第943話 タッグ戦の準備完了
竹を刺していくのはみんなで手分けをする事になり、ベスタとハーレさんとスリムさんで刺す位置の指示をしていく事になった。まぁこの辺りは竹を地面に刺すのに向いてる手段があるかどうかが大きかったけど。
実際に刺していくのは、俺とサヤ、アルとヨッシさん、弥生とシュウさん、ルストさんとジェイさん組み合わせで手分けをした感じである。斬雨さんには竹を斬ってもらうまでだったね。
上から叩いて打ち込む感じにしたので、俺は直接ハサミで殴り、ヨッシさんやジェイさんやシュウさんは氷塊や岩を工夫して使っていた。
最初にスキルを使って殴って刺したら竹が折れて困ったものだったけど……。氷塊や岩でも勢いをつけ過ぎると威力があり過ぎて折れるんだからなー。竹の耐久性に難あり……というよりは、スキルの威力の問題か。
そしてサヤ、アル、大型化した弥生さん、ルストさんが打ち込むまでの支えである。竹が少し地面に刺さればよかっただけだから、本当にただ持って支えてもらってただけだけどね。
「よし、これで最後の1本!」
飛行鎧を展開した状態で空を飛びつつ、サヤが支えている竹を一番上からハサミで殴る! 過剰な威力になり過ぎないように……それでいてちゃんと地面にも刺さるように、殴りつける!
「おし、これで終了!」
「ケイ、お疲れかな!」
「ほんと微妙に疲れた。何この絶妙な力加減を要求する操作……」
「……あはは、初めは苦戦してたけど、さっきのはお見事だったかな」
「とりあえずこれで準備は終わりだー!」
他のみんなも作業は終えてるし、それで良いはず! あ、結局溝は掘ってないけど……まぁ間隔は狭めにしたし、夜の日とはいえ天気が崩れそうな気配もないくらいの快晴だし、これくらいは視認出来るだろ。
「ふっふっふ、ケイさん、それはまだなのさー!」
「え、まだ何か……って、なんでハーレさんは大量の小石を抱えてんの?」
「この小石にケイさんとジェイさんのコケを増殖させて、発光で明かりを用意して、竹の上に置いていくのです!」
「あー、外灯って感じか。いいな、それ」
「ケイさん、街灯じゃないのさー! ここは街じゃないのです!」
「……いや、俺は外の灯りって字での外灯だからな?」
「さー、それじゃ早速やっていくのさー!」
「おいこら、スルーかい!」
間違ってない部分を間違ってると勘違いして、そこを訂正されたからってスルーはやめんかー! 割と失礼な行為だぞ、それ!
「ハーレ、待ちなさい。今のは失礼だよ?」
「あぅ……ケイさん、ごめんなさい!」
「……はぁ、まぁ謝ったなら別にいいか。ヨッシさん、ありがとな」
「いえいえ、どういたしまして」
なんだかんだでヨッシさんは、ハーレさんのこういう時に頼りになるもんだね。
それはそうとして、コケの発光で照らすという案は決して悪くはないどころか、普通に良い案だとは思う。だけど、これに関しては実際に戦う人達の意見が必要だな。
今この場には弥生さんとスリムさんはいるから、まだログインしてなさそうないか焼きさんは仕方ないとして、レナさんの意見は聞いておきたいとこだね。……出来ればいか焼きさんの意見も聞きたいけどさ。
そういや今は何時……って、既に21時半を過ぎて40分が来てるのか。あー、思った以上に準備に時間がかかってたんだな。
んー、でもレナさんは忙しそうだし、いか焼きさんにも聞かないといけないから、その時に一緒に聞くか。
「それじゃレナをこっちに呼んじゃうね。ベスタさん、レナの代わりに取りまとめを任せてもいいー?」
「今回は手は出さないつもりだったが、まぁそれくらいなら別に構わんぞ。ここに直接見に来ている連中は――」
「ちょーっと待ったー! こんな面白そうな事、俺ら抜きでやってんのかよ!」
「いきなりやめんか、イブキ!」
「羅刹とイブキ!?」
えぇ、いきなり影が落ちてきたかと思ったら、上から緑色の龍のイブキと、ティラノの羅刹が飛び降りてきた。……羅刹、途中まで小型化して、降りてくる時に元のサイズに戻ったな?
