第901話 再び封熱の霊峰へ
レナさんにかかってきたフレンドコールの内容はさっきの話題と何か関係がありそうな感じがする。というか、みんなが一斉に喋らなくなったから聞き耳を立ててるね、これ。
「およ? そんな気はしてたけど思いっきり注目されてるねー? よーし、みんなも気になってるみたいだし、具体的な戦法はわたしも聞いてないけど今のフレンドコールの内容を伝えましょう! さっきの話題になってたトーナメント戦では、風雷コンビは共に初戦敗北! 勝ったのは話題に上がってた十六夜さんと、無所属のソロの人ー!」
「風雷コンビがどっちも初戦負け!? レナさん、マジで!?」
「うん、ケイさんが考えてた番狂わせがいきなり出たみたいだね!」
うわっ、マジか! あー、見たかったなー、その番狂わせの対戦……。くっそ、趣旨は理解出来るんだけど、なんで非公開のトーナメント戦……!
「十六夜さんなら勝つ可能性はあるとは思ったけど、初戦から当たってたのか!」
「……無所属のソロの人もやべぇな」
「レナさん、それって他の出場者はー?」
「んー、実はわたしでも知らない人が多いんだよー。正直、誰が勝つのか全くわかんない。さっき言った無所属のソロの人も知らなかったんだよね」
「レナさんでも知らない、無所属のソロの実力者!?」
「表に出てきてない強い奴はチラホラいるみたいだが、それが集まってるトーナメント戦になってるのか?」
「うっわー、それ見たい!」
「……どこかの機会で参加出来れば、参加者枠から観戦は可能か」
「あ、その手があった!」
他のみんなもざわついてるし、流石に初戦から番狂わせがあるとは思ってなかったようである。というか、トーナメント戦に参戦してしまえば見れるのか。
「ケイ、見たかった気持ちも分かるがそろそろいくぞ。空きがあるかどうかかなり重要だしな」
「あー、それもそうだな。それじゃレナさん、俺らはLv上げに行くから――」
「あ、ちょっと待ったー! これから行くのってグラナータ灼熱洞? 昼間に専用の報告欄に情報上げててくれてたよね?」
「あー、そういえばアルが情報を上げてくれてたんだっけ。レナさん、それがどうかした?」
「うん、ちょっと大事な話。結構混雑してるみたいだから、その対策をねー。その時の状況次第ではあるんだけど、狩りをやめる場合は群集内交流板で申告してもらおうって呼びかけてるの。まぁこれは任意だけど、それなら無駄が少し減るじゃない?」
「あー、交代出来るようにって感じか!」
俺らが午前中に狩りを終える時に、たまたま通りかかった他のPTに譲ったような事をやろうって感じか。ふむふむ、それは確かに良さそうだ。
「それと2時間くらいあそこで戦い続けたら、一気に敵が出てくる数が減って効率が下がるらしいからねー。その辺も要注意!」
「それって、ずっとは狩り続けさせてくれないみたいなのさー!?」
「……あはは、時間制限ありになるのかな」
「ま、今から行って2時間も出来たら充分な方だろ」
「だなー」
17時からは発火草の群生地でのスクショの合同撮影会もあるし、移動時間とか空き場所を探す時間も含めて考えれば2時間もあれば充分過ぎる。
そもそも空いてない可能性もあるんだから、フルで2時間戦えるかも分からないしなー。ま、その辺は群集内交流板をチェックしながらだね。
「レナさん、情報ありがとな!」
「いえいえ、どういたしましてー!」
「そういえば今日はレナさんはLv上げはしないのー?」
「ん? わたしならもう少ししたらダイクがログインしてくるから、望海砂漠の地下で見つかった大空洞の方に行く予定だねー! フェニックスの行動パターンの変化があるから、あそこでも何かありそうな気はしてるんだよー」
「……確かに、何かがありそうな気はするかな?」
