第904話 グラナータ灼熱洞の探索
<『封熱の霊峰』から『グラナータ灼熱洞』に移動しました>
俺とアルとヨッシさんは纏火で、サヤとハーレさんは発火草茶で、それぞれに手早く適応してから再びグラナータ灼熱洞の中へと入った。
現時刻は2時半。時間の余裕を考えて20分以内に空いている狩場を見つけられれば、17時からのスクショの撮影会の集合場所までの移動も含めつつ、ここでの連続戦闘が可能な2時間をフルで活用出来る。さーて、空いてる場所を頑張って探すぞー!
そういや他に準備をしていたPTが少し前に入っていったけど、もう姿が見えないなー。もう先に進んだ……もしかしてフェニックスに襲われて全滅とかしてないよな!?
あー、そういや鳥の人がいた気がする。……赤の群集の人だったし、気にしないでおこう!
飛ぶのが危険だという事は午前中に来た時によーく知っているので、アルのクジラは小型化してからの突入である。危険なのは分かってるんだから、それはちゃんと対応していかないとね。
それはそうとして、空いてる場所を探すのは探索気分でやったほうが焦らずに済んで良い。という事で、こっち側から間欠泉を探すぞー!
「ハーレさん、ダメ元でマップから間欠泉の位置の確認を頼む」
「了解なのさー!」
さて、正直無駄な気はしてるんだけども、ここはダメ元でも一応は確認しておく方がいいもんな。……そういや自分達で確認したいから全然エンとかの群集拠点種からマップの情報は貰ってないなー。
まぁ今後も競争クエストみたいにマップ情報が行動する上で必須な状況にならない限り、マップ情報を貰う事はないから別に良いや。
「ハーレ、どうかな?」
「んー、方向は入り口の方……東の方になるけど、やっぱり途中の経路は一切分からないです!」
「それなら辿り着く経路は、西の前の通路ではなさそうだよね?」
「いや、分からないぞ? 更に深く地下に潜り込んで、こっちの方に折り返している可能性もある」
「あ、そっか」
「確かにその可能性もあるよなー」
3つの通路があるけども、どこがあの間欠泉の地下部分に繋がっているかは分からない。いやまぁ情報共有板でフェニックスと戦ってたヘビの人から話が聞ければ、その辺は分かりそうではあるけどさ。
どっかにヒントになりそうなものはないか? 間欠泉で、ハーレさんは水も流れ込んでたって言ってたし……ん?
「あ、水……というか、液体か! みんな、マグマの流れ!」
「……なるほど、マグマが流れていってる先の方が低くなっているはずだな」
「ずっと下り続けているとは限らないけど、何も目印がないし、その方向で行ってみる?」
「右の通路はここの広間の方に流れ込んできてるかな!」
「正面の通路と左の通路の先に分かれて、それぞれに流れていってるのさー!」
「……正面か、左か、まだ2択か」
これで1択になってくれれば良かったけど流石にそうはいかないらしい。午前中はここを左に進んで少し行ったところで狩りをしていたけど、その時はどうだったっけ?
あんまり奥には進んでなかったけど、それらしき分岐はなかったし……マグマも殆ど流れてなかったような気もする。いや、ここは俺よりも観察力に長けた2人がいるんだから、その意見を聞こう!
