第909話 予想外のフィールドボス
まさかのアルの大穴予想が的中し、色的に火属性と風属性持ちの竜がマグマに中から出現してきた。サイズ的には通常時のサヤの竜より少し大きいくらいだけど、ここのLv帯のフィールドボスだから決して油断は出来ない。
というか、なんで風属性!? マグマのあるエリアなんだから、火と土属性の2属性で良くないですかね!?
お、アルが複合魔法のアクアプロテクションで竜の口から連続して撃ち出されているウィンドボールを凌ぎったか。……でも凌ぎきったと同時に破壊されてしまったから、そんなに悠長にしてる場合じゃないな。
「アル、水の守勢付与をかけるからヤバそうな時はそれで水の防御魔法を頼む!」
「おう、了解だ!」
アルと俺が被っている水魔法の防御魔法であれば、守勢付与での大幅な強化が可能だからね。さっきの攻撃を見る限りそれくらいの強化は必要そうだし、ここは根を張って移動をしない状況のアルに防御は任せた方がいい。
<行動値7と魔力値21消費して『水魔法Lv7:アクアエンチャント』を発動します> 行動値 31/38(上限値使用:44): 魔力値 203/224
よし、とりあえずこれでアルへ水球が3つ漂い出したから守勢付与は完了っと。でも、この使い方だと1回で全部水球を使い切るから要注意だな。
というか、フィールドボスが出てくるなら大型化は解除して行動値全快で戦いたかったんだけど、今更言っても仕方ないか。上手く大型化している状態を使いつつ、何とか倒そう。
「今回はスキルの特訓とかやってると冗談抜きで死にそうだし、制限無しでいくぞ! サヤ、魔力集中とどれかのチャージで待機! アル、サヤのチャージ完了を最優先で防御!」
「分かったかな! 『魔力集中』『断刀』!」
「おうよ!」
「ハーレさんは連投擲を連発で! 動きを制限したいだけだから無理に当てなくてもいい! ヨッシさんはハーレさんの攻撃に合わせて、まず神経毒でポイズンインパクトで叩き落とす感じで頼む!」
「了解なのさー! 『魔力集中』『連投擲』『連投擲』『連投擲』!」
「了解!」
とりあえずこれでアルがこの竜に対する防御は1回限りだけど強力なのが使えるし、サヤの一撃は確実に通す。その為にもまずは空中にいる竜を地面に下ろすとこからだけど、飛べないエリアで飛ぶ敵って卑怯じゃない?
んー、どうも今は低空飛行してるし、ハーレさんの投擲も避け切れずに当たっている。……牽制のつもりだったんだけど、この動きは妙だな。
「あ、ケイさん、識別は?」
「それは俺が……って、行動値に余裕がなかった! ヨッシさん、任せていいか?」
「だと思ったよ。うん、任せて! 『識別』!」
ヨッシさんがまだ毒魔法を使ってないのは、タイミングを図ってるんじゃなくて、そこの見落としを確認したかったからか。……うん、ちょっと落ち着こうか、俺。
幸いな事にこの竜はサヤの通常時の竜と同程度の大きさである。空中を飛んでいるのが厄介ではあるけど、このサイズなら俺の大型化したロブスターで抑え込める!
「識別情報は後だね! そこ! 『ポイズンインパクト』!」
ハーレさんの連投擲の連発は全弾は当たらなかったけども、それでも結構な数は当たり、ヨッシさんのポイズンインパクトが真上から直撃した。
でも、神経毒は効いてないか。この竜、落下しながらも思いっきり口から魔法砲撃で狙いをつけてるっぽい。いや、飛べるから少し高度が落ちた程度では問題ないのか。
「あ、サヤが狙われてるのです!? 神経毒は効かなかったみたいなのさー!?」
「でも届くとこまで来たなら充分だ! アル!」
「おうよ! 『アクアウォール』! てか、この竜の魔法はとんでもねぇ威力だな、おい!?」
「これ、魔法砲撃にしたウィンドインパクトかな!?」
「多分そうだろうな!」
思いっきりサヤのチャージの妨害をする為に口から突風を吹き出してきた竜だけど、アルが守勢付与の水球を全て消費し、その風を耐久力を大幅に強化したアクアウォールで防いでいく。
でも、凄まじい威力だな、この風。守勢付与のアクアウォールでギリギリ防げた感じだし、魔法砲撃に攻勢付与までかかってそうだ。
「ちっ、ギリギリ相殺って、今度は風の球か! 『アクアウォール』!」
あ、今度は爆発的に拡がる風であっという間にアクアウォールが破壊された。……思った以上にこの竜の魔法の威力が高いな。これ、急いで攻撃を封じてしまった方がいいか。
「アル、なんとか凌いでくれ! 俺は今の高度のうちに、その竜の動きを止める!」
「了解だ! だが、キツかったら場合によってはウォーターフォールを使うぞ!」
「ほいよっと! その時は合図をよろしく!」
とりあえず俺は竜の真下まで駆けていくのみ! この竜は相当強そうだから、油断は一切抜きで一気に仕留め切る!