そういえば望海砂漠の地下洞窟から行ける大空洞とか、ネス湖のアロワナがいるコケボウズの辺りから奥に行けるとか、他にもLv上げの候補地ってあったっけ。
あれ、なんで候補から外したんだった? あ、カイヨウ渓谷は逃げまくるフィールドボスのイカの討伐絡みで行ってたのと、封熱の霊峰には土属性のドラゴンに挑みに行った時に転移地点として保存してたからか。他の2つを除外したんじゃなくて、すぐ行けそうな場所を選んだんだった。
ふむ、今から行くのは封熱の霊峰から行けるグラナータ灼熱洞で良いけど、夜からは他の場所に行ってみるのもいいかもね。
ま、この辺はLv上げの合間の休憩する時にでもみんなに聞いてみるか。
「紅焔、僕らもそろそろLv上げに行かないかい?」
「だな! 俺らはフィールドボス戦の連戦をやるか!」
「そうしましょうか。桜花さん、瘴気石のトレードをお願い出来ますか?」
「毎度あり、ライルさん!」
「紅焔、そういう事なら混ぜてくれや!」
「お、良いぜ、ディール!」
「それなら私も入りたい」
「あ、俺も頼む!」
「そういう事なら、希望者どんとこいやー! ここで連戦用の連結PTを結成していくぞ!」
あー、なんか紅焔さんが中心になってフィールドボスの連戦を行う連結PTが結成されていってるね。うーん、こういう流れになるんだったらそっちに混ざった方が良かったか?
いやでも、もう完全に遅いか。どう考えても希望者が連結PTの最大人数である18人を超えそうだから、俺らが入る余地はもうなさそうだ。
少しその様子を眺めていたらフーリエさんがすぐ側までやってきた。あ、いつの間にかシリウスさんが来てたっぽい。
「ケイさん、また今度、特訓をお願いします!」
「おうよ、フーリエさん!」
「それじゃ僕もシリウスとLv上げに行ってきますね!」
「おう、頑張れよ!」
「はい!」
そうしてフーリエさんはシリウスさんと共に桜花さんの樹洞から出ていった。さーて、俺らものんびりしてないでLv上げをしていかないとな!
「それじゃ、封熱の霊峰まで転移してますか!」
「「「「おー!」」」」
みんなの気合は充分。今日中にもうLv1は上げる、出来ればLv2ほど上げるのを目標に頑張っていくぞ!
という事で、桜花さんの樹洞から出て転移の実を使っていこう。今回は転移の実を使うしかないから仕方ないけど、どこかで転移の種の登録に切り替えた方が良いのかもなー。
転移の種の登録は……あれか。青の群集の森林エリアの東側の『涙の溢れた地』になったままか。ま、とりあえず転移をしていきますか。
<『転移の実:封熱の霊峰』を使用しますか?>
さて、みんなも使っていってるから俺も使用を選択してっと。転移の種と実で共通の演出になっている、光の膜に何重にも覆われて転移開始!
<『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』から『封熱の霊峰』に移動しました>
よし、到着! なんだか天気が悪くて曇ってるなー。雨は降ってないけど、いつ降り出しても不思議ではない様子である。
「……これ、Lv上げを切り上げる頃に電気の昇華になってて、雷とかになってれば良さそうだよね」
「あ、確かにそれは良さそうかな」
「そういえば草原エリアでトーナメント話を聞いた時は、雷雨だったのです!?」
「え、そうだったの? ……でも、まだ電気の操作は昇華になってないもんね」
「なら、今回は昇華魔法頼りじゃなくて、俺の海水の操作とヨッシさんの電気の操作を重点的に鍛える感じでやるか?」
「お、それは良いかもな」
ヨッシさんが電気の操作の昇華になって、アルも海水の操作の昇華になれば、かなり出来る事の幅は広がるしね。
それに俺以外のみんなはまだ確定にした進化先は出ていないから、そこはLv上げと並行してやっていくべきだな。特にアルは支配進化を狙っているんだから、そこの条件を満たすのが最重要!
