第900話 気になる話
色んな意味で面倒だったケインの件は、これで本当の意味で片付いたはず! ……これでまた因縁をつけてくるような真似をしたら、今度は容赦なく運営に通報してやる!
あー、もう、なんでVRのオンラインゲームってブラックリストでのミュートとか無いのかねー!?
まぁ他のプレイヤーを聞こえなくする方がよっぽどトラブルが起きるし、いくつかそういう事例も知ってはいるから、仕方ないとも思うけどさ。
「ケイ、どうした?」
「オンラインのVRゲームでブラックリストとかで声を聞こえなくしたりするのが出来ないのはちょっと面倒だなーって思ってただけ。アル、その辺どう思うよ?」
「あー、確かにそれは思わなくもないが、フルダイブだとその辺は弊害が出るからな」
「それ、元々よりも余計なトラブルが更に起きるからねー!」
「レナさん、何か心当たりがありそうなのです!?」
「うん、いくつか心当たりはあるよ。折角だし、聞いとく?」
「地味のその辺りの理由はよく知らないから聞きたいのさー!」
「僕もそれは気になります! オンラインゲームはこれが初めてなんで!」
ふむ、ハーレさんとフーリエさんはその辺の具体例を知らないっぽいな。まぁ余計なトラブルに巻き込まれなければ、調べなきゃこの辺は知らなくてもおかしな情報ではないか。
俺だって調べたから知ってるだけで、直接的に使うような機会は早々なかったしね。
「よーし、それじゃ少し説明しましょうかー! これはわたしが他のVRのオンラインゲームをしてた時に遭遇した話なんだけど、まぁサービス開始直後でブラックリストに入れた相手と話せなくなる機能があったんだよね」
「そういう仕様があるゲームもあるんですね!」
「んー、それはすぐに炎上騒動になって仕様変更されたけどね」
「え、何でですか?」
「理由が気になります!」
「あはは、まぁ理由は簡単だよー。ブラックリストに入れられて声が聞こえなくなったのを利用して、嫌がらせが多発したんだよ。返事しないのが悪い、無視するのが悪いって大騒ぎする感じでさ」
「えぇ!? それは……確かに厄介ですね」
「機能的に聞こえないから、どうしようもないのさー!?」
あー、これは俺が前に調べた時に見た事があるやつだ。しかも、そこで終わりじゃないんだよな、この騒動って。むしろここからが本番なやつ。
「これはまだ始まりに過ぎないからねー? そこから聞こえない事を利用して、死なない程度にモンスタートレインをわざとやったりしてさー」
「あー!? それは確実に面倒なやつなのさー!?」
「あの、モンスタートレインってなんですか?」
なるほど、フーリエさんはそこから説明が必要か。まぁこの手の知識は知っておいて損はないし……なんだか他にも気にしている人が数人いるみたいだから、説明しとくか。
「モンスタートレインってのは、敵を大量に集めて引き連れていく事だな。範囲攻撃が強いゲームとかで敵を集めて一掃するとか……もしくはMPKに使う」
「それってこのゲームでも時々やってる人がいますよね!? ……ケイさん、MPKってなんですか?」
「フーリエさん、それで敵を集め過ぎて死んでる人とか見た事ない?」
「あ、時々いますね!」
「……そういえば、桜花さんと初めて会った時――」
「ゴホン! ケイさん、その情報は今必要か?」
「……ないですなー」
うん、思いっきり桜花さんからストップがかかった。あはは、桜花さん的にはあの時のは失敗談だし、ここで話さない方が良さそうか。さて、話を戻すとして……。
「まぁ、要するに集めまくった敵を他のプレイヤーに押しつけて殺してしまおうってのがMPK。モンスタープレイヤーキルだな」
「なるほど、それは厄介ですね……」
「ちなみにこれはこのゲームでもあり得るから、気を付けるように」
「はい!」
そういや午前中に封熱の霊峰で遭遇した二対の鎌を持つカマキリのフィールドボスも、意図的ではないにしても一種のMPKにはなってたよなー。あれ、俺らが助けに入らなかったら間違いなく全滅してたし。
「それで、死なない程度のモンスタートレインってどういう事なんです?」
「うん、そこが問題なんだよね。実態としては押し付けた形になるのに、助けを求めたのに無視されたとか、敵を集めてたのにやめろと言っても無視されて横殴りされたとか、そんな感じで聞こえないのを分かってて自分に都合の良い事ばっかを言ったりしてね。それでブラックリストを使った人の悪評をばら撒きつつ、自分達は労力も少なめに経験値やアイテムを持ってくの。全滅する規模だとMPKって言われるから、そうならない程度に抑えてねー」
「それってすごい面倒な事になってるのさー!?」
「……嫌ですね、それ」
「厄介なのはブラックリストに入れられた人の発言ログを参照しても、その一連の行動の中に問題発言がないってとこなんだよねー。実際に倒せるくらいの人数で徒党を組んで離れた場所で待機したりして、違反行為として処罰出来ないって感じでね。でも、そんな冤罪みたいな悪評をばら撒かれる方はたまったもんじゃないから、大荒れになって最終的にはブラックリスト機能は仕様変更で無くなりました!」
