第934話 掲示板その37

予約投稿の時間を間違えてました! すみません!


ーーーー



「……はぁ」


 折角の土日が、明日の夜まで完全に潰れた。素早く解決したとしても、セキュリティロックは24時間は解除されないんだよな……。

 あー、くっそ! 明後日からはテスト期間でログインを控える予定なのに、その直前でこれって酷くねぇ!? あー、嫌がらせが目的なら人が多く集まる時間帯こそ、一番の狙い時か。


「うぅ、兄貴……」

「……しょんぼりしながら入ってくるんかい」

「だって、こんな状況になるって予想外だったもん……」

「……まぁ確かになぁ」


 いくらなんでも、ゲームのサーバーにDDoS攻撃を仕掛けるとか想像出来る訳もないもんな。というか、普通に犯罪行為なのにそこまでやるか!? ……やるんだろうなぁ、その気持ちは欠片も理解出来ないけど。


「兄貴、これってもしかしてあの午前中のあれが犯人ですか!?」

「……断定する方法はないけど、タイミング的に無関係とも思えないな」

「だよね!? うー! BANされてもそれでも邪魔してくるのー!?」


 晴香にはその可能性は言わずにおこうと思ってたけど、晴香自身が無関係だと思うはずもなかったか。あれだけゲーム内でふざけた事をやらかしたのに、それで終わりにしない……いや、逆か?

 レナさんを筆頭に色々な人の尽力によって運営からBANされる結果になったのは俺らにとっては良い事だけど、あのスライムにとっては最悪の結果なはず。……それで大人しくなるようであれば、あそこまで悪意全開の行動はそもそも出来ない? いや、でもこれって普通に犯罪だよな……。どうすればそんな行為を実行しようなんて考えられる……?


「あー、くっそ! 犯罪行為をする奴の行動原理なんか分かるか!」

「わっ!? ビックリしたのさー!?」

「圭ちゃん、どうかしたのー?」

「あ、やべっ!? 母さん、なんでもない!」

「……それなら良いけど、夜だから近所迷惑にならないようにお願いねー!」

「気を付ける!」


 ふぅ、思わず苛立って大声を出してしまった。まぁ今のは母さんにそう言われても仕方ないから、今度からは気を付けよう。……こんな事に今度なんかいらないけど。


「……兄貴も結構苛立ってる?」

「そりゃ……苛立たない訳がないだろ、この状況」

「あぅ、確かにそうなのです……」

「あー、晴香に怒ってる訳じゃないから気にすんなって」


 しまったな、思った以上に自分でも苛立ってるっぽい。ここで苛立っても俺らにはどうしようもないし、今は単純に解決を待つしかないか。


「そういえば、いったんがホームサーバーに認証のチェックがどうとか言っていたのです!」

「あ、そういやそうだな。認証しにリビングに行きますか……」

「はーい!」


 ホームサーバーに通知が届いているはずだから、本人の生体認証をしろって言ってたもんな。……具体的にセキュリティロックが実行されたのに関わったのは初めてだから、そんな処理があるとは知らなかったけど。


「ところで、なんで再認証なのー?」

「俺もそれは知らないな。……後で調べてみるか」

「圭吾、晴香、ホームサーバーになんか通知が来てるぞ? セキュリティロックによる再認証の要請通知ってなんだ?」

「あ、父さん、それはすぐ行く!」

「調べる前にこっちが先なのさー!」

「だなー」

 

 父さんから通知が来ているって言われたし、調べる前にホームサーバーでの生体認証を済ませてこよう。

 それからちょっと公式掲示板も見てみるか。……運営が悪い訳じゃないけど、多分荒れてるだろうなー。



 ◇ ◇ ◇



 とりあえず手早くホームサーバーの生体認証を終えて、自分の部屋へと戻ってきた。父さんと母さんが不思議そうな顔をしてたから一応簡単な説明をしてきたけど、正確な事を知っている訳じゃないから説明に手間取ったよ……。


「……あぅ、なんだか気疲れしたのです」

「……俺もだよ」


 父さんと母さんに説明する為に、他のセキュリティロックが発生した事例を細かく調べる羽目になるとは思わなかった。軽くしか知らなかった内容だけど、ちょっと詳しくなったね。……全然嬉しくないけども。