「サヤ、ハーレさん、午前中に戦ってた場所で気になる事ってある?」
「うーん、そういう観点では見てなかったからはっきりとは言えないけど、そんなにマグマは流れてなかったかな?」
「はい! 気になる点はあったのです!」
「お、ハーレさん、それってどんな感じに気になったんだ?」
「えっと、方角的には……西寄りの北側の岩壁にマグマが流れ込んでる穴があったのさー! マグマの中に潜った時にあったのです!」
「え、そんなのあったのかな!?」
確か4戦目を開始する前辺りで、マグマの中を泳げばどうなるかをハーレさんが試してくれてはいたけども、その時は敵が襲ってくる事は無いと判明しただけだったしなー。
その時はハーレさんは今の内容は言ってなかったけど、確かマグマから出た瞬間に5体の敵が一斉に襲いかかってきて戦闘に突入したのも関係してそうではあるね。
「あの時、すぐ戦闘になったもんね。それで言い忘れてた?」
「覚えてたけど、どちらかというと重要だと思わなかったのでスルーしてました!」
「スルーしてたんかい! まぁそれはいいや。その穴ってどのくらいの大きさだ?」
「えーと、間欠泉の縦穴くらいの広さー! サヤとアルさんは確実に通れないのです!」
「……なるほどね」
多分それもあってハーレさんはスルーしてたような気もする。でも、これは逆に言えば俺やハーレさんやヨッシさんなら通れる穴という事。
マグマの中に入る手段があって、大きさの制限はあっても通れそうな穴がある。そして、その先に流れていってるマグマか。
「……これ、やっぱり更に地下があるんじゃないか?」
「同感だな。だが、その穴は正規ルートじゃなさそうだ」
「あそこの場所から北はここだし、西寄りって事は真正面の通路に繋がってそうだね。まぁ左側の通路の先って可能性はあるけど、それを言ったらどこの通路も可能性はあるし……」
「賭けにはなるけど、今回は西向きの正面に向かってみるかな?」
「よし、何の根拠もないけど、今回は真正面に向かって行くか! ダメだったらダメだった時って事で!」
「「「「おー!」」」」
さて、それなりに推測はしたけど、根拠は何もない。でもまぁ、それはそれで探索の醍醐味って事で問題なし! 本命はLv上げなんだから、空いてる場所があれば探索はそこで中断だしなー。
「あ、ケイさん、ちょっと良い?」
「ヨッシさん、どした?」
「探索をしていくのは良いけど、私とケイさんで交代しながら群集内交流板の確認もしておかない? ほら、もし空きが出た時にすぐに対応出来るようにさ」
「あー、それは確かにそうかもな。でも場所によってはすぐに……あ、分かりにくければ一度ログアウトして入り口から入り直すのでもいいのか」
「あ、確かにそれはそうだね。少し進化の軌跡や発火草茶の効果が勿体ないけど、マグマ適応の特性の実もおかげで想定外に消費が少ないし、確実に場所が確保出来るなら悪くないかも?」
「おし、その時の場所次第にはなるけど、その方向でいくか。みんな、それで良いか?」
「ま、それが無難だな」
「問題なしなのです!」
「私もそれで大丈夫かな!」
「それじゃそれで決定だな。ヨッシさん、どっちからやる?」
「さっきはケイさんがやってくれてたし、私がやるよ。アルさん、乗せてもらうね」
「ほいよっと。アル、出発!」
「おうよ! さて、正面のルートが当たりだと良いんだがな」
そう言いながら、サヤは小型化した竜をクマの腕に絡ませて自力で歩いていき、俺はアルのクジラの頭の上、ハーレさんとヨッシさんは巣の中である。
まぁ広くなっている部分を繋ぐ通路上では普通に敵は出てくるみたいだし、移動しながらだとこの状況がいろと対処しやすいんだよな。本格的に鍛えたいスキルを鍛えるには、場所を確保してからで!
そうしてヨッシさんが情報の確認をしながら、正面の通路を進んでいく。さて、ここからは通路を通る時には何がどういうタイミングで出てくるか分からないから要注意だな。
って、何も出てこないまま広間に出ちゃったよ。うーん、既に赤の群集のPTの先客ありで戦闘中……って、あー!? このPT、俺らの少し前に入っていった人達だ!
そっか、全滅した訳じゃなく、入り口のすぐ近くに空いている場所があったんだ。……くっ、正直すぐに空いた場所が見つかってるのが羨ましい!
