第948話 タッグ戦を終えて


 とりあえず、これで俺らグリーズ・リベルテの主催のタッグ戦は終了。ここからどうするかをみんなで決めて、行動していこうっと。

 って、あれ? レナさんがもうタッグ戦は終わったのに、対戦エリアど真ん中に移動していった? レナさん、何かをする気か?


「さーて、わたしはまだ満足してないぞー! みんなはどうだー!?」

「まだまだ物足りないー!」

「ここまで大掛かりな準備をしたのに、1戦のみで終わってたまるかー!」

「どうせなら俺も戦う方で参戦してぇな!」

「それなら俺も戦いたいぜ!」

「おっ、続きをやるなら見ていきたいとこだな」

「あー、Lv上げに行きたいけど、微妙に悩むところ……」


 あらま、なんか暴れ足りない様子のレナさんがそんな風に呼び掛けたら、次々と返事が来てるね。しかもこのまま継続するのを望んでる声が割と多い。……レナさん、場外負けで暴れ足りてないな?


「おい、ジェイ。これ、どうすんだ?」

「……要望があるなら続けるのもありでしょうが、流石に今からタッグ戦のメンバーの選出が難しいですよ、斬雨。何か違う形にすれば可能でしょうが……」

「だよなぁー」


 まぁ確かにジェイさんの言う問題はあるもんな。予めメンバーの選出をしたさっきまでタッグ戦と同じルールでは実行は出来ない。この場でメンバーの選出をすること自体、人が多過ぎて難しいだろう。

 あ、共同体の方のチャットが光ってる。なんか弥生さん達も静かだし、赤のサファリ同盟とかもそっちで相談してそうだよね。まぁとりあえず共同体のチャットをチェックしよ。


 アルマース : なんだか妙な事になってきたが、どうする?

 ハーレ   : はい! 内容によると思います!

 ヨッシ   : うん、それはそうだよね。

 ケイ    : ぶっちゃけ、ジェイさんの言ってる通り、そのまま開催は無理だしな。

 サヤ    : そこが決まらないとなんとも言えないかな?

 アルマース : それもそうだが、聞き方が悪かったな。このまま延長で何かをする事になった場合、俺らはどう動く? 普通に参加してもいいし、Lv上げに行くのもありだぞ。


 あ、アルが聞きかったのはそういう内容か! でも、結局それって何をするかにもよる気がする。いや、この場合はLv上げに行くという選択肢を選ぶ気があるかって事か。


 ハーレ   : うー! 確かにLv上げにも行きたいのさー!

 サヤ    : そもそも今日はまだ1度も戦ってないかな?

 ヨッシ   : あ、そういえばそうだね。昨日は望海砂漠の地下の大空洞には行きそびれたし、ここで行かないと行けるのはテスト期間明けになるし……。

 ケイ    : 今からだと1時間くらいはLv上げは出来そうだしなー。


 まだ22時半も来てないし、移動の時間も含めてもそれくらいは出来るはず。流石に今日は全然何も出来てないんだから、日付が変わる頃までくらいはやっても大丈夫だろ。

 あ、テスト期間の話とかもあるから共同体のチャットで打ち合わせなのか。まぁ大勢の人がいる中で話す内容ではないしね。ご配慮をありがとう、アル!


 アルマース : ま、その辺を含めてどうしたいかって話だな。俺はみんなのテスト期間中にLv上げはどうとでもなるから、今日は全面的に要望に合わせるぜ。

 ハーレ   : うーん、悩むのです!?

 サヤ    : レナさんがどういう結論を出すか、待ってからでもいいかな?

 ヨッシ   : うん、それがいいと思う。

 ケイ    : 俺もそれは同意だな。内容次第ではあるけど、こっちはこっちで気になるし。

 アルマース : ま、そりゃそうか。


 流石にそのままさっきと同じ形式のタッグ戦をするには無理だというのはみんな把握してるようで、色んな人があれだ、これだと意見を出しまくってるからなー。


「やるとしても誰が戦うの?」

「んなもん、早い者勝ちだっての!」

「いやいや、ここにいる人数を考えなよ。流石にそれは無理だって」

「それを言うならこの状況で代表者を決めるのも無理だろ」

「今から代表者を決めようとか、時間的にも無茶だ!」

「おいおい、無所属も混ぜてくれるよなぁ!?」

「うーん、やりたいけどこれからだと色々と厳しくない?」


 うん、軽く聞いただけでも色んな意見が出ていて収拾出来る様子がない。意見自体も賛同できる部分が多いしなー。……なんかシレっとイブキの声も混ざってたね。まぁ良いけど。


「よーし、ルールは決めた! 参加人数は無制限、死亡か場外で敗退の全群集が入り乱れてのバトルロイヤル方式でどうだー!?」

「あ、その手があった!?」

「レナさん、ナイス!」

「大人数が参戦出来て、それでいて問題にはならない手段だな」

「ほほう、そりゃ面白い!」

「へぇ、大人数での大乱戦か。おもしれぇ!」


 そのレナさんの提示したルールに観覧席の人達から大歓声と共に賛同する声が上がっていく。どうやらその人数無制限の大乱戦でルールは確定になりそうな勢いだね。

 うん、手段としてはこの状況的にはありだろう。そこは素直に良い案だと思う。だけど、これは俺らは参戦はしない方が良さそうな気がする。てか、確実に参戦しない方がいい!