「ハーレさん、散弾投擲を連発! ヨッシさん、識別情報を頼んだ!」
サヤはまだチャージ中だし、俺もこれからする事には魔力集中に切り替えた方がいい。その少しの間、ハーレさんには魔法の妨害をしてもらっておこう。
<『自己強化Lv2』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 31/38 → 31/40(上限値使用:42)
<『操作属性付与Lv1』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 31/42 → 31/41(上限値使用:41)
よし、まずは自己強化の解除完了! それじゃスキルの威力を上げる為にも魔力集中を使いますか!
<行動値上限を3使用と魔力値6消費して『魔力集中Lv3』を発動します> 行動値 31/41 → 31/38(上限値使用:44): 魔力値 197/224 :効果時間 14分
「識別情報を伝えるね。名前は『豪傑劣強魔竜』で黒の暴走種のLv26。属性は火と風。特性は豪傑、魔法耐性、魔力強化、マグマ適応。完全に魔法特化型だよ!」
「Lv26って、少しだけど格上かな!?」
「それに魔法耐性と魔力強化持ちなのさー!?」
「……魔法はあまり効かないと思った方が良さそうだな」
「ある意味、俺はロブスターで動いてて正解か!」
「多分そうだろうね。ケイさん、私も防御の方向で動くよ」
「その方が良さそうだから、ヨッシさん任せた!」
「よしきた! ヨッシさん、俺の水魔法の後ろに毒魔法で防御を頼む! 『アクアウォール』!」
「了解、アルさん! 『ポイズンウォール』!」
この特性の構成だと魔法メインでの戦闘は厳しすぎる。何故か異様に狙われまくっているサヤへの防御はアルとヨッシさんの2人体制になったし、竜の口から放たれる風の球が強力だけど、なんとか時間は稼げそうだ。
戦闘開始直後にサヤにチャージを開始してもらっていて正解だったかも……って、サヤが執拗に狙われている理由ってそこか?
ここまで魔法に寄ってると、物理攻撃への防御力はかなり弱いはず。でも、それだけなら一番近くにいる俺や、ハーレさんを狙ってもおかしくはない。となると、最優先で狙ってくるのはチャージを行なっている状態のプレイヤー!
「ハーレさん、予定変更だ。Lv3で爆散投擲のチャージを開始! アル、ヨッシさん! ハーさんの方に狙いが変わる可能性があるから、そこは注意しといてくれ!」
「了解なのさー! 魔法産の弾は意味なさそうなので普通の石しとくのです! 『爆散投擲』! わっ!? 急に私に狙いが来たのさー!?」
「ちっ、威力の高いチャージ攻撃が最優先の標的か! 『アクアウォール』!」
「みたいだね! 『ポイズンウォール』!」
「ケイ、チャージ完了かな!」
「ほいよっと!」
やっぱり最優先で狙うのはチャージをしている相手、しかも発動Lvの高い方が優先か。そりゃ竜の腹の真下まで来ている俺を無視してる訳だよな。
それにしても良いタイミングでサヤのチャージも終わったし、無防備なその首は貰おうか!
「サヤ、俺がこの竜を抑え込むから、そこを思いっきり斬っちまえ!」
「分かったかな!」
「優先順位を間違えた事、その身で味わってもらうぞ!」
確かにチャージは途中で潰してしまうのが一番だ。だからこの竜の行動パターンは決して間違っている訳じゃない。
だけど、チャージが終わらなければ効果を発揮しないスキルばっかじゃないんだよ!
<行動値を15消費して『万力鋏Lv1』を発動します> 行動値 16/38(上限値使用:44)
<『万力鋏Lv1』のチャージを開始します>
これだけ魔法に長けている竜なのに、一定以上の高さに移動はしないのは確実に何かある。でも、だからこそ大型化しているこのロブスターのハサミが竜に、その首に届く!