「そういう事なら、私も竜の電気の操作と電気魔法を鍛えたいかな?」
「私はクラゲの風魔法と風の操作を鍛えたいのです!」
「そりゃそうだっと。あ、そういえばサヤの竜は小型化はどう?」
「……あはは、つい大型化を使ってたりするから忘れ気味かな? 今のうちにやっとくね。『上限発動指示:登録1』! うん、これで大丈夫かな!」
サヤの竜が小型化して、クマの腕へと絡みついている。成熟体での小型化の為の進化の推測がLv3だからなー。サヤはもし達成し切れなかったら一時的に共生進化を解除しても良いとも言ってた気がするけど、出来れば達成してた方がいいと思うしね。
ハーレさんもリスの方はもう1段階上の進化を出したい感じではあったけど、クラゲの進化先も出していく必要性があるもんな。午前中で敵の傾向もそれなりに分かってるし、午後からはスキルの強化も混ぜながらでやっていきますか!
「おし、それじゃ各自で上げたいスキルを重点的に使っていくって感じで! 足らないところは俺がフォローしてく!」
「ケイ、任せたぜ!」
「みんなで魔法を撃ちまくりなのさー!」
「あ、そういえばそうなるのかな?」
「私とアルさんは操作がメインだけど、まぁ操作する対象は魔法で用意しなきゃいけないからそうなるよね」
うん、まぁみんなが育てたいスキル的にはそうなるよね。そうなってくると、必然的に俺は近接で敵の足止めかな?
いや、ここは足止めだけじゃなく、ロブスターのスキルもガッツリ使っていくか。覚えたものの、使用機会が少ないスキルも結構あるしなー。
「まぁ具体的にどう動くかは、狩る場所を確保出来てから考えよう! アル、とりあえず移動を頼む!」
「おう、それじゃ乗ってくれ!」
「はーい!」
「ねぇ、みんな、途中で上から発火草茶の群生地を覗いていかない? ちょっと無所属の人達の様子が気になるんだよね。特に人数が……」
「あ、確かに赤の群集に戻っていった人達が多いから、その辺はどうなってるのかな?」
「無所属の人達の人数が分からないのです!?」
「……そういや、そうか」
「よく考えたらそうなるのか!」
全然その辺を考えてなかったけど、言われてみれば無所属の人数って気になる。午前中に見た無所属の人達は結構な人数がいたけども、BANになったあのスライム含めて無所属でなくなった人達も多い筈。……あの場にいた純粋な無所属って羅刹とイブキだけか?
他に知ってた無所属は……いか焼きさんは青の群集に正式に移籍したし、よく考えたら他に知ってる無所属の人がいない気がするぞ?
「……無所属の居場所が必要なほど人数がいるかが分からない感じだな?」
「うん、そこがどうも気になってさ」
「アル、俺もかなり気になってきた! 見ていこう!」
「俺としても気になるが、サヤ、ハーレさん、いいか?」
「問題なしなのさー! というか、私も普通に気になるのです!」
「私もハーレに同感かな!」
「よし、それじゃ山越えルートで行くぜ! 『略:自己強化』『略:高速遊泳』……こういうのでもいけるか? 『並列制御』『シーウォータークリエイト』『アクアクリエイト』『並列制御』『海水の操作』『水の操作』!」
おっ、並列制御でクジラの下に水のカーペットを展開しつつ、海水を生成して海水の操作を使う事で風除けを作ったのか。ふむふむ、そういう手もありか。
それにしても、昇華になってない海水の生成だけど、元々の水量が多いもんだね。クジラを浮かせる為の水のカーペットよりは生成量は少ないけど、風除けには充分な量だな。
「あー、海水じゃ水みたいに弾性が設定出来ねぇから、単純に風除けだけになるっぽいな。何か飛んできたら貫通しそうだから、その辺は気を付けといてくれ。まぁ高度的には鳥くらいなもんだろうがな」
「ほいよっと」
ふむ、まぁ風除けさえ出来ていればそれだけで一気に落ちにくくはなるし、今回は俺の岩での固定は無しでもいけそうだね。
水のカーペットを使ってるから大体の岩山の上になる結構な高度を飛んでいるけど、一応獲物察知くらいはしておくか。もしくは威嚇で根本的に敵が近付いてこないようにしておく?