「てか、今までのセキュリティロック、全部逮捕者が出てるとは……」

「そもそもセキュリティロックの実装理由が、不正改造での回収があった件だとは思わなかったのです……」


 いざ調べてみたら、俺や晴香が小学生の頃にあったという不正改造で回収騒動があった際にセキュリティの強化用に組み込まれたシステムの1つが今回のやつらしい。

 回収騒動になった改造がVR機器とホームサーバーに保存されていたフルダイブの総使用時間を偽装するものだったみたいで、そういう何らかの偽装が行われた可能性があるのを検知した際に強制的な再認証を行うものとの事。回収をしなくても、すぐに対応出来るようにという事らしい。


 実際にセキュリティロックが発生した事例は、個人認証のデータを違法に売り払った人の個人情報を使い、業務用のいったんみたいなAIがその操作をするというものだったようである。

 料理店の評価だったり、通販での商品の評価だったり、そういうものの評価の偽装を行なっていたとの事。もちろん無料な訳もないから有料で請け負って……。


 まぁそんな行為は不自然な評価だから色々と怪しまれたらしく、セキュリティロックが実行され、生体認証での再認証が不可能なものが炙り出されたという事だった。それで判明した個人認証のデータを売った人はもちろん逮捕。

 運営サイト側が公的機関に実行を依頼した件もあれば、運営サイト自体がお金で評価を売っていたっていう件もあったけどなー。……運営側が評価を売るってどうなんだよ。いや、普通にその場合は運営側も逮捕されてたけどさ。


「……これ、個人で出来るのか?」

「分かんないのさー!?」


 調べてみて思ったけど、件数自体は少ないけどどれも組織的なものであって、個人でどうこう出来るようなものの気がしない。そもそも根本的にフルダイブのゲームを狙ったものが今まで一件も存在していなかった。

 あー、わっかんねー! 個人でゲームのサーバーを攻撃する事になんか意味あんの!? ……ここは考えても無駄なんだろうなぁ。


「……ちょっと掲示板でも見てみるか」

「あぅ……今の公式掲示板は見たくないのです……」

「あー、晴香まで無理に見る必要はないぞ。……そういや、サヤとヨッシさんとの連絡は取らないのか?」

「えっと、メッセージは送ったんだけど返事が来ません!」

「あー、俺らみたいに家族に説明中か?」

「多分そうだと思うのです!」


 まぁ俺らもちょっと説明に手間取ったし、ガチの公的機関からの正式な再認証の要請だから面倒といえば面倒か……。なんか変な事をやらかしたと思われて、親に詰問されるとか普通にありそう。


「ま、とりあえず俺は掲示板を見てくるから」

「私はサヤとヨッシからの返事待ちなのです! しばらく兄貴の部屋にいていい?」

「それくらいなら構わんぞー」

「それじゃ椅子をお借りしまーす!」


 お借りしますって、既に俺の部屋に入ってきてすぐに座ってたままだけどなー。おかげで俺はベッドに座ってる訳で……。まぁ今に始まった事でもないから別に良いか。


 さて、荒れてる可能性は高いけど、一応今の掲示板の様子を見ておこうっと。もしかしたら妙なところから情報があるかもしれないしね。

 運営の動きが気になるのが掲示板を見る一番の理由だけど。……オンラインゲームでのトラブルは運営が対応を間違えると、運営に非が無くても人離れの原因になり得るからな。流石にそれは嫌だしね。



【問題プレイヤー発覚!?】総合情報スレ その29【でも無事解決】


1:通りすがりのモンスター

 ここは総合情報スレになります。

 各種エリア、新種族、クエスト情報など総合的に扱っています。


 深く掘り下げたい場合は各種情報の専用スレにお願いします。


 前スレ

 http://*************



576:通りすがりのモンスター

 なんでログイン障害が発生してんの!?

 混雑する程の何かあったっけ!?


577:通りすがりのモンスター

 え、ログイン障害になってるのか?


578:通りすがりのモンスター

 ん?

 なんかあったの?