大型化しているから思いっきりガッチリと竜の首を挟んだぞ。おらっ、これで地面に落ちちまえ! 竜の腹側に回り込んだから、竜からは俺は見えてない位置になるはず。
よし、抑え込むのには成功! でも、まだ万力鋏の威力はチャージが進んでないからまだ挟み込む力は弱い。ここからキャンセルさせないようにしないとな。
「はっ!? 標的がケイさんに切り替わったのです!」
「ま、この状況ならそうなるよなー! アル、ヨッシさん、攻撃の迎撃は任せた!」
「ケイ、ナイスだ! そこは任せとけ! 『アクアクリエイト』『水流の操作』!」
「魔法は効きにくくても、邪魔くらいは出来るよね! 『神経毒生成』『同族統率』! 行け、ハチ1〜3号! それと『並列制御』『エレクトロクリエイト』『エレクトロクリエイト』『並列制御』『電気の操作』『電気の操作』! サヤ、今だよ!」
「分かったかな!」
あ、魔法の効きが悪いとはいえ、この竜は火属性も持ってるから水属性に関しては流石に全然効果がない訳でもないっぽい。
俺に標的を変えた時から通常発動のファイアボールやファイアボムとかが飛んできてたけど、それらはアルとヨッシさんによって妨害が上手くいき、その間にサヤが一気に距離を詰めていく。
「サヤ、やっちまえ!」
「これで、どうかな!」
そしてサヤが竜の眼前へと迫り、その眩い銀光を放つ爪での鋭い一閃で斬りつけていく。おぉ、格上のフィールドボス相手なのにLv1でのチャージで一気に1割近くも削れた。この竜、魔法にはとことん強いけど、物理攻撃にはとことん弱いっぽいな。
「追撃、いくかな! 『爪刃双閃舞』!」
そこから更にサヤの銀光を放つ連撃が次々と決まっていく。銀光に強弱が発生しているし、この強弱の感じはLv3での発動っぽいね。
サヤの最大火力の攻撃、ここでやっちまえ! おぉ、凄い勢いでHPが減っていく。あっという間にHPが5割半くらいまで減ったよ。
そして俺が首根っこを抑え込んでるし、竜からの反撃の魔法はアルとヨッシさんが完全に防いでくれている。通常発動の魔法は視界の中にしか照準設定が出来ないから、位置関係的に直接は俺を狙えないみたいだね。ふっふっふ、位置的に見えないもんなぁー!
苦し紛れにどうも操作をしてる火の弾や、爆発も飛んでくるけど、そこはヨッシさんが同族統率の生成個体を盾に使って俺には届かないようにしてくれている。
「……あ、そっか。同族統率って、応用スキルの強化統率になれば本体の7割の性能でもこういう使い方なら、防御役や囮としての性能が上がるんだ。それに同格の進化階位なら応用の毒も……うん、これは良いかも」
あ、何か今のヨッシさんの呟きで何かが決まった気がする。うん、まぁ今の様子を見ていれば確かに有用性は感じるよね。
今の統率個体は成長体相当で即死だったけど、それが未成体相当になれば攻撃の威力にもよるけど何発かは耐えられるはず。
「これで最大強化かな! それじゃ次に――」
「わっ!? あ、フェニックスだー!? そして私はチャージ完了なのさー!」
「え、このタイミングで飛んでくるの!?」
くっ、俺らの誰かが高く飛び過ぎて……いる訳がないか。うん、敵の竜も含めてアルの木以上の高さには誰もいない。
あ、フェニックスはそのまま通り過ぎていった。って、俺達は関係ないんかい! いや、助かったけどさ!
「ただ通り過ぎただけっぽいな」
「いきなり焦るわ!」
サヤがLv3で発動した爪刃双閃舞で相当削れてるし、さっきサラッとハーレさんもチャージを終えたと言ってたから、これで倒し切れるか?
「よし、ハーレさん! 爆散投擲をぶっ放せ!」
「はーい! えいや!」
<『万力鋏Lv1』のチャージが完了しました>
あ、なんか妙なタイミングで万力鋏のチャージが完了したよ。これ、発動させて切断するより、このまま抑え込んでおきたいんだけど、流石にそういう訳にもいかないよなー。
その間にもハーレさんが投げた眩い銀光を放つ弾が、竜の顔面に当たり炸裂していく。これで残りHPは1割半ちょっとってとこか。
「俺もチャージは終わったけど、Lv1のチャージだと倒しきれるか微妙なラインだな……」
「ケイ、倒し切れなければ私が仕留めるかな!」
「あー、そうして……いや、ちょっと待った!」
「あ、うん、分かったかな」
サヤにここで倒してもらうのが確実ではあるけども、さっきフェニックスが通り過ぎていったよな。って事は、今のフェニックスは検証に使われていない状況という訳だ。
そして、このフィールドボスである竜ですら、一定以上の高さには飛ぶ気配は無かった。うん、これは試すには絶好の機会だね。
でも経験値がどうなるかが少し気になる……。うーん、まぁ全然入らないって事はないはずだし、元々俺らよりLvが高いんだから経験値自体が多いと思うし、多分大丈夫なはず。
「はっ!? これはケイさんが何かを思いついてるやつなのです!」
「あはは、多分そうかな?」
「あー、こりゃ多分さっきのだな」
「やっぱりさっきのあれだよね」
みんなも大体見当はついてるみたいだし、みんなの意見も聞いてみてから決めますか。万力鋏の発動猶予の時間はそれほど長くはないから、手早く聞いていこうっと。
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