「それなら何かが貫通してきた時に誰が1番早くに叩き落とせるか、魔法で勝負なのです! あ、ケイさんは今回は除外でお願いなのさー!」
「ほほう? ハーレさんとサヤとヨッシさんで勝負って感じ?」
「そのつもりなのさー!」
「あ、それは面白そうかな!」
「いいね、それ!」
なるほど、なるほど。それぞれに鍛えたい魔法があるからこそ、今はそれを使った勝負をしようって事か。
それじゃ俺は混ざらない方がいいし、威嚇をして敵を追い払うのも無しだな。
「よし、それなら獲物察知で敵がくるかどうかの判定役でもやるか。それと、俺から提案が1つある」
「どういう提案かな?」
「まぁ割と単純だけど、特訓も兼ねてるならそれ相応になー。使う魔法はLv1の生成魔法で、狙いは操作系スキルでやる事。敵が出てこない可能性もあるけど、これならアルの移動速度に合わせた操作の調整の特訓にもなるからな」
「……うっ、それは苦手かな?」
「私はそれで問題無しなのです!」
「……あはは、なんだかそれだと私が1番有利な気がするね?」
「得意不得意がある対戦型の特訓なんて色々やってきたんだし、ケイの発案も良いんじゃねぇか?」
まぁ、そこはアルの言うように今更ではあるもんな。それに、なんだかんだで操作が苦手だったサヤも、今はそこまで言うほど悪い精度ではなくなってきてる。
氷のナイフとか氷塊で操作の扱い方が上手くなってるヨッシさんが有利なのは間違いないけど、咄嗟の判断も必要だからその辺は近接……それも連撃が得意なサヤが強い部分だ。
「……うん、それでやってみるかな!」
「それじゃ勝負開始なのさー!」
「負けないからね!」
「あー、アル。少しだけ速度は落とし気味で、もうちょい高度を下げてもらえるか?」
「おうよ。こんなもんか?」
「そんなもんだなー」
水のカーペットを展開してるから、大半の岩壁の上を飛んでたからね。それだと流石に飛んでくるものが少なくなるから、特訓するのなら少し高度を下げた方がいい。
これなら多分鳥とか虫くらいなら飛んでくる事もあるはず。……飛んで来ない可能性もあるけど、そこは俺の獲物察知でわざとアルに突っ込んでもらうという手もある。
<行動値を5消費して『獲物察知Lv5』を発動します> 行動値 77/82
さて……進行方向には今のところは何もいない。まぁ他の方向には黒い矢印も赤い矢印も青い矢印も灰色の矢印も表示されてるけどね。
白い矢印については、まぁ単純に発火草の群生地がある妙に高い岩山までまだ距離があるだけだね。シンプルに効果範囲外なだけだけど、近付いていけば人数も分かるかな?
「よし、それじゃ各自準備して、対戦開始!」
「負けないのさー! 『略:ウィンドクリエイト』『略:風の操作』!」
「ここで特訓の成果を出したいかな! 『略:エレクトロクリエイト』『略:電気の操作』!」
「これ、私は逆に下手に負けられないよね! 『エレクトロクリエイト』『電気の操作』!」
ハーレさんは風の球を2発用意し、サヤは電気の球を1発のみ、ヨッシさんは電気の球を3発用意と、それぞれに生成した数に違いが出たね。
さて、敵がアルの海水による風除けを貫通してくるかも分からないけど、この勝負はどうなるかな?
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