「その方が色々と対処が楽そうなのです!?」
「確かにそうですよね!」
この辺はフルダイブのVRが出る前のオンラインゲームではどうとでもなってたらしいけど、音声が当たり前のVRゲームになった際に弊害が出たっていう話なんだよなー。
他のプレイヤーにも普通に届く声だからこそ、特定の相手にだけ聞こえないという状況が非常に厄介な方向に作用するっていうね。……そこを意図的に悪用するプレイヤーがいるもんだから、面倒な事になる。
「まぁ基本的にはそんなとこだねー。このゲームだと黒の統率種に進化したら会話が出来なくなるけど、あれは全プレイヤーに対してだからね」
「なるほど、よく分かりました!」
「便利機能が逆に厄介な状況になる事もあるのが分かったのさー!」
本当に悪用する奴がいるからこそ不便になってしまう部分が出てきてしまう。……まぁブラックリストなんて使わなくて良い状況が一番なんだけどさ。
「あ、そうそう。地味にケイさんが知らなさそうだから補足しておくと、群集内交流板と群集外交流板にはブラックリスト機能は実装されてるよー?」
「え、マジで!? そんなのあったらBANクジラは問題なかったんじゃ?」
「あ、あの時にはまだ無かったよー。その後の定期メンテの際に、アップデートで追加だったからねー」
「……あ、なるほど」
いつの間にそんなアップデートが……。あ、そういやいったんからのお知らせって全部を教えてくれる訳じゃなかったっけ。
もうちょい公式サイトのアップデートのお知らせの項目を読んだ方が良いのかな? うーん、でも今まで気付いてなくても問題なかったし、そもそも殆ど群集外交流板と群集内交流板って見ないし……。
よし、とりあえず気が向いた時に公式サイトの方は確認するという事にしておこう! それに気になってる案件が1つあるし、そっちの話題をしたい。
風雷コンビと十六夜さんが参加するトーナメント戦が気になってるからね! 募集をしているのを見た時からそれなりに時間は経ってるから、今なら中継で観れるかもしれないしさ。
「桜花さん、ちょっと確認して欲しい中継があるんだけど、いい?」
「ん? 別に問題はないが、何か面白いやつでもあるのか?」
「草原エリアで風雷コンビと十六夜さんが参加するトーナメント戦の募集を見た!」
「あ、それってケイさんが見たいって言ってたやつなのさー!? 私も少し興味はあるのです!」
「……ほう? そういやレナさんもそんな話もしていたな。よし、ちょっと中継可能なトーナメント戦を確認するから、待っててくれ」
「ほいよっと!」
よし、桜花さんが興味を示してくれた! 不動種の人がいないと中継は見れないから、これはかなり重要だよなー!
「お、それってちょっと話題に出てた奴だよな」
「風雷コンビが決勝になりそうってやつか。前に模擬戦をしてた時は決着付かずだったしな」
「今度こそどっちかが勝つか?」
「時間はあるし、それを中継するなら観ていくか」
「だなー」
おっと、他に集まってる人達も興味を示しているね。あ、そういえば十六夜さんが参加しているって部分は伏せたままだった。
うん、このまま中継になって、その情報が出てきた時に驚くというのも面白そうだし、黙ったままは継続で!
さてと、俺らも予定しているLv上げの事もあるから、みんなに相談するのも大事だから相談していこうっと。もし駄目だと言われたら大人しく引き下がるけど、みんなも興味を持ちそうだと思うんだよな。
「ケイ、それを話題に出すって事は見ていきたいのか?」
「みんな次第だけど、正直に言えば見ていきたいとこだな」
「まぁ俺も興味があるから、ケイ達がそれで良いのなら構わないが……サヤ達はどうだ?」
「私は実況希望です!」
「……私はちょっと出てみたかったかな? あ、興味はあるし、見ていくのは賛成かな」
「あ、サヤは出たかったんだね。うん、でも私も少し気になるね」
「そういう事なら少し見ていくか」
「おっし!」
よし、これでみんなの同意は得られた! やっぱり興味はあるとは思ってたし、言ってみるもんだね。後は桜花さんが中継の用意をしてくれれば――
「ケイさん、それにみんな、残念だけどそのトーナメント戦の中継は見れないよー?」
「……はい? え、レナさん、どういう事?」
「あー、中継可能な一覧に見当たらないと思ったが……レナさん、これ非公開のトーナメントだな?」
「うん、桜花さん、大正解! そのトーナメント戦の主催の共同体は『縁の下の力持ち』って名前でね。主にソロやコンビとかの少人数で活動してて、あまり目立ちたくないって人向けに非公開のトーナメント戦を開催してるんだよー。妙に注目されてたけど、非公開ってのは見落としてた人が多いみたいでねー!」
「……マジで?」
非公開のトーナメントを主催する共同体とかあるの? いや、まぁそういうトーナメント戦なら十六夜さんが参加するのは不思議ではないし、ソロで活動してる人も少なからずいるだろうから需要自体はありそうだけど……。
というか、そのトーナメント戦にあの風雷コンビが参加してる方が不自然じゃないですかね!?