579:通りすがりのモンスター

 なんか知らんが、ログイン障害が発生して整理コードが発行されてる。

 さっき5452番とか渡されたけど、流石に待ってられん。


580:通りすがりのモンスター

 え、そんな事になってんの?

 いくらなんでも、メンテ明けでもないログイン待ちでそれは多くね?


581:通りすがりのモンスター

 いったんを呼べば来るかな?


582:通りすがりのモンスター

 おいおい、いったんがログイン処理をしてるのに、ログイン障害が起きてる時には来れないだろ。


583:通りすがりのモンスター

 負荷がかかってる時に、更に妙な負荷をかけるのは止めようぜ。

 おーい、いったん!


584:通りすがりのモンスター

 言ってる事とやってる事が違うじゃねぇか!


585:通りすがりのモンスター

 いつになったらログイン出来るんだ、これ?

 Lv上げが出来ねぇじゃねぇか。


586:通りすがりのモンスター

 折角の土曜の夜中を潰すなー!

 さっさとログインさせろー!


587:通りすがりのモンスター

 スクショの撮影の予定が狂う!?

 このログイン障害、すぐに解消になるよね!?


588:通りすがりのモンスター

 あー、晩飯を食おうとログアウトしたら、対応にでてきたのがチョーチだったのはこれが理由か。


589:通りすがりのモンスター

 チョーチが出てきてんの!?

 え、思ったよりもヤバい感じ?


590:通りすがりのモンスター

 マジか!?

 完全にいったんの処理能力を超えてんじゃん!?


591:通りすがりのモンスター

 チョーチって何?


592:通りすがりのモンスター

 あー、チョーチに遭遇した事ない奴もいるのか。

 普段はいったんが俺らプレイヤーの対応をするんだけど、処理が間に合わないとか、不具合があった時に代わりに出てくる管理AIがチョーチだ。

 ま、本来は運営の開発サポート用のAIらしいけどな。

 ちなみに見た目は提灯お化けだ。


593:通りすがりのモンスター

 あー、そういうのもいるんだ。


594:通りすがりのモンスター

 ……いったんがまたバグったか?


595:通りすがりのモンスター

 あー、その可能性はあるな。

 運営、さっさといったんを直せー!

 そしてログインをさせろー!


596:通りすがりのモンスター

 てか、運営はちょいちょいここを見てるだろ!

 お知らせでログイン障害が発生してるって報告だけじゃなくて、もうちょい詳細を出せや!


597:通りすがりのモンスター

 なんとか言えや、運営!


598:通りすがりのモンスター

 おーい、とりあえず落ち着けー。

 運営だって、対処に動いてるかもしれんだろ。


599:通りすがりのモンスター

 告知だって対処の1つだろ!

 さっさとログイン出来る時間を教えろ!


600:通りすがりのモンスター

 いや、障害発生中って告知は出てんだろ。

 まだ10分くらいなもんなんだから、少し落ち着け。


601:通りすがりのモンスター

 運営を庇う自作自演とかしなくていいから。

 運営は仕事しろ!


602:通りすがりのモンスター

 はぁ!?

 何を勝手に自作自演の認定してんだよ!


603:通りすがりのモンスター

 自作自演をするやつはそう言うんだよ!

 こんなとこで油を売ってないで、さっさと直せ、クソ運営!


604:通りすがりのモンスター

 なるほど、いったんは完全に機能不全か。


605:通りすがりのモンスター

 >>603とか、いつもなら誰かが見る前に消されてるような内容だよなー。


606:通りすがりのモンスター

 いったんが不具合って可能性も高まってきたか?


607:通りすがりのモンスター

 でも、流石にログイン待ち5000人以上は多過ぎね?


608:通りすがりのモンスター

 普段の接続数がどんなもんか公表されてないから、そこはなんとも……。



 あー、一部荒ぶってる奴もいるにはいるけど、ここまで見た限りでは思った程は荒れてる様子ではないな。むしろ、普段なら不適切な書き込みを素早く消すいったんの動きがない事の証明になってるよ。

 とりあえず、まだまだ書き込みがあるからその先を見ていくか。多分どこかのタイミングで、セキュリティロックの話題は出てくるはず。



649:通りすがりのモンスター

 おい、お知らせが更新されたぞ!