てか、改めて思うけど不思議な光景だよなー。どこもぐるっと周囲は岩壁に囲まれているのに、広間があったり、狭い通路になったりってさ。
どこも足場が中央にあって、周囲がマグマになっているのは変わらないみたいだしね。てか、ここは俺らが午前中に戦ってた広間よりちょっと広そう? 場所によって広さも違うのか。
「戦闘中、悪い! 後ろ通ってくぞ!」
「お、さっきの灰の群集の人達か! おい、少し位置をズラして通りやすくするぞ!」
「「「「「おう!」」」」」
「お、助かる!」
「なーに、良いって事よ! そっちも空き場所が見つかるといいな!」
「空いてくれてると助かるんだがなー。んじゃ、行かせてもらうぜ!」
「おう!」
アルと赤の群集のイノシシの人がそんなやり取りをして、広間を通り抜けさせてもらった。この辺は俺らも午前中にやった事だけど、こういう譲り合いって大事だとしみじみ思うね。
「ヨッシさん、そっちはどうだ?」
「……あはは、あるにはあったんだけど、少しの差で他の人が交渉を始めちゃったみたいで取引コールが繋がらないね」
「あー、そういう事もあるのか……」
そりゃまぁ狙ってるのは俺らだけじゃないんだから、そういう事もあるのが当然ではある。でも今回はもうちょっと早ければってタイミングで運が悪いな……。
まぁそれはケチをつけても仕方ないし、ダメだったものはダメとスッパリ諦めよう。
「あ、ヨッシさん、交代はどういうタイミングでやる?」
「んー、通路で敵が出てきてその1戦が終わったらでどう?」
「おし、ならそのタイミングで!」
移動距離で交代するには全体像が分かってなさ過ぎるし、交代するタイミングとしてはそれくらいが丁度良いか。今から通路の部分になるから、ここで交代になる可能性もあるなー。
出来れば道中で出てくる敵から人数分のマグマ適応の適応の実を手に入れたいけど、どうだろね? もしくは余って要らないって人がくれたら嬉しいところ。
「はっ!? 危機察知に反応ありです! サヤ、左側のマグマの中なのさー!」
「ケイ、水の守勢付与をお願いかな! 『略:魔法砲撃』!」
「ほいよっと!」
ふむ、どうもサヤは防御は守勢付与頼りにして、魔法砲撃にした竜の魔法で対抗していくつもりか。
とりあえず俺はサヤに頼まれた守勢付与をかけていこう。今回はみんなのフォローに徹するつもりだからね。
<行動値7と魔力値21消費して『水魔法Lv7:アクアエンチャント』を発動します> 行動値 75/82: 魔力値 203/224
よし、これでサヤのクマの周囲に水球が3つ漂い出したから、守勢付与は無事にかかったね。でも、サヤはここからどういう風に動く気なんだろうか?
おっと、今回飛び出てきたのは……またお前か、真っ赤なワニ! そしてまたもや狙いはサヤか! あ、でもサヤには飛びかからずにワニが火の球を吐き出していく。
その吐き出した火の球は守勢付与の水球が自動防御したね。ふむ、そこで火の球が爆発したし、今のは魔法砲撃になったファイアボムか。
その様子に怯む事なく、サヤが竜の口で狙いをつけている。おっ、サヤも魔法砲撃で何かを狙ってるっぽい。何をやる気なんだろう?
「ケイの見様見真似かな! 『共生指示:登録2』!」
「って、エレクトロボールの連射か!? てか、数が多くね!?」
「わー!? ワニが完全にはマグマの中から出てきてないから、このままだと落ちるのさー! 『並列制御』『略:ウィンドボム』『略:風の操作』!」
これって俺がたまに使う半自動制御に登録したアクアボールの連射やアースバレットの連射を、共生指示から呼び出して使ってるのか。考えたな、サヤ!
でも、その連射でワニがマグマに落ちそうというか、戻りそうになったのをハーレさんが上手く指向性を操作したウィンドボムで防止していた。ハーレさん、ナイス!