そして、早々に羅刹にぶっ飛ばされているイブキであった。まぁこれはいつもの事だけど。
「あー、いきなりで悪い。ログインしてくる前に掲示板を見て、このタッグ戦とやらを知ったとこでな。ベスタ、参戦させろとは言わんが、無所属でも観戦くらいは可能か?」
「聞く相手間違えているぞ、羅刹。このタッグ戦の主催はケイ達だから、聞くならそっちに聞け」
「お、そうなのか。で、ケイさん、その辺はどうなんだ?」
「あー、ちょい待って。俺としては反対する気はないけど、出場者の方に聞いてみないとなんとも言えん。ベスタ、悪いんだけどレナさんを呼んできてもらえない?」
「ま、そのくらいなら頼まれてやるか。少し待ってろ」
そう言い残し、ベスタはレナさんが取りまとめをしている全群集の混在の観戦席へと駆けていった。なんだかあのベスタに使いっぱしりを頼むのもなんか気が引けるね。
それにしても混在の観覧席は各群集毎の観覧席と同じくらいのスペースはあるけど、一番空いてはいる。無所属の観戦が問題ないのであれば、無所属は混在の観覧席になりそうかな?
「ケイさん、お待たせー! あれ、羅刹さんにイブキさんだね? どしたのー?」
「俺らもこの一戦に混ぜて――」
「それは違う機会を作るって言っただろうが、バカイブキ!」
「ぐはっ!」
「……バカイブキが失礼した」
なんというか、イブキは変わったように思ったけど、独断で突っ走るとこは完全に治った訳じゃないんだな。まぁ、それでも相当マシになった方だろうけどさ。
えーと、とりあえず灯りの件も含めて、今いる出場者3人は揃ったか。……いや、スリムさんが竹の上に止まってなんかボーッとしてるから、とりあえずこっちに来てもらおう。
「スリムさん、ちょっと降りてきてくれー!」
「ホホウ? この様子ですと、何か相談事ですかな?」
「まぁ、そんなとこ。えーと、先に無所属の――」
「ふぅ、昨日の時点でここに移動しといて正解だったみたいだね。おいらの嫌な直感を信じて……って、何この状態!?」
「あ、いか焼き!?」
「……どこから現れてるの、いか焼き?」
「ホホウ、いか焼きさん、こんばんはなので」
「あ、おいら以外は既に全員揃ってるんだ? スリムさん次第って聞いてはいたけど、この感じだと予定通り開催で良さそうだね。お、羅刹とイブキもいるじゃん」
うん、話し合いをしようとしていたど真ん中にいか焼きさんがログインしてくるとは思わなかったけど、これで出場者全員が揃った。これから関係者に確認したい件が2件あるんだから、ちょうど良いタイミング!
