第27章 休日のうちに
第895話 午後の部、開始!
少し豪勢な昼飯を食べ終えて、自室へと戻ってきた。もう1時をそれなりに過ぎているから、集合時間の1時半までそれまで待つ事はなさそう……って、あれ?
「……晴香、なんで俺の部屋に着いてきてんの?」
「さっきチラッと見た時にあった、公式サイトでのお知らせが気になったのです!」
「あー、そういやなんかオフライン版についてのお知らせが出てたっけ? 晴香は内容は見た?」
「まだー! 兄貴は!?」
「後回しにして掲示板を見てたからまだだな。あ、発火草の群生地でのスクショの撮影会の詳細が出てたぞ」
「それってサファリ系プレイヤーの集いだよねー?」
「おう、そうだぞー」
「後で確認しておくのさー!」
どうやら晴香もスクショの撮影会を後回しにするくらいにオフライン版についてのお知らせが気になってるようだし、今のうちに確認しておくか。
それにしても今頃、オフライン版のお知らせってなんだろうな? うーん、オフライン版の続編が発売決定とか? いや、流石にそれはこんな形で発表はないな。
というか、もしオフライン版の続編が出るんだとしても、オンライン版をやってる最中だし、フルダイブには時間の制限があるから素直には喜べないぞ。……とりあえず内容を見てみようっと。
「えーと、『リアルタイム配信機能への対応のお知らせ』……? リアルタイム配信機能ってあれか、業務用の高性能なVR機器じゃないと出来ないやつ」
あれ、俺とかが使ってる一般用のVR機器とは本体価格の桁が違うからなー。その分だけ高性能だし、色々な事が出来るって話だけど。
あ、でも録画して後から編集した分なら今までもオフライン版のプレイ動画とか見れたりしたっけ。ん? じゃあ、これはどういう事だ?
「あー! これってあれなのさー! 先週辺りに発表された、一般用のVR機器でもリアルタイムでの配信が可能になるってアップデートのやつ! VR機器で処理するんじゃなくて、ホームサーバーで処理して、業務用のリアルタイム配信と同等の配信が出来る用になるって情報が出てたよー!」
「え、マジで? 最近その辺のニュースをチェックしてなかったけど、そんなアップデートが来てたのか」
てか、地味に凄いな。VR機器自体では処理性能不足だけど、絶対に接続が必要になるホームサーバーの方で処理をして、業務用と同等水準のリアルタイム配信を可能にしたんだな。
なるほど。つまりこれはその一般の人でもリアルタイム配信が可能になるのと、その配信にオフライン版の『Monsters Evolve』が対応したという訳か。
「夏休みでもフルダイブの制限時間があるからずっとは出来ないし、オフライン版の配信を見るのもありかもです!」
「あー、別に視聴自体は携帯端末のAR表示で問題ないもんな」
携帯機器はARで視界に色々な情報を表示して、擬似触覚で触ってる感覚を再現してるるだけだしね。確か携帯端末のAR機能とVR機器と本質的な機能は同一のものだけど、肉体への負荷が大きいVR機器のフルダイブの方に制限がかけられるんだよな。
ま、元々医療用で五感を再現するのを目的として開発された技術って話だしね。目が見えなくなった人とか、脳の疾患で手足が不自由だとか、事故とかで四肢を無くした人の義肢の制御とか、その辺りから発展したんだっけ。
その辺の普及は俺が小学生低学年の頃とかだから、詳しくは知らんけど。まぁ色んな人の支えになっている新技術って事くらいは知っている。
「ま、夏休みの前に俺らはテストだけどなー。そういやラックさんとは一緒に勉強しないのか?」
「ラックは、私より成績は遥かに良いのです……」
「あー、なるほど」
ハーレさんより成績が良いのに、ヨッシさんやハーレさんと一緒に勉強会をするのも微妙ってとこか。まぁ、何とも言い難い気分だな、それは。
「さて、とりあえず内容は分かったし、続きをやっていくか」
「はーい! それじゃ兄貴、またすぐ後でねー!」
「ほいよっと」
そうして晴香は俺の部屋から出ていき、自分の部屋へと向かっていった。うん、時間としてもまだ待ち合わせまでは問題なしだな。
それにしてもこの時期にオフライン版のリアルタイム配信が可能になるんだね。多分実況プレイをする人はいるだろうし、夏休みも近付いてはきてるから場合によってはオンライン版の新規の人も増えるかもなー。
あ、配信機能を提供してるのは他の企業だけど、オフライン版の配信を解禁したのはそこら辺が狙いなのかもしれない。
そういやオンライン版の方は……あ、所属群集が分かれているからって理由で解禁はされないんだ。
まぁ、オンライン版で普通に実況プレイとかされたら群集毎の情報が筒抜けになるし、ここは運営はナイス判断! 実際にプレイしている側としてはその辺が中継されると本気で困る。
さーて、予想してなかった方向からオフライン版の機能解禁だけど、まぁそういうのもあるって事は把握しとこ。これからの新規さんが始める理由になるかもしれないしね。
それじゃ今日の午後の部、開始といきますか! とりあえずログインだ!