 ケイ    : 俺はこのルールなら参戦はパス! 

 サヤ    : ……あはは、私もかな?

 ハーレ   : 思いっきり狙われてる気がするのです!?

 アルマース : こりゃ俺らが参戦すりゃ集中的に狙われそうだし、やめておいた方が良さそうか。

 ヨッシ   : うん、そう思う。……羅刹さんやイブキさんが思いっきり見てきてるしさ。


 そりゃ戦いたがってるイブキは間違いなくそうだろうし、羅刹はこういうイベントであれば遠慮してくるはずもない。……まぁ俺らの他にも注目を集めてる人はそれなりにいるっぽいけど、目立つ人や実力者を真っ先に集団で潰しにかかってくるだろうね。


 ハーレ   : この状況、残っても実況はしにくそうなのさー!?

 ヨッシ   : そもそも人数が多過ぎて、まともな実況にならない気がするよ?

 ハーレ   : はっ!? それは確かにそうなのです!

 ケイ    : よし、それじゃ参戦というか、観戦も見送って、Lv上げに行きますか!

 サヤ    : まだ参戦するとも言ってない状況で既にこうも狙われてたら、観戦だけでも落ち着かなさそうだし、ケイに賛成かな。

 アルマース : 俺も賛成だ。……流石に集中的に狙われてて即敗退するのも、参戦しないのかという視線も、どっちも避けたいからな。

 ケイ    : あー、観戦のみでもそういう風に見られる可能性はあるか。

 ハーレ   : それじゃLv上げに決定なのさー!


 よし、これで俺らのこれからの方針は決定! 大人数でのバトルロイヤル自体は楽しそうだけど、今この状況からそれをするのは色んな意味で勘弁って事で!

 別に参加は強制ではないだろうけど、どうしても今回はタッグ戦の主催って事で盛大に目立ってしまってるもんな。ここは立ち去ってLv上げに行った方が精神的には気楽そう。


「はーい、みんな注目-! 大乱戦で納得してる人が多いみたいだし、それでやっていくよー! ただ、今すぐは流石に厳しいと思うから、開始は22時半から! 参戦希望者は、対戦エリア内にそれまでに集合ー! どこの場所を取るかは早い者勝ちだけど、開始までは戦闘は一切無しだよー! あ、基本的に回復アイテムの使用は禁止だけど、陸地への適応用のアイテムは使って良いからねー!」

「レナさん、ちょっと質問! 今は水の操作で水の膜を作って場外判定にしてるけど、そこの人手が足りなくなった場合はどうすんの?」

「んー、流石に突発的なイベントになるからねー。属性は水に限定せずに、非参戦の人達に協力してもらえるとありがたいかなー?」

「それって、魔法産の火とか風とか毒とかでもあり? 突き抜けられたら問題ないよな?」

「うん、それで問題ないよ-! そこら辺の調整はダイクに任せた!」

「俺に丸投げ!? まぁそれくらいなら良いかー」

「それじゃ、参加希望者は移動開始!」


 そのレナさんの宣言と同時に大歓声が上がり、多くの人が対戦エリアの方へと移動を開始していく。とはいえ、移動をしてない人も結構いるね。

 まぁ対人戦はやらないって人もいるし、今日は観戦だけで済ませようって人もいるだろう。タッグ戦までのつもりだったのか、立ち去って行く人もいるね。


 さてと、俺らもこの後はLv上げに行く予定にしたから移動して……ん? なんかジェイさんが近付いてきたけど、どうしたんだろ?


「ケイさん達は参戦はどうされるのですか? 共同体のチャットで相談していましたよね?」

「……無言だったら、そりゃ気付くか。俺らは不参戦でLv上げに行く事にしたよ」

「……確かに現状の様子ではそれが賢明ですか。明らかに狙われている様子ですしね」

「ま、そういう事。ジェイさん達はどうすんの?」

「私は遠慮しておきますが、斬雨が参戦したいそうなので今は桜の木からタチウオにログインしし直していますよ」

「あ、いつの間にか斬雨さんの姿が見えないと思ったらそういう事か」


 そりゃ間に合わせで作ったっていう2ndの桜の木じゃ斬雨さんは全力じゃ戦えないだろうしなー。さっきまで中継は必要だったけど、ここから先は主催が変わるし、斬雨さんが参戦したいなら切り替えても問題はない。