「おう、いか焼き。青の群集に正式に移籍して、これからのタッグ戦に出るんだってな?」
「まぁそうなるね。もしかしてイブキが参戦したいとかそういう話だったりするの?」
「おう、そうだ……ぐはっ!」
「いや、今回は単純に観戦できるかどうかの確認だな」
「あぁ、そういう事なんだ。おいらは良いけど、それは他の人も賛成したらだね」
「ホホウ、私はそれで構いませんぞ」
「わたしもそれで良いけど、レナは?」
「わたしも問題ないよー。ケイさん、聞きたかった案件はこれでいいの?」
「あー、もう1件あるけど、そっちは後でだな。無所属の人達は、全群集の混在の観覧席でいいか? まだそれならスペースはありそうだしさ」
一番前の部分に露骨に空いているスペースのあるけども、これは主催である俺らの中継や実況の為のスペースだろうな。まぁ主催な上に、中継もやるんだからこれくらいは役得だろう。
「うん、それで問題ないねー。思ったより空きがあるから、他にもどんどん来てくれて良いよ」
「おし、了解だ。イブキ、手が空いてる連中に伝えてやれ」
「ほーい。って、羅刹! あれ!」
「……どうした? ほう、ウィルの奴、頑張ってんじゃねぇか」
「他の奴らも活き活きしてんなー!」
そんな羅刹とイブキの視線の先を見てみれば、赤の群集の観覧席でルアーと共に取りまとめをしているウィルさんや赤の群集に戻れた元無所属の人達が頑張っている姿が見えた。いつの間にかウィルさんもこっちに来てたんだな。
そっか、まだ不満に思っている人もいる様子も見えるけど、それでも赤の群集に戻って頑張ってるんだね。
「……なぁ、ジェイ。さっきの話を掘り返す訳じゃねぇんだが、あのウィルを見てどう思うよ?」
「思いっきり掘り返してますよね!? ……ですが、私が焦っていたのは馬鹿らしくなりますよ。斬雨、今日のタッグ戦が終わったら、皆を集めてどこかで作戦会議を行いましょう。まだまだ私たちにも出来ることはあるはずです」
「だな。だけど、今はタッグ戦の方が先だぜ?」
「えぇ、それは確かにそうですね」
うーん、ジェイさんから焦りがなくなって、逆にやる気に満ち溢れているようになってる気がする。……これ、結局ジェイさんに作戦立案に対して警戒を緩める事は出来ないままかー。
それにしても、あくまで推測の範囲だったはずだけど、次にあるのは対人イベントである競争クエストの再開催って方向で考えられてるよなー。まぁ俺もそう思ってるけど。
「さて、無所属に関してはそれで良いとして、話を次に進めましょうか。ハーレさん、改めて説明をお願いできますか?」
「了解です、ジェイさん! えっと、タッグ戦の対戦エリアの範囲を指定した竹の上に光るコケ付きの石を置いて灯りを用意したいんだけど、構いませんかー!?」
「おわっ!? 言われてみれば周囲に間隔を空けて竹が刺さってる!? おいら達、この竹に囲まれた中で戦う……って、観戦の人数も多い!?」
「わたしはそれで良いけど、弥生はー?」
「同じく問題ないよ。いか焼きとスリムさんはどう?」
「ホホウ、小石を集めるのを手伝っていたので、そもそも反対する意思はないので!」
「あー、おいらも問題ないよ。ただ、予想外に人が多くてビックリしただけだし」
「それじゃ決定なのさー!」
これでもう1つの件も決定で終わりっと。さーて、それじゃ大量の小石にコケを増殖させていきますか。……竹を叩くのにはスキルは最初の方以外は使ってないから、行動値には問題ないしね。
ただ、これってコケの群体化の有効距離を超えてないか? 俺とジェイさんは実況席にいないといけないから、全部はカバーし切れないぞ。
「……これは各群集で発光を持つコケの方に協力を頼んだ方が良さそうですね」
「だなー。ジェイさんは出来る人に心当たりは?」
「いるにはいますが、ここにいるかは不明ですね。ですが、それ以外にもいないとは限らないでしょう。斬雨、その辺りの呼びかけをお願いできますか?」
「おう、任せとけ!」
「そういう事なら、シュウさんもお願い出来る?」
「そうだね、弥生はそろそろ待機に入っていた方がいいし、ルストはフラム君と中継の準備をお願いするよ。開始までには戻ってくるからね」
「えぇ、わかりました、シュウさん」
ふー、とりあえずそれぞれの群集の観覧席にいる人……別にコケに限定する必要もない気はするけど、まぁそこはいいや。
さーて、俺としても心当たりはあるから、その辺を頼んできますかね。ログインさえしてれば来てそうなフーリエさんとか、あんまり積極的に関わりたい気はしないけどケインとかには頼めるはず。
「ケイ、頼みに行くのは私とヨッシで行ってくるかな。アルは桜花さんと中継の準備があるし、ケイとハーレは灯りの設置をお願い!」
「うん、その方が良いだろうね」
「はーい!」
「あー、その方がいいか」
「だな。さて、俺は中継の準備をしてくるかー!」
そうして手分けをして、タッグ戦の準備も終盤である。まぁ簡易的で粗末なものではあるけども、闘技場みたいな場所が出来てきたもんだね。
「それじゃ増殖をお願いなのさー! 設置は私とスリムさんでやるのです!」
「ホホウ、そこはお任せあれ」
「ほいよっと。それじゃジェイさん、手分けしてやりますか」
「そうですね。では、どちらが灯りの設置を早く終わらせるか、勝負です! 『増殖』『増殖』『増殖』!」
「ちょ!? 勝負になるんかい!?」
あー! ジェイさんが焦っていたのが吹っ切れたとはいっても、俺へのライバル心は未だに健在か! てか、ベスタがその辺を刺激して吹っ切らせたようなもんだし、当然だよなぁー!?