 これ、思ってたよりも大事だ!


650:通りすがりのモンスター

 ちょっとお知らせを見てくる。


651:通りすがりのモンスター

 俺も見てこよ。


652:通りすがりのモンスター

 ちょ、お知らせを見たけどなんだこれ!?

 セキュリティロックだと!?

 しかもフルダイブ用のゲームでDDoS攻撃!?


653:通りすがりのモンスター

 はい!? え、ゲームであれがされる事なんてあんの!?


654:通りすがりのモンスター

 え、これマジ情報?

 セキュリティロックって、前にあったの何年前だよ……?


655:通りすがりのモンスター

 2年前に中堅の通販サイトで不正評価があった時以来じゃね?


 てか、明日の20時30分までログイン不可が確定……。

 ふっざっけんな!


656:通りすがりのモンスター

 おい、どこのどいつだ!

 こんなふざけた真似しやがったのは!


657:通りすがりのモンスター

 ごめん、セキュリティロックって何?


658:通りすがりのモンスター

 あー、公的機関がVR機器のフルダイブのセーフティの為に用意してる強制再認証システムだ。

 過去に違法改造の対策で回収騒動になった時に再発防止……いや、どっちかと言えば早期解決の為に導入されたやつ。


659:通りすがりのモンスター

 これをゲームで見る事になるとは思わなかった……。

 てか、VR機器でDDoS攻撃とか可能なの?


660:通りすがりのモンスター

 ……確か、海外ではあったような気もするぞ?

 不正行為でBANされた報復として、大金持ちのボンボンが大量に人を雇ってやらかしてたはず。

 結果的には逮捕されて、訴えられてとんでもない額の賠償金を払う羽目になってたかと。


661:通りすがりのモンスター

 うっわ、迷惑な奴もいるもんだな……。


662:通りすがりのモンスター

 DDoS攻撃って何?


663:通りすがりのモンスター

 ちょい待ち。

 BANされた報復って、思いっきり心当たりがあるんだが!?


664:通りすがりのモンスター

 あっ、午前中のあいつか!

 ……やりかねないな。


665:通りすがりのモンスター

 あの悪意の塊のくそ野郎か!?


 いや、確かにやりそうだけど、どういう手口だ、これ!?


666:通りすがりのモンスター

 はぁ!? って事は何か?

 散々ゲーム内で引っ掻き回しておいて、BANされたらされたでこんな真似しやがったってか!?


667:通りすがりのモンスター

 え、でも犯罪行為だよね?

 BANされたからって、そこまでする?


668:通りすがりのモンスター

 犯罪行為だからしないって人ばっかなら、この世に警察なんてものはいらないんだよなぁ……。

 犯罪者の思考回路なんか理解出来ん。


669:通りすがりのモンスター

 確かにそりゃそうだ。

 あー、くっそ、今日はもう何も出来ねぇじゃん。


670:運営

 プレイヤーの皆様には、このような事態になりお詫びを申し上げます。

 お知らせにも記載している通り、不正な認証データの存在が多数確認された為、セキュリティロックの申請を行い、実行に移せていただきました。

 この件に関する補填は現在検討中ですので、決定し次第お知らせさせて頂きます。


 また、セキュリティロックの申請で、本日の19時以降にアクセスされた方には再認証の通知が送られていますので、お手数ですがそちらもよろしくお願いします。


671:通りすがりのモンスター

 運営さん、お疲れ様です。

 まさかVRゲームでセキュリティロックに遭遇する事になるとは……。


 てか、19時以降のアクセスに限定したんだな。


672:通りすがりのモンスター

 だからDDoS攻撃って何さー!?


673:通りすがりのモンスター

 それくらい今使ってる機械で調べろよ!


 まぁ19時以降で問題ないんじゃね?

 ログイン障害が発生してからの時間はカバー出来るし、任意で申請出来るとこだったはずだから十分な時間帯だ。


674:通りすがりのモンスター

 DDoS攻撃ってのは、サーバーの処理能力を超えるほどに過剰にアクセスしまくって今回みたいな障害を発生させるんだが……。


 冗談抜きでどうやった?

 海外であったのは金でやった人海戦術だが、今回のもそうか?