「あー、サヤ。今のは竜の半自動制御に登録してたのを共生指示で呼び出したんだろうが……何発登録している?」
「えっと、エレクトロボールを20個登録してみたから、それぞれ3連射で合計60発かな」
「俺でも15個登録で45発なんだけど、多過ぎない!?」
「再使用時間は伸びるけどまだ登録は出来るかな!」
「あー、まぁそりゃそうだろうけど」
あ、でもこの発動の仕方なら魔力値の消費は再使用時間に加算だった筈だから、ありっちゃありなのか?
えーと、今のサヤは電気魔法も電気の操作もLv5だから、Lv2の電気魔法のエレクトロボールの1回での発動で魔力値の消費は6。共生指示で半自動制御を呼び出した場合は登録したスキルが消費する行動値の2倍の秒数が再使用時間になって、魔法の場合はそこに消費魔力値が加算されるから……。
消費する行動値が40だからそれの2倍の80秒、そこに20発分の消費魔力値60が加算されるから、合計で140秒の再使用時間が発生する訳か。
「あー、それは良いんだが、まだワニは普通に生きてるぞ?」
「あっ、HPは半分くらいしか削れてないかな!?」
「Lv2の魔法とはいえ魔法の効きが悪いな。ファイアボムを使ってたし、このワニは魔法型か……」
そうなると、ここは物理攻撃で仕留めた方が良さそうだね。よし、ここはロブスターの近接攻撃でいこう!
さーて、この1戦が終わったらヨッシさんと情報収集は交代だし、思いっきり行動値を使っても問題はないな!
「おし、ここは俺がやる!」
「うん、分かったかな!」
「あー!? ワニは逃がさないのです! 『略:ウィンドプリズン』!」
「お、ハーレさん、ナイス!」
「えっへん!」
さーて、それじゃこのワニはサクッと始末してヨッシさんと交代しますかね。
<行動値上限を3使用と魔力値6消費して『魔力集中Lv3』を発動します> 行動値 75/82 → 75/79(上限値使用:3): 魔力値 197/224 :効果時間 14分
物理攻撃、それもスキルを使うならこれは必須! あー、でもワニまで距離があるし、ハーレさんの風の拘束魔法も火の球を吐き出すワニに今にも破壊されそうだ。
「アル、根の操作で俺をワニのとこまで投げてくれ!」
「自分で行けって言いたいとこだが、了解だ! 『根の操作』! おらよ!」
「サンキュー!」
うん、飛行鎧の展開の手間を省いたのはあるけども、それでもちゃんと応じてくれるんだからアルはナイスだ! この後に交代して、その次に交代する時は自分で歩いていこうっと。
「あぅ、拘束魔法が破壊されたのです……」
「いや、充分だ!」
うーん、どうも今のLv帯だと拘束魔法の効きが悪くなってるよなー。まぁ拘束性能が高過ぎると一方的になるから仕方ないけど……。
それはともかくとして、ワニの背中の上に着地っと。それじゃとっととくたばれ、このワニ!
<行動値を10消費して『双打連破Lv1』を発動します> 行動値 65/79(上限値使用:3)
両方のハサミを攻撃部位に指定して、銀光を放ち始めた2撃同時にワニの頭に振り下ろす! 続いて、4撃……6撃……次が最後――
「って、空振った!?」
くっそ、最後の最大強化の2撃を叩き込む前にワニのHPが無くなってポリゴンになって砕け散ってしまった。しかも何も無しって事は残滓かー。
双打連破はクセがあるって話だったけど、敵の上に乗っかって地面に叩きつけていく感じなら普通に使えそうだね。まぁ、地面に叩きつけた反動でワニが跳ね上がってた……あぁ、それで思った以上にダメージが出てたっぽい?
「それじゃヨッシさん、交代な!」
「うん、そだね!」
さーて、この調子で進んでいこう! 空いてる場所があればいいけど、どうだろな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます