今のPTを抜けて、ケイさん達と望海砂漠の方へ行ってきますね!」
「さーて、わたしは今度は負けないように大暴れするぞー!」
「それじゃわたしはシュウさんと一緒に観戦してよっかな」
「ルスト、迷惑はかけないように。弥生、ルアーさん達の所に行くかい?」
「あ、そだね。シュウさん、そうしよう-!」
そんな風にルストさん以外のみんなはバラバラに移動していった。それぞれにこれからの行動違うんだから、こうなるか。
「ルストさん、とりあえずこれなー」
「おぉ、PT申請ですね!」
<ルスト様がPTに加入しました>
これで俺らのPTのメンバーは満員になった。さて、それじゃ望海砂漠の地下の大空洞でLv上げをしたいから、移動をしていきますか。あ、その前にこれはやっとかないと。
「みんな、ちょっとだけ待っててくれ。ジェイさんに発光を切るのを伝えてくる」
「あー、確かにそりゃ言っとかないとな。とりあえずここで待ってるぞ」
「ほいよっと」
手早く用事を済ませて、早く移動を開始しないとなー。今ここに結構な人数が集まってるとはいえ、普通にLv上げや探索してる人もいるだろうし、望海砂漠の地下の大空洞が空いているとも限らない。
まぁ混雑してたら、その時はその時に考えよう。まだ一度も行ってない場所だから、単純にどういう場所なのかを知っておくだけでも悪くはないだろうしね。
さて、ジェイさんは……いつの間にかどこかに移動したみたいでどこにいるかが分からないな。うーん、探すのに時間をかけても仕方ないし、ここはフレンドコールで済ませようっと。お、すぐに出てくれた!
「ケイさん、どうかしましたか? Lv上げに行くのでは?」
「これから出発するとこだけど、その前に言っとく事があったからさ」
「……もしかして、コケの発光の解除についてですか?」
「あ、大当たり」
「別にそのまま行っていただいても良かったのですが……まぁ連絡していただいたのは感謝します」
「いやー、流石に何も言わずにってのも悪い気がしたからさー。それじゃ解除するぞー」
<『発光Lv3』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 73/73 → 73/76(上限値使用:7)
よし、これで灯り用のコケの発光は解除完了! 俺が担当していた一画が暗くはなったけど、そこら辺は何とかやるだろ。色々と焦ってたのが吹っ切れたジェイさんなら、その手の心配はいらないさ。
「それでは、次に会う時を楽しみにしていますよ、ケイさん」
「ほいよっと! それじゃまた!」
これでジェイさんとのフレンドコールは終了。明日からは俺はテスト期間だから、次にジェイさんに会うとしてもテスト明けか-。
10日ちょいくらいゲームが出来なくなるから、冗談抜きで戻ってきた時にどうなってるかが分からないもんだよな。成熟体に進化した人が多い可能性も高いんだよね。……まぁリアルの都合だからこの辺は仕方ないけど。
「よし、用事は終了!」
「それじゃ出発かな?」
「だなー。とりあえず俺らは草原エリアまで帰還の実で移動するとして、ルストさんはどこで合流する?」
「それでしたら、グラス平原の望海砂漠への切り替え地点でお待ちしていますよ。そこに転移の実の登録をしていますし」
「それで決定なのさー!」
「うん、そうだね」
よし、これで移動の方針も決まった。後は実際に移動していくのみ! まだ時間的には23時も来てないし、なんとか1時間はLv上げの時間は確保したいところだね。
「おし、それじゃそういう方向で決定って事で、アルに乗り込め-!」
「「「おー!」」」
「ちょ、まだ小型化したままだからそれは待て! 小型化解除! 『略:大型化』『略:空中浮遊』!」
「私は先に転移してお待ちしていますね」
「ほいよ!」
そうしてルストさんは先にグラス平原へと転移をしていった。さて、俺らは俺らでアルのクジラの上に乗ったし、草原エリアまで転移をしていこう! って事で、草原エリアへの帰還の実を使用!
<『ハイルング高原』から『始まりの草原・灰の群集エリア3』に移動しました>
さて、やってきました、草原エリア! 今日は草原エリアも快晴で、凄い星空が見えている。こりゃ絶景だなー。
「わぁ! 満天の星空なのさー!」
「もう20分くらい経てば、夜明けの演出も始まるな」
「あ、そういえばそういう時間かな!」
「砂漠で日の出を撮るのもいいかもね?」
「それはそうですとも! 昼と夜との切り替わりの時間帯の朝焼けと夕焼けの演出も良いものであり、まだ星空がある中で朝焼けの入り交じっている光景というのも絶景なのです! 私の撮りたいスクショは大空洞の中もですが、望海砂漠から見える海と星空と朝焼けの要素が組み合わさった絶景も狙いなのですよ! 本来ならば昨日のこの時間帯から氷樹の森で夕焼けをバックに撮る予定でしたが、これはこれでいいでしょう! この前の夜の日はあいにくの曇天で撮り損ねていましたからね! もっと色々と撮る予定が狂ってはしまいましたが――」
うん、語り出したルストさんが長い。しかも近くにいる訳じゃなくPT会話だけだから、止めようとしても無理な気がする。ここはスルーでいこう。
「それにしても、結構人はいるんだな」
「ま、タッグ戦は終わったし、その後のバトルロイヤルまで見る奴ばっかじゃねぇだろ。俺らだってそうだしな」
「確かにそれはそうかな」
「でも、逆にこれからバトルロイヤルに参加しに行く人もいそうだよね」
「それは確実にいそうなのさー!」
「あー、言われてみれば確かに……」
あの場にいた人達でやるって気もしてたけど、少し時間を開けてからの開催だから情報が広まれば参戦したがる人がいる可能性はあるよなー。
うーん、それなら観ていくという選択肢もありだったかも……いや、もうLv上げをすると決めて移動している途中なんだ。そこを掘り返すのはなし!
「さて、移動時間を短縮したいし全速力でいくか。ケイ、固定と風除けを頼む」
「ほいよっと」
みんなの固定は、展開中の飛行鎧を使ってやっていこう。アルの全速力での移動の場合は落下対策は必須だし、手早くみんなの固定完了っと。
<行動値1と魔力値3消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』を発動します> 行動値 75/76(上限値使用:7): 魔力値 223/226
<行動値を3消費して『水の操作Lv6』を発動します> 行動値 72/76(上限値使用:7)
そして手動での水のカーペットを生成して、風除けとして前方の展開完了。風除けとして使う場合はやっぱりこっちで発動だよね。何かが当たっても強制解除にならないし。
「それじゃ行くぜ! 『略:自己強化』『略:高速遊泳』! あ、こっちで……いや、今は止めとくか。『アクアクリエイト』『水流の操作』!」
ん? 今、アルは何をしようとして止めた? あー、もしかして海流の操作か?
サヤ : アル、何をしようとして止めたのかな?
アルマース : あー、海流の操作使おうと思ったんだがな。ルストさんがいるのもあるが、単純にサヤが大丈夫か気になってな? ……そういや、俺が海水の昇華を取ったのはサヤとヨッシさんには話してたか?
ヨッシ : それはヤナギさんからレアアイテムの交換をした話と一緒にハーレから聞いたかな。
サヤ : 私が海水に適応してないから、下手に使うと危ういのかな?
ケイ : 最悪、サヤだけ俺の水のカーペットの形状を変えて覆うって手段もあるぞ? アルの生成した海水の中なら、風除けなしでも……いや、流されそうだな? みんなまとめて覆う方がいいか。
ハーレ : その方が良い気がするのです!
アルマース : ま、その辺の確認を含めて、ルストさんがいる時はやらない方が良いだろうって判断だな。
ケイ : 確かにそりゃそうだ。
ルストさんが大々的に赤の群集で暴露するとも思えないけど、失敗の可能性がある試行錯誤をするならミズキの森林とかでやりたいもんな。
<『始まりの草原・灰の群集エリア3』から『グラス平原』に移動しました>
おっと、流石はアルの速度重視の移動だね。あっという間にグラス平原まで辿り着いたよ。……それにしても、まだルストさんは語り続けてるのはいつまで続くの?
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