◇ ◇ ◇
という事で、いつものいったんのいるログイン場面へとやってきた。今回の胴体部分はログアウトした時と内容は変わってないなー。
てか、ここではオフライン版のリアルタイム配信の解禁についてのお知らせは出さないのかな。んー、シリーズ作品ではあるけど、ここではオンライン版のお知らせに限定する感じか? ……ちょっと聞いてみるか。
「いったん、オフライン版のお知らせってここじゃやらないのか?」
「あくまでもここはオンライン版のログイン場面だから、オンライン版に関わるもの以外のお知らせはやらないよ〜。聞かれた場合は別だけどね〜」
「あー、やっぱりそんな感じか」
「それで、そのオフライン版のお知らせの説明は必要かな〜?」
「いや、公式サイトで見てきたから大丈夫だ」
「はいはい〜。それは了解だよ〜」
まぁその辺は予想通りだったね。オンライン版はオンライン版で切り分けて、そのお知らせや関係情報に専念するんだな。
「おし、それじゃ後回しにしてたスクショの承諾を頼む」
「はいはい〜。それじゃ一覧をどうぞ〜」
「サンキュー!」
いったんからいつものようにスクショの一覧を受け取って確認をしていく。あー、今日はなんか妙に枚数が多いな。……まだ時間は大丈夫だし、手早くチェックをしておくか。
ちょっと待て、ケインから大量に俺のスクショの承諾が送られてきてるのはなんでだ? これ、構図から考えたら封熱の霊峰で遭遇した時に移動する度に撮られてるっぽいんだけど!? あ、地味に発火草の群生地の中でも隠し撮りみたいなのが大量にあるし!?
えぇ、いくらなんでもあの敵意丸出しのケインがこんなにスクショを撮られているとは思わなかった。……はぁ、なんだかライバル視されているって以上に、地味に目標にされてるような気もしてきた。プロメテウスさんもそれっぽい事を言ってたし……。
とりあえずケインからのはどうするかは保留にして、他のもチェックしていこ。えーと、複数の赤の群集の人から発火草の群生地での騒動の時の様子のスクショが……って、なんで赤の群集!?
あ、そうか。もしかしてこの赤の群集の人達は、猛省していた無所属だった人達が赤の群集に戻れたのかもしれない。……ふむ、普段は他の群集の人のは承諾しないけど、これは記念に承諾しといてあげようかな?
さて、まだあるのかー。えーと、フーリエさん……地味に俺が土に埋まってた時にスクショを撮ってたんだね。まぁ別に良いけどさ。
次は……あぁ、フェニックスがとんでもない勢いで飛んできてた時のスクショか。撮影者はヘビの人だったディールさんだな。どう撮っていたのか分からないけど、凄い勢いで飛ぶフェニックスの間近からの様子や、俺らに向かってフェニックスが迫っている様子が連写されている。
これ、俺らが見た時以外にフェニックスの脚以外に巻きついてたんじゃないか? 脚に巻きついてたら、フェニックスの後頭部が写って、その視線の先に俺らが写ってるのはありえないと思うんだけど……。
お、それとフェニックスから炎の槍で貫かれるまでの連写もある。隅っこに俺らが写ってるから、承諾に回ってきたのか。うわー、ディールさんのスクショ、迫力があるのが多いな。うん、これらは是非とももらっておこう。
さてと、ケインは保留、無所属から赤の群集に戻れた人達には記念という事で許可、フーリエさんとディールさんは普通に許可で、ディールさんのスクショは貰う事にした。
「いったん、今回はこれで頼んだ」
「はいはい〜。あ、珍しく色々と設定しているんだね〜? 保留になってるのは、しばらくの間は保留で良いのかな〜?」
「おう、それで頼んだ。却下するにしても、許可するにしても、微妙に悩む相手なんだよ……」
「何か問題があるようなら、受け付けるよ〜?」
「あー、ちょっとある事が無ければそれでもよかったんだけど、もう少しだけ様子見をさせてくれ。それで問題あると思ったら頼らせてもらうよ」
「はいはい〜。そういう事なら了解です〜。それじゃこのように処理しておくね〜」
「任せた!」
今回はちょっとスクショの承諾の確認が長くなったけど、良いスクショが結構貰えたから満足だね!