675:通りすがりのモンスター

 流石にそれは分からんな……。

 それこそ、そこは警察やらに任せるしかないとこだろ。


676:通りすがりのモンスター

 確かになー。


 運営なら多少の情報は持ってるかもしれんけど……流石に開示出来る情報じゃないよな?


677:運営

 申し訳ありませんが、開示出来ないのはその通りです。

 被害届は既に出していますので、そちらの方も進展があれば伝えられる範囲でお伝えします。


678:通りすがりのモンスター

 はぁ、流石に今回のは運営を責める気にはなれんな。

 あ、でも補填は頼みますぜ、運営さん!


679:通りすがりのモンスター

 まぁBANされた報復で、犯罪とかになる運営さんも被害者ではあるよね。

 ただし、月額料金は払っているのだから、その分は補填してもらう!

 

680:通りすがりのモンスター

 経験値に、スキルの熟練度、アイテムの生産、探索、色々と出来なくなったもんなー。

 折角の土日が……。


681:通りすがりのモンスター

 うぅ、明後日からはテスト期間なのにー!?


682:通りすがりのモンスター

 学生組はそうなるのか……。

 まぁドンマイ!


683:通りすがりのモンスター

 災難としか言いようがないな。

 あ、そういや明日のタッグ戦ってどうなるんだ?


684:通りすがりのモンスター

 今すぐにどうするか決めるのは多分無理だろ。

 主催者側が全員がリアルで交流があるなら出来るかもしれんが、その辺は分からんしな……。


685:通りすがりのモンスター

 ま、そりゃそうだ。

 その辺は主催者たちが明日どうするか検討するだろ。



 あー、これは思いっきり俺たちが関係してる事だよなー。うーん、この辺は冗談抜きで明日になってログインしてから大急ぎで調整をするしかないけど、場合によっては延期も考えないといけないかもな。あ、でももしかすると、誰かから繋がるかも?


「晴香、ちょっと良いか?」

「んー? 兄貴、なにー?」

「いや、掲示板で明日のタッグ戦の話が出てるんだけど、ラックさん辺りからリアル側で連絡って取れないか?」

「うーん、多分無理ー! ラックはリアルでの繋がりはないって言ってた!」

「あー、無理かー」


 多分赤のサファリ同盟とレナさん辺りは普通に連絡は出来てるだろうけど、青の群集の方……いや、いか焼きさんがいるなら繋がる可能性はある?

 うーん、俺らとはリアルでの連絡は無理そうだから、全員の意見を纏めるにはログインしてから打ち合わせをするしかないか。


「兄貴こそ、フラムさんからは無理なのー?」

「あ、あいつか。完全に素で忘れてた……。ちょっと連絡してみる」

「はーい!」


 さて、フラムこと慎也にメッセージを送ろうっと。内容は『ちょっと話がある』だけでいいや。大体内容は見当つくだろ。って、すぐに通話が来たんだけど早っ!? とりあえず出るかー。


「おっす、圭吾! 話って、セキュリティロックの件か?」

「まぁ無関係じゃないけど、明日のタッグ戦の件だな。弥生さんとリアルで連絡出来たりしない?」

「あー、確か水月が連絡先を交換してたっけな? 多分いけるぞ」

「お、マジか! いか焼きさんやレナさんにも連絡つくか?」

「聞いてみないと分からんけど、多分いけるはずだな。ちょっと水月に連絡してみるわ」

「もし連絡がつきそうなら『明日、早いうちにタッグ戦をどうするかの打ち合わせがしたい』って伝言を頼む」

「おう、任せとけ!」


 とりあえず短いけどこれで通話は終了っと。なんか珍しく慎也が思いっきり役立った気がする。まぁ流石に関係者全員には伝わらないだろうけど、少なくとも打ち合わせを少しでもスムーズには出来るはず。


「兄貴、上手くいきそうな感じー?」

「まぁ多分だけどなー。そういやサヤとヨッシさんからは返事はあったか?」

「まだなのです……。あ、そういえばコンテストの件は話題に出てたー!?」

「……そういやまだそれは見てないな」


 絶対にそこは気にする人がいるはずだから、まだ見てない部分で書き込みがあるのかもしれない。続きを見ていくか。えーと、それっぽい書き込みは……あ、あった。



728:通りすがりのモンスター

 そういやスクショのコンテストってどうなんの?