「あはは、そんなとこでしょーもない嘘は言わないよー。でも、風雷コンビが参戦したのは予定外だったんじゃないかなー? まぁ別に出場禁止って制限がある訳じゃないし、風雷コンビもコンビなんだから少人数で活動してるプレイヤーではあるからねー」
「……そう言われてみればそうだった」
うん、風雷コンビはコンビで2人組なんだからそりゃ少人数だよな。でも、なんかあのコンビは別枠的なイメージがなんとなくある。
あぁ、目立ちたくない人向けの非公開のトーナメントってとこに違和感があるのか! あのコンビのどこが目立ちたくないんだよって話だよね。
「あー、くっそ、見たかったー! 十六夜さんも参加してたからどんな番狂わせが出るかも楽しみだったのに!」
でもまぁ、非公開のトーナメント戦をやりたいって人達もいるのも当然だし、そこに文句を言っても仕方ないか。今回は素直に諦めて、予定通りにLv上げに――
「ちょ!? え、十六夜さんが出てんの!?」
「あー、非公開のトーナメントなら、十六夜さんみたいな人がメインになってくるのか」
「こりゃ大番狂わせもあり得るか」
「他に無名だけど強い奴も紛れてるかもなー」
「ケイさん、何故それを先に言わない!? 十六夜さんとは前々から戦ってみたかったんだが!?」
「えぇ!?」
いや、ディールさん、ちょっと待って!? 一気に距離を詰めて、責め立てるように来ないでくれー!?
あ、紅焔さんがディールさんを掴み上げて飛び上がった。ふぅ、いきなりの剣幕に焦ったよ……。
「落ち着け、ディール! お前、今日がケイさんの初対面とか言ってたじゃねぇか! 無茶を言うな!」
「……あぁ、悪い、紅焔。すまん、ケイさん。少し取り乱した……」
「いや、まさかディールさんが十六夜さんと戦いたがってたとは……。ここにきた時点で十六夜さんが参加してるのは知ってたけど、十六夜さんの強さを知ってる人が揃ってるから後々びっくりするかなーと思って伏せてて悪かった……」
「あー、そりゃ気にすんな。今のは全面的に俺が悪いからよ! ただ、十六夜さんがそういう形で参戦する事が分かっただけでも収穫ってもんだ!」
「……それなら良かったけど」
というか、今日は俺自身もケインから言われたけども、特定の人と戦ってみたいって人はそれなりにいたりするっぽい感じだね。
まぁ俺もそのうちベスタと再戦はしたいし、機会があればアル達とも戦ってみたいとも思うしなー。うん、誰か特定の人と戦ってみたいという気持ち自体は分からなくもない。
「あー、ケイ。結局これは、中継は諦めて予定通りにLv上げか?」
「……まぁ他に特に何も無ければそうなるよなー」
「……あぅ、残念なのです」
「こればっかりは仕方ないよ」
「今日はしっかりLv上げをしろって事かな」
思いっきり今のトーナメント戦が見れない事に心残りはあるけども、意識を切り替えて元々の予定通りにグラナータ灼熱洞でLv上げの続きだなー。狩りを出来る場所が空いてればいいけど、そればっかりは現地に行って確かめるしかないか。
あー、数に限りがあるから、どこかで転移の実の追加が欲しいところだね。……正直ケインとの模擬戦の為に森林深部に戻ってきてから、また課金アイテムである転移の実を使うのが若干惜しい!
まだ先にはなるけど次のイベントででも入手機会があれば良いんだけど、そこはまだ分からないよなー。くっ、便利な消費アイテムが有料だというのが……いや、運営としても利益が必要なのは分かるんだけどね。
まぁ済んだ事はどうしようもないし、これで使い果たす訳でもないからなー。それよりもグラナータ灼熱洞に行って、空きがない可能性を注意すべきか。そっちの方が無駄になるもんな。
さて、転移の実の消費を惜しがってたらLv上げにならないし、そこは割り切っていこう!
あ、そういや水のカーペットに乗ったままだけど、グラナータ灼熱洞まではアルに乗っていくから解除しとこ。
<『移動操作制御Ⅰ』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 80/80 → 80/82
よし、これで解除完了っと。それじゃ桜花さん達に挨拶をしてから、Lv上げに行きますか!
「はーい、どしたのー? うん、あ、丁度こっちでその話題が……え? あらま、それは面白い事になってるねー? うん、うん、決勝が終わったら勝敗だけで良いから教えてねー! うん、それじゃまた後で!」
ん? アル達に声をかけてから、みんなに挨拶をしようかと思ってたら、レナさん宛に誰かからフレンドコールがかかってきたっぽい。……なんか断片的に聞こえる内容がものすごく気になるんだけど!?
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