えぇい、こんなとこで負けてたまるか! でも、小石の数が同じかどうかも分からないから、勝負として成り立ってる? あー、もうそんなのどうでもいいや!
<『移動操作制御Ⅰ』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 76/76 → 76/82(上限値使用:1)
とりあえず飛行鎧は邪魔だから解除! 大急ぎで小石にコケを増殖だ!
<行動値を4消費して『増殖Lv4』を発動します> 行動値 72/82(上限値使用:1)
<熟練度が規定値に到達したため、スキル『増殖Lv4』が『増殖Lv5』になりました>
お、良いタイミングで増殖のLvが上がった! これなら増殖の範囲も一気に広げていける!
<行動値を5消費して『増殖Lv5』を発動します> 行動値 67/82(上限値使用:1)
<行動値を5消費して『増殖Lv5』を発動します> 行動値 62/82(上限値使用:1)
<行動値を5消費して『増殖Lv5』を発動します> 行動値 57/82(上限値使用:1)
ふっふっふ、これで一気に追い上げで、目の前にあった小石の全てにコケを増殖させられたぞ! さて、それじゃ灯りを点けていこう。
<行動値上限を3使用して『発光Lv3』を発動します> 行動値 57/82 → 57/79(上限値使用:4)
発光はLv4だと眩し過ぎるので、控えめにLv3で発動っと。うん、このくらいがやっぱり丁度いい。
「くっ、この土壇場でスキルLvが上がりましたね!? ですが、まだです! スリム! 『発光』!」
「ホホウ、全ての設置が終わるまでが勝負なので! 『高速飛翔』!」
「負けないのさー! 『略:傘展開』『略:ウィンドクリエイト』『略:風の操作』!」
「ハーレさん、任せたぞ!」
「はーい!」
何故か勝負になりつつも、竹の上に発光するコケ付きの小石をどんどんと設置していった。ハーレさんは小石をまとめて運びながらクラゲで飛び上がり、スリムさんは何度も往復する事で設置していき……結果としては同時に終了で決着付かずで引き分けか-。
「……まぁ引き分けなら良しとしましょうか」
「ジェイさん、負けず嫌い過ぎじゃね……?」
「……いまいちそういう自覚はなかったんですが、どうやらそのようですね」
「あー、自覚なかったんだ。……ま、そう簡単には負けないからな」
「すぐには無理でも、どこかで絶対に勝ってみせますよ」
ジェイさんとそんな風に話しているうちに、俺らが設置した灯り以外も次々と設置されていった。うん、これは良い感じのタッグ戦の会場になったんじゃないかな。
「さて、実況席に行くか」
「えぇ、そうしましょうか」
準備を終えた人達から、それぞれの観客席へと移動を進めていく。俺らは全群集の観覧席の最前列に用意されているスペースだな。さて、これから遂にタッグ戦の開幕だ!
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