729:通りすがりのモンスター

 あ、そういやそうだな。

 今日の24時までだけど、今の状況じゃどうしようもないし。


730:通りすがりのモンスター

 まだ受け付けを済ませてないんだけどー!?


731:運営

 そちらも補填の内容と同様に、検討中になります。

 おそらく受け付け終了日時の延期になるかと思いますが、具体的な日時に関しては決まり次第、お知らせさせていただきます。


732:通りすがりのモンスター

 あー、まぁそうなるわな。


733:通りすがりのモンスター

 延期して受け付けをしてもらわなきゃ、まだ受け付け出来てないのが無駄になっちまう。


734:通りすがりのモンスター

 あー、盛大に予定が狂ったもんだ。


735:通りすがりのモンスター

 セキュリティロックが延長にならないのと、犯人がサッサと捕まる事を希望。

 再認証が出来るとは思えんから、まず間違いなく捕まるだろ。


736:通りすがりのモンスター

 だなー。

 とりあえずセキュリティロックでの再認証を済ませてくるかー。


737:通りすがりのモンスター

 とりあえず状況の推移を見守るしかないか。

 

 俺は再認証は終了済み!


738:通りすがりのモンスター

 あーあ、どうしてこうなった……。



 あ、ここが今の最新の書き込みみたいだね。……なんというか、思ってたよりも全然荒れてなかったな。

 というか、みんなが犯人として思い浮かぶ人物がいる事と、滅多な事では使われないセキュリティロックが使われた事で、運営に対して怒りが殆ど向いてなかったっぽいね。


 まぁ今日の午前中の事を考えたら、あのスライムが犯人の可能性をみんな連想するよね。事実としてはどうかは分からないけど、少なくともあのスライムならやりかねないという共通認識があったのが大きいか。


「晴香、とりあえずコンテストは補填とかも含めてこれから検討っぽいぞ」

「んー、まぁそれは仕方ないよねー。運営さんも大慌てだろうし!」

「そりゃそうだな。さて、まだ寝るには早いけどどうすっか……」

「それなら兄貴、そこにある古いゲーム機で対戦はどうですか!?」

「おっ、小学生の頃以来だけど久々にやるのもいいな。そういやサヤとヨッシさんからの返事は?」

「……返事はきたけど、親への説明に苦戦中だって。サヤの両親とヨッシのお父さんを含めて、VR空間で話し合ってるそうなのです……」

「あー、そんな事になってるのか」

「しばらく時間がかかりそうなのさー! 多分、どこかのゲームのニュースで取り上げられたら大丈夫だとは思うのです」

「……説明するにはニュース記事があればやりやすくもなるか」


 まず間違いなくゲーム関係のニュースサイトでは扱う内容だろうし、それを見せられれば説得もしやすい筈。……流石にその状態では晴香が割り込んでいくのは厳しいだろうし、その辺を待てば何とかなるはず。

 多分晴香としてはフルダイブをせずに待機していたいからこその提案だろうし、たまには古いVRではないゲームで対戦ってのも悪くはないか。


「さてと、長い間まともに起動してないけどちゃんと動くよな?」

「ダメだったら、ダメだった時なのさー!」

「ま、それもそうだな」


 えーと、この手の古いのは旧型の実体のあるテレビに繋ぐやつだけど、もう我が家にはテレビ自体は無いから……確か携帯端末へと画面出力する無線変換器がどっかにあったはず。あぁ、あった、あった。

 俺の携帯端末に無線で接続して、晴香の携帯端末と視界を共有すれば画面表示は問題なし。後は本体が無事に動くかだけど……お、ちゃんと動くね。


「ほれ、晴香、コントローラー」

「物理のコントローラーは久々に触ったのさー!」

「で、何をやる?」

「うーん、格闘ゲームも良いけど、ここはレースゲームで!」

「ほいよっと」


 そんな感じで久々にVRゲームではないレトロなゲームで晴香とレースゲームで対戦をしていった。色々と状況が動くには時間がかかるだろうし、今日出来る事は特にないなー。


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