ディールさんのスクショはかなり迫力があるから、スクショのコンテストは良い所まで行きそうな気がするよ。
「それじゃ、コケでログインよろしく!」
「はいはい〜。午後からも楽しんでいってね〜!」
「おうよ!」
そうしていったんに見送られながら、ゲームの中へと移動していった。さーて、午後からはまずケインとの模擬戦だな。
とりあえす容赦なく叩き潰すのは確定として、その後にケインの態度がどう変わるかによって今後に対応を考えよう。ライバル視してくるだけなら良いけど、八つ当たりの悪意をぶつけ続けてくるのであれば……まぁ運営の力を借りようっと。
◇ ◇ ◇
<『グラナータ灼熱洞』から『封熱の霊峰』に移動しました>
<『特性の実:マグマ適応』は使用不可になり、廃棄されました>
おっと、ログイン早々にエリア移動のメッセージが出て、入り口の前でログインになったか。まぁグラナータ灼熱洞の中はその場でログアウトが不可なエリアだから、これは仕様として仕方ないな。
そして持ち出し不可って書いてあった『特性の実:マグマ適応』は廃棄されたね。まぁ便利過ぎるし、他のエリアで使い道もなさそうだから問題はないけど、なんか勿体ないよなー。
「あ、ケイさんが先だったのさー!」
「お、ハーレさんも来たか。ディールさんのスクショ、ハーレさんの方にも承諾は来てたか?」
「来てたよー! ばっちり貰っておいたけど、ディールさんのあのスクショは強敵なのです!」
「だろうなー。まぁ、ハーレさんも頑張れ!」
「人がいない発火草の群生地のスクショがあるから、私はこれで勝負なのさー!」
「……そうか、今はもう大人数が集まる場所になってるし、意外と誰もいない発火草の群生地のスクショって貴重なんだな」
大勢が集まるようになったが故に、逆に誰もいない状況で撮れた貴重なスクショになる訳だ。
これからあそこのスクショは多く撮られて情報ポイントとの交換のランクは下がりそうだけど、スクショのコンテストとは選考基準が全く違うはず。
ハーレさんが良いスクショさえ撮れてれば、かなりのアドバンテージがありそうだよね。
「あ、そうだ。ハーレさん、話は全然違うけど、明日のバーベキューは肉は少し減るけど海鮮は追加してくれるとさ」
「お父さんに頼み忘れてたのさー!? ケイさん、ナイスなのです!」
「……さっき蟹尽くしの弁当を食べたんだし、明日は俺の分まで食い尽くすなよ?」
「それは保証出来ません!」
「そこは保証しろよ!?」
あー、これは明日の晩飯はハーレさんとの争奪戦になりそうな予感がする。でも、なんとか出し抜いて、少なくとも蟹か海老だけは絶対に食ってやる! 出来れば蟹!
ん? あ、共同体のチャットが光ってるって事は、全員とは限らないけど少なくとも誰か1人は既にログインしてるっぽいね。
サヤ : ケイ、ハーレ、ログインしたみたいかな?
ケイ : おう、今ログインしたとこだ。
ハーレ : お昼ご飯、美味しかったのです!
ヨッシ : ハーレ、お昼はなんだったの?
ハーレ : お母さんが物産展で買ってきた各地の駅弁なのさー! 蟹がたっぷりのお弁当で大満足なのです!
ケイ : ちなみに俺は鮭とイクラの弁当。こっちも美味かったけど、蟹が食いたかった!
ハーレ : そして明日のバーベキューでは海鮮が追加される事になったのです!
アルマース : おーい、桜花さんを筆頭に、あちこちの不動種との調整が終わったぞ。……って、美味そうな話をしてんな。
ハーレ : みんなはお昼ご飯はなんだったー!?
アルマース : 近くにあるラーメン屋でラーメンと餃子を食ってきた。
ヨッシ : 私は野菜炒めを作ったね。
サヤ : 今日は外食で、パスタを食べてきたかな。
ケイ : みんな、バラバラだなー。
まぁ俺とハーレさんはともかく、アルとサヤとハーレさんが重なる可能性の方が低いよな。
うん、アルの昼飯の話を聞いたらたまにはラーメンを食べに行きたくもなってきた。……今度、機会があれば食べに行くかー。そろそろ夏だし、冷やし中華とかも良さそうだ。
アルマース : ともかく、ケイがする例の模擬戦の件は、レナさんが動いてくれてあちこちで中継の準備は進めてくれてるぞ。
ケイ : お、それは助かる!
レナさんに手助けは頼んだけども、本当に大々的に動いてくれているんだな。感謝、感謝。
アルマース : ちなみに全群集への公開だから、思いっきり煽りまくって注目の一戦って事になってるぞ。
ケイ : ……具体的にどんな風に?
サヤ : えっと、『共にコケを背負うロブスターとザリガニの大喧嘩が今ここに! 全群集への公開設定の因縁の対決、2時より開幕!』ってなってたかな?」
ヨッシ : 森林深部にも既に赤の群集の人が結構来てるよ?
ケイ : 思いっきり煽ってんな!?
いや、確かに内容自体は間違ってるとはいえないけど、大喧嘩とか因縁の対決とか、それは大袈裟過ぎない? まぁ俺が負ける気は皆無だから、そこは別に良いけどさ。
あ、でもコケの部分や、ロブスターとザリガニの大喧嘩って言ってる部分で、似た構成でも違うプレイヤーが存在してるのは主張してるんだな。
ケイ : さてと、それじゃ森林深部に行けばいいのか。
アルマース : まだ時間はあるし、俺らは今桜花さんのとこにいるから、そこまで来てくれ!
ハーレ : はーい!
ケイ : ほいよっと。
さて、それじゃ森林深部の桜花さんのとこまで移動しますかね。待ち合わせ場所はエンの近くの予定だったけど、まぁこのくらいの変更は問題なし!
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