「グリーズ・リベルテ! もちろん参加するよなー!?」

「あ、イブキか。俺達は参戦しないぞ」

「はぁ!? え、何でだよ!? 大乱戦だぜ、やろうぜ!?」

「やめんか、イブキ!」

「ぐはっ!? 何すんだよ、羅刹!」

「……周囲をよく見て、同じ事が言えるのか考えてみろ」

「周囲だぁ!? ……なんか、妙にこっちを見てる奴らが多くねぇ? なんかコソコソと手を組んでるっぽいのも見えるし……これ、グリーズ・リベルテが狙われてんのか!?」

「ま、そういう事。流石に数の暴力に勝てる気がしないし、昨日Lv上げをし損ねたから、それをやりにいく予定だよ」

「あー、この数じゃ結果も見えてんのか。あー、一時的に共闘してってのも良さそうな気もするが、昨日の予定が狂ってんならまぁ仕方ねぇな」


 おぉ、あのイブキがあっさりと同意してくれたぞ!? てか、狙われてるのは何となく分かってたけど、今のタイミングでもう共闘を目論んでいる人達もいるっぽい。

 まぁバトルロイヤルでは一時的に共闘して目立つところを真っ先に倒すってのも常套手段だからなー。でも、俺らの方もそれを凌ぐ為に共闘するって手段もありだったか。……まぁ今回はLv上げにするけど。


「ケイさん、警戒されるというのも大変ですね」

「……ジェイさんがそれを言う?」

「ふむ……確かにそれもそうですか。おや、レナさん、どうしました?」

「ちょっと赤のサファリ同盟がどうするかを聞きに来たんだけど……」


 そう言いながらレナさんは俺達の方を見てきた。あー、レナさんは俺らにも参戦して欲しかったとかそういう感じか?


「チラッと聞こえたんだけど、ケイさん達は参戦していかないのー?」

「レナさん、悪いけど今回はパス。昨日行きそびれた望海砂漠の地下の大空洞にLv上げをしに行ってくる」

「あらら、それは残念……。真っ先にアルマースさんを蹴り落として、その巨体で大勢を吹っ飛ばそうと思ってたんだけどなー」

「思いっきりアルを狙ってる人がすぐ近くにいたよ!?」


 どれだけの人に狙われてるのか分からないのに、レナさんに狙われていたとかヤバすぎる。地味に他の人を場外負けにする為の作戦に組み込まれてるしさ。

 てか、レナさん自身も狙われてそうな気もするけど、その辺は全然気にしてないっぽい。むしろ狙われてるのを利用して攪乱とか考えてそうだよなー。


「……色んな人から狙われてる気はしてたが、レナさんにまで狙われてたとは思わなかったぞ」

「あはは、アルマースさん、これからやるのはそういう大乱戦だしねー! さーて、シアンさんやセリアさんも来てるから、他のクジラの人を狙おうっと!」


 うん、どうあってもクジラの巨体を利用して大人数を場外にするつもりでいるらしい。てか、シアンさんやセリアさんも見に来てたんだ?

 えーと、あぁ、もう対戦エリアの中にいた! へぇ、タチウオの刹那さんやサンゴで形作られたサメのジンベエさんとかも来てるんだ。適応用のアイテムの使用は禁止しないって言ってたのは、海エリアの人が参戦出来るようにする為か。


「あ、ジェイさん。参戦せずにこの場に残るなら、進行役をお願いできない? 本当はわたしがやるべきなんだろうけど、暴れたいからさー?」

「えぇ、それくらいでしたら構いませんよ。ところで、スリムはどうします?」

「ホホウ、それではジェイさんの手伝いをするので」

「ジェイさん、スリムさん、ありがとー! さーて、それじゃ赤のサファリ同盟の方に行ってくるねー!」


 そうしてレナさんは弥生さん達のところへと駆けていった。まぁほぼ隣なんだけど、赤のサファリ同盟としてはこの後から始まる大乱戦はどうするんだろ? 戦闘好きじゃない人も多いって言ってたはずだけど……。


「弥生-! 赤のサファリ同盟の方針は決まった-?」

「あ、レナ。みんなの意見はバラバラだから、それぞれ自由行動って感じになったよ」

「あらら、やっぱりそうなったかー。それで弥生達はどうするのー?」

「あはは、わたしはシュウさんに参戦はストップをかけられちゃったから観戦だねー」

「弥生の対人戦を解禁したとはいえ、そう短期間に連戦はさせれないからね」


 あ、弥生さんのあの状態ってそんなに連続でしない方が良いんだ? まぁ確かに弥生さん本人の意思でのペース配分は出来てなさそうだし、疲労とかは溜まってそうだもんな。


「それで、ルストはスクショの撮影に行きたいから離脱だってー」

「およ? どこのスクショを取りにいくのー?」

「望海砂漠の地下の大空洞へと行ってみようかと思いまして。先ほど定位置にいる成熟体の行動パターンが変わったと聞きましたので、少し見に行ってみようかと」

「あ、そうなんだ? あれ? さっき、ケイさん達が望海砂漠の地下の大空洞に行くって言ってなかったっけ?」

「本当ですか、ケイさん!? 良ければ一緒に行ってもよろしいでしょうか!?」

「ちょ、ルストさん!? 早いし、近いから!?」


 いきなり一気に距離を詰めて、根をロブスターのハサミに巻き付けて持ち上げるのはやめてくれ-! ルストさんと目的地が同じなら別に一緒に行くのは断る気はないけど、もう少し穏便に話させてくれませんかねー!?

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